2024-12-23

クリスマスケーキ歯磨き粉の味だった

ガキの頃、うちは本当に貧乏だった。

普通に貧乏って言葉じゃ片付けられないレベル貧乏で、学校指定のものが買えないなんて当たり前。

新品の文房具もないし、体操服もみんなと違ってた。

狭いアパートで親子三人暮らし家賃だってギリギリ払えるくらいの生活外食なんてほぼしなかったし、よくて月に一回。父親の気まぐれでスーパー惣菜コーナーの半額品を買ってくるのがせいぜいの贅沢だった。

から子ども心に覚えている一番豪華な食事は、親戚の法事の時に出された仕出し弁当。そんくらい、うちは金がなかった。

クリスマスなんてほんと酷かったよ。

今でも覚えてる。

貧乏って分かってても、クリスマスとなれば多少は期待するんだよ。

しかしたら今日ケーキが食べられるかも?ってな。

だが現実はどうだ?

親父が買ってきたのは半額シールが貼られたスポンジケーキ

その上にかけたもの、何だと思う?

歯磨き粉だよ。マジで

冗談とか比喩とかじゃない。本当に歯磨き粉。あの白と赤が交互に出てくるやつ。ホイップクリームは高いからってさ、歯磨き粉を絞って塗りたくったスポンジケーキを見たとき最初冗談かと思った。

でも親父は真剣な顔して言うんだよ。歯磨き粉は食べても死なないか大丈夫だって

衝撃的だった。だから大人になった今でも鮮明に覚えているんだと思う。

食べたんだよ。そのケーキ。おふくろが「せっかく買ってきてくれたんだから」って言って、親父も妙に得意げな顔してた。

今考えると本当に笑える。ありえないだろ?歯磨き粉だぜ?

その歯磨きケーキの味、いまだに覚えてるんだよな。ミントのピリピリした刺激に、パサパサのスポンジケーキの組み合わせ。

食べるたびに妙な甘さが広がって、なんとも言えない味だった。しかも後から歯磨き特有の爽快感が口の中いっぱいに広がって、ケーキなのに息がスースーするんだよ。

そんな生活が嫌で嫌で、高校卒業したらすぐに家を出た。家出同然で上京して、何でもいいから金を稼いでやろうって必死だった。

バイト掛け持ちして、くさい息のおっさんに頭下げて、毎日深夜まで働いていた。

最初家賃払ったらカツカツだったけど、それでも実家歯磨きケーキを食う生活よりはずっとマシだと思ってた。

少しずつ生活も良くなってきて一人暮らしの部屋にも慣れた頃には、少しはマトモなクリスマスを迎えられるようになった。

友達ケーキ買って食べたり、ちょっとおしゃれな店でディナーを楽しんだりとかさ。歯磨きケーキ記憶も、次第に薄れていった。

上京して11年になる。仕事が少し落ち着いて余裕が出てきた頃、アホみたいに低い金利が嫌で株に手を出した。それがまあ…見事に滑った。滑るどころか、転げ落ちて。気づいたら全財産に近い額を溶かしてた。

何やってんだろうな、俺。

今ではまた貧乏生活に逆戻り。クリスマスケーキどころか、吉牛牛丼一杯だって躊躇する始末だよ。

最近トップバリュカレーヌードルをすすりながら、何故かあの頃の歯磨きケーキのことばかりを思い出す。

クソまずかったのに、やたら鮮明に覚えてる。あの歯磨き粉のミントの味、スポンジケーキのパサパサ感。それを笑顔で食べるおふくろと、得意げな親父の顔。

今年はほんと、最悪だよ。

  • お疲れ様。借金がないだけマシだと思って、また来年から流れ変わるかもよ

  • マジでごめん、タイトルだけでチョコミントの事考えてた

  • 貧乏ってかその親知能に問題あるだろ。金ないならないならなりに、カスタードとかメレンゲとかカラメルぶっかけた方が美味かろうよ。

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