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2011/04/29(金) 04:36 大鬼
※お知らせ:ついに専門家とマスコミがこの件を取り上げてくれました

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米国環境保護局(EPA)のRadNetのデータベースを詳細に調べてみたところ、3月下旬から4月初旬にかけて行われたグアム・ハワイや米国西海岸での計測において、異常な濃度のプルトニウム・ウランが検出されていたことが分かった。これにより福島第一原発から最も毒性の強いプルトニウムやウランが大気中に飛散していることが裏付けられた(当然海中にも放出されていることになる)。この事実に日本の政府・マスコミ・東電・御用学者はだんまりを決め込んでいるが(米国政府もアクセスの多い一般向けのページにはごく一部の放射性物質の情報しか掲載していない)、すでに海外の専門家の間やネットでは隠しきれない事実になりつつある。

今回当ブログで集計したのは、プルトニウムとウランが検出されたカリフォルニア・アラスカ・ハワイ・グアムでのフィルタ方式で検出された大気中の放射性物質濃度である(このほかにワシントン州やサイパンでもプルトニウムが検出されたとの情報があるがここでは省略する)。2011年3月11日以降の計測はほとんどの場所で1回から3回程度観測されただけで、なぜか4月上旬以来観測がされていない(これについては米国内で批判もあるようだ)。以下の図表はEPAのデータに基づいて作成したものである。

※ご自身で個別のデータベースを確認されたい方はEPAのRadNetデータベースで検索してみて下さい。「Air-Filter」「CA(州名)」「Plutonium-239(核種名)」などと選択して一番下の「Search Database」ボタンをクリックすると結果が出てきます。ちなみにグアムはGU、ハワイはHI、アラスカはAK、カリフォルニアはCA、ウランはUranium、プルトニウムはPlutoniumです。表計算(CVS)ファイルとしてもダウンロードできます。なお2011年以降のデータは単位がaCi/m3ではなくpCi/m3になっているので注意してください。私は放射能の専門家ではありませんので、できれば多くの方にEPAのデータベースを検索・検証していただけたらありがたいです。

<単位変換式と表内記号>
1pCi=1,000,000aCi
1pCi=0.037Bq
1km3=1,000,000,000m3
aCi/m3=1立方メートルあたりのアトキュリー数(大気中の放射性物質濃度を表す)
Bq/km3=1立方キロメートルあたりのベクレル数(大気中の放射性物質濃度を表す)
Pu=プルトニウム
U=ウラン
放射性核種ごとの詳細データはこちら


■ 大気中濃度の経年グラフ

カリフォルニアでのプルトニウム239の増大(過去20年)
California Plutonium239 Detection EPA
※画像をクリックすると拡大されます

アラスカでのウラン234の増大(過去20年)
Alaska Uranium234 Detection EPA
※画像をクリックすると拡大されます

ハワイでのウラン238の増大(過去20年)
Hawaii Uranium238 Detection EPA
※画像をクリックすると拡大されます


■ 3・11前の20年間と3・11後の大気中濃度平均(Bq/km3)の比較

カリフォルニア Pu238 Pu239 U234 U235 U238
3・11前の20年間 14 4 790 56 687
3・11以降 -67 78 1098 99 638
倍率 -4.8 17.5 1.4 1.8 0.9

アラスカ Pu238 Pu239 U234 U235 U238
3・11前の20年間 7 13 419 29 330
3・11以降 -63 -43 4995 -52 5680
倍率 -9.6 -3.3 11.9 -1.8 17.2

ハワイ Pu238 Pu239 U234 U235 U238
3・11前の20年間 8 4 235 20 160
3・11以降 -962 -159 7141 296 7955
倍率 -124.3 -41.1 30.4 15.1 49.6

グアム Pu238 Pu239 U234 U235 U238
3・11前の20年間
3・11以降 -296 444 6623 1554 8214
倍率 初検出 初検出 初検出 初検出 初検出


1991年から2011年2月までの20年間の平均濃度に比べて、3月11日以降、カリフォルニアではプルトニウム239が18倍に、アラスカではウラン238が17倍に、ハワイではウラン234が30倍・ウラン238が50倍に増大し、グアムではプルトニウム239とウラン234・235・238が観測史上初めて検出された。半減期は、プルトニウム239が2.4万年、ウラン234は24万年、ウラン235は7億年、ウラン238は44.7億年であり、いずれも気が遠くなるほどの時間放射能を出し続ける。プルトニウムもウランも強烈なアルファ線を出す極めて毒性の強い放射性物質だ。

これが福島原発から放出されたものである根拠は2つある。第一に、以上のような3・11以降の突然かつ大幅な濃度上昇は、上記の経年グラフからも分かるように、過去20年間一度も見られたことがない。第二に、プルトニウム・ウランが3・11以降に大幅に増加して検出されているのはグアム・ハワイ・アラスカ・カリフォルニアといった日本から最も近い環太平洋地域であり、特にグアムやハワイでの増大が目立つ。カリフォルニア(日本から8700km)とグアム(日本から2500km)の3・11後の検出濃度を比べてみてほしい。プルトニウム239は78倍、ウラン234は6倍、ウラン235は16倍、ウラン238は13倍、グアムの方が濃度が高い。東海岸諸州(メイン・マサチューセッツ・ニューヨーク・ヴァージニア・ノースカロライナ・サウスカロライナ・フロリダなど)のデータも確認してみたがプルトニウム・ウランは検出されていない(ちなみにフロリダではヨウ素131・132とセシウム136・137が検出されている)。以上のように、3・11以降の増大のパターンの異常さと地理的な観点からして、福島原発からの飛来であることは間違いないだろう。

結論:最も凶悪な放射性物質であるプルトニウム・ウランも福島原発から大気中に飛散している。


■ 日本でも飛んでいるプルトニウムとウラン

では日本の大気中のプルトニウム・ウランの濃度はどのくらいになるだろうか。残念ながら東電・日本政府・マスコミ・御用学者らが反原発世論を押さえ込むためにこれらの重大な情報を隠蔽している以上、既存のデータから自力で推測するしかない。情報の制約から、以下はかなり雑な計算になることをご理解いただきたい。

この記事に詳しく書いたが、気象庁が公開した放射性物質拡散予報データによると、2011年3月末あたりで、日本近海での最も低濃度の飛散予測エリアは福島原発上空の100兆分の1という濃度になっていた。おそらくグアムではそれよりも低い濃度で飛来していると思われるが、あえて「保守的」な計算方法(グアムの対福島希釈倍率を高めに設定すれば日本の濃度を逆算した場合に控えめな値が出るという意味)で、この100兆分の1という濃度をグアムに適用して考えてみると、3月26日放出分のデータで茨城は原発付近の約100億分の1、東京は1兆分の1の濃度なので、それぞれグアムの1万倍、100倍というおおざっぱな想定が導き出せる(グアムでの計測日は3月31日と4月1日、希釈倍率データはヨウ素131のもの)。

2011年3月末の気象庁予報データとグアム検出値からの予測濃度(Bq/km3)
希釈倍率Pu239U234U235U238
グアム100兆分の1444662315548214
東京1兆分の144400662300155400821400
茨城100億分の14440000662300001554000082140000


正確な値までは分からないが、アメリカでプルトニウムやウランが飛んでいる以上、日本の空気中には少なくともそれよりも高い濃度で飛んでいることは確実であろう。政府は放出されたヨウ素131とセシウム137の量からレベル7であることを認めたが、放射性物質の種類からみてもチェルノブイリ事故に並んでしまった(最終的な被害人数の観点からすればチェルノブイリより状況は悪い)。プルトニウムやウランはヨウ素やセシウムよりもはるかに人体に与える影響は大きいが、それらが出すアルファ線は短い距離しか飛ばないため放射線量モニタリングでは計測できない。身の回りにたくさん降っていることに気づかず体内に入れてしまえば致命的なリスクを抱えることになるのに、東電・日本政府はプルトニウムやウランについての情報を出していない。25人に1人の子どものガン死させる暫定基準を決定した文科省は、なんとこの体内被曝分を全く計算に入れないでそれだけの被曝を認めるという。10年・20年後の人体への影響についてはこちらへ


もう隠しきれないな。どうする、斑目!


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■ 追記1:データの解釈について

この記事は修正・バージョンアップされたものです。先のバージョンではデータベース結果に出てくる検出値が"Result Amount"(以下、RA)なのか"Minimum Detection Concentration"(以下、MDC)なのか分からないので両方のケースで表を掲載していました。理由はRAの値の中にマイナスのものが多数見ら れたため、素人である私は計測値がマイナスになるはずがないと疑い、マイナス値のないMDCが検出値なのかもしれないと思ったからです。しかしEPAサイ ト内のRAの定義を見つけて、RAが検出値だと確信しました。したがってMDCのケースで計算した内容をすべて削除しました。この変更によって「米国で大気中のプルトニウ ム・ウランが大幅に増加した」という結論が変わることはありません。特に日本から近い地域でプルトニウムやウランの検出値に大きな上昇が見られたことが重 要です。なおMDCを「検出限界」などと言っている人を見かけましたが、直訳すれば「最小検出濃度」であり、MDCの定義に よると、これ以下だと誤検出率が5%以上になりうる検出濃度という意味のようです。5%以下か以上かは程度問題であり、考慮する必要はあってもMDC未満 の検出値を無視していいとは思いませんし、決して検出不可とか検出値ゼロという意味ではありません。またデータベースの結果を時系列に並べ替えて気づいた のですが、MDCは1992年以降の統計にしか書かれていません。最後に、誠意と根拠をもってご指摘いただいた方々とは別に、原子力村の人たちが「デマ」 という言葉を使って必死に情報攪乱していた(おまけに東大の大先生?が単位間違えてこの記事を否定してた)ようですが、普通の人たちの良識を信頼します。


■ 追記2:検出結果の一部を公表していない政府文書について


米国EPAがPDFファイルで3・11以降の観測データをまとめて公表していることを知りました(以下、PDF資料)。それでPDF資料とEPAの元のデータベースの結果にズレがあること、正確に言えば、PDF資料から欠落したデータがあることが分かりました。例えばカリフォルニアのウラン238については、PDF資料では2つの検出値データ(0.000014pCi/m3と0.000019pCi/m3)のみが公表されていて、これらは私がダウンロードしたEPAデータの中にも見つかりました。しかしEPAのデータベースにはもう一つ「0.0000186pCi/m3(3月25日)」という検出値データがあるのですが、これがPDF資料には欠落しています(MDCは他のデータと同じ)。他にもPDF資料からの欠落データがいくつも見つかりました。要するに一部のデータを抜かして公表しているのです。プルトニウムについてもPDF資料ではすべて「ND」と公表されていますが、やはりEPAのデータベースを見る限り検出値は出ています。つまりこの「ND」とはゼロを意味するものではなく、単に「未検出」ということにしたという意味でしかありません。もしも何らかのからくりでプルトニウムの計測値を「ND」にするという政治的決定があるのであればそれはそれで興味深いですが、私としては海外の専門家がデータベースに値が隠されていると述べていたことを思い出して、一番元となるEPAデータベースを直接調べ、この記事に書きました。官僚のフィルターを通した資料よりも元の生データが一番信頼できるということは言うまでもないでしょう。


■ 追記3:福島由来であることについて


私が元データを集計する際に重視したのは、3・11前と後を比較して増えているか、どこでどの程度増えたか、という事実です。米国で観測された値の絶対値が微量だから取るに足らないか否かといったことや、かつてネバダ州などで何度も核実験をやって放射能をまき散らかしていた頃と比較して今回の検出値がどうかとか、そういう関係ない議論はこの記事では問題にしていません(wikipediaによれば米国が核実験を行っていたのは1945年から1992年まで。2011年3月31日の「新型核実験」については、実験が行われたニューメキシコ州で大幅な上昇が見られなかったことから少なくとも環太平洋諸州での大幅な上昇の説明にはならない)。大事なことは、プルトニウムやウランが3・11後に突然増えたということ、その量が過去20年間のパターンからして異常であること、地理的に日本からの距離が近い環太平洋諸州で大幅な増大が見られたこと(日本に近いほど大きな値を示したこと)などから、福島原発から飛んできているという判断ができ、それは日本の人々にとって極めて深刻な事実を示唆するものだと考えました。

多くの人にこの深刻な事実を伝えていただけたらありがたいです。


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