風疹とは? わかりやすく解説

ふう‐しん【風×疹】

読み方:ふうしん

小児に多い発疹(ほっしん)性の感染症学校感染症の一。感染症予防法の5類感染症の一。風疹ウイルス感染して全身に細かい発疹が出るが2、3日で消える。発熱リンパ節腫脹(しゅちょう)などの症状呈する妊娠初期にかかると、胎児奇形障害の起こる率が高くなる三日ばしか


風疹

読み方:フウシン(fuushin)

ウイルス性急性皮膚伝染病


風疹

感染症の話 2001年第29週7月1622日掲載

風疹(rubella)は、発熱発疹リンパ節腫脹特徴とするウイルス性発疹症である。近年国内においてもその発生減少傾向にあるが、まれに見られる先天性風疹症候群予防のために、妊娠能年齢およびそれ以前女性対すワクチン対策重要な疾患である。

疫 学
我が国では風疹の流行は2~3年周期有し、しかも10年ごとに大流行がみられていた。最近では、1976、198219871992年大き流行がみられているが、次第にその発生数少なくなりつつあり、流行規模縮小しつつある。季節的には春から初夏かけてもっとも多く発生するが、冬にも少なからず発生があり、次第季節性薄れてきている。
感染症発生動向調査では全国約3,000カ所の小児科定点より報告なされているが、平成12年1~12月1年間でみると、累積報告数が3,123で、定点当たり累積報告数が1.05であった本年平成13年度については第28週までの時点で見ると、累積報告数が1,802で、定点当たり累積報告数が0.60である。

病原体  
風疹ウイルスTogavirus科Rubivirus属に属す直径60~70nmの一本鎖RNAウイルスで、エンベロープ有する血清学的には亜型のない単一ウイルスである。上気道粘膜より排泄されるウイルス飛沫を介して伝播されるが、その伝染力は麻疹水痘よりは弱い。


臨床症状
感染から1421日平均1618日)の潜伏期間の後、発熱発疹リンパ節腫脹(ことに耳介後部後頭部頚部)が出現するが、発熱は風疹患者の約半数みられる程度である。3徴候いずれかを欠くものについての臨床診断は困難である。溶血性レンサ球菌による発疹典型的ではない場合伝染性紅斑などとの鑑別必要になり、確定診断のために検査診断要することが少なくない

風疹
風疹

写真1. 風疹による発疹顔面および体幹全体見られる

多く場合発疹紅く小さく皮膚面よりやや隆起して全身にさらに数日間要することがある通常色素沈着落屑みられないが、発疹強度場合にはこれらを伴うこともある。リンパ節発疹出現する数日前より腫れはじめ、3~6週間持続する写真2)。カタル症状を伴うが、これも麻疹比して軽症である。ウイルスの排泄期間は発疹出現前後1週間とされているが、解熱すると排泄されるウイルス量激減し急速に感染力消失する
基本的に予後良好な疾患であり、血小板減少性紫斑病(1/3,000~5,000人)、急性脳炎(1/4,000~6,000人)などの合併症をみることもあるが、これらの予後もほとんど良好である。成人では、手指こわばり痛み訴えることも多く関節炎を伴うこともある(5~30%)が、そのほとんどは一過性である。
風疹に伴う最大問題は、妊娠前半期妊婦初感染により、風疹ウイルス感染胎児におよび、先天異常を含む様々な症状呈する先天性風疹症候群congenital rubella syndromeCRS)が高率出現することにある(詳細感染症週報IDWR2000年第7週参照)。これは妊娠中の感染時期により重症度症状発現時期が様々である。先天異常として発生するものとしては、先天性心疾患難聴白内障網膜症などが挙げられる先天異常以外に新生児期出現する症状としては、低出生体重血小板減少性紫斑病溶血性貧血間質性肺炎髄膜脳炎などが挙げられるまた、幼児期以後発症するものとしては、進行性風疹全脳炎糖尿病などがある。

病原診断
ウイルスの分離基本であるが通常行われず保険適応でもない血清診断保険適応にもなっており、一般的に用いられている。赤血球凝集抑制反応HI)、中和法(NT)、補体結合法CF)、酵素抗体法ELISA)などの方法があり、以前にはHI法が主流であったその場合、急性期回復期抗体価で4倍以上の上昇により診断する最近ではELISA使われるようになり、急性期特異的IgM抗体検出されれば、単一血清での診断も可能である。CF法は感染後比較早期陰性化するので、抗体保有有無をみるための検査としては不向きである。

治療・予防
特異的治療法はなく、対症的に行う。発熱関節炎などに対して解熱鎮痛剤用いる。
弱毒生ワクチン実用化され、広く使われている。MMR麻疹おたふくかぜ・風疹)混合ワクチンとして使用している国も増加している。我が国では平成6年以前中学生女子のみが風疹ワクチン接種対象であったが、平成6年予防接種法改正以来、その対象生後12カ月以上~90カ月未満男女標準生後12カ月以上~36カ月以下)とされた。また経過措置として、平成15年9月までの間は、12歳以上~16歳未満男女についてもワクチン接種対象とされた。現時点での予防接種率をみると、風疹の予防接種を受ける幼児の数は増加したが、逆に中学生での接種率減少し対策強化課題となっている。平成8年度の伝染病流行予測事業による調査では、我が国における風疹抗体保有状況をみると、小学校高学年から中学生年齢女子
抗体陽性率低く12歳女子における風疹抗体陽性率52%にすぎない。風疹の流行規模縮小しつつあるが、発生消えたわけではない。風疹に対す免疫有しない女性妊娠した場合に風疹の初感染を受ければ、先天性風疹症候群発生危険性が高いことは明らかであり、現時点では幼児期のみならず中学生に対して風疹ワクチン接種積極的にすすめる必要がある

風疹

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
風しんは5類感染症定点把握疾患定められており、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下の3つの基準のすべてを満たすもの
1. 突然の全身性の斑状丘しん状の発しん(maculopapular rash)の出現
2. 37.5上の体温 
3. リンパ節腫脹
上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清学診断によって当該疾患診断されたもの。

学校保健法における取り扱い
風疹は第二種伝染病定められており、登校基準としては、紅斑性発疹消失するまで出席停止とする。なお、まれに色素沈着を残すことがあるが、その段階で出席停止とする必要はない。


国立感染症研究所感染症情報センター


風疹


風疹

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/17 22:15 UTC 版)

風疹
風疹患者の紅斑
概要
診療科 感染症内科学, 新生児学
分類および外部参照情報
ICD-10 B06
ICD-9-CM 056
DiseasesDB 11719
MedlinePlus 001574
eMedicine emerg/388
Patient UK 風疹
MeSH D012409

風疹(ふうしん、: Rubella)とは、ウイルス感染症の一種で、風疹ウイルスによる急性熱性発疹性感染症[1]。一般に日本では「三日はしか」「三日ばしか」としても知られ、英語では「German measles(ドイツはしか)」とも呼ばれている。日本では「風しん」(「疹」が常用漢字に含まれていないため)として、感染症法に基づく五類感染症に指定して届出の対象としている[1]

伝染力は、水痘(水疱瘡)、麻疹(はしか)、ノロウイルス感染症よりは弱いが、インフルエンザより強い。日本ではワクチン接種を受けていない成人男性の患者が多い。効果的な治療法は無く、症状に応じた対症療法が行われる。発症防止策はワクチンによる予防接種のみで、妊娠初期に妊婦が感染した場合の先天性風疹症候群が問題となる。

疫学

本疾病は罹患歴があると再罹患しないとはされるが、経年により抗体価が低下している場合や、がん治療などで免疫力が低下した場合など、まれに再発することがある。日本では、かつて5 - 9年ごと(1976、1982、1987、1992年)に大流行があったが、男女幼児が定期接種の対象となって以降は、大きな流行は発生していなかった[2]。しかし、2012年 - 2013年、2018年 - にかけて、成人男性のワクチン未接種者を中心に、風疹の大流行が発生した[3][4]。2013年流行後に大阪府で行われた調査によれば、妊娠適齢期の20 - 30代女性の20 - 30 %が感染を防御できる十分な抗体を保有しておらず、潜在的に先天性風疹症候群が発生しやすい状況にあると報告されている[5]

原因

ウイルスは、感染者の咽頭から排出される体液に含まれ、飛沫感染または直接接触感染する。インフルエンザウイルスよりも小さく、手洗い・うがい・マスクの着用では、感染防止ができない。伝染期間は発疹の発症前1週間から発疹出現後4日間[6]トガウイルス科ルビウイルス属、直径50-70nmの一本鎖RNAウイルス。正十二面体のカプシド構造を有する。

症状

臨床症状

特徴的な症状は、「発熱」「発疹」「リンパ節腫脹」[7]で有るが、臨床症状だけで風疹と診断することは困難[8]

成人の臨床症状は、麻疹に似る[7]。無症候例は、30 - 50%とされている[9][7]。また、小児より重症化しやすいとの報告がある[7]

  • 潜伏期間は2 - 3週間程度。
  • 初期症状(発疹の1 - 5日前)は微熱、頭痛、倦怠感、鼻水、せき、痛みのないバラ色の口蓋斑点(典型的な3症状である紅色斑丘疹、発熱、頸部リンパ節腫脹が現れない場合、溶血性レンサ球菌による発疹、伝染性紅斑などとの鑑別を行う必要がある)。成人発症者では、90%以上にリンパ節腫脹[7]
  • 顔、耳後部から、赤く癒合性のない点状の紅斑(発疹)が全身に広がり、多くは3 - 5日程度で消える(20 - 25%は発疹が出現しない)。
  • 小児発症者の約25 - 50%に、38 - 39℃前後の発熱が3日間程度続く。成人発症者では、5日間程度の発熱。
  • 耳介後部、後頭部、頚部のリンパ節の腫れ。発疹出現5 - 10日前から数週間にわたりみられる。
  • 眼球結膜の軽度充血や、肝機能障害が見られる場合がある。
  • 小児では咽頭炎のみがみられたり、無症候性感染(不顕感染)であることも多い。
  • 発疹の色素沈着[7]

血液検査

  • 白血球減少、血小板減少
  • 血液中風疹IgM抗体検出

診断

  • 臨床診断は不正確なことが多い。
  • 発疹出現から28日以内の血液中風疹IgM特異抗体検出が確定診断になる。ペア血清を用いて、CF、HI試験、ELISA法などで4倍以上の上昇で診断する。PCR法、ウイルス培養は一般的ではない[10]
  • 急性期の咽頭ぬぐい液、血液、尿からRT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法などの方法で病原体の遺伝子を検出する。早期診断に有用であるが、実施可能な機関は少ない[11]

鑑別診断

麻疹(はしか)、デング熱突発性発疹、コクサッキー・エコー・アデノウイルス感染、伝染性紅斑猩紅熱

合併症

妊婦の妊娠初期の感染は胎児に先天性風疹症候群を引き起こす。また関節炎血小板減少性紫斑病(1/3,000 - 5,000人)を合併する可能性があるほか、急性脳炎を起こす(1/4,000 - 6,000人)ことがあり、極めてまれに重篤な状態に陥る。

先天性風疹症候群

先天性風疹症候群の一つ・白内障になった新生児の眼

妊娠10週までに妊婦が風疹ウイルスに初感染すると、90%の胎児に様々な影響を及ぼす。この先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)の典型的な三大症状は、心奇形・難聴白内障である。11 - 16週までの感染では10 - 20%に発生する。妊娠20週以降の感染で発生することはまれとされる[10]

診断は、新生児血清IgM特異抗体検出で確定診断可能。エコー下穿刺液によるPCR法で胎内診断も可能である。しかし、先天性風疹症候群を容易に再現できる動物モデルが存在していないため、発症機序は解明されていない[12]

1941年にグレッグによって、新生児に白内障や心奇形が発生したと初めて報告された。成人でも30 - 50%程度の無症状感染者[9]があるので、母親が無症状であってもCRSは発生し得る[13]。また、出生前に感染した乳児は、出生後数ヶ月感染力を持ち続ける[6]とされている。

先天性症状

注意点

妊娠21週以降の感染であればCRSのリスクは低く、通常は妊娠が継続される。

治療

特異的な治療法はなく、症状を緩和させる対症療法のみ。発熱・関節炎に対しては、解熱鎮痛剤が用いられる。

ワクチン接種による予防

風疹は、ワクチンで予防可能な感染症で予防接種が唯一の予防法である。幼小児期に予防接種が行われている。世界では、MMRワクチンに含まれた形で2回接種を行っている。なお、生ワクチンの効果は完璧なものではなく、2013年春に島根県の保育園で風疹ワクチンを接種した園児の集団感染が起きた事例が報告されている[14]。だがワクチン接種は、流行防止に唯一の予防法に変わりなく、引き続き予防接種の強力な推進が必要である。

妊娠可能年齢の女性で、風疹抗体がない場合や抗体価が低い場合[15]、ワクチン接種は先天性風疹症候群を予防する観点からも強く推奨されているが、妊娠中のワクチン接種は避ける。女性はワクチン接種後2ヶ月間の避妊が必要。2006年4月以降、新規にワクチンを接種する1歳以上2歳未満の幼児からはMRワクチンを接種することとなった。授乳中の母親がワクチン接種を受けた場合、母乳を飲んでいる赤ちゃんに、ウイルスが感染し赤い発疹が出ることがあるが、重い合併症は起こさない[16]

世界保健機関の取り組み

世界保健機関(WHO)はワクチン予防可能疾患の制御に取り組んでおり、風疹の排除を「良く機能したサーベイランス制度の下で,、ある地域において12カ月以上にわたって土着の風疹ウイルスによる伝播が認められず、その伝播に伴った先天性風疹症候群(CRS)の発生が認められないこと」と定義している[17]。6つのWHO地域ごとの風疹ワクチン接種率には大きな開きがある[17]

アメリカ地域
アメリカ地域では加盟国の全35カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が予防接種スケジュールに導入されている[18]。2009年に風疹排除状態となり、2015年4月に風疹およびCRSの排除達成が宣言された[17]。アメリカ地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は92%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]。なお、アメリカ合衆国では、風疹を含む指定の予防接種の接種記録が確認できない場合は、永住権が取得できない[19]
ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域では加盟国の全53カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が予防接種スケジュールに導入されている[18]。ヨーロッパ地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は94%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]
東地中海地域
東地中海地域では2019年末現在で5カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が導入されていない[18]。東地中海地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は42%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]
南東アジア地域
南東アジア地域では加盟国の全11カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が導入されている[18]。南東アジア地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は12%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]
アフリカ地域
アフリカ地域では2019年末現在で16カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が導入されていない[18]。アフリカ地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は10%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]
西太平洋地域
西太平洋地域では日本など加盟する37の国と地域すべてで風疹含有ワクチン(RCVs)の定期接種が導入されている[18]。西太平洋地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は91%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]

日本でのワクチン接種

日本での風疹ワクチンの接種は当初、女性のみが対象とされていた。1994年より男性もその対象となったものの、接種率の低い成人男性を中心に風疹の流行が繰り返されている。男性が対象に含まれた際には併せて対象年齢が満1歳以上7歳半未満に変更されたのだが、中学生に対する接種は経過措置として継続された。しかしこのとき、それまでの集団接種から個別接種へと変更されたこと、またMMRワクチン接種による重度健康被害の多発により予防接種の安全性に懸念が持たれ、接種率が低迷した時期が存在したためである。

このため、妊娠を希望する女性や配偶者などの同居者を対象に、地方自治体独自に抗体検査やワクチン接種費用の助成が一部で行われるようになり、さらに2019年度から3年間の時限措置として、ワクチンの集団予防接種を受ける機会のなかった1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までの間に生まれた男性を、公費による無料抗体検査、予防接種(第5期)の対象者として追加した[20]

本則接種
  • 1977年(昭和52年)4月1日に、女子中学生を対象に風疹単価ワクチンの集団接種が開始された。
    • この世代の男子中学生は、ワクチン接種の対象外で抗体保有率が少ないことから、上記の第5期予防接種の対象者となった。
  • 1994年(平成6年)からは、満1歳-7歳半(生後12か月から90か月未満の年齢の男女)および中学生男女の年齢層に対し、個別接種で風疹の単価ワクチンの接種が開始された。
  • 2006年(平成18年)からは、MRワクチンとして満1歳(第1期)および就学前年(第2期)への麻疹風疹混合ワクチン接種を開始(2回接種法)
麻疹の定期予防接種のワクチンとしてのとして麻疹・風疹・おたふくかぜ混合ワクチン(MMRワクチン)接種
  • 1988年-1993年の間は麻疹の定期予防接種のワクチンとして麻疹・風疹・おたふくかぜ混合ワクチン(MMRワクチン)の選択も可能であった。男子に対する風疹の予防接種が可能になったのはこの時からである。
経過措置
  • 1995年-2003年までの間、中学生男女に対し風疹の個別接種を実施
  • 2001年-2003年9月末の間、1979年4月-1987年生まれの男女に対し風疹の個別接種を実施
  • 2008年-2013年3月末の間、中学1年生(第3期)、高校3年生(第4期)に相当する年齢層に定期接種として2回目の麻疹風疹混合ワクチンの個別接種を公費で実施
2回接種の実施
  • 麻疹の定期予防接種にMMRワクチンを使用した場合、この接種はあくまでも麻疹予防接種として行われたため、中学生になった際にMMRとは別に風疹の接種が可能であった。この対象は1981年生まれから1989年生まれである。
  • 1990年生まれ以降は、MRワクチンを使用した2回接種法に移行した。
予防接種していない世代
ワクチン接種が見込めない世代は、以下の通りである。母子健康手帳がある場合は、確認すること。
  • 1979年(昭和54年)4月1日以前に生まれた男性
  • 1962年(昭和37年)4月1日以前に生まれた女性。
  • 制度切替の時期にあたる、1979年(昭和54年)-1987年(昭和63年)生まれの男女。
  • MMRワクチンの接種時期にあたる1985年(昭和60年)-1995年(平成7年)生まれの男女(MMRワクチンによる健康被害の多発による接種控え)
    • 1990年(平成2年)-1994年(平成6年)生まれは、第4期の接種対象の年齢層であり、1995年(平成7年)生まれは、上記の第3期の接種対象の年齢層である。

上述のように、公的なワクチンの接種がなかった1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までの間に生まれた男性を公費による無料抗体検査、予防接種の対象者として追加した[20]。初年度の2019年度は1972年(昭和47年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までの間に生まれた男性に対し、居住自治体から検査を受けられるクーポン券が発送されているが、1962年4月2日から1972年4月1日生まれの男性については、市区町村役場に連絡すればクーポン券を発送(発行)してもらえる(例外的に1962年4月2日から1972年4月1日生まれの男性を含む対象者全員にクーポン券を発送した自治体もある[21])。抗体検査の結果、抗体が弱い場合はMRワクチン接種を無料で受けられる[22]

イタリアでのワクチン接種

イタリアでは2017年の麻疹の流行を受け、国立の保育園や小学校に入る6歳以下の子どもを対象として12種のワクチン(ポリオジフテリア破傷風B型肝炎、ヘモフィルス・インフルエンザb型菌、B型髄膜炎、C型髄膜炎、麻疹、風疹、流行性耳下腺炎百日咳水痘)の予防接種が義務化された[23]

歴史

前近代

英語のrubellaは、ラテン語で赤みがかったという意味である[24]。西洋では古くは麻疹猩紅熱の一種と考えられ、第三病(third disease)と呼ばれた[24]

一方、日本では鎌倉室町時代に「三日病」という病が流行していたことが『吾妻鏡』『多聞院日記』などに記録されている。富士川游は『日本疾病史』の風疹の項でこの三日病について取り上げているが、これは現在のインフルエンザに相当するのではないかという説もある[25]。「風疹」「三日はしか」という語は江戸時代多紀元堅の『時還読我書』に見られ、これは現在の風疹を指すと考えられている[25]

近現代

西洋医学においては、風疹は18世紀半ばに初めて記述された。Friedrich Hoffmann は1740年に初めて風疹の臨床記述を行い[26]、1752年に de Bergen、1758年に Orlow によって確認された[27]

1814年、George de Maton はこの疾病が麻疹とも猩紅熱とも異なることを示唆した。これらの医師はすべてドイツ人であったので、この疾病は「ドイツはしか」という一般名で知られるようになった[28]。イギリスの王立砲兵連隊の外科医であった Henry Veale は、インドでの風疹のアウトブレイクについて記述しし、1866年に現在の英語の正式名称 “rubella”(ラテン語の「小さな赤」に由来する)という語を造り出した[26][29][30][31]

風疹が独立した疾患として公式に認められたのは、1881年にロンドンで開かれた医学の国際会議 (International Congress of Medicine) においてであった[32]。1914年 Alfred Fabian Hess はサルを用いた研究に基づいて、風疹がウイルスによって引き起こされるという理論を立てた[33]。1938年、弘好文と田坂重元は急性患者の鼻腔洗浄液の濾過物を用いて子供に疾患を伝染させることで、これを実証した[30]

1940年、オーストラリアで風疹の広範な流行が起こった。その後、眼科医 Norman McAllister Gregg は新生児の先天性白内障の78の症例のうち、68の症例で母親が妊娠初期に風疹に罹患していたことを発見した[29][30]。Gregg は1941年「母親のドイツはしか後の先天性白内障」(Congenital Cataract Following German Measles in the Mother) という報告書を公表した。彼は現在では先天性風疹症候群として知られているさまざまな問題について記述を行い、母親の感染が妊娠の初期であるほど、その害が大きくなることに気づいた。当時はまだワクチンが存在しなかったので、いくつかの人気雑誌は、感染した子供から他の子供(特に女児)へ病気を伝染させる「風疹パーティー」のアイデアを売り出した[34]。これは、小児期に終生免疫を獲得することで妊娠時の感染を防ぐことを目的としたものだった。風疹ウイルスは1962年に、医師 Paul Douglas Parkman のグループとトーマス・ハックル・ウェーラーのグループによって独立に、培養組織から単離された[29][31]

1962年から1965年にかけて風疹のパンデミックが発生し、ヨーロッパからアメリカ合衆国へ拡散した。1964年から1965年の間に、アメリカ合衆国で風疹は1,250万件発生したと推定される。そしてその結果11,000件の流産または妊娠中絶と20,000件の先天性風疹症候群が発生した。これらのうち、2,100件で新生児死亡、12,000件で聴覚障害、3,580件で視覚障害、1,800件で知的障害が見られた。先天性風疹症候群の影響は、ニューヨークの全出生の1%にまで及んだ[35][36]

1969年に、弱毒化ウイルスワクチンが認可された[30]。1970年代の初頭に、麻疹、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、風疹の3種の弱毒化ウイルスを含むMMRワクチンが開発された[31]。2006年までに、アメリカ大陸での確認症例は年に3000件を下回った。しかしながら、2007年のアルゼンチン、ブラジル、チリでのアウトブレイクによって、その年は13,000件にまで跳ね上がった[37]

2014年1月22日に、世界保健機関 (WHO) と汎アメリカ保健機関 (PAHO) は、コロンビアを国内で風疹が消滅したラテンアメリカで最初の国家として認定して宣言した[38][39]。そして2015年4月29日に、アメリカ大陸はこの病気が公式に根絶された最初のWHOの地域区分となった[40]。アメリカ大陸で最後の非輸入症例は2009年にアルゼンチンとブラジルで起こったものである。PAHOのディレクターは「風疹との闘いには15年以上かかったが、これが汎アメリカにおける公衆衛生の21世紀で最も重要な成果の1つとなると私は信じている」と述べた[41]。この宣言は1億6500万件の健康記録の確認の後に行われ、最近の症例はすべて既知の輸入株によって引き起こされたものであることが遺伝学的に確認されている。

風疹は、世界のいくつかの地域ではありふれた感染症であり、宣言に参加したアメリカ疾病予防管理センターグローバル予防接種部門で、風疹のチームを率いる Susan E. Reef によると、風疹が2020年までに世界から根絶される見込みはない[37]。風疹は、天然痘ポリオに続いて、ワクチンによって西半球から消滅した3番目の疾病となったが[37][40]、日本を含む他の地域ではワクチン接種の不徹底で、いまだ流行が繰り返されている。

日本での流行

日本では、5年おきに風疹の流行があり、2004年(平成16年)に推計患者数約4万人の流行があり、2005年(平成17年)以降は急速に患者が減少していたが、2011年(平成23年)にアジアで大規模な風疹流行が発生し、帰国後に風疹を発症する成人男性と職場での集団発生が散発的にみられ[42]、2010年度の報告数は87件、2011年度の風疹の届出数は378件と増加し、2012年の年間報告数は2,368件、2013年から2014年には報告患者数 14,000件を超えたが、2014年8月頃に流行は終息した[43]

2012年以降の流行は、男女で流行の傾向が異なる。

  • 男性は30歳代をピークに、ワクチン接種機会のなかった20歳以上50歳未満の年齢層に流行が拡大している。
  • 女性は男性に比べ感染者総数が14であり、23歳-24歳をピークに、18歳以上30歳以下に流行している。

2012-2013年

2012年(平成24年)に、231件の風疹ウイルスの分離・検出が報告された。遺伝子型の判別まで実施された151件では、2B型が124件、1E型が26件、1a型が1件であった[44]

2013年(平成25年)7月現在、さらに東京都・大阪府を中心に都市部で大流行した。2013年(平成25年)4月、神奈川県で、神奈川県知事黒岩祐治が風疹流行により非常事態を宣言、5月13日、大阪府が風疹流行緊急事態宣言。いまだアジアで流行中のため、日本で流行が来年も続く可能性が高く、患者が減少傾向にない[45]。最終的に14,344人の感染が報告された。

流行から2014年(平成26年)10月時点で、先天性風疹症候群による障害を負った乳児は日本全国で計45人[46]。この流行は、2014年(平成26年)1月で終息した[47]

2018-2019年

2018年(平成30年)8月に、2017年(平成29年)の感染者数を超え、9月時点で2012-2013年に次ぐ362人の累積患者数が報告され、国立感染症研究所感染症疫学センターは緊急情報を発表し、男性が罹患する風疹流行の注意を呼びかけた[48]

2018年10月22日、風疹の年間感染者数は1,289人で、アメリカ疾病予防管理センターは、日本の風疹警戒レベルを3段階中の2番目である「勧告」に引き上げ、アメリカ合衆国は妊娠中の女性に対して、風疹の予防接種を受けてない人は、感染の拡大が収まるまで、日本への渡航をやめるよう勧告を出した[49][50]。2018年の累計報告者数は、2,917人で、2019年(令和元年)5月8日までに、先天性風疹症候群の発生が2件あった[51][52]

関連法規

脚注

  1. ^ a b 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について 風しん 厚生労働省 2013年5月8日閲覧
  2. ^ 風疹とは(2013年05月07日改訂) 国立感染症研究所
  3. ^ "風疹大流行〜遅れる日本の感染症対策〜". クローズアップ現代 No.3344. 9 May 2013. NHK総合
  4. ^ 風疹流行および先天性風疹症候群の発生に関する リスクアセスメント(2013年7月16日)”. 国立感染症研究所. 2014年8月31日閲覧。
  5. ^ 風疹抗体保有率が風疹エンデミック形成に与えた影響の解析 (PDF) 大同生命厚生事業団
  6. ^ a b 風疹 MSDマニュアル プロフェッショナル版
  7. ^ a b c d e f 【原著】加藤博史、今村顕史、関谷紀貴、柳澤如樹、菅沼明彦、味澤篤:成人における風疹の臨床像についての検討 感染症学雑誌 Vol.87 (2013) No.5 p.603-607
  8. ^ 風疹とは 2013年05月07日改訂 国立感染症研究所感染症疫学センター
  9. ^ a b Dominic E. Dwyer, Peter W. Robertson, Peter R. Field,CLINICAL AND LABORATORY FEATURES OF RUBELLA2001, Vol.33, No.3 , Pages 322-328 (doi:10.1080/00313020126300)
  10. ^ a b 感染症学 改訂第四版 谷田憲俊 診断と治療社 2009
  11. ^ 風疹とは”. 国立感染症研究所. 2018年11月13日閲覧。
  12. ^ 坂田真史、森嘉生、風疹ウイルスの生活環 ウイルス 2014年 64巻 2号 p.137-146, doi:10.2222/jsv.64.137
  13. ^ 先天性風疹症候群 2000年第7週
  14. ^ 昨春 風疹ワクチン接種も感染 島根の園児ら 玩具介し広がる? msn産経ニュース 2014-01-18
  15. ^ 予防接種が推奨される風しん抗体価について(HI法・EIA法) (PDF) 厚生労働省
  16. ^ 風疹について 横浜市衛生研究所 横浜市感染症情報センター 疾患別情報(2005年7月7日増補改定)
  17. ^ a b c d e f g h i 海外での風疹対策の現状”. 国立感染症研究所. 2022年1月28日閲覧。
  18. ^ a b c d e f 海外の風疹と先天性風疹症候群の状況”. 国立感染症研究所. 2022年1月28日閲覧。
  19. ^ 移民ビザ申請のためのワクチン接種の要件
  20. ^ a b 風しんの追加的対策について厚生労働省
  21. ^ 浜松市の例石狩市の例
  22. ^ 風しんの追加的対策 Q&A(対象者向け)厚生労働省
  23. ^ イタリア、予防接種を就学の条件に AFP、2017年5月20日
  24. ^ a b 風疹について」横浜市 2021年2月24日閲覧
  25. ^ a b 中村昭 (1987). “中世の流行病「三日病」についての検討”. 日本医史学雑誌 33: 308-316. ISSN 0549-3323. http://jsmh.umin.jp/journal/33-3/308-316.pdf. 
  26. ^ a b Ackerknecht, Erwin Heinz (1982). A short history of medicine. Baltimore: Johns Hopkins University Press. pp. 129. ISBN 0-8018-2726-4 
  27. ^ Wesselhoeft C (1949). “Rubella and congenital deformities”. N. Engl. J. Med. 240 (7): 258–61. doi:10.1056/NEJM194902172400706. PMID 18109609. 
  28. ^ Best, J.M.; Cooray, S.; Banatvala, J.E. (2005). “45. Rubella”. Topley and Wilson's Microbiology and Microbial Infections. 2 Virology. pp. 960–992. ISBN 0-340-88562-9 
  29. ^ a b c “Rubella virus replication and links to teratogenicity”. Clin. Microbiol. Rev. 13 (4): 571–87. (2000). doi:10.1128/CMR.13.4.571-587.2000. PMC 88950. PMID 11023958. オリジナルの2007-09-05時点におけるアーカイブ。. http://cmr.asm.org/cgi/content/full/13/4/571. 
  30. ^ a b c d Atkinson, W; Hamborsky, J; McIntyre, L et al., eds (2007). “12. Rubella”. Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases (10th ed.). Centers for Disease Control and Prevention. オリジナルの2007-06-20時点におけるアーカイブ。. https://www.cdc.gov/vaccines/pubs/pinkbook/downloads/rubella.pdf 2007年7月3日閲覧。 
  31. ^ a b c “Chapter 11 — Rubella”. Immunisation Handbook 2006. Ministry of Health, Wellington, NZ.. (April 2006). ISBN 0-478-29926-5. オリジナルの2007-11-15時点におけるアーカイブ。. http://www.moh.govt.nz/moh.nsf/pagesmh/4617/$File/2006-11rubella.pdf 2007年7月3日閲覧。 
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  34. ^ Reagan, Leslie J.. Dangerous Pregnancies: Mothers, Disabilities, and Abortion in Modern America. p. 84. https://books.google.com/books?id=pPWQCkzPYO8C&pg=PA84 
  35. ^ J.B. Hanshaw, J.A. Dudgeon, and W.C. Marshall. Viral diseases of the fetus and newborn. W.B. Saunders Co., Philadelphia, 1985
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  39. ^ Colombia fue declarada libre de sarampión y rubéola” (スペイン語). ELESPECTADOR.COM (2014年1月22日). 2018年12月11日閲覧。
  40. ^ a b Americas region is declared the world's first to eliminate rubella”. www.paho.org. 2018年12月11日閲覧。
  41. ^ “Rubella (German measles) eradicated from Americas”. BBC. (April 29, 2015). オリジナルのMay 1, 2015時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150501045607/http://www.bbc.com/news/world-us-canada-32523300 April 30, 2015閲覧。 
  42. ^ 風疹とは 国立感染症研究所
  43. ^ 風しん累積報告数の推移 2010〜2016年 (PDF) 国立感染症研究所
  44. ^ 風疹ウイルス分離・検出状況 風疹ウイルス分離・検出状況 2012〜2013年(2013年4月18日現在) 国立感染症研究所
  45. ^ 風疹 発生動向調査 国立感染症研究所
  46. ^ 風疹で障害の赤ちゃん45人にNHK NEWS WEB 2014年10月9日
  47. ^ 風疹ウイルス分離・検出状況 2012〜2014年(2015年1月8日現在) 国立感染症研究所
  48. ^ 首都圏における風疹急増に関する緊急情報 国立感染研究所感染症疫学センター
  49. ^ “猛威ふるう風疹 アメリカ 妊婦に渡航自粛勧告”. ニュースウオッチ9 (日本放送協会). (2018年10月23日). https://www9.nhk.or.jp/nw9/digest/2018/10/1023.html 2018年11月11日閲覧。 
  50. ^ "Rubella in Japan" (Press release) (英語). アメリカ疾病予防管理センター. 22 October 2018. 2018年11月11日閲覧
  51. ^ 風疹急増に関する緊急情報:2019年5月7日現在 (PDF) 国立感染症研究所 風疹急増に関する緊急情報(2019年)
  52. ^ 三和護 (2019年5月10日). “東京都でも先天性風疹症候群の報告 全国で2例目”. 日経メディカル (日本経済新聞社). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44571100Z00C19A5000000/ 2019年5月13日閲覧。 

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