日本政府はより精密な放射能予測システムであるSPEEDIの情報をたった一回公開しただけで後は隠し続けている。そうこうしている内にすでに海外の機関(ドイツ気象庁など)が放射能予報をリアルタイムで公開し始めたため、最も情報を必要としている日本人が海外の機関に情報を頼らざるをえないという事態が続いてきた。今回も一番求められているSPEEDIではなく、IAEAから注文があった気象庁のデータのみを公開した形だ。放射能被害防止の観点からSPEEDIは事後的・散発的にではなくリアルタイムで常に公開しなければ意味がない。それを情報公開しない日本政府は人命軽視と言わざるをえない。政府は予報値なので確実性がないというくだらない言い訳をしてきたが、どんな天気予報も予報値であり、単に隠そうとしていると理解するしかない。
以下は公開された気象庁の予報である。これは福島第一原発から放出された放射性物質1ベクレルあたりに対しての飛散濃度の分布予報である。分布図中の数値は希釈度を示しており、福島原発からの継続放出量1Bqあたり、例えば「-1」なら10分の1Bq、「-3」なら1000分の1Bq、「-5」なら10万分の1Bq、「-10」なら100億分の1Bq、「-13」なら10兆分の1、となる範囲である(継続放出量とはその量の放射能が放出され続けるという計算上の仮定)。大まかに言えば、一番中心の円内が高濃度、二番目の円内が中濃度、一番外側の円内が低濃度と考えればいい。下記はヨウ素131のみの予報値であり、他の放射性物質については公開されていない(一部セシウム137の予報あり)ため、他の放射能も似たような拡散分布になると想定するしかない。各GIFの最後の画像だけは空間濃度(飛び散ってる放射能)ではなく降下濃度(降り積もった放射能)の予測。都道府県別の実際の新規降下量は事後的に文科省ホームページで公開されている(都道府県別放射能累積降下量については本ブログの別記事を参照してください)。
3月11日の放射能飛散予報(一番上の画像)に注目してほしい。福島原発周辺レベルの1倍から1000分の1倍というとてつもなく高濃度の放射性物質が東北から首都圏まで飛んでいた可能性がある。文科省による放射性物質降下量の情報公開は3月19日分からなので、これまで事故後数日の放射性物質飛散状況についてはほとんど情報がなかった(マスコミはほとんど意味のない空間上の放射線量の話ばかりしてきた)。深刻な体内被曝が懸念されうるこうした予報を知りながら今の今まで黙っていたとは、当局は本当にどういう神経をしているのか。この問題は徹底的に追求されるべきだ。
4月4日の放射能飛散予報(一番下の画像)によれば、現在、中部・西日本全域にも放射性物質が飛散していると思われるため、これらの地域でも呼吸による体内被曝や水道水・食品の放射能汚染濃度に注意が必要となる。
3月11日 9:30 からの放出分

3月12日 15:50 からの放出分

3月14日 18:15 からの放出分

3月17日 2:00 からの放出分

3月20日 9:00 からの放出分

3月23日 22:30 からの放出分

3月26日 17:00 からの放出分

3月30日 12:00 からの放出分

4月2日 16:45 からの放出分

4月4日 7:14 からの放出分

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