※東日本に集中する日本の主食米の生産:農林水産省のサイトより
- いいかげんちゃんとしよう日本
「放射能偉い、差別しない、逃げられない」と歌う人がいる。放射能はあらゆるものに入り込む。水、茶、牛乳、野菜、きのこ、海藻、魚、牛、豚、卵、そして麦と米。原発が日本のすばらしい食を台無しにしてしまった。外食前にいちいち産地情報をぐぐる。妊婦からはセシウム母乳、子供からはセシウム尿。スーパーには放射能に汚染された疑いのある食品があふれ、産地表示もあてにならない。この悪夢を当たり前の日常にしてはいけない。現実に目を背けて集団逃避していてはいけない。今私たちが最も必要としているもの、そしてこの国が最もやろうとしてこなかったことは、きちんとした食品検査と誠実な表示だ。
原発災害被害の主役は、飲食品を通した長期低線量内部被曝である。空間線量や外部被曝は作業員や福島の一部の方々以外にとっては主な脅威ではない。呼吸による被曝はマスクで防護できるが、食べ物は表面を洗ったところで中に入っている放射能は排除するすべがない。だから犠牲を最小にするには、食品検査にできる限りの資源をつぎこみ、汚染された飲食品の流通を徹底的に除去しつつ、産地や放射能濃度を正確に表示するルールが必要だ。
一番大事なことに注目しよう。今日本にどれだけの検査機器があり、どれだけの人員が担っているのか、そして1日どのくらいの数の食品検体が検査されているのか。史上最悪の原発災害で日本中が放射能まみれになっているのに、ほとんど311前の検査体制のままだ。機材と人員が絶対的に不足しているため、検査できるサンプル数が少なすぎて、ほとんどの放射能汚染食品は全国に流通している。検出された汚染食品など氷山の一角に過ぎない。千葉県柏市内の通学路から5万ベクレル/kg(342万ベクレル/m2:チェルノブイリで言えば強制移住のさらに上の立入禁止ゾーンのレベル)が検出されたように、同じ地域でも全く異なる値が出るのだから、農作物もわずかな検体を調べただけで安全だとは絶対に言えない。「検出されていない=安全」ではないということを理解し、家族や友達に伝えよう。現状の検査体制から考えれば「検出されていない=計測していない」と考える方が適切だ。
本気でまともな食品検査をするには、それ相応の財源が必要だ。この経済大国で、電力会社や原発にかかわってきた大企業がそれぞれ兆円規模の内部留保をもち、毎年5000億円の原発関連予算という無駄を続け、膨大な資本をウランの輸入・濃縮等で海外に流出させ、米国債を助けるためにホイホイ何兆円も出す一方で、被曝者への十分な補償や必要な食品検査ができないとはどういうことか。やれないのではなく、やろうとしていない、資金の使い道が狂ってるということだ。事故から5ヶ月が経ってもこの国はいまだに命を守ることには不熱心だ。政府・与野党・知事・県議・電力業界・経済界・大手メディア・御用学者がそろいにそろって、賠償金を抑制して反原発世論を押さえ込むために、安全デマでリスクを過小評価し、根拠もなく「風評被害」を騒ぎ立て、汚染情報を隠し、避難させるべき人々を見捨て、ゆるすぎる規制値をでっち上げ、被害の我慢値でしかない規制値を安全値であるかのように宣伝し、絶望的に少ない食品サンプルしか検査せず、産地を偽装し、やらせで世論を偽装し、批判する人々を税金を使って監視し、電力不足デマや首相降ろしの茶番劇を繰り返して市民の視線を攪乱する、といった圧政を続けている。人々は手に取った食品が本当のところ放射能に汚染されているのかどうかという一番知りたい情報にアクセスできず、知らないうちに内部被曝を蓄積させられている。染色体の長期継続的破壊を強いることはれっきとした傷害・殺人である。日本の人々はいま、放射能だけでなく、それを大衆に食わせようとシステムを操作しているパワーエリートと闘わなければならない。彼らの暴力を批判せずに受け入れてしまっている有権者(特に年配男性)にも道義的な加害責任がある。
私たちは原子炉のメルトダウンをどうすることもできないが、民主主義のメルトダウンを食い止めることはできる。2020年代に後悔しないため、子供達やあなた自身を守るために、食品検査の機材と人員を大幅に増やし、正確に検出値や産地を表示しろ、と意見を書こう!
- 「流通している食品は大丈夫」は大ウソ
政府のどの資料にもだいたい書いてある言い回しだが、代表として食品安全委員会の「放射性物質と食品に関するQ&A(6月13日更新)」を見てみよう。
Q:流通している食品は大丈夫なのですか?
A:「暫定規制値」を上回る食品については、食品衛生法により、販売等を行ってはならない旨、規制されています。また「暫定規制値」を超える食品が地域的な広がりをもって見つかった場合は、当該地域の食品について「出荷制限」や「摂取制限」が指示される仕組みになっています。
Q:食品衛生法に基づく暫定規制値を超える食品を摂取してしまった場合に、健康への悪影響は生じるのですか?
A:食品衛生法に基づく暫定規制値を超えた食品は、出荷停止の扱いとなり、市場に出回らないようになっています。
※下線は大鬼
ニュアンスとしては大丈夫と思わせるような口ぶりだが、決してそう書いてあるわけではないことに注意しよう。「暫定基準」がそもそもデタラメだという点および放射能に安全な値などないという点は当ブログでは何度も書いてきたのでここではさておくとして、もう一つ肝心なツッコミどころがある。すべての説明の前提が「見つかった場合」であり、その見つける能力については一切触れていないということだ。汚染食品を見つける能力、つまり検査体制が貧弱であれば、どんな規制・制限を設定したところで汚染食品は必ず流通する。「市場に出回らない」のは規制値を「超えるものすべて」ではなく「超えたことが判明した」食品でしかないが、上のようにさらっと書かれれば出回っているものがみんな規制値を下回っているかのように多くの人が受け取ってしまう。「有能」な官僚による実に巧妙な言葉のマジックであるが、東大を出てこんな反社会的作文をしているのは完全な才能の無駄遣いである。
- ベラルーシは1日3万以上の食品サンプルを検査、日本では最も検査体制が充実している茨城県でも1週間10サンプルが限度
NHKスペシャル「広がる放射能汚染」第2回(2011年7月3日)より文字起こし(一部要約)(36:00あたりから)
※は大鬼のコメント
全国でも検査態勢が充実している茨城県。4台の装置を24時間体制で使い、農産物を検査できるのは週に平均10サンプル程度。現在の体制では新たな品目に対応するのは難しい。
茨城県農林水産部・中野一正次長「本当は全品検査やりたいっていうのがあるんですけども、正直いってキャパシティの問題もあってそれはできない」
浮き彫りになった食品検査の限界、国はこの問題をどう考えているのでしょうか。
厚生労働副大臣・大塚耕平「全品検査できるわけじゃないんですね、サンプリングですから。まあそういうふうに考えると、規制値を超えたものが全く流通していないということを残念ながら我々も確信できる状況ではありません」
※いや、聞きたいのは、政府がなぜサンプル数を増やす最大限の努力をしようとしないのか、なんだが。
チェルノブイリ原発から50km、ベラルーシ共和国南部のストレリチェボ村。ベラルーシ政府による手厚い放射線対策のもとおよそ900人が暮らしています。事故直後、放射線量は年間20ミリシーベルトを越え、政府は土壌を入れ替えたが、25年経っても、年間1.8ミリシーベルト、1ミリを切っていません。
村に住む、シャランコさん一家、妻マルタさん25歳。近所の農家からもらった野菜と牛乳をもって、ストレリチェボ小学校へ行き、「放射線の検査をおねがいします」。ベラルーシ政府は汚染地域にあるほぼすべての学校に放射線の測定器を配置、物理の教師に訓練を受けさせ、無料で検査をする態勢をつくりました。「25.72ベクレル、安全基準値の4分の1です。」
さらに市場に出回る食品についても検査体制の充実が図られてきました。今では全国500を超える施設で牛乳や肉類・野菜など、1日平均3万を越えるサンプルが検査されています。
マルタさんの息子「きのこやベリーは避けて、検査された牛乳や肉を食べています。安全に暮らす方法があるから、ここで住んでいけるんです」
※日本との差は歴然。検査された食品しか食べません!日本でも早くそう言えるようになりたい。
こうした対策が可能になった背景には、国の強いリーダーシップがありました。国家チェルノブイリ対策委員会、その国家プログラムに当てられる資金は国の予算の2割に昇ります。
委員会のリシューク副局長「地域の人たちが働いて健康に生活するという当たり前のことを可能にするだけでも、あらゆる労力と資源を集中しなくてはなりません。」
※日本の予算規模なら1割使わなくてもベラルーシ以上のことができるはずだが・・
最大の課題は子供の健康、体内にある放射性物質を測る特殊な装置を町や村の診療所に設置し、すべての子供の検査を定期的におこなっています。検査だけでなく治療も将来にわたって無料です。マルタさん「子供の健康は親の力だけでは守ることができません。ありがたい制度です。」
※国が守ってくれないなら自分で守るしかないっていう悲痛な言葉を耳にすることがあるけど、やっぱり食品の汚染から逃れるのは自助努力では無理があり、制度をどうにかしないといけないと思う。体内被ばく測定や無料の医療補償をきちんとやる政府なら予防つまり食品検査に当然熱心になる。日本はどちらも適当にすまそうとしている。
国営解体企業社長「放射線との戦いには、忍耐と努力、そして財源が必要です。25年が経っても重い荷を背負い続けなければならないのです。」
総力を挙げて放射能汚染と闘うという強い意志、今の日本政府から感じられないものが見えてきました。
- 1日平均44検体:日本全国の食品放射能検査機関と検査頻度について
ベラルーシでは500の機関が毎日30000検体の食品を検査し(ちなみにベラルーシのGDPは日本の100分の1)、加えて各学校で持込検査ができるとのことだが、日本で食品放射能検査をしている機関はどのくらいあるのか。大鬼にはまとまった資料を見つけることができなかったが、多少のヒントは得た。農林水産省のHPには、輸出食品の放射能検査ができる機関として25機関あげられている。厚生労働省の資料には測定機器を備えた主な試験研究機関として39機関あげられているが、食品放射能検査が可能な厚生労働省の関係機関としてはわずか6機関しか書かれていない。ジェトロのHPによると、検査対象が「全般」(すべてが食品検査を行っているわけではない)なら35機関、「食品」なら13機関あるという。さらに県・市の衛生研究所(または衛生センター)といった名前の機関が人口の多い自治体を中心に全国合計で79機関あり、その一部がかなりの検査を担っているようだ。民間企業でも食品検査を受託できると宣伝しているものがいくつか見つかった。以上のことから現在国内で機能している食品放射能検査機関は全部で100機関にもならないのではないかと思う(正確な数をご存じの方がいれば教えて下さい)。
消費者庁によれば、検査を依頼する側(自治体など)の検査頻度は基本的に週1回程度という。神奈川県でいえば、3月21日から8月4日までの135日間で合計で250検体を検査、週平均13検体程度だ。135日間で神奈川県民が買った食品の総個数は見当もつかない。もちろん生産者サイドでの出荷前のサンプル検査や、中にはメーカー・店舗独自に検査をしているところ(東都生協など)もあるが、全体からすればほとんど検査していないと言えるようなサンプルの少なさだ。全国的統計では農水省の農産物検査結果ページによると、静岡から岩手までの15都県の合計で7月中に検査された食品は1363検体、1日あたり平均44検体(1日1県あたり2.9検体)である。仮に茨城県のように4台24時間フル稼働している機関が全国で100あるとしても1日平均57検体程度。お話にならない。
- まるで“底の抜けたザル”:基準値も検査も絶望的
週刊朝日「終わりなき放射能汚染:じわじわ広がる土壌・海水汚染 食品安全検査は機材も人も足りずにお手上げ」(2011年6月10日号)より抜粋 ----------
自治体から検査の委託を受ける民間検査機関の担当者はこう話す。「ほとんどの農作物が検査を受けずに市場に出ている。まるで“底の抜けたザル”です」
原因は圧倒的な検査機器と専門スタッフの不足だ。
厚労省が検査への使用を薦めている「ゲルマニウム半導体核種分析装置」は冷戦時代、核の脅威に備え、当時の科学技術庁が各都道府県に購入を指導したが、とても現在の需要に追いつく台数ではないという。
1台約1500万円と高価にもかかわらず、震災後は平時の5倍以上の購入申し込みがあり、「納期まで少なくとも4カ月待ち」(販売代理店)という状況になっているのだ。
魚介類の放射能検査の中心的存在である「水産総合研究センター」(横浜市)には、事故後、自治体や漁協から検査依頼が殺到している。同センターは分析装置を6台保有しており、約10人の専門スタッフがフル稼働で検査にあたっているが、前処理を含め、一つの検査に3-4時間かかるため、1日に4検査が限度だという。しかも、「魚は足が速いため、検査結果が出る前に、同じ場所でとれた魚は消費市場に流れている」(漁協関係者)というのが実態だというから恐ろしい。
分析装置を2台所有する埼玉県の担当者も、ホウレンソウなど数種類を週に1度、検査するので手いっぱいだと嘆く。「水道水の検査を優先しているので、農産物は民間検査機関に依頼している。だが、民間機関もすでにキャパをオーバーしていて、これ以上、品目や検体数を増やすことはできません」。
厚労省が定めた「暫定基準値」そのものが問題だと指摘する研究者もいる。美作大学大学院の山口英昌教授(食環境科学)はこう憤る。
「セシウムの基準値で上限とされた500ベクレルという数字は、野菜などを1年間摂取し続けても、セシウムの総被曝線量が5ミリシーベルトを超えないという根拠に基づいて算出されている。しかし、一般人の年間被曝量の上限は1ミリシーベルトに過ぎない。なぜ突然『5倍浴びても大丈夫』となるのか」「セシウム137の半減期は30年。チェルノブイリ原発事故から23年が経過した2009年にスウェーデンから日本に輸入されたキノコが基準値を超えていたため、輸入禁止になったこともある。数十年単位で考えなければなりません」
琉球大学の矢ケ崎克馬・名誉教授(物性物理学)も言う。「『基準内であれば食べてもいい』というのはまったくの詭弁。国家によるダマシです。少量であっても放射線が遺伝子を傷つけることは間違いない」---------
- 厚労省に問い合わせてみた
厚生労働省のデマ冊子『妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします』に対し、5月に以下の質問をしてみた(厚労省質問フォームより送信)。
【大鬼の質問】
1ページ:「考えられません」「を考えた基準」の科学的根拠を教えて下さい。BEIR・2005年報告への反論があれば証拠を提示下さい。
2ページ:水道水について暫定基準はWHO基準よりもゆるいですが、科学的にこの基準で大丈夫と言える根拠を示して下さい。
3ページ:「わずかな値です」の放射線量とはガンマ線空間線量のみですね。吸い込んだ場合の体内被曝についてはどう考えますか。また雨について「心配しすぎる」具体例を示してください。
4ページ:赤ちゃんに対する暫定基準値が絶対に安全といえる科学的根拠を示して下さい。また「検査が行われ」ているのは流通する食品全体のうち何%ですか。
最後に、放射能を同意なしに摂取させて被ばく量すら測らせないことは、憲法で定められた基本的人権を侵害する行為です。私たちは体内被曝を監視・防止するため、第一に体内被ばく量検診(ホールボディカウンタ車とアルファ線・ベータ線核種を測る排泄物検査)を全国で実施すること、第二にすべての食品・飲料に核種ごとのベクレル表示を義務づけることを求めていますが、実施を検討していただけるか、否の場合はその理由を答えて下さい。
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【厚労省の回答1】
食品中の放射性物質に関する暫定規制値につきましては、原子力安全委員会が、国際放射線防護委員会(ICRP)定めた、飲食物摂取制限に関する指標を食品衛生法上の暫定規制値としています。この暫定規制値の基となった原子力安全委員会の指標値は、1年に許容できる線量及び成人、幼児、乳児(赤ちゃん)のそれぞれについて放射能の影響の度合いと我が国の食品摂取量等を基に数値を算出し、その中から最も厳しい値を指標値として設定しています。このため、乳児にも配慮されたものと考えております。
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課
【厚労省の回答2】
メールは関係部署へ送付しておりますが、「最後に」以下の「第一に・・・」及び「第二に・・・」は当省においてお答えすることは困難ですので、ご了承願います。「第一に・・・」の部分は文部科学省、「第二に・・・」の部分は消費者庁が所管と思われますので、一度そちらへご質問いただけないでしょうか。大変申し訳ございませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
厚生労働省大臣官房総務課行政相談室
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BEIR-VIIまで明記して厚労省の「科学的」見解を問いただしたのに、原子力安全委員会がそう決めたからというだけで、自分たちで検証した科学的根拠などないという回答だ。サンプル数については完全スルー、この話題には沈黙らしい。
回答2について、大鬼はあくまで厚労省が人々の命と健康に関する中心的な責任を担うべきものと考える。厚生労働省健康局の所轄事務は「保健所等を通じた地域保健の向上」。地域保健法には、国の責任として「地域保健対策に係る人材の養成及び資質の向上に努めるとともに、市町村及び都道府県に対し、前二項の責務が十分に果たされるように必要な技術的及び財政的援助を与えること」(第3条)とある。さらに第4条でははっきりと厚生労働大臣の責任として、「保健所及び市町村保健センターの整備及び運営に関する基本的事項」や「地域保健対策に係る人材の確保及び資質の向上」を含む地域保健の「基本指針」を「遅延なく」定めることと書かれている。保健所の日常的業務の所管は地方公共団体だが、基本指針と人事に厚労省は責任をもっている。第6条と7条には、保健所の役割として、地域保健の向上、とくに「食品衛生」(6条3項)・「衛生上の試験及び検査」(6条13項)・「その他の疾病の予防」(6条12項)が定められている。厚労省は食品検査や体内被ばく測定などの放射能対策を推進する方針を打ち出し、全国の保健所で放射能検査が実施できるように機材・人員を確保すべきだ。311前のように特殊な限られた数しかない機関が放射能検査を担うのでなく、全国的な国家プロジェクトとして食品検査を位置づけるべき時だ。なお食品検査にかかるコストは原発災害がなければ本来必要なかったものであるから、原発関連産業が相当の負担をするのが道理であり、原発で潤ってきた企業には懲罰的な課税を実施すべきだ。
ちなみに『食品と放射能Q&A』というデタラメ冊子(市場に出回っているものは基本的に安全との主張)を出している消費者庁にも同様な質問をしたが、回答は一切なかった。
- 産地偽装にご用心
全品検査どころか食品の1%も検査がされない現状では、次善の策として産地も判断材料にするしかない。風評被害なるものがあるとすれば、それは貧弱な食品検査体制によって多くの人が産地で判断することを強いられることで、結果的に安全かもしれない食品まで売れなくなる、ということだ。疑わしいものを危ないと見なすのは、利益より命を守らなければならない生活者にとって極めて真っ当な判断だ。厳密に言えば全品検査をして含有放射能がゼロであることが証明されない限りは風評被害は存在しえないのであって、消費者側が何を危険と見なそうが文句を言われる筋合いはない。
ただ「福島産」でなければ安心といった思い込みには注意が必要だ。福島以外でもホットスポットは多くの県に存在している。土壌汚染の分布から考えれば、例えば千葉県北部産の方が福島県西部産よりも汚染されている可能性も十分ある。
もっと困ったことに産地情報そのものが信頼できない。ブレンドして産地を特定せず「国産」として売るだとか、別の場所に移動して処理し「他県産」として売るといった、実質的には産地偽装と言えるようなことが行われている(もちろん関係者は偽装ではないと言い張るだろうが)。金が何よりも大事という社会の病理だ。産地は誰もがだまされないような形で正直に全部表示することを法的に義務づけるべきだ。
水産物の産地表示は、JAS法で表示義務はあるものの、「水域名又は地域名(主たる養殖場が属する都道府県名をいう。)を記載。水域名の記載が困難な場合は水揚港名又は水揚港が属する都道府県名を記載することができる。」とされている。つまり例えば福島県に近い水域で獲れても千葉県で水揚げすれば「千葉県産」ということになる。では「困難な場合」とはどういう場合なのか。誰がそれを証明するのか。百歩譲ってそういうケースがわずかにあるとしても、獲れた水域ではないことくらい正直に書かせるべきだろう。分かっている事実を記載することが困難な場合などありえない。とにかくこの法規定を知ってから大鬼は、国産の魚介類の産地表示に全く意味を見いだせなくなった。
肉類の産地にも落とし穴がある。「スケープビーフ」とまで言われ汚染食品の代表格となったセシウム牛問題で明らかになったことは、汚染地域のわらが流通すれば、牛の産地がどこであれセシウム牛になるということと、セシウム牛自体が福島から他県に売買されて移動している、ということだ。牛の場合、個体識別ができるためその気になれば移動履歴をトレースできるとのことだが、ほとんどの人はお店で表示されている産地だけを見て購入しているのでパッケージに表示されなければ意味がない。エサが何県産だったのかも通常は知ることができない。
さらに悪いことに、個体識別のできないブタなども汚染地域から全国に散っていた。
女性自身(2011年8月9日号)「福島避難区域の豚1万頭は『他県産』に化けて全国の食卓へ」より抜粋 ------
7月15日、熊本県が豚から初めて放射性セシウムを検出したと発表した。牛肉だけでなく、豚肉までセシウムに汚染されたものが全国各地に流通していることが明らかになったのだ。
地元紙記者は「今回、解体された豚は、福島県川俣町で飼育されたものなのです」と語るが、福島県の養豚組合の担当者は「牛と違い豚には個体識別番号はありませんので、出荷地が生産地になってしまいます」と説明する。つまり、移送された豚は「福島県産」とはならず、食肉として出荷された地域からの「他県産」となってしまうということだ。
前出の養豚組合の担当者は「これまで緊急時避難準備区域と計画的避難区域から約1万頭が県外へと移動しています。出荷されたのは、主に長野県や群馬県、新潟県、熊本県など。いずれも避難先の県産として出荷されています」と明かす。
政府や県はこの事実を知った上で、豚の県外移動を認めている。食卓を守るために消費者が頼るのは産地表示。だが、「○○県産」だから大丈夫、というような判断は信用できなくなっているということなのだ。
(抜粋おわり)-----------
読売によると、この記事の「『熊本産』豚肉からセシウム検出」という見出し(ネット版にはない)に対して、熊本県が「事実と異なる」として抗議し、女性自身は8月16日号で「正しくは『福島県で飼育された豚から移送先の熊本県でセシウム検出』です」と「訂正」したという。税金を使ってスパイ行為をしているエネ庁からのたれ込みでもあったのだろうか。この手の報道だけは熱心な読売も含め、いかにも業界利益優先の原発容認派らしいナンセンスな揚げ足取りだ。何がどう事実と異なるのか?熊本県が抗議したのは熊本産豚からセシウムが出たという誤解を招くとのことだが、記事には「熊本産豚」ではなく「『熊本産』豚」と書いてあった。そこが重要である。日本語で言葉を「」に入れると"いわゆる"とか"本来そう表現すべきでないが"といった含意を伴うという常識を理解できていて、1回でも本文を読めば、福島県産の豚が熊本に移動していずれ「熊本産」として出荷される(そのような豚が全国で1万頭もいた)ことがこの記事のポイントであることは誰にでも分かる。産地表示が信頼できないということを正しく追求した記事だと思う。
- 結論:海外産を食う!
検査もろくにしない、産地は偽装する、規制値はゆるすぎる、これでは国産の食べ物を食べるなと言われているようだ。食品放射能汚染の問題は今後何十年も続くもので、原発事故が収束に向かえば終わりといった話ではない。情報をもたない人たちや諦めた人たちは食べ続けるのだろうが、逃避したところで、放射能は摂取すればするほど癌・遺伝子障害等のリスクが増え、安全なしきい値も存在しない、という科学的事実からは逃れられない。日本の食べ物が大好きな大鬼としてこれだけは言いたくなかったが、残念ながら現状では輸入食品で代替できるものはそうした方が無難だと言わざるを得ない。早く日本の食べ物を安心して食べられるように、声を上げよう!
- とはいえ・・・
食べないわけにはいかないものもあるので、個別の食品や産地の情報を追っていくしかないわけだが、情報が毎日山のように出てくるので大鬼は正直お手上げ状態。そういう時は人に助けてもらおう。そして自分も情報を出して助け合おう。がんばって情報をまとめてくれたり問い合わせたり測定までしてくれている人達に感謝。勝手に紹介しておく。
子供を守ろう Save Child:食品放射能関連ニュースまとめ
atmc-Tokyo:食品放射能関連ニュースまとめ
木下黄太さんのブログ:いろんな人がメーカーに問い合わせた情報をシェアできる
OK Food:様々な商品・工場の産地などのまとめ
<市民放射能測定所>
日本版クリラッド、市民放射能測定所がついに福島で設立された。クリラッドはチェルノブイリ後に原発大国フランスの政府が情報隠蔽を続け、それに怒った市民達が設立した民間非営利の放射能測定機関だ。市民放射能測定所は日本全国の都道府県に1つずつ測定所をつくることを目標にしている。食品検査もすでに開始している。こうした利権に囲われていない独立の測定機関が存在することは、電力会社・政府による情報隠蔽・情報操作への重要な歯止めとなる。食品検査・内部被曝検査・土壌検査などは物量勝負であり公的な責任において行われるべきであるが、いわば監査機関としての市民放射能測定所の取り組みに大いに期待したい。
<食に関する週刊誌の気になる記事>
週刊現代
2011年8月6日号
牛肉だけじゃない:新聞・テレビがパニックを恐れて報道を自粛する「いま福島県で起きていること」
ICRPの健康基準なんか、信用してはいけない
2011年7月30日号
わが子のオシッコからセシウムが出て
あなたの食卓にセシウム汚染牛肉
週刊朝日
2011年8月12日号
セシウム汚染「どのブランド牛なら安心?」産地の対策徹底調査
甘辛ジャーナル/セシウム牛肉問題の「責任者」を名指しするべきでは?
2011年8月5日号
「おたくの肉は大丈夫?」セシウム全国へ、百貨店、料理店などを直撃
AERA
2011年8月1日号
宮城産として仕入れた、給食から見つかった汚染牛肉
2011年7月25日号
検査せずに千頭を出荷セシウム牛肉を見逃した農水省の罪
2011年7月18日増大号
魚で進む「放射能濃縮」汚染された海で何が起こっているのか
ユッケの5倍怖いレバ刺し「肉食女子」はどうする
サンデー毎日
2011年8月14日号、
イオン、ファミリーマート、三越伊勢丹:全国30社放射能対策、「独自検査なし」は23社
その水は安全ですか?
2011年8月7日号
終わりなき食汚染:「セシウム米」が実る秋
2011年7月31日号
それでも危ないひき肉、モツ、タン
乳業トップ3社直撃「原乳の原産地、放射能対策は?」
セシウム牛、牛乳 安全の「想定外」
2011年7月24日号
「放射能」と闘うニッポンの母
2011年7月17日号
ついに福島の子どもの尿からセシウム
内部被曝に克つ「食の防衛 食の安全工程表一挙公開!
週刊金曜日
2011年7月29日号
地獄への入り口はすでに開いた:9月頃が大変なことになる (水口憲哉)
水産庁のモニタリングデータから:水産物の汚染度を読み解く (中地重晴)
ストロンチウム魚への不安 (片岡伸行)
今、知っておきたい産地表示の落とし穴:アバウトすぎる魚の表示 (垣田達哉)
2011年06月10日号
内部被曝をどう防ぐ?「基準値以下だから大丈夫」はウソ! (矢ヶ崎克馬)
妊娠中の人 授乳中の人 幼児がいる人:親が気をつけるべきことは? (崎山比早子)
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