サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
大そうじへの備え
honyakumystery.hatenadiary.org
全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは! ノンフィクション・ノヴェルといえば、トルーマン・カポーティの『冷血』を思い出す方も多いのでは。筆者はそれを中学時代に読んで早々にギブアップした暗い過去があるのですが、後年出た佐々田雅子氏による新訳版で再度トライしたところ、これがもう圧倒的な面白さで、訳でこんなにも変わるのか! と嬉しい驚きでした。実はそれまでノンフィクションや歴史ものなど、事実にもとづいて出来事を記録した作品が苦手で、歴史の教科書には「でもこれ書いた人、その場にいなかったよね! 見てないよね!」と不信感を持ち、当時の書物に「全国民に慕われている眉目秀麗のナントカ国王」などと書いてあっても、「脅されて書いたのでは」と疑い続けて今に至ります。同じように思う人は他にもいるはずだけど、多分大きな声では言えないんだろうなあ……と思っていたら、それをそのまま本にしたありがたい人がいたの
地下道の鳩: ジョン・ル・カレ回想録 作者: ジョン・ル・カレ,加賀山卓朗出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/03/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 事実は小説より奇なりと言うべきか、ジョン・ル・カレが実体験にもとづいて書いた回想録は、ことによると小説よりおもしろいかもしれない。訳者のひいき目ではないと思う。 これまでに発表した長篇が23作、巨匠と呼ばれて久しい作家が、80代なかばで発表した回想録である。満を持してということなのかもしれない。でも正直に告白すると、一読するまであまり期待していなかった。むしろ、暗い話や繰り言満載だったらどうしようとちょっと心配していたのだ。本当に失礼な先入観だった。平に謝りたい。 本書は40ほどのエピソードからなる。それぞれ独立しているので、どれから読んでもかまわない。スパイの修業時代から、イギリスの諜報機関MI5、M
2017年2月17日、オランダのユトレヒトでディック・ブルーナさんが亡くなりました。89歳でした。 ブルーナさんがそのキャリアのごく初期に、父親の経営する Bruna & Zoon 社で数多くの装幀を手掛けていたことはよく知られています。そのなかには多数のミステリー作品が含まれていました。 最初のうちはハードカバーをデザインしていましたが、1955年にペーパーバックの Zwarte Beertjes(ブラックベア)叢書が創刊されると、その後ゆうに1400冊を越える書籍の装幀を手掛けました。とりわけオランダのミステリー作家ハファンクや、ベルギー出身のジョルジュ・シムノンなどの装幀は多く、シリーズの特性を活かしたアイデア溢れるそのデザインは世界中の読書愛好家の心をつかみました。 ブルーナさんは小説作品を読んだ上で装幀をしていたそうです。ブラックベア叢書のなかには「本当にこれがブルーナなのか?」
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: ピータートライアス,中原尚哉出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/10/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (20件) を見る 一部のSNS等で原著が評判になっているピーター・トライアスの『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』(以下、USJと略)。日本が太平洋戦争に勝って、アメリカ西海岸に「日本合衆国」を建国しているという筋立てのこの話の翻訳は、ミリタリーSFを専門に訳している私にまわってきました。 この作品はフィリップ・K・ディック『高い城の男』の舞台設定を下敷きにしていて、著者は献辞と謝辞でそのことに言及しています。とはいえ続篇ではなく、まったく別の話として書かれています。第二次世界大戦で連合国が敗北し、アメリカの西海岸が日本に、東海岸がドイツに占領され、アメリカ人の抵抗組織はロッキ
傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4) 作者: ピエール・ルメートル,橘明美出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/10/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (21件) を見る ピエール・ルメートルのヴェルーヴェン警部シリーズは三部作で、今回の『傷だらけのカミーユ』で完結します。三部作というのは次の三作(物語の順)。 『悲しみのイレーヌ』原題 Travail soigné(丁寧な仕事) 『その女アレックス』原題 Alex(アレックス) 『傷だらけのカミーユ』原題 Sacrifices(犠牲) このうち『その女アレックス』と『傷だらけのカミーユ』の二作品で、ルメートルさんは英国推理作家協会賞のインターナショナル・ダガー賞を受賞しました。カミーユ・ヴェルーヴェンの担当事件を描いた作品はほかにも短い番外編がありますが、「人間カミーユのドラマ」はこの三部作で終わっ
中国にいて驚かされることの一つに一般書店でもアマゾンなどのネットショッピングサイトでも本を定価より安く買うことができることがあげられます。 例えばこの本の定価は32元(約500円)ですがアマゾンでは現在約30%OFFの約23元で売られています。一般書店ではだいたい10〜20%ぐらいの値下げ幅です。 更に日本人が驚愕するのが電子書籍の異常な安さです。 上記の本をまた例に挙げますと電子書籍の定価がすでに紙媒体の60%OFFに12元に設定されていますが、Kindleだと更に値引きされてなんと紙媒体の約80%OFFの6元という値段で売られています。 海外の作家の本も同様で、『容疑者Xの献身』がKindleだと定価の約80%OFFになっています。 日本の値引き率が一体何なんだろうと思ってしまうほどでの安さで一体どんな利益配分になっているのかわかりませんが作家の生活が心配になる値段です。とは言え無料で
書評七福神とは翻訳ミステリが好きでたまらない書評家七人のことなんである。 毎年恒例のランキング月間も終わり、年末年始のお休みに読む本の検討に入った方も多いと思います。さあ、そういうときも怠らず新刊の情報をお伝えします。11月は嵐の月でした! (ルール) この一ヶ月で読んだ中でいちばんおもしろかった/胸に迫った/爆笑した/虚をつかれた/この作者の作品をもっと読みたいと思った作品を事前相談なしに各自が挙げる。 挙げた作品の重複は気にしない。 挙げる作品は必ずしもその月のものとは限らず、同年度の刊行であれば、何月に出た作品を挙げても構わない。 要するに、本の選択に関しては各人のプライドだけで決定すること。 掲載は原稿の到着順。 酒井貞道 『古書奇譚』チャーリー・ラヴェット/最所篤子訳 集英社文庫 柔弱なる文系男子同志諸君、刮目せよ! 我らにぴったりのビブリオ・ミステリが登場したぞ! 基本的に文弱
書評七福神とは翻訳ミステリが好きでたまらない書評家七人のことなんである。 いよいよミステリー年間でもっとも熱い月が到来しました。この記事が載るころには各種ランキングもすべて決着しているはずですが、今年はどんな作品が上位に来たのでしょうか。嵐の前の静けさ。今月も七福神がやってまいりました。 (ルール) この一ヶ月で読んだ中でいちばんおもしろかった/胸に迫った/爆笑した/虚をつかれた/この作者の作品をもっと読みたいと思った作品を事前相談なしに各自が挙げる。 挙げた作品の重複は気にしない。 挙げる作品は必ずしもその月のものとは限らず、同年度の刊行であれば、何月に出た作品を挙げても構わない。 要するに、本の選択に関しては各人のプライドだけで決定すること。 掲載は原稿の到着順。 北上次郎 『調教部屋』ポール・フィンチ/対馬妙訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 このタイトルから内容は絶対に想像できないと吉野仁
書評七福神とは翻訳ミステリが好きでたまらない書評家七人のことなんである。 そろそろ年末に向けての動きが出てまいりました。豊作揃いだった2015年、10月には隠し球も出揃うのではないでしょうか。その前にまず、先月のおさらいです。今月も七福神をお届けします。 (ルール) この一ヶ月で読んだ中でいちばんおもしろかった/胸に迫った/爆笑した/虚をつかれた/この作者の作品をもっと読みたいと思った作品を事前相談なしに各自が挙げる。 挙げた作品の重複は気にしない。 挙げる作品は必ずしもその月のものとは限らず、同年度の刊行であれば、何月に出た作品を挙げても構わない。 要するに、本の選択に関しては各人のプライドだけで決定すること。 掲載は原稿の到着順。 千街晶之 『ホテル1222』アンネ・ホルト/枇谷玲子訳 創元推理文庫 北欧ミステリにありそうでいて意外と少ない、「吹雪の山荘」に挑んだ異色作。列車が脱線事故
北欧勢やドイツ勢に押され気味で、いささか影の薄かったフランスミステリ。その鬱憤をいっきに晴らすかのような爆発的大ヒットを記録したのが、ピエール・ルメートルの『その女アレックス』だった。なにしろ「このミス」「文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい」「IN★POCKET」など、各種ベストテンの1位を独占したのだからただごとではない。並みいる英米の傑作もかつて達成できなかった快挙を、どうしてフランスミステリが?と思った人もいるかもしれない。しかし、これはまさにフランスミステリだからこそなしえたことなのだ。 フランスミステリはどこか歪んでいる。いや、フランス人にとっては何の違和感もない小説作法が、英米のミステリを読み慣れた読者にはどうも奇異に感じられるということなのだろう。「フランスミステリはよくわからない」という声もしばしば聞く。しかし『その女アレックス』では、フランスミステリ特有の《歪
全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは! こう暑いと読書に集中できなくて……という方、海外のコミックはいかがですか? というと『バットマン』とか『スパイダーマン』を連想される方が多いかと思いますが、実はルヘインの『シャッター・アイランド』なんかもコミック化されているんです。先月翻訳が出たばかりのダーク・ファンタジー『ロック&キー』(飛鳥新社)は原作があのジョー・ヒル! ガブリエル・ロドリゲスの画はヒルの世界観をばっちり受け止めており、訳はおなじみの白石朗さんです! これが病みつきになる面白さで、続編の刊行が待ち遠しいばかり。 キングスマン:ザ・シークレット・サービス (ShoPro Books) 作者: マーク・ミラー他,デイブ・ギボンズ,中沢俊介出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション発売日: 2015/07/29メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8
書評七福神とは翻訳ミステリが好きでたまらない書評家七人のことなんである。 みなさん、暑いですね。こういうときはちゃんと水分を摂って、熱中症にならないようにお気をつけください。そして涼しい部屋に戻ったら、ぜひ楽しいミステリーを。今月も七福神をお届けします。 (ルール) この一ヶ月で読んだ中でいちばんおもしろかった/胸に迫った/爆笑した/虚をつかれた/この作者の作品をもっと読みたいと思った作品を事前相談なしに各自が挙げる。 挙げた作品の重複は気にしない。 挙げる作品は必ずしもその月のものとは限らず、同年度の刊行であれば、何月に出た作品を挙げても構わない。 要するに、本の選択に関しては各人のプライドだけで決定すること。 掲載は原稿の到着順。 北上次郎 『ゲルマニア』ハラルト・ギルバース/酒寄進一訳 集英社文庫 1944年のベルリンを舞台に、ユダヤ人の元刑事が、ナチス親衛隊に依頼されて殺人事件の捜
注意! この連載は完全ネタバレですので、ホームズ・シリーズ(正典)を未読の方はご注意ください。 このコラムでは、映像作品やパスティーシュ、およびコナン・ドイルによる正典以外の作品を除き、全60篇のトリックやストーリーに言及します。(筆者) ■連載開始にあたって この連載は、客観的な「解読」(資料)部分と、私感を含むコラム部分の二種類から成っています。各作品の書誌情報や内容(ストーリー)、登場人物といった資料だけでは、単なるハンドブックになってしまいますので、シャーロッキアン的なツッコミどころ、コナン・ドイルの執筆背景やこぼれ話、時代背景の話題、その他も自由に(適当に?)書いていこうという、欲張りな企画です。 また、60回(今回すでにその1、2に分かれてしまったので、それ以上になります)という長丁場なので、書いているうちに遡って改訂したり加筆したりする必要が出てくるはずです。そうした補足も毎
メグレと運河の殺人 (メグレ警視シリーズ) 作者: ジョルジュシムノン,Georges Simenon,田中梓出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1979/12/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見るLe charretier de «La Providence», Fayard, 1931[原題:《プロヴィダンス号》の馬曳き] 『メグレと運河の殺人』田中梓訳、河出書房新社メグレ警視シリーズ45、1979* 『水門の惨劇』伊東鍈太郎訳、京北書房、1947 Tout Simenon T16, 2003 Tout Maigret T1, 2007 TVドラマ 同名 ジャン・リシャール主演、1980(第46話) TVドラマ『メグレ警視 運河の秘密』ブリュノ・クレメール主演、Maigret et la croqueuse de diamants, 2001(第34話)【
今年もクリスマスソングが聞こえる季節。各種ミステリランキングが発表されているが、本欄で紹介したクラシック作品も健闘している。今年は、質・量ともにクラシックミステリが充実した一年だったといえそうだ。 いま見てはいけない (デュ・モーリア傑作集) (創元推理文庫) 作者: ダフネ・デュ・モーリア,務台夏子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/11/21メディア: 文庫この商品を含むブログ (13件) を見る ダフネ・デュ・モーリアといえば、『レベッカ』などで知られる英国女性作家だが、ヒッチコック映画の原作となった「鳥」(『鳥』(創元推理文庫)収録)など短編作品にも定評がある。 『いま見てはいけない』は、異郷のエキゾチズムとエトランジェの感覚が濃厚な五つの長めの短編を収めた、粒よりの短編集。『真夜中すぎでなく』(三笠書房)として、かつて紹介されているが、稀覯本となっていた。 表題作は
すでに主要全国紙をはじめ各メディアで報じられていますが、漫画家でイラストレーターの水玉螢之丞さんが2014年12月13日に死去されました。享年55歳。 SFマガジンをはじめとする多くの雑誌で連載を担当されていましたが、当「翻訳ミステリー大賞シンジケート」では、堺三保さんの連載〈TVを消して本を読め!〉のイラストをお願いしていました。 豊富な知識に裏打ちされた軽妙な堺さんの文章と、エスプリの効いた水玉さんのイラスト(と、そこに添えられたコメント)の絶妙なコラボレーションが、旬の海外ドラマを見る楽しみを増してくれたことと思います。 水玉さんイラストの当サイト初登場は、上記の連載第15回「ホームズ譚を現代化した、野心的なリメイク作品『シャーロック』」(2011年1月18日掲載)です。その後、絶大な人気を博することになったベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマにいちはやく注目された堺さんの紹介は
新たな作家攻略シリーズの開幕です。 作家はジョルジュ・シムノン(1903〜1989)。フランス・ミステリの代表的な作家のひとりです。当サイト編集人・杉江松恋は『読み出したら止まらない! 海外ミステリーマストリード100』でこう書きました。 シムノンは彼自身がひとつのジャンルであるというべき作家である。二百を超える著作を世に送り出したという執筆の量もさることながら、その内容が多岐にわたり、いずれの分野でも一等級の作品をものしている。作品の平均水準が高く、入門書を選ぶのに苦労するほど代表作があるというのは畏怖に値することである。 (中略) 長短篇を合計すれば八十冊もの作品があるジュール・メグレ警視のシリーズが作者の看板作品だろう。(p.30) シムノンの看板作品と評された「メグレ警視シリーズ攻略」に挑むのは、『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞を、『BRAIN VALLEY』で日本SF大賞
●「その1 書評七福神篇」は→こちら 去る2014年6月21日、翻訳家の東江一紀さんが、食道がんのため永眠されました。享年62。東江さんは、訳書『犬の力』(ドン・ウィンズロウ)で、第1回翻訳ミステリー大賞を受賞されました。翻訳ミステリー大賞シンジケートでは、東江さんを偲んで、サイトの主要な関係者及び、各地域の読書会を始めとする関連企画の代表者、そして東江さんと親しかった翻訳家により、それぞれ東江さんが翻訳した作品のベストを選び、コメントを寄せる記事を全5回にわたって掲載します。これをもって東江さんへの追悼の意を表したいと思います。 第2回は翻訳ミステリー長屋によるベストとコメントです。 (写真は2011年4月20日「第2回翻訳ミステリー大賞授賞式」にて) 鈴木恵 『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ 作品社 貧しい農家に生まれた平凡な英文学教授の半生を、淡々とした筆致で描いて心に染みる作品。
ジャック・ケッチャムというと、残虐非道な話を書く鬼畜系ホラー作家という評判のみをご存じなかたも多いだろう。この小文では、ケッチャムのそうではない面を紹介したい。 ケッチャムの作品の多くは実際の事件を元にしている(『隣の家の少女』はバニシェフスキー事件、『地下室の箱』はフッカー事件)。効果的な改変と卓越した描写によって犯罪実話にはない深みが表現されてはいるものの、事件の経緯自体はほとんどそのままだ。鬼畜系という評判から、グチャグチャドロドロを期待して読んで、なんだ、たいしたことないじゃん、とがっかりされる鬼畜ホラーファンもいらっしゃるのではないだろうか。 ケッチャムは、現実の暴力的な側面をそのまま、いっさいの容赦なしに描く作家なのだ。だからケッチャム作品に登場する殺人者たちは、『羊たちの沈黙』のレクター博士のような超人でも、わたしたちとかけ離れた――それゆえ安心して恐がれる――怪物でもなく、
(4)フィンランド編・前半 お次はスウェーデンの東の隣国、フィンランドです。とはいえ、前回のノルウェー編でも話に出たとおり、スカンジナビア三国の言葉とフィンランド語はまったく系統のちがう言葉ということもあって、スウェーデンは隣国なのにあまり情報が入ってこないのです。なかなかいい作家がいるという噂は耳にするのに、スウェーデン語に訳されているミステリー作品がどう考えても少ない。調べてみたところ、なぜかドイツではけっこう訳されているのに…… これはぜひともフィンランド語のできる方、できればフィンランド在住の方にお話をうかがわなければ、と考えていたところ、フィンランド語の翻訳や通訳を手がけていらっしゃるセルボ貴子さんと知り合う機会を得ました。ここぞとばかりにすがりつき、しがみつき、図々しくもフィンランド西岸・ポリのご自宅まで押しかけて、話が尽きず午前1時過ぎまでセルボさんを夜更かしさせる大迷惑ぶり
(1)デンマーク編 みなさま、いつもとってもお世話になっております。スウェーデン語の翻訳をしておりますヘレンハルメ美穂と申します。翻訳ミステリー大賞シンジケートのサイトは、拝読するたびに翻訳ミステリーの奥深さに身の引き締まる思いをし、紹介されている本に興味をひかれては「でもすぐには読めない!」と泣き(スウェーデンに住んでいるのでつねに日本語活字飢餓状態です)、「初心者のための○○」的な記事があれば正座する勢いでメモを取りながら読ませていただいております。そんなサイトに、なんとエッセイを書いてみないかとお声をおかけいただきました。なんたる栄誉と思う一方で、「なにを書けば!?」と大いに焦ったのも事実。ミステリーについて? むしろ私が教えていただきたい。スウェーデンについて? いや、すでに久山葉子さんが詳しい記事を書いてくださっています(すばらしいのでぜひお読みください)。スウェーデンの話ばかり
(2)ノルウェー編・前半 今回から2度にわたって、スウェーデンの西の隣国、ノルウェーにスポットを当てます。スウェーデンにいると、ノルウェーのミステリーはとてもよく見かけるのですが、日本ではスウェーデンやデンマークの陰に隠れてしまっているようではないですか? なんともったいない。息をのむほど美しい自然と、成熟した民主主義を誇り、王太子がロックフェスティバルでドラッグ歴のあるシングルマザーと出会って結婚してしまう(すみません、個人的趣味入りました。ホーコン王太子ご夫妻けっこう好きです)ノーベル平和賞授与国、ノルウェーのミステリーと社会の実情を、ちょっとご紹介したいと思います。 今回、ノルウェー編に協力してくださったのは、ノルウェー情報サイト「ノルウェー夢ネット」を運営し、ノルウェー語の通訳・翻訳、語学レッスン、語学書の出版や書籍翻訳などを手がけていらっしゃる、青木順子さんです。協力者を探してい
みなさんこんにちは。お久しぶりの「冒険小説ラムネ」です。ほんとうにお久しぶりで、原稿の取り立てをしてくださっている事務局の方にスライディング土下座! という感じですが、今回も楽しく読んでいただけますと幸いです。 A‐10奪還チーム出動せよ (ハヤカワ文庫 NV ト) 作者: スティーヴン・L・トンプスン,高見浩出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/09/05メディア: 文庫 クリック: 40回この商品を含むブログ (11件) を見る さて肝心の課題書はスティーヴン・L・トンプスン『A-10奪還チーム出動せよ』。まずはあらすじを…… 冷戦下のドイツ。アメリカの最新鋭攻撃機A-10Fが演習中にミグ25 に襲撃され、東ドイツ領内に不時着した。A-10Fにはパイロットと機を一体化させる極秘装置が搭載されていた。現場に赴いたアメリカ軍事連絡部〈奪還チーム〉のマックス・モスは装置を回収する。
書評七福神とは翻訳ミステリが好きでたまらない書評家七人のことなんである。 あけましておめでとうございます。新年最初の七福神をお届けします。例年12月は刊行点数も少なく、冬枯れの季節なのですが、さて、どんな作品が上がってきますことか。 (ルール) この一ヶ月で読んだ中でいちばんおもしろかった/胸に迫った/爆笑した/虚をつかれた/この作者の作品をもっと読みたいと思った作品を事前相談なしに各自が挙げる。 挙げた作品の重複は気にしない。 挙げる作品は必ずしもその月のものとは限らず、同年度の刊行であれば、何月に出た作品を挙げても構わない。 要するに、本の選択に関しては各人のプライドだけで決定すること。 掲載は原稿の到着順。 北上次郎 『地上最後の刑事』ベン・H・ウィンタース/上野元美訳 ハヤカワ・ミステリ 半年後に人類が滅亡するという設定なら、いろいろな物語が考えられるが、まさか殺人事件を捜査する刑
今回はやや趣向を変えて非英語圏のミステリー小説(日本の小説含む)が候補になり得る英語圏のミステリー賞を紹介しようと思ったのだが、それは次回にまわして、今回はまずその前提として日本のミステリー小説の英訳状況を紹介する。 2012年、東野圭吾の『容疑者Xの献身』がアメリカ探偵作家クラブ(MWA)のエドガー賞の候補になり日本でも大きく報道された。あまり知られていないかもしれないが『容疑者Xの献身』はほかにアメリカのバリー賞の候補にもなり、アメリカ図書館協会によりミステリー部門の年間最優秀作品に選出されたりもしている。また今年、中村文則の『掏摸(スリ)』がロサンゼルス・タイムズ文学賞のミステリー部門の候補になったことは記憶に新しい。 少しずつ英語圏における日本のミステリー小説の認知度が高まってきているようだが、それでは日本のミステリー小説はいったいどれぐらい英訳されているのだろうか。 The De
いきなり引用からはじめます。牧眞司氏によるクリストファー・プリースト『夢幻諸島から』の書評―― 飛びきりイキの良い海外SFを届けてくれる《新☆ハヤカワ・SF・シリーズ》第一期(全11冊)の最終巻。いちばん最後にいちばん最高の作品がきた。文句なしの傑作。 しかし、これほどの作品をSFブランドで出しちゃってよいのか? たしかに英国SF協会賞およびジョン・W・キャンベル記念賞を受賞してはいるが、SFの勲章だけですむレベルじゃない。前作『双生児』(早川書房)もそうだったが、この作品の主題・構成・仕掛け・表現力には、SF読者のみならずミステリ・マニアや主流文学ファンも瞠目するはず。この本を読んでいる最中、ぼくの心のSF/ミステリ/文学の琴線は鳴りっぱなし。至福の三重奏でした。 ――牧眞司【今週はこれを読め!SF編】 http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2013/08
その昔、新潮社から出版された『ヘンリー・ミラー全集』の十一巻に『わが読書』(田中西二郎訳)が入っています。若いころに夢中で読んだはずなのですが、情けないことにまったく内容を覚えていません。ところが巻末の附録は、いまでもはっきりと思い出すことができます。 附録の[I]は「著者に最も大きな影響を及ぼした百冊の書目」というタイトルで、ボッカチオの『デカメロン』やセリーヌの『夜の果ての旅』、チェスタトン『アシジの聖フランシス』、ペトロニウス『サチュリコン』などがあり、[II]の「著者が今後に読むつもりの書目」には、トマス・アクィナス『神学大全』、フィールディング『トム・ジョーンズ』、スタンダール『パルムの僧院』などが挙げられています。 いまその附録のページを見たら、著者名と題名のところに鉛筆で小さな丸がとびとびについています。読んだ作品につけた印なのでしょうが、全体の三分の一もありません。やがては
第二回目のエッセイをツイートしてくださった方々、ありがとうございました! 皆様の一行コメントを見ていると、「ブリッジ」だったり「リンドグレーン」だったり、はたまた「バナナ横のズラタン」だったり、それぞれに着眼点が違っていて興味深かったです。色々詰め込んだ甲斐がありました。 さて、今回はまず謝罪から入らせていただきます。前回、脚本家出身のチッラ&ロルフ・ボリィンド夫妻の作品に出てくる頼りない主人公オリビアちゃんが“かなり年上の既婚者と付き合っている”と書きましたが、間違いでした。申し訳ありません。別のミステリシリーズに出てくる主人公フレデリカちゃんと混同しておりました。というのも、このフレデリカちゃんもかなり頼りない新人警官なのです。この作品は、リゾート地や地方都市を舞台にしているわけはなく、脚本家出身の作家さんでもないので、構成上、前回のエッセイには入れられませんでした。(だらだら書いてい
1 いつ読むの? 今でしょ! 今、エラリー ・クイーンがブームです。 アメリカでは、2012年にマンフレッド・リーとフレデリック・ダネイの書簡集が、2013年にはF・M ・ネヴィンズの『エラリイ ・クイーンの世界』の増補改訂版が刊行。2014年にはクイーンの書誌研究本が予定されています。著作は電子化が進み、TVドラマ 「エラリー ・クイーン」は2010年にDVDになりました。 日本では、東京創元社と角川書店が競うように初期作の新訳版を刊行中。この角川書店、それに早川書房はクイーン作品の電子化も進めています。論創社の〈EQコレクション〉は読者の熱意に支えられ、ラジオドラマ集、TVドラマ集、評論、パロディ集と、マニアック路線を爆走中。麻耶雄嵩『隻眼の少女』、法月綸太郎『キングを探せ』『犯罪ホロスコープ』、青崎有吾『体育館の殺人』といった、クイーンに挑んだ作もいくつも出ています。TV版『Yの悲劇
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『翻訳ミステリー大賞シンジケート』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く