■ 3号機棟爆発後の3月15日前後に最大値、ヨウ素135は桁違い、累積で全ヨウ素はヨウ素131の42倍・全セシウムはセシウム137の2倍以上群馬県高崎市にあるCTBT放射性核種探知観測所で3・11以降に、大気中から高濃度のテクネチウム99m(Tc-99m)、バリウム140(Ba-140)、プロメチウム151(Pm-151)、ランタン140(La-140)、テルル129/129m/132(Te-)、ヨウ素131/132/133/135(I-)、セシウム134/136/137(Cs)、希ガス状のキセノン131m/133(Xe)などが検出されていた。キセノン131m/133については、3月15日前後の濃度が高すぎて計測不能となった。なおCTBTの観測所は包括的核実験禁止条約違反を監視する国際的観測ネットワークのひとつで、日本政府の機関ではない。
報告1・
報告2 (※5月9日に一部データの訂正文書が出ていましたので追記をご覧ください)
CTBT放射性核種探知観測所のデータを集計してみた
※画像をクリックすると拡大されます
この観測所のデータで特に注目されるのは3月15日から16日にかけて採取された空気中から極端に高濃度の放射性物質が検出されていたことだ。3号機での爆発(
プール内での核爆発と思われる)直後の14日から15日にかけてのおそらく最も大量の放射能が出た日のデータだけがなぜか欠落しているものの、16日の濃度が桁違いであったことはデータで裏付けられている。文科省が公開しているヨウ素131とセシウム137の降下量データは3月19日以降の分だけで、当ブログでは
気象庁の拡散予測データから3・11後の数日間に膨大な量の放射性物質が飛散していたはずと考えてきたが、そのことが証明されている。3月19日から4月19日までの空気中濃度の累積値よりも、3月16日の一日の値の方が大きい。政府が公開してきた3月19日以降の
ヨウ素・セシウムの降下量など、まさに氷山の一角に過ぎないということだ。
この観測所のデータからは他にも興味深いことが分かった。第一に、3月15日、3月21日、3月30日、4月18日と、断続的に放射能濃度の大幅上昇が見られること、つまり派手な爆発事象後も何度も濃度上昇があること。第二に、放射性セシウム全体の累積値はセシウム137の累積値の2倍以上、放射性ヨウ素全体の累積量はヨウ素131の累積値の42倍以上、特にヨウ素135が3月16日のみ検出であるが全核種中最大量であること。
ちなみにヨウ素131は放射線を出し終わるとキセノン131mに、ヨウ素135はキセノン135というそれぞれ別の放射性物質に変化し、さらにキセノン135はセシウム135(半減期230万年)に
変化するとのこと。ということは日本の大地には今とんでもない量のセシウム135が堆積しているのでは?(※どこかセシウム135を計測してませんか?)。
※この謎の膨大なヨウ素135について、京都大学の小出裕章先生が3号機の核爆発(専門用語では核暴走)で出た可能性を
指摘されています。
■ 小出裕章氏が計測した3月15日東京の大気中放射能濃度小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)が東京台東区で、これまでに最も放射能濃度が高かったと思われる3月15日に大気中放射能濃度を
計測していた。
それによると台東区の大気中放射能は以下のようになっていた。
テルル132:570 Bq/m3(570,000,000 μBq/m3)
ヨウ素131:720 Bq/m3(720,000,000 μBq/m3)
ヨウ素132:450 Bq/m3(450,000,000 μBq/m3)
セシウム134:110 Bq/m3(110,000,000 μBq/m3)
セシウム137:130 Bq/m3(130,000,000 μBq/m3)
群馬県高崎市にあるCTBT観測所のデータにはこの3月15日の分が欠落している。計測ポイントが違うので一概に比較はできないが、CTBTデータにある最大値である3月16日と比較しても、桁が1・2つ違う、まさに桁違いの量の放射能が東京に降り注いでいたというわけだ。3月19日以降の分しか公表されていない文科省の降下量データが全体の降下量をいかに過小評価しているか、ここからも推し測れるだろう。原発利権政府は「パニックを防ぐ」などといったバカげた口実でWSPEEDIを隠蔽することで、このすさまじい量の放射能で多くの人が被曝することを黙ってみていたというわけだ。
■ 文科省、80km圏内でチェルノブイリ移住対象地域レベル、降下量データにはセシウム134だけを追加:セシウム134はセシウム137とほぼ同量、30km圏外でストロンチウム89/90文科省が5月6日にそっと公開していた、「
航空モニタリング」 (測定期間は4月6日から29日)で見つかった放射性セシウム134/137の地表蓄積値によると、30km圏外にある福島県飯舘村を含むエリアで3,000,000Bq/m2(81Ci/km2)以上、福島県伊達市を含む半径30km以上60km以下のエリアで600,000Bq/m2(16.2Ci /km2)以上、そして福島市(県庁所在地付近)を含む半径60km以上80km以下のエリアで300,000Bq/m2(8Ci/km2)以上の超高濃度汚染が見つかった。
チェルノブイリではセシウム137の地表蓄積が5Ci/km2から15Ci/km2までの第二汚染エリアは補償つき自主移住、15Ci/km2以上の第一汚染エリアは強制移住とされた。原発災害後の避難・移住エリアの決定については日本政府があの旧ソ連政府よりも非人道的な対応をしていることが分かる。しかしこの航空観測データからはもっと広域で日本各地の地表にどのくらいの量が堆積しているのかは分からない。※1Ci(キュリー)=37,000,000,000Bq=37,000MBq(MBqは百万ベクレル)、1km2=1000,000m2
また文科省がHPで公開しているヨウ素131とセシウム137の降下量データに、4月25日からセシウム134(半減期2.1年)のデータが追加された。これまでセシウム134については全国的な降下量統計は公表されていなかった。
公表された統計を見ると、セシウム137とあまり変わらない量のセシウム134が降っていることが分かる。さらに下記のようにセシウム136も放出されていることから、放射性セシウム全体の汚染量はこれまで報じられてきたセシウム137の値の2倍以上であることがこれではっきりした。
ちなみに単発の計測であるが、3月16日から19日の間に文科省は、原発から30km圏外の土壌や植物からストロンチウム90と89を
検出していた。この時なぜヨウ素セシウム以外にストロンチウムだけを突然計測し、その後この計測がどうなったのかは不明である。
東京都は3月19日以降のセシウム134の
降下量を公表しているが、それによると3月19日から5月1日までの東京でのセシウム134の累積降下量は6803MBq/km2(MBq=百万ベクレル)で、セシウム137の同6968MBq/km2とほぼ同量であった。米国EPAが米国内で観測したデータからもセシウム134とセシウム137はほぼ同量であったことから、日米の観測データに一致が見られた。
■ 千葉でセシウム137の地表蓄積が53000Bq/m2(チェルノブイリ第三汚染地域クラス)、キセノン133・セシウム136・テルル129/132なども検出千葉県にある財団法人・
日本分析センターがおこなった
大気中濃度の測定によると、3月14日から22日までの間、キセノン133が通常値0.001Bq/m3の130万倍にあたる1300Bq/m3に急増していたことが分かった。その後キセノン133は減少しているが、4月中旬時点でも通常の600倍近い水準となっている。またその他にも大気中からクリプトン85・ヨウ素132・テルル129・テルル132などが検出された。観測地点は千葉市にある同センター敷地内である。なおプルトニウムやウランは同センターでも観測自体が行われていないとのこと。
また同センターがおこなった放射性物質の
土への蓄積量の測定によると、4月14日の時点で、小石混じりの土の表面にはヨウ素131が約48000Bq/m2、セシウム134・137が各53000Bq/m2、セシウム136が1000Bq/m2以上検出された。また腐葉土の表面にはヨウ素131が16000Bq/m2、セシウム134・137が各26000Bq/m2蓄積していた(正確な数値は日本分析センターに問い合わせた)。また地中5センチの土からも放射能汚染が見つかった(5センチより深くは計測していないとのこと)。文科省が公開している
千葉県のセシウム137の降下量の累積(3月19日から4月24日まで)は約5000MBq/km2つまり5000Bq/m2なので、その10倍以上のセシウム137が地表に蓄積されているという値は驚きである。ちなみに53000Bq/m2または53000MBq/km2または1.4Ci/km2という値は、10数年後にガンや白血病が発生している
チェルノブイリの第三汚染地帯のレベル(1Ci/km2以上5Ci/km2以下、つまり37000-185000MBq/km2)に相当する。これは土の地表の値でありコンクリート表面はそれより低い蓄積量だと推測されるが、いずれにしても文科省公開の降下量の累積値では千葉県よりも東京・茨城・山形・そしておそらく福島・宮城の方がセシウム137降下量が多いので、千葉で1Ci/km2を超える数値が出たということはかなり深刻な事態である。※Bq/m2=MBq/km2
■ 50km地点の土から高濃度のプルトニウム検出:食品メーカー公表渋る5月14日、原発から50km離れた水田の土から、高い濃度のプルトニウムが検出されたという
記事が出された。具体的な場所や、計測した食品メーカーの名前は伏せられている。以下、この記事からの引用である。
「この食品メーカーによると、現時点でその結果を公表するのは影響が大きすぎるため発表は控えているとのことだが、その田んぼの土からは高い濃度のプルトニウムも検出されたそうだ。」
命への影響はどうしてくれるんだと思うが、何より問題は政府がプルトニウムやウランの計測を全く行っていない、もしくはその計測結果を全く公表していないことだ。
■ その他の国内検出情報(I-131・Cs-137以外)群馬県(政府)ではヨウ素131・ヨウ素132・セシウム134・セシウム136・セシウム137・テクネチウム99m・テルル132の降下が検出されている。
静岡県(政府)でも3月中にヨウ素131・セシウム134・セシウム137・
カリウム40の降下が確認された。これによると3月1日から31日までのセシウム137の総降下量が約600Bq/m2。文科省公表データで3月19日から31日までの静岡県のCs137総降下量が約120Bq/m2なので、その5倍もの量が最初の1週間に降ったということが考えられる。
※CTBT観測所については当ブログ読者のIさん、東京都については読者Mさん、群馬県については読者Kさん、静岡県については読者Tさん、小出先生の指摘については読者Bさんから、それぞれ教えていただきました。日本分析センターの方にも質問にご返答頂きました。みなさま貴重な情報提供ありがとうございました。
■ SPEEDIは本当にすべて「公開」されたのか?政府はこれまで都道府県に緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報を公表しないように
圧力をかけるなど明らかにコソコソとしていたが、それがやっとすべて「公開」されたというニュースを知り、早速見てみた。
しかし
公開されたSPEEDI情報は原発数十キロ圏内の拡散情報だけで、それより広域の情報や放出された放射性物質がそれぞれどう拡散したのかを予測できる情報はなかった。政府は近隣諸国をカバーするほどの範囲で放射能拡散情報を持っているはずで(
WSPEEDIや第三世代SPEEDI)、物質ごとの大気中濃度や降下量データも持っているはずだから、こんな程度の情報しか出せないはずがない。細野統合本部事務局長は「いま政府が持っているSPEEDIに関するデータはすべて公開した。その(半径30キロ圏の)外側について、有意の情報があるとは承知していない」と
説明したが、文科省による
学校の殺人基準でさすがに怖じ気づいた(?)御用学者が内閣官房参与の職を辞任する際に残した
爆弾発言、WSPEEDIの広域データなどがまだ隠蔽されているという暴露は、政府にとって誤算だったようだ。5月2日文科省は、隠し持っていたSPEEDIを用いたベント時の放射性物質放出状況等のデータを5000枚公表すると
発表した。政府が意図的に市民の命にかかわる情報を隠蔽することや、ゆるい基準値をつくって放射能摂取を推進することは重大犯罪である。多くの人が情報の欠如や基準値によって騙され無駄な被曝をしたのだ。この重大犯罪の決定にかかわったすべての東電上層部・政府高官をいずれ法廷に引きずり出す必要がある。
人々が欲しがっているのは事実であり、原子力村の専門家が取捨選択した情報や、「パニックを防ぐ」といった情報隠蔽を正当化するための稚拙な言い訳ではない。海外の情報も常に入ってくる中、これ以上事実を隠しても政府は信頼を落とすだけだ。一体どんな放射性物質が、どれだけ、どこに拡散したのか、しているのか。この疑問にもっとストレートに答えるべきだ。汚染の程度を考える上で重要な地域ごとの降下量データは一部公開されてきたが、検出対象が2・3種類だけで、検出地点も各県に一つしかなく、おまけに最も大量の放射性物質が放出された事故発生後数日間のデータが抜け落ちている。米国(グアム・ハワイ・カリフォルニアなど)ではすでに
プルトニウム・ウランや
テルル・ストロンチウム・コバルトなどが検出されているが、日本ではヨウ素・セシウム以外の放射性物質の検出データや予測値がほとんど公表されていない。日本全国で地表堆積量を調べないのもおかしい。人々の命にかかわる重大な情報なのに、国内でのこの情報不足はあまりにひどい。情報を独占している者が元データを隠して何を言おうと信頼しようがない。政府はすべてのデータと予測値を無条件で公開してほしい。
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