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2011/04/22(金) 20:06 大鬼
やはり原発は必要なかった。私たちは全く不必要なもののために、多額の税金をつぎこみ、最低の利権集団に権力を握らせ、レベル7の大災害を引き起こし、大地と海を汚し、野菜や魚を放射能まみれにし、25人に1人の子どもをガンで殺すことを容認する基準まで作り、何万年も放射能を出し続ける廃棄物の管理を子孫に押しつける、ということをやってきた。もし3・11でも変われなければ日本は放射能まみれで衰退していくだろう。だが今なら希望はある。

先日公表された環境省「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」報告書によると、日本の風力だけで、原子炉950基分に相当する電力を生み出せることが分かった。日本にはとてつもない量の利用されていない再生可能な自然エネルギーが眠っており、それを有効活用すれば、原発をすべて停止・廃棄しても日本は十分にやっていけるということが、初めて政府の調査から証明された。「原子力は日本の電力の3割を担っている」というお話が原発容認の根拠にならないことが、これを読めば誰にでも納得できるはずだ。

報告書は、再生可能な自然エネルギーとして、太陽光・風力・水力・地熱を取り上げ(日本では最も将来性がある波力は含まれていない)、その「賦存量」(化石燃料でいえば埋蔵量を意味する)だけでなく、「ポテンシャル」(地理的・社会的な制約を考慮して環境省官僚が判断した実際に活用可能な量)を算出している。これは現在の技術レベルで官僚が現実的と考えた範囲内でのポテンシャルであり、社会的条件の変化や技術の進歩などによって上方修正も可能な値である。

報告書によると、風力だけでも以下のようにとんでもない量のポテンシャルがあることが分かった。参照ページ:104-108

陸上風力発電
シナリオ3(風速5.5m/s以上エリア・稼働率26%):6838億kWh/年(原子炉133基分)
シナリオ2(風速6.5m/s以上エリア・稼働率31%):4588億kWh/年(原子炉89基分)
シナリオ1(風速7.5m/s以上エリア・稼働率37%):2258億kWh/年(原子炉44基分)

洋上着床式風力発電
シナリオ3(風速6.5m/s以上エリア・稼働率30%):8009億kWh/年(原子炉156基分)
シナリオ2(風速7.5m/s以上エリア・稼働率35%):2903億kWh/年(原子炉57基分)
シナリオ1(風速8.5m/s以上エリア・稼働率41%):183億kWh/年(原子炉4基分)

洋上浮体式風力発電
シナリオ3(風速6.5m/s以上エリア・稼働率31%):33900億kWh/年(原子炉661基分)
シナリオ2(風速7.5m/s以上エリア・稼働率36%):16222億kWh/年(原子炉316基分)
シナリオ1(風速8.5m/s以上エリア・稼働率41%):2013億kWh/年(原子炉39基分)

風力発電合計
シナリオ3合計:48747億kWh/年(原子炉950基分)
シナリオ2合計:23713億kWh/年(原子炉462基分)
シナリオ1合計:4454億kWh/年(原子炉87基分)

解説:陸上風力シナリオ3の「風速5.5m/s以上エリア」とは、高度80メートル地点で風速5.5メートル以上が見込まれるエリアに風車を設置していった場合の発電量、という意味である。シナリオ1は風が最も強いごく限られたエリア(下記マップ上の赤色部分)にのみ風車を設置した場合であり、シナリオ2はそれよりも少し風が弱いエリアも含めた場合(下記マップ上の赤・黄色部分まで)、シナリオ3はさらに設置エリアを拡大した場合(下記マップ上の赤・黄・緑色の部分まで)である。シナリオ1は短期的に最優先エリアの風力で得られる発電量、シナリオ3は中長期的に見込まれる全風車からの総発電量、と言い換えてもいいだろう。風は常に吹いているとは限らないので稼働率も考慮されている。シナリオ1のエリアは風が最も安定しているので稼働率をやや高めに想定できるが、エリアを拡大すれば全体の想定稼働率は下がる。

原子力発電の原子炉1基あたり発電量については、このサイトを参考にして以下のように計算した。
2009年の日本全体の年間総発電量=9565億kWh/年
うち原子力は29%=2774億kWh/年
これを原子炉数54で割ると=1基あたり51.3億kWh/年

陸上風力のシナリオ1というのは、陸上で風が最も強く安定している限られたエリア(下記マップ上の陸上の赤い部分)にだけ風車を設置した場合、つまり私たちが最も努力をせずにごく短期間で作れる陸上の風車だけからの発電量であるが、これですら原発44基分に相当するエネルギー(日本の総発電量の4分の1)が生み出せる。もうちょっとやる気を出して陸上シナリオ2に以降する頃には、原発89基分のエネルギー(日本の総発電量の約半分)が作り出せている。何度も言うがこれは陸上の風車だけの発電量である。すべての原発をごく短期間で全部停止しても供給電力は一切減らないことが分かる。

シナリオ3の陸上・洋上風力の合計発電量は現在の日本の総発電量の5倍、原発950基分つまり全世界にある原発435基すべての発電量の2倍を上回る量である。これは現在の技術レベルで可能な、稼働率なども考慮された値であり、発電量を算定したのは控えめな数値しか出さない国家公務員の専門家である。今後普及が見込まれるらせん状回転棒を使った風車(風速50メートルの台風にも耐えるし鳥や低周波の問題も抑えられる)なら従来のプロペラ式風車の約4倍ものエネルギーが生み出せるが、ここで計算されている発電量はあくまで従来型の風車を想定した値である。自然エネルギーが「貧弱・安定しない・時期尚早・効率悪い」といった議論は利権集団がまき散らしてきた根も葉もない嘘である。「発電単価」でも自然エネルギーは原子力より全然安い。もともと原子力の「発電単価」とは、何万年も放射性廃棄物の管理を後世に強いるコストや頻発する事故への賠償コストなどを除外したインチキな値であったが、インチキしても負けているという有様である。私たちは思い込みをやめて科学的事実を受け入れ、圧倒的な自然の恵みを再認識すべきである。もしも私たちが本気を出せば、風力だけで原発と化石燃料火力をすべてやめても十分おつりが来る発電が可能だ。

もちろんこれはあくまで可能だという意味であって、風力だけで不必要な電気まで作るべきだと言っているわけではない。持続可能性と安定性を最大化するエネルギー源は、枯渇しないだけでなく多様で地の利を活かしていることが望ましい。特に国土の10倍以上の洋上面積をもつ日本では、洋上での太陽光・波力・風力を組み合わせたハイブリッド発電が合理的選択となる。これは海に囲まれた島国、日本ならではの自然との共存のあり方であろう。さらに火山国であるという特質を活かした地熱発電や、水が豊富にある地の利を活かした水力発電を、バランス良く組み合わせていくことが望まれる(なおバイオマスは再生可能とするためには植林を併用しなければならないようなので当ブログでは再生可能エネルギーに含めないことにした)。


◇ 風力発電で高いポテンシャルのあるエリア
※風速:赤>黄>緑、上記シナリオ1は赤のみ、シナリオ2は赤と黄のみ、シナリオ3は赤・黄・緑のエリアに風車を並べていった場合の発電量
※色のついた部分はあくまで最も効率の良いエリアであり、色のついていない部分でも風力資源が十分確保できるエリアはたくさんある

風力ポテンシャル_北海道

風力ポテンシャル_東北

風力ポテンシャル_北陸北関東

風力ポテンシャル_首都圏

風力ポテンシャル_中部近畿

風力ポテンシャル_若狭

風力ポテンシャル_中国四国

風力ポテンシャル_九州

風力ポテンシャル_沖縄


<画像をクリックすると拡大されます>


◇ 地熱資源の「埋蔵量」が多いエリア
※53度以上の地熱が見込まれるエリア、熱量・発電量は赤>黄>緑

地熱埋蔵量_北海道

地熱埋蔵量_東北北陸

地熱埋蔵量_関東中部

地熱埋蔵量_中国四国

地熱埋蔵量_九州



マップを見ると、既存の技術でもすぐに大量の電力を作り出せる風力エネルギーは、人口が密集していない地方に有利だということが分かる。特に北海道や東北は、原発依存社会を続ける限り核のゴミ捨て場とされてしまうが、原発をやめて自然エネルギー社会を実現すれば日本最大のエネルギー供給地に生まれ変わる。静岡県は風力資源埋蔵量と大都市との距離から考えると風力王国として末永く栄えることができるが、近いうちに確実に起こる東海大地震の震源の真上に建てられた浜岡原発を即刻停止させなければ、首都圏と名古屋圏を巻き添えにして人の住めない場所になるだろう。これは原発反対か推進かの選択というより繁栄か滅亡かの選択だ。東日本大震災の被災地域もこれまで原発・再処理施設を受け入れる見返りに補助金に依存してきた地方も、再生可能エネルギーの導入によってより地域密着型で持続可能な産業と雇用を生み出すことができる。自然エネルギーを活用すれば資源輸入に無駄な金を使ったり自然に怯えながら綱渡りする必要はなくなる。そのためにも国レベルでは送電線を国有化してエネルギーシフトを国策として進めなければならない。そして毎年何兆円も払ってウランなど発電用枯渇燃料を輸入することや年間4500億円もの原子力予算をやめて、その豊富な資金を再生可能エネルギーの方に振り向けるべきである。

再生可能エネルギーは日本だけでなく全世界のエネルギーを満たせる。ヨーロッパ諸国は再生可能エネルギーへの転換で日本よりも先を行っている。以下は、米国科学アカデミー会誌(2009年6月)掲載論文で算定された世界の風力ポテンシャル(単位は億kWh/年)である。どの国でも自然エネルギーだけで電力需要が満たせることが分かる。例えばアメリカの風力発電のポテンシャルは年間消費電力の23倍にも達している。

年間消費電力 陸上風力ポテンシャル 洋上風力ポテンシャル 全風力ポテンシャル 全風力/全消費電力
米国 38159 740000 140000 880000 23.1
中国 23985 390000 46000 436000 18.2
ロシア 7796 1200000 230000 1430000 183.4
日本 9741 5700 27000 32700 3.4
インド 4888 29000 11000 40000 8.2
ドイツ 5457 32000 9400 41400 7.6
カナダ 5405 780000 210000 990000 183.2
イギリス 3486 44000 62000 106000 30.4
韓国 3522 1300 9900 11200 3.2
イタリア 3075 2500 1600 4100 1.3

もう自然に反する生き方や科学の誤用はやめ、自然と共に生きるかたちで科学を使おう。この地震大国で一握りの人間を儲けさせるためだけに事故を起こしては放射能をまき散らし数万年も放射性廃棄物で私たちの子孫を無駄に苦しめる原発はすぐに全部廃止して、地球温暖化をもたらす化石燃料を使った火力発電もやめ、安全でクリーンで大量で安くて雇用と均衡発展をもたらす再生可能な自然エネルギーによって成り立つ持続可能な社会を築いていこう。


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