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2011/04/22(金) 01:57 大鬼
■ 政策転換?:管首相が原子力政策を「白紙」にすることを表明

報道によれば、菅直人首相は4月18日参議院において、「一度白紙から検証して再検討する必要がある。安全性を確認することを抜きに、これまでの計画をそのまま進めていくことにはならない」と述べた。内閣総理大臣が日本の従来の国策であった原子力エネルギー推進政策について見直しを示唆した歴史的にもきわめて重大な発言である。また佐藤雄平福島県知事は4月22日、福島県庁を訪れた清水正孝東京電力社長に対し、福島第一・第二原発の再稼働は「ありえません」と断言した。原発問題をめぐる状況は新たな局面に入った。

■ 原子力大政翼賛会の崩壊?:毎日と朝日は脱原発へ

毎日新聞と朝日新聞は最近になってようやく多少まともな社説を書き始めている(これまでの情報操作をまずは読者に詫びてほしいものだが)。例えば毎日の4月15日社説「地震国の原発・政策の大転換を図れ」では、石橋克彦・神戸大名誉教授という珍しくまともな地震学者が紹介され、「想定外の津波という言葉で事故を総括することは許されない」とし、事故後の原子力安全委の班目春樹(通称デタラメハルキ)委員長による「割り切らなければ原発は設計できない」発言に対して「納得できない・・・割り切り方を間違えなければ大事故は起きないのか。安全規制を厳しくし、設備や緊急時の対応策を整えれば、事足りるのか・・・どこまで安全装置を重ねても絶対の安全はな」いと論じた。さらに「原発政策の大転換を図るしかない。」「予測不能な地震と原発の掛け算のようなリスクを、このまま許容できるとは思えない・・・今後の原発の新設は事実上不可能だろう。」「原子力による電源に頼らなくても・・・再生可能エネルギーの促進や低エネルギー社会の実現がひとつの鍵となるはずだ。地震国日本に適した電源と、それに基づく暮らし方を、今こそ探っていく時だ。」という、日本のマスコミのレベルとは思えない程まともな言葉で結んでいる。また朝日の4月20日社説「原発をどうするか・脱依存へかじを切れ」では、「『原子力村』の専門家たちが右往左往する様は、これまで安全神話を信じ込まされてきた国民にとっては悪夢としかいいようがない」などと、神話構築に加担してきたメディアの一つとしての反省の弁はやはりないものの、「これまで脇役に追いやられていた太陽光発電など、自然エネルギーの拡大を柱に据え・・・原子力行政は、推進から抑制へと軸足を移す・・・こうした方向性に異論は少ないのではないか。」と脱原発色をなんとか打ち出したただし朝日ビジネス面では、"原発反対論者には対案が欠如している"というおきまりのデマを書いてる記者もいるので(反対論に欠如しているのではなくマスコミ報道が伝えないだけ)、朝日内にも原発利権の息のかかった勢力がいるようだ。ちなみに管首相の「白紙化」を宣言した重大な発言について、読売新聞と産経新聞のネット版は報道すらしなかった。保守系の新聞上層部は昔ながらの情報操作で今後も原発を推進できると考えているようだ。

■ 日本と世界の人々は脱原発を選択し始めた:ギャラップ国際世論調査(WIN)

各国の世論調査団体が加盟するギャラップインターナショナル(Gallup International Association, スイスに本部、米国ギャラップ社とは別組織)が4月19日に公表した47カ国での世論調査結果によると、福島原発大災害の前と後で、世界中で原発支持が減少し、反対世論が増加したことが明らかになった。とりわけ日本の世論が最も大きく変わり、日本では原発反対派が多数になった。こんな目に遭ってるんだから当然といえば当然の結果ではあるが、日本人の多くはまだ日本人が世界の世論をリードしているという事実に無自覚だ。3・11後の国内メディアによる世論調査では原発支持派が減ったとはいえまだ過半数を維持しているという怪しげな結果が出ていたが、他方でロイターのオンライン世論調査では7割以上が原発全廃を選ぶなど、聞き方・やり方次第で結果には大きな違いが出る。オンライン調査は投票者がネットユーザーに偏り全体世論を必ずしも正確に反映しないことは事実であるが、他方で被災地域を調査対象から除外したり正しい知識を与えず誘導的な情報だけを添えたような原子力産業に買収されてきた国内大手メディアによる世論調査も信頼性が乏しい。したがってオンライン調査ではなく、なおかつ日本の原発利権に直接的な利害関係もない、このギャラップインターナショナルの世論調査が、現時点での日本の世論についての最も信頼できる情報であると考えられる。では調査結果を見てみよう。

311と原発への態度 前支持率 前不支持率 前不明率 後支持率 後不支持率 後不明率 支持率変化 不支持率変化 バランス変化
米国 53% 37% 10% 47% 44% 9% -6% 7% 13%
中国 83% 16% 1% 70% 30% 0% -13% 14% 27%
韓国 65% 10% 25% 64% 24% 12% -1% 14% 15%
フランス 66% 33% 1% 58% 41% 1% -8% 8% 16%
ロシア 63% 32% 5% 52% 27% 21% -11% -5% 6%
エジプト 65% 22% 13% 52% 44% 4% -13% 22% 35%
イラク 62% 24% 14% 49% 37% 14% -13% 13% 26%
インド 58% 17% 25% 49% 35% 16% -9% 18% 27%
日本 62% 28% 10% 39% 47% 14% -23% 19% 42%
(香港) 48% 41% 11% 40% 48% 12% -8% 7% 15%
カナダ 51% 43% 6% 43% 50% 7% -8% 7% 15%
オランダ 51% 43% 6% 44% 50% 6% -7% 7% 14%
チュニジア 44% 29% 27% 39% 41% 20% -5% 12% 17%
ドイツ 34% 64% 2% 26% 72% 2% -8% 8% 16%
イタリア 28% 71% 1% 24% 75% 1% -4% 4% 8%
オーストリア 13% 87% 0% 9% 90% 1% -4% 3% 7%
スイス 40% 56% 4% 34% 62% 4% -6% 6% 12%
トルコ 45% 51% 4% 41% 57% 2% -4% 6% 10%
ケニア 32% 58% 10% 21% 70% 9% -11% 12% 23%
ブラジル 34% 49% 17% 32% 54% 14% -2% 5% 7%
コロンビア 24% 69% 7% 23% 73% 4% -1% 4% 5%

資料出所

3・11後に全世界的に原発神話が崩壊し脱原発世論が急増していることが明らかだ。まず世界の原子炉の半数を保有する原発三大国、米国・フランス・日本で原発不支持が増えている。アメリカでは3・11前には原発支持53%・原発不支持が37%であったが、3・11後には支持47%・不支持44%とほぼ拮抗するようになった(支持減少分と不支持増加分を足したバランス変化量は13%)。フランスもまだ支持が不支持を上回っているものの、バランスが16%変化して不支持が増加した。そして当事者である日本では、バランス変化量が42%と世界で最も大きくなった。日本では3・11前に62%が原発に賛成していたが、3・11後には不支持が多数派の47%となり支持39%を引き離すことで世論が逆転した。いま世界中が日本の人々の変化に希望を抱きはじめている。日本で原発反対派が多数派となり米国でも世論が拮抗してきたことは非常に重要な変化だ。原発大国での不支持世論増大は原発産業の中枢への大きなダメージとなり、その原発輸出先である途上国でも原発をやめて持続可能な発展を目指す動きが強まるからだ。

3・11前から原発の問題に世論が気づいて反対してきたドイツ・イタリアなどヨーロッパ諸国では原発不支持がもはや圧倒的な世論となった。カナダ・オランダ・チュニジアなどでは、日本のように多数世論が原発支持から脱原発に、つまり再生可能自然エネルギーへの転換支持に変わった。中国やインドなど途上国の一部では、情報統制や反対世論弾圧(日本の原発産業が利権を広げようとしているインドでは4月18日、フランス・アレバ社が契約している原発建設予定地で行われたデモが弾圧され死者が出た)なども影響していまだに支持が多数を占めてはいるが、そんな中国とインドでも不支持が大幅に増えていることに注目すべきである。民主化革命が進行中であるアフリカ諸国の一部で大幅な世論バランスの変化が起きていることも興味深い。

地球温暖化防止を口実にした「原発ルネサンス」という原子力利権の描いたシナリオを狂わせたのは福島原発大災害であるが、それを本当に打破して持続可能な世界を実現するのは世界の人々の力である。日本の世論は国際世論動向の鍵を握っている。日本の経済政策を「白紙」から「後退」ではなく「転換」にするには、日本の世論と民主主義がもっと力を発揮しないといけない。

■ 日本の政治はいつ変わるのか:民主主義を見つめ直そう

まだ多くの国の政府が脱原発を求める世論を無視し、原発推進政策を変えないと強弁している。しかし中には民主主義の力でふざけた政府の方針を変えさせた国もある。その代表がドイツとイタリアだ。ドイツでは社会民主党・緑の党が2020年代までの原発全廃を決定した後、政権を握った保守派が原発を2040年まで延長することを決めたばかりであったが、3・11後の数十万人規模の反原発デモと選挙での緑の党の躍進を受けて、メルケル首相が原発延長方針を撤回し、原発に最終的な終止符を打つことになった。チェルノブイリ直後の国民投票で原発の即時廃止が決定され1990年代からずっと原発に依存せずにやってきたイタリアでも、右派のベルルスコーニ政権が原発建設再開のための国民投票を準備し始めていたが、3・11後に強化された圧倒的な反原発世論を前にして政府は4月19日、原発再開計画を断念することを発表した。人々がまともな判断力をもって民主主義の力を使うことができれば、原発をなくして自然エネルギー社会を実現することは可能だ。

日本でも署名活動やデモなども行われるようになり世論も大きく変化してきたが、世論と選挙政治にはズレがある。ドイツやイタリアの有権者たちが次の時代へ進もうとする意志を毅然と示したのに対し、4月の地方選前半戦では日本の有権者の混迷が目立った。いまだに原発利権による情報操作から原発の必要性をナイーブに信じ込み、もう持続可能でないことが証明された従来のシステムに必死にしがみつこうとする年配者の票が、行き場を失い漂流を続ける投票率の低い若者の票を押しつぶした。それを象徴するのが、原発は安全だから東京に作ってもいいなどと虚勢を張ってきた原発推進論者(核武装論者)石原の都知事四選だ。

しかしより大きな問題は、選択肢がない、あるいは死票にされるリスクが大きすぎて選択肢が2つしかなくなりどちらの選択肢もクソである、というポンコツシステムが世論と政治の乖離を拡大していることだ。民主党政権が非道であることはこの間の動きで明らかだが、それへの対案がこれまで原発を推進してきた張本人で電力会社から多額の献金を受けてきた自民党でしかないのであれば、選挙など何度やってもインチキが繰り返されるだけだ。日本の二大政党は両方とも原発推進派で目くそ鼻くそだ。二大政党が競ってやることといったら、放射能で子どもを被曝させてまで原発利権を守ることや、さんざん儲けてきた組織が何兆円も出せるのにぎりぎりでやりくりしている庶民から消費税を上げてまで搾りとることや、ちゃっかりと議員定数を削減して小選挙区を増やすことで議会を世論から遠ざけるといったことだ。日本の国会議員定数は米国に次いで少なすぎて世論を正確に反映する機能に乏しく、ヨーロッパ水準の民主的議会にするには議員定数を少なくとも2・3倍に増やさなければならないはずだが(※下記参照)、昨今では議員減らせば政治が良くなるといった大嘘で有権者をだまそうとするクソ政治家が目立つ。小選挙区制は死票を最大にして世論を歪めるために導入された、最も非民主的な選挙制度である。ドイツで少数政党である緑の党の躍進が大政党を動かし原発政策を変えたように、利権よりも人命が重視される政治を実現するためには、地道な世論づくりの他に、民意が議会に極力正確に反映されるようなルールが必要だ。民意をゆがめる政治献金や小選挙区制を撲滅し、議員定数・選挙区・比例代表・住民投票機会を拡大し、さらに移譲式投票のような死票を最小にしながら政党比例代表を補完する制度を取り入れるなど、民主政治の基本設計から問い直すべき時だ。

※国会レベルの単位代表人口(議員1人が代表する人口数:この数値が大きいほど人口のわりに議員定数が少ないため世論が正確に反映されにくい非民主的な議会になる)
米国=71万人(下院435議席・人口3億896万人)
日本=28.6万人(衆議院480議席・人口1億2729万人)
韓国=16.2万人(国会299議席・人口4833万人)
ドイツ=13.3万人(下院614議席・人口8175万人)
フランス=11.3万人(国民議会577議席・人口6545万人)
オランダ=11.1万人(下院150議席・人口1659万人)
イギリス=9.5万人(庶民院646議席・人口6157万人)
スウェーデン=2.7万人(議会349議席・人口934万人)


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