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2011/11/02(水) 05:11 大鬼
文科省によるセシウム土壌濃度の航空モニタリングで、10月中に新たに東京・神奈川・新潟・秋田の計測結果が公表された。東京・神奈川は2011年9月14~18日、新潟・秋田は2011年8月30日~9月28日に計測された。以下はセシウム134・137合計の土壌沈着濃度(Bq/m2)である。ストロンチウム・プルトニウムなど他の放射性核種は含まれない。

<参考までに>
放射能空間線量については、毎時0.11マイクロシーベルト以上だと1年間で年間許容限度とされる1ミリシーベルトを外部被曝だけで越える。土壌汚染については、チェルノブイリではセシウム137の地表堆積(ベクレル/m2)が37000(37K)以上で汚染地域とされ、185000(185K)以上で補償つき任意移住が認められ、555000(555K)以上は強制移住、1480000(1480K)以上は強制移住&立入禁止ゾーンとされた。セシウム134と137はほぼ同量ずつと考えて良い。


広域放射性セシウム汚染マップ

福島から西に向けて伸びる放射能汚染地帯の一部が新潟にもかかっていたこと、また南に向いた放射能雲が東京も汚染したこと、そして県境の状況から考えて長野・山梨・岩手などにも汚染地帯が存在する可能性が高いこと、などが分かる。

文科省航空モニタリング_広域201110


東京都のセシウム汚染マップ

東の葛飾区・江戸川区・足立区・江東区の一部、西の奥多摩・青梅・日の出・あきる野・檜原・八王子の一部から比較的高い濃度が検出された。奥多摩の高濃度地域は原発からの距離が250kmを越えている。WSPEEDIの予測データによれば3月15日前後に東京埼玉を東から西へ高濃度放射性プルームが横断した可能性が高いが、コンクリートの多い大都市部ではセシウムの地表沈着量が相対的には少なく数ヶ月の内に地表から下水などに流れ出た割合が高いと思われる。ただし航空モニタリングで低い濃度のエリアでも花壇・街路樹・グランドなど局所的に高い濃度が首都圏各所で検出されている点には注意が必要である。

文科省航空モニタリング_東京都


神奈川県のセシウム汚染マップ

神奈川県はこれまで計測された都県と比較するとセシウム土壌濃度は相対的には低い。ただし航空モニタリングで低い濃度のエリアでも花壇・街路樹・グランドなど局所的に高い濃度が首都圏各所で検出されている点には注意が必要である。また神奈川県横浜市や逗子市など神奈川県内で相次いでストロンチウムが検出されているように、セシウム濃度が低くても他の放射性核種が同様であるとは限らない

文科省航空モニタリング_神奈川県


新潟県のセシウム汚染マップ

新潟県は南部と東部に汚染エリアが見つかった。とりわけ魚沼産米・岩舟産米の産地から高い濃度が検出されている。そこには原発からの距離が200kmを越える場所も含まれている。

文科省航空モニタリング_新潟県


秋田県のセシウム汚染マップ

秋田県はこれまで計測された都県と比較するとセシウム土壌濃度は相対的には低い。

文科省航空モニタリング_秋田県

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政府がプルトニウム・ストロンチウムの飛散認める:たった100カ所の土壌調査を3ヶ月以上かけて公開
 

 
2011/10/01(土) 06:42 大鬼
文科省の報告(PDF資料)によると、プルトニウム(アルファ線核種)・ストロンチウム(ベータ線核種)の調査は、これまでにたったの100カ所。その極めてやる気のない調査は実は6月に実施されており、3ヶ月以上の時間をかけて9月30日にようやくその結果が一般公開された。プルトニウム238/239・ストロンチウム89/90以外のアルファ線・ベータ線核種については検査は行われていない。

調査の結果、プルトニウムが原発から少なくとも45km地点まで飛散したこと、ストロンチウムが少なくとも80km地点まで飛散したことが確認された。


文科省プルトニウム汚染マップ

文科省プルトニウム検出マップ


文科省ストロンチウム汚染マップ
文科省ストロンチウム検出マップ

<画像をクリックすると拡大されます>


マップ上の緑の点は、核種の比率の分析から異常な比率が見つかった地点、つまり今回の原発災害によるものと明確に推定される地点、という意味であり、そこだけでプルトニウムやストロンチウムが見つかったという意味ではない。マスコミは緑の地点だけに注目しているが、それ以外の地点にも原発から飛んでいないという証拠はない。同じ検出値でも核種比率分析という方法で政府系専門家が原発由来だと判断しない検出値については数値のみが記載されている。また「検出限界」を下回る濃度の地点はすべて「不検出」とされている。

政府系専門家が原発由来と判断するかどうかは解釈の問題であり、すべての人がそれを納得する必要はない。検出値は検出値だ。例えば原発から80kmほどの茨城県北部の計測地点(北茨城市南端)ではプルトニウム239が9.2Bq/m2検出されていて、この値は避難エリア内の多くの計測地点の値よりも高い。政府系専門家らはこれを原発由来だと判断していないようだが、茨城北部で異常なレベルのプルトニウムが検出されている事実はそれはそれとして重大だ。利権や名声ではなく命を守らなければならない一般庶民にとって、解釈論の結論を待っている時間はない。少なくとも80km以上プルトニウムが拡散した可能性を考えて行動した方がいい、私なら同じデータからそう考える。

いずれにしてもこの程度の規模の検査から、全体的な拡散の程度を云々することには無理がある。そしてあまりにもやることが遅い。今回の報告書では「放射性ストロンチウム及び放射性セシウムの沈着量の分布は一様ではないことが確認された」から一部で「追跡調査を行う」としながらも、別の箇所では「今後の被ばく線量評価や除染対策においては、セシウム134、137の沈着量に着目していくことが適切である」として、セシウムばかりに注目していれば大丈夫といった従来の姿勢を崩していないようだ。今後のアルファ線・ベータ線核種の検査の継続および強化については一切述べていない。

まさかこれでおしまい?


追記3:首都圏で相次いで検出されるストロンチウム

ストロンチウム等の猛毒核種についての情報隠蔽もそろそろ限界のようだ。首都圏で相次いでストロンチウムが検出されている。まず神奈川県横浜市港北区の道路脇土と新横浜周辺の噴水沈殿物から(横浜市発表)、そして神奈川県逗子市の小学校の土からも(市議発表)、ストロンチウム(Sr89とSr90)が検出された。また東京都世田谷区の大気中からもストロンチウムが検出されている。東京都は6月に判明していた測定結果を11月1日まで情報隠蔽していたということである。「健康に影響を及ぼす可能性は低い」などと弁明しているが、そうした一判断が測定結果を公開しないことへの正当な根拠になりえないことは誰でも分かる。


追記2:セシウムの濃度だけ測っても他の核種の濃度は分からない

政府は広域ではセシウムの濃度を調べておしまいにしたいようだが、ストロンチウムなど他の核種はかなり異なる飛散パターンを示しており、核種ごとの独自の広域測定が必要なことは明らかである。セシウムと他の核種の拡散パターンが異なることは、以下のようにテルル129mや銀110mのセシウム137に対する割合が一定でないことを見れば視覚的にも容易に理解できることである(資料出所)。ところがこの資料は地域をいくつかに区分することで、あたかもセシウム137とテルル129mの濃度割合が一定であるかのようなグラフを載せている(さすがに文章では相関があるとは書いていないが)。なぜこんなバカげた作業に彼らがこだわったかといえば、セシウムの濃度を測れば他の核種はもう測らなくていいだろう、と言いたかったのであろう。役人や御用学者の知的能力の無駄遣いには心底あきれ果てる。普通の良識ある人間にとってこの調査から読み取るべき大事なことは、地域によってまた核種によってセシウムとの濃度割合が全く違うというシンプルな事実であり、したがってセシウム濃度だけ測ればいいという判断はできないということであ る。私たちはまだ肝心な情報を持っていない。

セシウム137に対するテルル129mおよび銀110mの濃度割合セシウム137に対するテルル129の割合
セシウム137に対する銀110mの割合

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追記1:3号機核暴走・3月15日分WSPEEDI・気象庁データ・航空モニタリング・日本政府プルト検出資料・米国EPAデータを全部つないで考えると謎が解ける!?

ツイッターで北茨城の高濃度プルト239検出について指摘されてはっと思い出した。政府がこそこそ隠していてNHKが一瞬だけ報じた3月15日のWSPEEDIデータ、当ブログでも紹介したあの福島から南向きで関東をえぐるような放射性プルームの軌道だ。後に公式発表された微妙に異なる3月15日WSPEEDIデータを見ても風向き・軌道はほぼ同じ。3号機が爆発した14日分放出分については、気象庁が市民にではなくIAEAに向けて作成した英語の予測拡散マップがあり、そこでも14日から15日まで南向きの拡散進路が推定されている(その後太平洋上は西向きに)。つまり3号機の爆発で出たプルトニウム等が、原発から南に向かい、北茨城あたりでいったん太平洋側に出て、そこから茨城県南部に再上陸して千葉北部そして東京東部や北関東へと向かう放射能雲と、太平洋上をさらに南下してから西へと拡散した放射能雲(その一部がグアムや西海岸にも到達する)に分かれた、という仮説が成り立つように思う。北茨城でのプルトニウム検出や、航空モニタリングに示された鹿島灘から東京方面へと向かう汚染ラインとも整合的だ。3月15日・16日あたりに首都圏を含むこの軌道上のエリアでマスクなしで呼吸していた人には気の毒なことだが。リアルタイムに警報を出し得たのに原発政策擁護のために情報隠蔽に走る政府、そして原発産業を含む日本の政治経済の中枢による巨大な犯罪である。


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2011/10/01(土) 05:20 大鬼
文部科学省が広域で実施している航空モニタリング測定について、当ブログ前回記事以降9月末までに計測された、茨城・山形・福島西部・群馬・埼玉・千葉の各県とそれらを含む広域での放射性セシウム土壌汚染マップをまとめた。

福島第一原発災害の発生から半年以上経ったが、いまだに首都圏全域の汚染状況は計測されておらず、プルトニウム等のα線核種についても広域での計測・情報開示はほとんど進展していない。より差し迫った課題である食品検査の徹底、基準値の厳格化、移住政策などについても日本の政治は冷淡な態度を続けており、誰も望んでいない永田町利権政治や財界の求める原発再稼働・原発輸出推進などに明け暮れている。民主主義の危機といっていいこの状況を大きく変えるには、原発容認派の政治家を大量に落選させるしかない。原発産業と経済至上主義によってこの国の食と環境と安全が台無しにされたこと、これから犠牲となる子供たちのこと、汚染マップを見ながらしっかりと考えたい。

<参考までに>
放射能空間線量については、毎時0.11マイクロシーベルト以上だと1年間で年間許容限度とされる1ミリシーベルトを外部被曝だけで越える。土壌汚染については、チェルノブイリではセシウム137の地表堆積(ベクレル/m2)が37000(37K)以上で汚染地域とされ、185000(185K)以上で補償つき任意移住が認められ、555000(555K)以上は強制移住、1480000(1480K)以上は強制移住&立入禁止ゾーンとされた。セシウム134と137はほぼ同量ずつと考えて良い。


広域汚染マップ(2011年9月30日までの計測分)

文科省航空モニタリング_広域110930

<画像をクリックすると拡大されます>


千葉県の汚染マップ


文科省航空モニタリング_千葉

北部に高濃度汚染地域が集中している。とりわけ我孫子・柏・流山・松戸にホットスポットが多い。また木更津周辺も若干濃度が高いエリアがある。すでに市民による首都圏150カ所土壌調査でホットスポットの存在が明らかにされているが、このマップと茨城県の汚染地図を合わせてみれば、鹿島灘から東京東部や横浜方面に向かって大量の放射能が流れ込んだ形跡がはっきり見えてくる。


茨城県の汚染マップ

文科省航空モニタリング_茨城

福島に近い北部では日立市の一部まで高い濃度のエリアが存在する。南部は鹿島灘から東京方面へと伸びる汚染ラインを中心に広範囲に汚染されている。


埼玉県の汚染マップ

文科省航空モニタリング_埼玉

群馬と東京奥多摩に接している西部エリアと千葉・東京葛飾に接している最東端に濃度の高いエリアが集中している。


群馬県の汚染マップ

文科省航空モニタリング_群馬

今回最も衝撃的だった測定結果がこれ。福島に隣接していない県でもこれほどの高濃度汚染エリアが広がっていた。濃度をよく見ると、群馬県の放射能汚染は原発から30-60kmの福島県いわき市並といってもいいレベルだ。栃木県の高濃度汚染ラインの延長線上にある東部だけでなく、新潟に近い県北部の汚染がひどい。新潟南部といえば日本有数の米の産地がある。貧弱な食品検査ですらすでにセシウム米が多数検出されてきているが、米所の汚染は日本の食の根幹をゆるがす極めて重大な事態だ。また長野県に近い南西部にもホットスポットが点在しているが、そこは原発からの距離がなんと250kmを超えている。


福島県西部の汚染マップ

文科省航空モニタリング_福島西部

これまで会津若松より西のエリアの航空モニタリングデータがなかったので追加された地域。このマップだけでは分かりづらいが、広域マップの方を見ると猪苗代町から只見町へと伸びている汚染ラインが新潟南部を経て群馬北部へと到達しているように見える。しかも汚染濃度は福島西部よりも群馬北部の方が高い。原発からの距離だけが問題なのではないということが改めてよく分かる。


山形県の汚染マップ

文科省航空モニタリング_山形

これまで計測された県の中では最も被害エリアが限定されているが、よく見ると山形市や新潟に隣接する小国町などにホットスポットが存在する。

なお政府が9月30日に発表した80km地点までのプルトニウム・ストロンチウム土壌調査の報告によるとセシウムとストロンチウムの拡散パターンはかなり異なるため、セシウムのみを計測している航空モニタリングの汚染マップで低い濃度が出ている地域でも他の放射性核種の濃度が低いとは限らない、という点には注意したい。


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2011/08/06(土) 18:06 大鬼
農林水産省_米生産量ランキングマップ
※東日本に集中する日本の主食米の生産:農林水産省のサイトより


  • いいかげんちゃんとしよう日本

「放射能偉い、差別しない、逃げられない」と歌う人がいる。放射能はあらゆるものに入り込む。水、茶、牛乳、野菜、きのこ、海藻、魚、牛、豚、卵、そして麦と米。原発が日本のすばらしい食を台無しにしてしまった。外食前にいちいち産地情報をぐぐる。妊婦からはセシウム母乳、子供からはセシウム尿。スーパーには放射能に汚染された疑いのある食品があふれ、産地表示もあてにならない。この悪夢を当たり前の日常にしてはいけない。現実に目を背けて集団逃避していてはいけない。今私たちが最も必要としているもの、そしてこの国が最もやろうとしてこなかったことは、きちんとした食品検査と誠実な表示だ

原発災害被害の主役は、飲食品を通した長期低線量内部被曝である。空間線量や外部被曝は作業員や福島の一部の方々以外にとっては主な脅威ではない。呼吸による被曝はマスクで防護できるが、食べ物は表面を洗ったところで中に入っている放射能は排除するすべがない。だから犠牲を最小にするには、食品検査にできる限りの資源をつぎこみ、汚染された飲食品の流通を徹底的に除去しつつ、産地や放射能濃度を正確に表示するルールが必要だ。

一番大事なことに注目しよう。今日本にどれだけの検査機器があり、どれだけの人員が担っているのか、そして1日どのくらいの数の食品検体が検査されているのか。史上最悪の原発災害で日本中が放射能まみれになっているのに、ほとんど311前の検査体制のままだ。機材と人員が絶対的に不足しているため、検査できるサンプル数が少なすぎて、ほとんどの放射能汚染食品は全国に流通している。検出された汚染食品など氷山の一角に過ぎない。千葉県柏市内の通学路から5万ベクレル/kg(342万ベクレル/m2:チェルノブイリで言えば強制移住のさらに上の立入禁止ゾーンのレベル)が検出されたように、同じ地域でも全く異なる値が出るのだから、農作物もわずかな検体を調べただけで安全だとは絶対に言えない。「検出されていない=安全」ではないということを理解し、家族や友達に伝えよう。現状の検査体制から考えれば「検出されていない=計測していない」と考える方が適切だ。

本気でまともな食品検査をするには、それ相応の財源が必要だ。この経済大国で、電力会社や原発にかかわってきた大企業がそれぞれ兆円規模の内部留保をもち、毎年5000億円の原発関連予算という無駄を続け、膨大な資本をウランの輸入・濃縮等で海外に流出させ、米国債を助けるためにホイホイ何兆円も出す一方で、被曝者への十分な補償や必要な食品検査ができないとはどういうことか。やれないのではなく、やろうとしていない、資金の使い道が狂ってるということだ。事故から5ヶ月が経ってもこの国はいまだに命を守ることには不熱心だ。政府・与野党・知事・県議・電力業界・経済界・大手メディア・御用学者がそろいにそろって、賠償金を抑制して反原発世論を押さえ込むために、安全デマでリスクを過小評価し、根拠もなく「風評被害」を騒ぎ立て、汚染情報を隠し、避難させるべき人々を見捨て、ゆるすぎる規制値をでっち上げ、被害の我慢値でしかない規制値を安全値であるかのように宣伝し、絶望的に少ない食品サンプルしか検査せず、産地を偽装し、やらせで世論を偽装し、批判する人々を税金を使って監視し、電力不足デマや首相降ろしの茶番劇を繰り返して市民の視線を攪乱する、といった圧政を続けている。人々は手に取った食品が本当のところ放射能に汚染されているのかどうかという一番知りたい情報にアクセスできず、知らないうちに内部被曝を蓄積させられている。染色体の長期継続的破壊を強いることはれっきとした傷害・殺人である。日本の人々はいま、放射能だけでなく、それを大衆に食わせようとシステムを操作しているパワーエリートと闘わなければならない。彼らの暴力を批判せずに受け入れてしまっている有権者(特に年配男性)にも道義的な加害責任がある

私たちは原子炉のメルトダウンをどうすることもできないが、民主主義のメルトダウンを食い止めることはできる。2020年代に後悔しないため、子供達やあなた自身を守るために、食品検査の機材と人員を大幅に増やし、正確に検出値や産地を表示しろ、と意見を書こう!



  • 「流通している食品は大丈夫」は大ウソ

政府のどの資料にもだいたい書いてある言い回しだが、代表として食品安全委員会「放射性物質と食品に関するQ&A(6月13日更新)」を見てみよう。

Q:流通している食品は大丈夫なのですか?
A:「暫定規制値」を上回る食品については、食品衛生法により、販売等を行ってはならない旨、規制されています。また「暫定規制値」を超える食品が地域的な広がりをもって見つかった場合は、当該地域の食品について「出荷制限」や「摂取制限」が指示される仕組みになっています。
Q:食品衛生法に基づく暫定規制値を超える食品を摂取してしまった場合に、健康への悪影響は生じるのですか?
A:食品衛生法に基づく暫定規制値を超えた食品は、出荷停止の扱いとなり、市場に出回らないようになっています
※下線は大鬼

ニュアンスとしては大丈夫と思わせるような口ぶりだが、決してそう書いてあるわけではないことに注意しよう。「暫定基準」がそもそもデタラメだという点および放射能に安全な値などないという点は当ブログでは何度も書いてきたのでここではさておくとして、もう一つ肝心なツッコミどころがある。すべての説明の前提が「見つかった場合」であり、その見つける能力については一切触れていないということだ。汚染食品を見つける能力、つまり検査体制が貧弱であれば、どんな規制・制限を設定したところで汚染食品は必ず流通する。「市場に出回らない」のは規制値を「超えるものすべて」ではなく「超えたことが判明した」食品でしかないが、上のようにさらっと書かれれば出回っているものがみんな規制値を下回っているかのように多くの人が受け取ってしまう。「有能」な官僚による実に巧妙な言葉のマジックであるが、東大を出てこんな反社会的作文をしているのは完全な才能の無駄遣いである。



  • ベラルーシは1日3万以上の食品サンプルを検査、日本では最も検査体制が充実している茨城県でも1週間10サンプルが限度

NHKスペシャル「広がる放射能汚染」第2回(2011年7月3日)より文字起こし(一部要約)(36:00あたりから)
※は大鬼のコメント

全国でも検査態勢が充実している茨城県。4台の装置を24時間体制で使い、農産物を検査できるのは週に平均10サンプル程度。現在の体制では新たな品目に対応するのは難しい。

茨城県農林水産部・中野一正次長「本当は全品検査やりたいっていうのがあるんですけども、正直いってキャパシティの問題もあってそれはできない」

浮き彫りになった食品検査の限界、国はこの問題をどう考えているのでしょうか。

厚生労働副大臣・大塚耕平「全品検査できるわけじゃないんですね、サンプリングですから。まあそういうふうに考えると、規制値を超えたものが全く流通していないということを残念ながら我々も確信できる状況ではありません」

※いや、聞きたいのは、政府がなぜサンプル数を増やす最大限の努力をしようとしないのか、なんだが。

チェルノブイリ原発から50km、ベラルーシ共和国南部のストレリチェボ村。ベラルーシ政府による手厚い放射線対策のもとおよそ900人が暮らしています。事故直後、放射線量は年間20ミリシーベルトを越え、政府は土壌を入れ替えたが、25年経っても、年間1.8ミリシーベルト、1ミリを切っていません。

村に住む、シャランコさん一家、妻マルタさん25歳。近所の農家からもらった野菜と牛乳をもって、ストレリチェボ小学校へ行き、「放射線の検査をおねがいします」。ベラルーシ政府は汚染地域にあるほぼすべての学校に放射線の測定器を配置、物理の教師に訓練を受けさせ、無料で検査をする態勢をつくりました。「25.72ベクレル、安全基準値の4分の1です。」

さらに市場に出回る食品についても検査体制の充実が図られてきました。今では全国500を超える施設で牛乳や肉類・野菜など、1日平均3万を越えるサンプルが検査されています。

マルタさんの息子「きのこやベリーは避けて、検査された牛乳や肉を食べています。安全に暮らす方法があるから、ここで住んでいけるんです」

※日本との差は歴然。検査された食品しか食べません!日本でも早くそう言えるようになりたい。

こうした対策が可能になった背景には、国の強いリーダーシップがありました。国家チェルノブイリ対策委員会、その国家プログラムに当てられる資金は国の予算の2割に昇ります。

委員会のリシューク副局長「地域の人たちが働いて健康に生活するという当たり前のことを可能にするだけでも、あらゆる労力と資源を集中しなくてはなりません。」

※日本の予算規模なら1割使わなくてもベラルーシ以上のことができるはずだが・・

最大の課題は子供の健康、体内にある放射性物質を測る特殊な装置を町や村の診療所に設置し、すべての子供の検査を定期的におこなっています。検査だけでなく治療も将来にわたって無料です。マルタさん「子供の健康は親の力だけでは守ることができません。ありがたい制度です。」

※国が守ってくれないなら自分で守るしかないっていう悲痛な言葉を耳にすることがあるけど、やっぱり食品の汚染から逃れるのは自助努力では無理があり、制度をどうにかしないといけないと思う。体内被ばく測定や無料の医療補償をきちんとやる政府なら予防つまり食品検査に当然熱心になる。日本はどちらも適当にすまそうとしている。

国営解体企業社長「放射線との戦いには、忍耐と努力、そして財源が必要です。25年が経っても重い荷を背負い続けなければならないのです。」

総力を挙げて放射能汚染と闘うという強い意志、今の日本政府から感じられないものが見えてきました。



  • 1日平均44検体:日本全国の食品放射能検査機関と検査頻度について

ベラルーシでは500の機関が毎日30000検体の食品を検査し(ちなみにベラルーシのGDPは日本の100分の1)、加えて各学校で持込検査ができるとのことだが、日本で食品放射能検査をしている機関はどのくらいあるのか。大鬼にはまとまった資料を見つけることができなかったが、多少のヒントは得た。農林水産省のHPには、輸出食品の放射能検査ができる機関として25機関あげられている。厚生労働省の資料には測定機器を備えた主な試験研究機関として39機関あげられているが、食品放射能検査が可能な厚生労働省の関係機関としてはわずか6機関しか書かれていないジェトロのHPによると、検査対象が「全般」(すべてが食品検査を行っているわけではない)なら35機関、「食品」なら13機関あるという。さらに県・市の衛生研究所(または衛生センター)といった名前の機関が人口の多い自治体を中心に全国合計で79機関あり、その一部がかなりの検査を担っているようだ。民間企業でも食品検査を受託できると宣伝しているものがいくつか見つかった。以上のことから現在国内で機能している食品放射能検査機関は全部で100機関にもならないのではないかと思う(正確な数をご存じの方がいれば教えて下さい)。

消費者庁によれば、検査を依頼する側(自治体など)の検査頻度は基本的に週1回程度という。神奈川県でいえば、3月21日から8月4日までの135日間で合計で250検体を検査、週平均13検体程度だ。135日間で神奈川県民が買った食品の総個数は見当もつかない。もちろん生産者サイドでの出荷前のサンプル検査や、中にはメーカー・店舗独自に検査をしているところ(東都生協など)もあるが、全体からすればほとんど検査していないと言えるようなサンプルの少なさだ。全国的統計では農水省の農産物検査結果ページによると、静岡から岩手までの15都県の合計で7月中に検査された食品は1363検体、1日あたり平均44検体(1日1県あたり2.9検体)である。仮に茨城県のように4台24時間フル稼働している機関が全国で100あるとしても1日平均57検体程度。お話にならない。



  • まるで“底の抜けたザル”:基準値も検査も絶望的

週刊朝日「終わりなき放射能汚染:じわじわ広がる土壌・海水汚染 食品安全検査は機材も人も足りずにお手上げ」(2011年6月10日号)より抜粋 ----------

自治体から検査の委託を受ける民間検査機関の担当者はこう話す。「ほとんどの農作物が検査を受けずに市場に出ている。まるで“底の抜けたザル”です」

原因は圧倒的な検査機器と専門スタッフの不足だ。

厚労省が検査への使用を薦めている「ゲルマニウム半導体核種分析装置」は冷戦時代、核の脅威に備え、当時の科学技術庁が各都道府県に購入を指導したが、とても現在の需要に追いつく台数ではないという。

1台約1500万円と高価にもかかわらず、震災後は平時の5倍以上の購入申し込みがあり、「納期まで少なくとも4カ月待ち」(販売代理店)という状況になっているのだ。

魚介類の放射能検査の中心的存在である「水産総合研究センター」(横浜市)には、事故後、自治体や漁協から検査依頼が殺到している。同センターは分析装置を6台保有しており、約10人の専門スタッフがフル稼働で検査にあたっているが、前処理を含め、一つの検査に3-4時間かかるため、1日に4検査が限度だという。しかも、「魚は足が速いため、検査結果が出る前に、同じ場所でとれた魚は消費市場に流れている」(漁協関係者)というのが実態だというから恐ろしい。

分析装置を2台所有する埼玉県の担当者も、ホウレンソウなど数種類を週に1度、検査するので手いっぱいだと嘆く。「水道水の検査を優先しているので、農産物は民間検査機関に依頼している。だが、民間機関もすでにキャパをオーバーしていて、これ以上、品目や検体数を増やすことはできません」。

厚労省が定めた「暫定基準値」そのものが問題だと指摘する研究者もいる。美作大学大学院の山口英昌教授(食環境科学)はこう憤る。

「セシウムの基準値で上限とされた500ベクレルという数字は、野菜などを1年間摂取し続けても、セシウムの総被曝線量が5ミリシーベルトを超えないという根拠に基づいて算出されている。しかし、一般人の年間被曝量の上限は1ミリシーベルトに過ぎない。なぜ突然『5倍浴びても大丈夫』となるのか」「セシウム137の半減期は30年。チェルノブイリ原発事故から23年が経過した2009年にスウェーデンから日本に輸入されたキノコが基準値を超えていたため、輸入禁止になったこともある。数十年単位で考えなければなりません

琉球大学の矢ケ崎克馬・名誉教授(物性物理学)も言う。「『基準内であれば食べてもいい』というのはまったくの詭弁。国家によるダマシです。少量であっても放射線が遺伝子を傷つけることは間違いない」---------



  • 厚労省に問い合わせてみた

厚生労働省のデマ冊子『妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします』に対し、5月に以下の質問をしてみた(厚労省質問フォームより送信)。

【大鬼の質問】

1ページ:「考えられません」「を考えた基準」の科学的根拠を教えて下さい。BEIR・2005年報告への反論があれば証拠を提示下さい。
 
2ページ:水道水について暫定基準はWHO基準よりもゆるいですが、科学的にこの基準で大丈夫と言える根拠を示して下さい。
 
3ページ:「わずかな値です」の放射線量とはガンマ線空間線量のみですね。吸い込んだ場合の体内被曝についてはどう考えますか。また雨について「心配しすぎる」具体例を示してください。
 
4ページ:赤ちゃんに対する暫定基準値が絶対に安全といえる科学的根拠を示して下さい。また「検査が行われ」ているのは流通する食品全体のうち何%ですか
 
最後に、放射能を同意なしに摂取させて被ばく量すら測らせないことは、憲法で定められた基本的人権を侵害する行為です。私たちは体内被曝を監視・防止するため、第一に体内被ばく量検診(ホールボディカウンタ車とアルファ線・ベータ線核種を測る排泄物検査)を全国で実施すること、第二にすべての食品・飲料に核種ごとのベクレル表示を義務づけることを求めていますが、実施を検討していただけるか、否の場合はその理由を答えて下さい。

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【厚労省の回答1】

食品中の放射性物質に関する暫定規制値につきましては、原子力安全委員会が、国際放射線防護委員会(ICRP)定めた、飲食物摂取制限に関する指標を食品衛生法上の暫定規制値としています。この暫定規制値の基となった原子力安全委員会の指標値は、1年に許容できる線量及び成人、幼児、乳児(赤ちゃん)のそれぞれについて放射能の影響の度合いと我が国の食品摂取量等を基に数値を算出し、その中から最も厳しい値を指標値として設定しています。このため、乳児にも配慮されたものと考えております
 
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課

【厚労省の回答2】

メールは関係部署へ送付しておりますが、「最後に」以下の「第一に・・・」及び「第二に・・・」は当省においてお答えすることは困難ですので、ご了承願います。「第一に・・・」の部分は文部科学省、「第二に・・・」の部分は消費者庁が所管と思われますので、一度そちらへご質問いただけないでしょうか。大変申し訳ございませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

厚生労働省大臣官房総務課行政相談室
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BEIR-VIIまで明記して厚労省の「科学的」見解を問いただしたのに、原子力安全委員会がそう決めたからというだけで、自分たちで検証した科学的根拠などないという回答だ。サンプル数については完全スルー、この話題には沈黙らしい。

回答2について、大鬼はあくまで厚労省が人々の命と健康に関する中心的な責任を担うべきものと考える。厚生労働省健康局の所轄事務は「保健所等を通じた地域保健の向上」。地域保健法には、国の責任として「地域保健対策に係る人材の養成及び資質の向上に努めるとともに、市町村及び都道府県に対し、前二項の責務が十分に果たされるように必要な技術的及び財政的援助を与えること」(第3条)とある。さらに第4条でははっきりと厚生労働大臣の責任として、「保健所及び市町村保健センターの整備及び運営に関する基本的事項」や「地域保健対策に係る人材の確保及び資質の向上」を含む地域保健の「基本指針」を「遅延なく」定めることと書かれている。保健所の日常的業務の所管は地方公共団体だが、基本指針と人事に厚労省は責任をもっている。第6条と7条には、保健所の役割として、地域保健の向上、とくに「食品衛生」(6条3項)・「衛生上の試験及び検査」(6条13項)・「その他の疾病の予防」(6条12項)が定められている。厚労省は食品検査や体内被ばく測定などの放射能対策を推進する方針を打ち出し、全国の保健所で放射能検査が実施できるように機材・人員を確保すべきだ。311前のように特殊な限られた数しかない機関が放射能検査を担うのでなく、全国的な国家プロジェクトとして食品検査を位置づけるべき時だ。なお食品検査にかかるコストは原発災害がなければ本来必要なかったものであるから、原発関連産業が相当の負担をするのが道理であり、原発で潤ってきた企業には懲罰的な課税を実施すべきだ。

ちなみに『食品と放射能Q&A』というデタラメ冊子(市場に出回っているものは基本的に安全との主張)を出している消費者庁にも同様な質問をしたが、回答は一切なかった。



  • 産地偽装にご用心

全品検査どころか食品の1%も検査がされない現状では、次善の策として産地も判断材料にするしかない。風評被害なるものがあるとすれば、それは貧弱な食品検査体制によって多くの人が産地で判断することを強いられることで、結果的に安全かもしれない食品まで売れなくなる、ということだ。疑わしいものを危ないと見なすのは、利益より命を守らなければならない生活者にとって極めて真っ当な判断だ。厳密に言えば全品検査をして含有放射能がゼロであることが証明されない限りは風評被害は存在しえないのであって、消費者側が何を危険と見なそうが文句を言われる筋合いはない。

ただ「福島産」でなければ安心といった思い込みには注意が必要だ。福島以外でもホットスポットは多くの県に存在している。土壌汚染の分布から考えれば、例えば千葉県北部産の方が福島県西部産よりも汚染されている可能性も十分ある。

もっと困ったことに産地情報そのものが信頼できないブレンドして産地を特定せず「国産」として売るだとか、別の場所に移動して処理し「他県産」として売るといった、実質的には産地偽装と言えるようなことが行われている(もちろん関係者は偽装ではないと言い張るだろうが)。金が何よりも大事という社会の病理だ。産地は誰もがだまされないような形で正直に全部表示することを法的に義務づけるべきだ

水産物の産地表示は、JAS法で表示義務はあるものの、「水域名又は地域名(主たる養殖場が属する都道府県名をいう。)を記載。水域名の記載が困難な場合は水揚港名又は水揚港が属する都道府県名を記載することができる。」とされている。つまり例えば福島県に近い水域で獲れても千葉県で水揚げすれば「千葉県産」ということになる。では「困難な場合」とはどういう場合なのか。誰がそれを証明するのか。百歩譲ってそういうケースがわずかにあるとしても、獲れた水域ではないことくらい正直に書かせるべきだろう。分かっている事実を記載することが困難な場合などありえない。とにかくこの法規定を知ってから大鬼は、国産の魚介類の産地表示に全く意味を見いだせなくなった

肉類の産地にも落とし穴がある。「スケープビーフ」とまで言われ汚染食品の代表格となったセシウム牛問題で明らかになったことは、汚染地域のわらが流通すれば、牛の産地がどこであれセシウム牛になるということと、セシウム牛自体が福島から他県に売買されて移動している、ということだ。牛の場合、個体識別ができるためその気になれば移動履歴をトレースできるとのことだが、ほとんどの人はお店で表示されている産地だけを見て購入しているのでパッケージに表示されなければ意味がない。エサが何県産だったのかも通常は知ることができない。

さらに悪いことに、個体識別のできないブタなども汚染地域から全国に散っていた

女性自身(2011年8月9日号)「福島避難区域の豚1万頭は『他県産』に化けて全国の食卓へ」より抜粋 ------

7月15日、熊本県が豚から初めて放射性セシウムを検出したと発表した。牛肉だけでなく、豚肉までセシウムに汚染されたものが全国各地に流通していることが明らかになったのだ。

地元紙記者は「今回、解体された豚は、福島県川俣町で飼育されたものなのです」と語るが、福島県の養豚組合の担当者は「牛と違い豚には個体識別番号はありませんので、出荷地が生産地になってしまいます」と説明する。つまり、移送された豚は「福島県産」とはならず、食肉として出荷された地域からの「他県産」となってしまうということだ。

前出の養豚組合の担当者は「これまで緊急時避難準備区域と計画的避難区域から約1万頭が県外へと移動しています。出荷されたのは、主に長野県や群馬県、新潟県、熊本県など。いずれも避難先の県産として出荷されています」と明かす。

政府や県はこの事実を知った上で、豚の県外移動を認めている。食卓を守るために消費者が頼るのは産地表示。だが、「○○県産」だから大丈夫、というような判断は信用できなくなっているということなのだ。
(抜粋おわり)-----------

読売によると、この記事の「『熊本産』豚肉からセシウム検出」という見出し(ネット版にはない)に対して、熊本県が「事実と異なる」として抗議し、女性自身は8月16日号で「正しくは『福島県で飼育された豚から移送先の熊本県でセシウム検出』です」と「訂正」したという。税金を使ってスパイ行為をしているエネ庁からのたれ込みでもあったのだろうか。この手の報道だけは熱心な読売も含め、いかにも業界利益優先の原発容認派らしいナンセンスな揚げ足取りだ。何がどう事実と異なるのか?熊本県が抗議したのは熊本産豚からセシウムが出たという誤解を招くとのことだが、記事には「熊本産豚」ではなく「『熊本産』豚」と書いてあった。そこが重要である。日本語で言葉を「」に入れると"いわゆる"とか"本来そう表現すべきでないが"といった含意を伴うという常識を理解できていて、1回でも本文を読めば、福島県産の豚が熊本に移動していずれ「熊本産」として出荷される(そのような豚が全国で1万頭もいた)ことがこの記事のポイントであることは誰にでも分かる。産地表示が信頼できないということを正しく追求した記事だと思う。



  • 結論:海外産を食う!

検査もろくにしない、産地は偽装する、規制値はゆるすぎる、これでは国産の食べ物を食べるなと言われているようだ。食品放射能汚染の問題は今後何十年も続くもので、原発事故が収束に向かえば終わりといった話ではない。情報をもたない人たちや諦めた人たちは食べ続けるのだろうが、逃避したところで、放射能は摂取すればするほど癌・遺伝子障害等のリスクが増え、安全なしきい値も存在しない、という科学的事実からは逃れられない。日本の食べ物が大好きな大鬼としてこれだけは言いたくなかったが、残念ながら現状では輸入食品で代替できるものはそうした方が無難だと言わざるを得ない。早く日本の食べ物を安心して食べられるように、声を上げよう!



  • とはいえ・・・

食べないわけにはいかないものもあるので、個別の食品や産地の情報を追っていくしかないわけだが、情報が毎日山のように出てくるので大鬼は正直お手上げ状態。そういう時は人に助けてもらおう。そして自分も情報を出して助け合おう。がんばって情報をまとめてくれたり問い合わせたり測定までしてくれている人達に感謝。勝手に紹介しておく。

子供を守ろう Save Child:食品放射能関連ニュースまとめ
atmc-Tokyo:食品放射能関連ニュースまとめ
木下黄太さんのブログ:いろんな人がメーカーに問い合わせた情報をシェアできる
OK Food:様々な商品・工場の産地などのまとめ


<市民放射能測定所>

日本版クリラッド、市民放射能測定所がついに福島で設立された。クリラッドはチェルノブイリ後に原発大国フランスの政府が情報隠蔽を続け、それに怒った市民達が設立した民間非営利の放射能測定機関だ。市民放射能測定所は日本全国の都道府県に1つずつ測定所をつくることを目標にしている。食品検査もすでに開始している。こうした利権に囲われていない独立の測定機関が存在することは、電力会社・政府による情報隠蔽・情報操作への重要な歯止めとなる。食品検査・内部被曝検査・土壌検査などは物量勝負であり公的な責任において行われるべきであるが、いわば監査機関としての市民放射能測定所の取り組みに大いに期待したい。


<食に関する週刊誌の気になる記事>

週刊現代

2011年8月6日号
牛肉だけじゃない:新聞・テレビがパニックを恐れて報道を自粛する「いま福島県で起きていること」
ICRPの健康基準なんか、信用してはいけない

2011年7月30日号
わが子のオシッコからセシウムが出て
あなたの食卓にセシウム汚染牛肉

週刊朝日

2011年8月12日号
セシウム汚染「どのブランド牛なら安心?」産地の対策徹底調査
甘辛ジャーナル/セシウム牛肉問題の「責任者」を名指しするべきでは?

2011年8月5日号
「おたくの肉は大丈夫?」セシウム全国へ、百貨店、料理店などを直撃

AERA

2011年8月1日号
宮城産として仕入れた、給食から見つかった汚染牛肉

2011年7月25日号
検査せずに千頭を出荷セシウム牛肉を見逃した農水省の罪

2011年7月18日増大号 
魚で進む「放射能濃縮」汚染された海で何が起こっているのか
ユッケの5倍怖いレバ刺し「肉食女子」はどうする

サンデー毎日

2011年8月14日号、
イオン、ファミリーマート、三越伊勢丹:全国30社放射能対策、「独自検査なし」は23社
その水は安全ですか?

2011年8月7日号
終わりなき食汚染:「セシウム米」が実る秋

2011年7月31日号
それでも危ないひき肉、モツ、タン
乳業トップ3社直撃「原乳の原産地、放射能対策は?」
セシウム牛、牛乳 安全の「想定外」

2011年7月24日号
「放射能」と闘うニッポンの母

2011年7月17日号
ついに福島の子どもの尿からセシウム
内部被曝に克つ「食の防衛 食の安全工程表一挙公開!

週刊金曜日

2011年7月29日号
地獄への入り口はすでに開いた:9月頃が大変なことになる (水口憲哉)
水産庁のモニタリングデータから:水産物の汚染度を読み解く (中地重晴)
ストロンチウム魚への不安 (片岡伸行)
今、知っておきたい産地表示の落とし穴:アバウトすぎる魚の表示 (垣田達哉)

2011年06月10日号
内部被曝をどう防ぐ?「基準値以下だから大丈夫」はウソ! (矢ヶ崎克馬)
妊娠中の人 授乳中の人 幼児がいる人:親が気をつけるべきことは? (崎山比早子)



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2011/08/06(土) 16:41 大鬼
文部科学省が広域で実施している航空モニタリング測定について、6月末に計測された宮城県と、7月半ばに計測された栃木県の測定結果が公開された。これまで公式の実測値では福島県と茨城北部のごく一部しかデータがなかった。7月末に実施された茨城県の計測値も近く公開される。

宮城県については、福島と隣接する県南部だけでなく、県北部の気仙沼・藤沢・栗原・大崎・加美などで汚染濃度が高くなっている。県中央部も、セシウム堆積量で見ると福島県西部や栃木県北部に匹敵するレベルになっている。栃木県については、北側半分が集中的に被曝しているようだ。特に那須・那須塩原・矢板・日光にはかなりの面積のホットスポットが存在する。広域で見ると80km地点くらいまではほぼ全方位に超高濃度汚染地域が広がっており、加えて二本松・郡山・那須・日光を経ておそらく群馬県の高崎方面へ向かったと思われる超高濃度放射能雲の通過ラインが浮かび上がっている。また福島県南部・北茨城・日立・ひたちなかへと向かう海沿いの南向きのルートも見える。宮城県北部の高濃度汚染はおそらく岩手県南部へとつながっており、いったん太平洋上空に出た放射能が再上陸してできたように見える。原発から160km以上離れた宮城県北部や栃木県日光でも高濃度の汚染が見られることがはっきりした福島だけが危ないという認識は改めなければならない。より精密な土壌調査でホットスポットを割り出し、いまだに情報が乏しいストロンチウムやアルファ線核種についても調査していく必要がある。首都圏や新潟の航空モニタリングも急いでやってもらいたい

<参考までに>
空間線量については、毎時0.11マイクロシーベルト以上だと1年間で年間許容限度とされる1ミリシーベルトを外部被曝だけで越える。土壌汚染については、チェルノブイリではセシウム137の地表堆積(ベクレル/m2)が37000(37K)以上で汚染地域とされ、185000(185K)以上で補償つき任意移住が認められ、555000(555K)以上は強制移住、1480000(1480K)以上は強制移住&立入禁止ゾーンとされた。セシウム134と137はほぼ同量ずつと考えて良い。

文科省航空モニタリング_広域空間線量

文科省航空モニタリング_広域地表セシウム


福島県のセシウム土壌汚染マップ
(計測日:2011年5月18~26日)

文科省航空モニタリング_福島県中心地

宮城県の汚染マップ
文科省航空モニタリング_宮城県空間線量

文科省航空モニタリング_宮城県地表セシウム

栃木県の汚染マップ
文科省航空モニタリング_栃木県空間線量

文科省航空モニタリング_栃木県地表セシウム


※画像をクリックすると拡大されます


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文科省ようやくWSPEEDI予測値(広域汚染状況)の一部を公表:東京もチェルノブイリ第三区分入りが濃厚に

 
 
2011/07/16(土) 21:23 大鬼
■ 菅首相が脱原発方針を表明

菅直人総理大臣は7月13日、脱原発をめざすことを以下のように日本の首相として初めて表明した。

「私自身、3月11日の原子力事故を経験するまでは、原発については安全性を確認しながら活用していくという立場で政策を考え、また発言をしてきました。しかしこの大きな原子力事故を私自身体験をする中で、そのリスクの大きさ、例えば20km圏から避難をしてもらわなければならない・・さらには最終的な廃炉という形までたどり着くまで5年、10年あるいはさらに長い期間を要するわけでありまして、そういった原子力事故のリスクの大きさということを考えた時に、これまで考えていた安全確保という考え方だけでは、もはや律することができない、そういう技術であるということを痛感しました。これからの日本の政策として、原発に依存しない社会を目指すべきと考えるに至りました。計画的・段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもきちんとやっていける社会を実現していく、これがこれから我が国が目指すべき方向だと考えるに至りました。国民の皆さん企業の皆さんの理解と協力があれば、この夏においてもピーク時の節電や自家発電の活用などによって、十分対応できると考えております。」

他方で「専門的な立場の皆さんのきちんとした提起があれば、そしてそれが大丈夫ということであれば」再稼働もあり得るとも発言した首相だが、再稼働の必要性は実はどこにも述べられていない。再稼働なしでも電力不足が生じないことは首相自ら認めている。


■ 総選挙なき首相退陣論にご用心

菅総理の脱原発方針は、急成長した日本の脱原発世論におされて出てきたものであり、決して一人の思いつきで出たものでも、彼がもともとやろうと思っていたことでもない。延命云々という議論もあるが、政治家とはそういう生き物であり、永田町は茶番劇場である。大鬼は民主中心でも自民中心でも世論を正確に反映していない政権・国会を基本的には支持しない。しかし世論の力で政治家・政党に圧力をかけて態度を改めさせることには大きな意味があると考える。今回の脱原発方針はまぎれもなく世論が可能にした状況だ。政府内からは首相の考えと政府の方針は違うといった見苦しい反論が出され、原発再稼働を何が何でも強行しろという財界の圧力もある中で、事態は予断を許さないものの、原発容認派が崖っぷちに立たされたことは明らかだ。早くも二日後には、文科相のもんじゅ中止示唆、福島県の脱原発宣言、と具体的な影響が出てきた。世論の力を見くびってはいけない。

ちなみに大鬼は、選挙で原発容認派を落選させて次期政権がより徹底した脱原発派政権になるという見通しが見えてくるまでは、菅総理の早期退陣論には反対である(解散総選挙をやるというなら話は別だが)。そもそも首相退陣論の発端は、脱原発側に傾斜しはじめた菅直人を原発推進派が首相の座から引きずり下ろすために やった不信任決議騒動の際の言った言わないレベルの話を推進派とマスコミが勝手に既成事実化したことであり、脱原発とは逆の方向を向いた永田町政治の産物である。敗退を続ける原発容認派に残された希望が、総選挙なしの菅おろし(つまり前原・岡田・枝野など原発容認派総理の樹立)だったが、菅に逆ギレされてむしろ菅を脱原発世論により近づける結果を招いた。この間の犯罪的な政府の対応から考えて菅内閣を支持する気にはなれないが、首相交代は全く別の話である。福島第一原発災害を引き起こした責任の多くは歴代自民党政権にあり、民主党内でも脱原発の足を引っ張っているのは現状では菅ではなくその取り巻きや霞ヶ関なのだから、闇雲に総理だけを叩くようなマスコミの論調はよこしまな考えに基づく世論操作だと大鬼は考える。


■ 新聞各紙の首相脱原発会見への反応

読売は原発容認派であり、執拗に誤った情報を書き続け、首相の脱原発方針にも当然否定的な態度をとっている。産経は破綻した原発推進派の主張を観察するにはいい。毎日と朝日は5月以降、脱原発に一定の理解を示してきた新聞であるが、毎日の主張はいまいちで、意外にも朝日の方がましに思えた。すべてウェブ版より。※以下は大鬼の反論


(1)    読売新聞、7月14日社説

脱原発宣言 看板だけ掲げるのは無責任だ

「深刻な電力不足が予想される中で、脱原子力発電の“看板”だけを掲げるのは無責任だ。」
→※電力不足がデマであることはもはや周知の事実。デマとこじつけで批判するのは無責任だ。

「原子力発電を補う代替エネルギーの確保策が、不透明なままだったことも問題である。」
→※代替エネルギー確保を妨害してきた読売など原発推進派こそ問題である

「自然エネルギーの普及は促進すべきだが、現時点では総電力の1%にとどまり、発電量は天候などで変動する。コストも高い。・・近い将来、原発に代わる基幹電力の役割を担えるほど見通しは甘くない。」
→※自然エネルギーは太陽・風・水・波・地熱など多様でありコストは原発に比べればすべて安い(最終処分や事故のリスクを計算から除外するな)。近年各国では飛躍的な普及が始まっており、例えば中国は2010年に原発17基分の風力発電を、ドイツは7基分の太陽光発電を新設した。主要国でやっていないのは日本だけ。

「火力発電で急場をしのげても、燃料費がかさんで電力料金が上がれば、産業の競争力低下を招く。工場の海外移転による空洞化も加速して、日本経済は窮地に立たされかねない。」
→※話が恐ろしく飛躍しすぎだ。電力料金を上げさせないオプションは多数ある。少なくとも電力会社の兆レベルの内部留保、毎年4500億円の無駄な原子力予算、ピーク時節電分、代替エネルギー新設までの期間、長期的コスト、持続可能性、などを考慮していない議論に説得力はない。空洞化など円高合意から20年以上続いている。今さら電力料金にこじつけている経団連米倉や日銀白河の受け売り。もしも最終的に命か多少のコストかを問われるのならば、迷わず命をとる。人の生命を脅かしてまで自己利益を追求しないでくれ。

「安全確保を徹底しつつ、原発利用を続けることが、経済の衰退を防ぐためには欠かせない。」
→※原発の安全確保が地震大国では不可能であることが、リスク0%だったはずの福島第一の事故で証明されている。

「代替電力の展望もないまま原発からの脱却ばかりを強調するのは、あまりにも非現実的だ。」
→※ピーク時節電と埋蔵電力でピーク時を乗り切れるという議論は多数あるが乗り切れないということを証明した議論は見たことがない。闇雲に電力不足を煽り原発に固執しつづけて日本列島をダメにするリスクをこれ以上押しつけることは、あまりに非現実的だ。

「原発のストレステスト(耐性検査)を巡る閣内不一致によって、九州電力玄海原発など、定期検査で停止している原発の再稼働に見通しが立たなくなっている。・・首相には、福島第一原発の事故に伴う国民の不安に乗じ、脱原発を唱えることで、政権延命を図る思惑もあったのではないか。場当たり的言動が、多くの混乱を引き起こしている。首相は、そのことを自覚すべきだ。」
→※世論調査参照。脱原発も再稼働反対も世論の支持を得ている当然の判断だ。菅が孤立しているとすれば、永田町こそが世論を無視して原発延命に奔走することで混乱を引き起こしている。


(2)産経新聞、7月13日記事

菅首相の「脱原発」宣言 企業活動、国民生活への影響無視

「菅直人首相が打ち出した『脱原発』宣言は、企業活動や国民生活への影響を無視したものだ。首相は今夏や冬場の電力不足は『節電協力で乗り切れる』としているが、企業活動やそこで働く生活者へのダメージは深刻さを増している。」
→※原発事故と電力不足デマによる「ダメージ」を脱原発のせいにするという典型的な世論操作。ピーク時節電は本当に産業界が協力すれば一番暑い時間帯にクーラーを断続的に何分か停止する程度で効果があり、大がかりな生産縮小など必要ない。

「首相自身が突如として全国の原発に対するストレステスト(耐性検査)を打ち出して混乱を引き起こす現実を前に、多くの立地自治体は政府を信頼できずにいる。」
→※世論調査参照。信頼されていないのは強引に再稼働を求める原発容認派の方である。

「『電力をどの程度使えるかがはっきりしないままでは、来年以降の経営計画も立てられない』と、経営者からの悲鳴は切実さを増している。」
→※国民生活への影響といいながら、つまるところ経営者と御用エコノミストの主張だった。

産経は熱中症やストーカー被害増加の原因を脱原発路線にこじつけるトンデモ記事(7月16日)のように、電力不足デマ・電力会社の不誠実経営・無駄な夜間節電などに関連する社会問題を脱原発路線のせいだと責任転嫁することに精を出している。産経が報道機関という体裁すらないむき出しの世論操作集団であることがよく分かる。


(2)    毎日新聞 7月14日社説

『脱原発』表明 目指す方向は評価する

「原発への依存を減らしていくこと、そして現実的にもそうした方向にならざるを得ないことは、私たちもこれまで何度も指摘してきたところだ。その考え方については基本的に支持し、評価したい。」

「しかし、首相のこの日の会見ではあまりに具体性が乏しい。将来とは一体、いつごろを考えているのか。代替エネルギーをどうやって促進していくのか。」
→※会見で首相はまだこうしたことを決められる段階ではないと述べた。背景には明らかに菅首相の方針に批判的な原発容認派閣僚の圧力がある。彼らにこそ具体策が決められない原因があることをはっきりさせるべきだ。

「いずれ遠くない時期に退陣するであろう首相だ。まず、政府・与党としての考えをまとめる作業を急いでもらいたい。」
→※市民そっちのけで首相退陣を勝手に既成事実化したのは原発容認派の政治家とマスコミである。確かに菅退陣世論は強いが、その理由は菅が浜岡を停止させたりエネルギー政策を見直すことでリーダーシップを発揮したからではなく、逆に政権として原発延命のために様々な嘘で市民を欺き放射能対策もろくに行っていない政権全体への批判であることは世論調査を見れば分かる。

「首相のリーダーシップで進めていくことは必要だ。しかし、民主党の執行部でさえ菅首相と距離を置き始め、絶えず退陣時期が焦点となっている現状を考えれば、個人的な意見の言いっぱなしで終わる心配がある。」
→※菅首相個人の人気がないことに便乗して、圧倒的な世論の支持を得ている脱原発を妨げ原発容認派政権を樹立することになる「菅おろし」を推し進めてきた勢力に注目しよう。

「来年夏以降に関しては、天然ガスを使う火力発電所の活用などを挙げたが、『計画を立てていきたい』と語るだけだった。これでは、ただでさえ方針が二転三転する菅内閣に不信感を強めている産業界などは納得しない。」
→※産業界のオピニオンが原発推進派に支配されている現状では「納得」などどうやっても期待できない。民主主義の社会として、自分と家族の命を守りたい普通の人たちの声が重視されるべきだ。原発推進から脱原発へと首相の方針を「二転三転」させてきたのは世論の力。


(3)    朝日新聞、7月14日社説

脱原発:政治全体で取り組もう

「国策として進めてきた原発を計画的、段階的になくしていくという政策の大転換である。・・首相の方針を歓迎し、支持する。」

「退陣を表明した首相が、国の根幹となり、社会のあり方を決めるエネルギー政策の今後を方向づけていいのかという意見はあろう。・・だが、自然エネルギーを飛躍的に普及させ、原発への依存を減らしていく方針への異論は少ないはずだ。誰が首相であっても進めなければならない、焦眉(しょうび)の政治課題なのだ。」

「ただ、首相の今回の方針も、例によって内閣や民主党内の論議を積み重ねたものではない。脱原発の具体策を示したわけでもない。そのぶん、発言の唐突さは否めない。」
→※閣内の原発容認派が抵抗していることについて良識ある市民はよく観察している。そんな中で世論よりも閣内コンセンサスを優先していたら、脱原発政策は遅々として進まない。大事な決定が「唐突」に出ざるをえない理由に目を向け、一体誰を批判すべきなのか考えてほしい。

「民主党はかつて原子力を『過渡的エネルギー』としていたが、政権をとった一昨年の衆院選で原子力利用に『着実に取り組む』と方針を転換している。菅首相も原発依存を高める計画を閣議決定し、原発の海外輸出を成長戦略に位置づけていた。・・自民党は過去の原子力政策を検証する特命委員会を設けて議論を始めている。電力業界や経済産業省とともに経済性を重視し、安全性を犠牲にしてこなかったか。真摯な反省が不可欠だ。」
→※原発利権とつるんで嘘を宣伝してきたマスコミも同じく反省が不可欠だ。

政治家が原発に固執することも、態度をはっきりさせないことも、絶対に認められないということを、次回の選挙ではっきりさせよう。


関連記事
日本は脱原発の道を選んだ(1)原発世論調査をまとめてみた
つぶやき(1)「菅降ろし」は与野党内の原発推進派による悪あがき、「電力不足」は嘘だった!

 
 
2011/07/16(土) 20:29 大鬼
■ 世界の流れは脱原発

当ブログでは以前、世界各国での原発賛否を問うたギャラップインターナショナルの世論調査(4月19日発表)を紹介した。311後、多くの国で原発反対が多数派となり、世界は「原発ルネサンス」の呪縛から目を覚まして脱原発へと踏み出した。

これまで原発容認世論が圧倒的に強かった原発大国、米国とフランスでも世論に変化が見られた。米国では4月14-17日に実施されたABCの世論調査で、原子力発電所の新規建設に、賛成が33%(前回2008年7月:44%)であったのに対し、強く反対の47%(前回23%)を含む反対は64%(前回53%)に昇った。フランスでは6月1-3日に実施されたジェルナル・デュ・ディマンシュの世論調査では、原発継続賛成22%に対して、段階的に廃止が62%、即時停止は15%で、脱原発派は合計で77%に達した。

脱原発先進国のドイツ・イタリアでは原発全停止が政治決定された。ドイツでは7月8日、脱原発法が成立し、停止中の旧式8基の即時閉鎖と10年以内の全原発廃止が決まった。すでに原発のないイタリアでは原発計画の再開が国民投票(投票率57%)で94.5%の投票者に否決され、原発のない未来が確定した。


■ 日本の原発世論調査:圧倒的な脱原発世論の形成

原発災害当事国の日本の世論はどうか。一言でいえば、日本の世論は原発容認から脱原発へときわめて劇的に変化した。歴史上例を見ないようような急激かつ大幅な世論の変質である。とりわけ変化が加速したのは4月末から5月にかけての時期で、その変化をリードしたのは女性だった。現状では原発再稼働は認めない、原発全廃まで5年または10年以内、次世代動力は再生可能自然エネルギー、という声が多数を占めるようになった。

以下、現在までに実施された国内主要メディアの世論調査の結果である。定義:原発容認=原発増やす+現状維持、脱原発=原発減らす(段階的)+全廃(即時)。

朝日新聞で継続したデータが得られるのは賛成か反対かの二者択一式。この方式だと漸進的脱原発派の一部が賛成にまわることが考えられるため、原発容認派がインフレする点に注意。この方式でも6月には賛否が逆転した。

朝日原発世論調査2011_1

読売新聞とNHKは4つの回答から選ぶより正確な方式。4月半ばまでは少数派であった脱原発派が、5月半ばまでに6割近くを占める多数派となったことが分かる。また脱原発派のうち原発全廃を求める声が着実に増加し続けてきたことが分かる。

読売原発世論調査2011_1
読売原発世論調査2011_2

NHK原発世論調査2011_1
NHK原発世論調査2011_2


毎日新聞は3つの回答から選ぶ(もはや原発増やす派を独立させる意味もないという)方式。毎日の調査で特に注目は男女の相違である。男性もいまや脱原発が多数派であるが、一貫して女性の方が脱原発(特に全廃論)が多いことが分かる。

毎日原発世論調査2011_1
毎日原発世論調査2011_2
毎日原発世論調査2011_3

定期検査中の原発の再稼働をめぐる是非では、現時点では再稼働反対が多数を占めるようになっている。朝日の質問には「国が求める安全対策が達成されれば」という前提条件がつけられているため、直接的な条件がついていない他のデータとは単純に比較できないが、6月後半から7月初旬にかけて世論が再稼働により批判的となったとも考えられる(ちなみに九電やらせメール発覚は7月2日)。
原発世論調査_再稼働の是非

原発全廃までの具体的スケジュールについては、朝日の7月調査で、将来全廃することに賛成の回答者のうち、5年以内または10年以内が58%と多数を占めた。ただしその他か無回答が9%あるので、即時全廃が必要と考える人の一部が「5年以内」からもれ落ちている可能性もあるだろう。

原発世論調査_全廃時期

菅内閣の是非については5月以降は不支持が増え続けている。支持しない理由のトップは「実行力がない」であり、これだけではどういう政策が不支持を招いているかは分からない。しかし上記のデータから、菅総理が行ってきた脱原発につながる対応が原因ではないことは確実である。例えば浜岡原発の停止判断については圧倒的多数の人が支持している。菅内閣の支持率が落ち続ける主な原因は、長引く原発災害や広がる放射能汚染で安心した暮らしが奪われたことへの一般的な怒りとともに、SPEEDI隠しや学校20ミリシーベルト問題に見られたような数々の非人道的対応、とりわけ情報隠蔽や安全デマで、政府が信用を失ったことにあると思われる。ここまでやられてしまったからには、総理がいくら脱原発に向かう行動を起こしても(それ自体は評価できるにしても)、ただちに政権として支持するわけにはいかない、というのが多くの人々の感覚ではないだろうか。

原発世論調査_浜岡停止是非
原発世論調査_事故対応

原発世論調査_政府情報信用


■ 311後の4ヶ月間の主な出来事

世論が4月後半から5月にかけて脱原発へと劇的に動いた背景を考えてみる。

<311後の主な出来事>

3月11日 福島第一原発事故発生、数日以内にメルトダウン(ただし情報隠蔽)
3月12日 1号機爆発
3月14日 3号機爆発、2号機ベント
3月15-16日 首都圏・伊豆まで大量被曝(ただし情報隠蔽)
3月17日 厚労省、食品放射能の暫定基準値を発表
4月2日 2号機ピット亀裂から超高濃度汚染水が流出
4月4日 高濃度汚染水の意図的放出
4月10日 原発やめろ高円寺デモ
4月11日 20km圏外にも計画的避難地域、発表される
4月12日 レベル7へ引き上げ
4月18日 菅総理、原発政策の白紙化を表明
4月19日 文科省20ミリシーベルト許容を通達
4月25日 SPEEDI一部公開(原発周辺地域の放射能予測値)
4月29日 小佐古内閣官房参与の暴露辞任
5月1日 子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク発足
5月6日 菅首相、浜岡原発停止要請
5月7日 原発やめろデモ 東京・大阪・神戸・福岡など
5月8日 敦賀原発で放射能漏れ事故発生(21日に再び漏れ)
5月6-10日 航空モニタリング結果公開(福島実測値)・WSPEEDI一部公開(首都圏含む広域予測値)
5月10日 菅首相、エネルギー政策の白紙見直し方針発表
5月12日 東電1号機メルトダウン認める、東京新聞・電力不足キャンペーンのウソを暴く
5月14日 東電2・3号機もメルトダウン認める
5月16日 NHK・ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」放送
5月18日 菅首相、発送電分離の検討を発表
5月23日 福島の親たち文科省包囲、参議院行政監視委員会で小出氏・石橋氏ら発言
6月2日 内閣不信任決議否決(衆議院本会議)、「退陣表明した」とマスコミ報道
6月6日 保安院、プルトニウム等の大気中放出認める
6月11日 611脱原発100万人アクション
6月13日 東京連合こども守る会発足
6月26日 玄海原発再稼働をめぐる説明会でやらせメール(7月2日に発覚)
6月27日 福島で体内被曝量検査始まる
7月6日 菅首相、原発ストレステスト実施方針を発表
7月11日 セシウム牛肉の全国拡散が確認される
7月12日 子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク発足
7月13日 菅首相、脱原発めざすと表明
7月15日 福島県が脱原発宣言、文科相もんじゅ中止を示唆、広瀬氏ら政府東電要人を刑事告発

311発生からおよそ1ヶ月間は原発事故について考える余裕もなく、情報もかなりガチガチに統制されていた。4月に入ると東電・政府・マスコミ・学者らの言っていることに異議を唱える人がネット上では増えはじめた。広瀬隆氏・小出裕章氏のような反骨の知識人やECRR・チェルノブイリ研究者・エンジニアなど海外の専門家の情報にアクセスした素人がネット上で反乱を始めた。事故の情報だけなく放射能のリスクについても嘘が徐々にばれていく。

4月10日の東京高円寺デモは、初めて目に見える形で異論が表面化した重要な転換点だった。レベル7への引き上げで事態の深刻さに気づきネットで情報を探すようになった人もたくさんいただろう。しかしなんといっても大きかったのは、4月後半から始まった学校の放射能をめぐる政府と親たちの正面衝突であり、それを契機として福島から首都圏へと拡大していった放射能から子どもを守る親たち(特に母親)の行動(署名・学習会・宣伝活動・独自の放射能測定活動・自治体要請など)である。また放射能の影響を受けやすい若年層を中心に、原発利権や政府マスコミにデマだ風評だと目の敵にされてきたネット上の情報が実は真実ではないかと考える人が増えていった。葉野菜・キノコ・牛乳・魚・海藻・茶・肉など飲食品の放射能汚染の情報がどんどん出てきて「風評被害」が実は本当の放射能被害だったことが明らかになってきた。広域の放射能汚染(WSPEEDI・土壌調査)や海外の機関の情報から、放射能汚染は福島だけでなく日本全体そして北半球全体の問題であることが明らかになった。このように深刻な放射能汚染の実態がある程度知れ渡った時期と、原発反対が多数となった時期が重なる。

つまり脱原発の世論は、放射能は嫌だという訴え、まともな放射能対策を求める声と表裏一体だ。5月23日文科省包囲や6月11日全国的デモではっきりと示されたノー放射能・ノー原発の世論の急成長に対し、マスコミも政府も態度を改めざるをえなくなった。浜岡停止要請や原発政策見直し・発送電分離方針・再生エネルギー法案・ストレステスト、そして脱原発会見といった菅総理の一連の動きも、世論におされて出てきた。日本社会で孤立しているのは首相というよりその取り巻きであり、永田町・霞ヶ関界隈は世論からどんどん遠ざかっている。どんなに首相の脱原発方針自体が歓迎であっても、今後のエネルギー政策に論点を限定し、現に進行中の放射能被害を過小評価し、情報隠蔽と安全デマで市民をだましながら放射能汚染食品や汚染環境での暮らしを押しつけている政権に、世論は支持を与えていない。政府がいま命を守る政策に転換することを世論は求めている。


関連情報
日本は脱原発を選んだ(2)菅総理の脱原発会見、各紙社説を斬る
土壌調査をまとめてみた:広域での体内被曝検診を求めます

世界は原発にノーと言っている(ギャラップ国際世論調査):問われる民主主義のクオリティ

 

 
2011/06/17(金) 21:38 大鬼
菅降ろしに必死になっている原発推進派の政治家と財界は、人々の怒りを利用して勝手に首相退陣を既成事実化し、「大連立」という強権政治で人命軽視の政策を押し切ろうと企んでいる。菅降ろしでふっきれた首相は、自然エネルギー促進にやる気を出している。人命優先の政策にこの国を転換させるには、普通の人々が情報を共有して、本当のリスクを知り、アクションを起こしていくしかない。


これまで広域での放射能汚染の実態は、事故から2ヶ月経ってたった2日分が公開されたWSPEEDIの予測データと、実測ではあるが局所的な土壌調査の結果から、全体像を推測するしかなかったが、6月に入り新たな情報が出てきた。


■ 筑波大のセシウム137広域汚染地図

筑波大学アイソトープ総合センターの調査団が、3月下旬から5月初旬にかけて、首都圏の一部を含む国道沿いの空き地など110カ所で土壌を採取し、地表のセシウム137濃度を測定した。数値は3月29日時点のものに換算されている。サンプル数の少なさから考えればこれも完全な実測データとは言い難いが、これまでよりは精度の高い広域汚染地図を示した意義は大きい。以下の画像は報道された調査結果に地図を重ねたものである(英数テキストは大鬼が追加)。

筑波大学土壌セシウム広域汚染地図
※画像をクリックすると拡大されます

福島市・郡山市など福島県内で人口の多い地域や栃木県の一部が、チェルノブイリでソ連政府により補償付き任意移住が認められたゾーン(5-15Ci/km2)と同じレベルの超高濃度汚染エリアとなっていることが分かる。また首都圏の一部でいわき市などと同レベルの高濃度の汚染エリアが確認された。ちなみにそれと同じレベルのベラルーシの放射線管理強化ゾーン(1-5Ci/km2)で、安全に生活できると言われていたにもかかわらず、チェルノブイリ後の20年間にガンや白血病などの増加が見られた事実については、こちらの記事に書いた。全体的にみれば、WSPEEDIの予測データとほぼ同じ結論が得られたことになる。つまり、福島の市街地の一部は人が住むのに適さないほど汚染されており、また首都圏も対策なしに暮らしていけば犠牲者が出るレベルにまで汚染されている。セシウム137の半減期は30年で、微量となるには100年以上かかる。


■ 東京23区地表放射線量マップ(有志)


政府の公式の空間線量(場所によってはビルの屋上で測っていたりする実用性の乏しいデータ)に基づく広域空間線量マップもあるが、それよりもガイガーカウンタを所持している有志が各地で計測してくれている地表面の放射線量の方が汚染状況を把握する上で参考になる。以下はこちらのサイトからキャプチャさせていただいた東京23区内の一部で計測された地表線量地図(赤=2-1μSv/h、紫=1-0.5μSv/h、黄=0.5-0.25μSv/h、青=0.25-0.1μSv/h、何の表示もないエリアの大半は未計測)。錦糸町でも毎時1.75マイクロシーベルトという非常に高い放射線が検出されていることに注目。0.1マイクロシーベルト/hは年間で1ミリシーベルト。

東京都23区地表放射線量マップ ※画像をクリックすると拡大されます


■ 航空モニタリング第二弾


文部科学省と米国エネルギー省によるヘリを使った航空モニタリングの5月26日版が公開された前回のものと比べてわずかにしか広域になっていないのはあまりに残念だが、福島を中心とした超高濃度汚染エリアのより細かな分布が分かる。空間線量は地表から1メートル地点でのガンマ線の値である。最も恐い内部被曝で問題になるアルファ線やベータ線は計測していない。最もリスクが大きい幼い子供のことを考えれば、なるべく地表付近で計測すべきである(地表ではこの数倍となる)。0.1マイクロシーベルト/hは年間で1ミリシーベルト。

航空モニタリング5月26日土壌セシウム 航空モニタリング5月26日空間線量
※画像をクリックすると拡大されます


6月24日追記:6月17-20日に実施された福島市一斉放射線測定では、市内1118カ所(高さ1メートル地点)のうち73%が1μSv/h(年間で10ミリシーベルト、上の図では緑色)以上、最高6.7μSv(上の図では黄色)であった。


■ 文科省WSPEEDI3月15日分の一部を公開

あいかわらずWSPEEDIを隠蔽し続けている文科省が、3月15日分の予測データの一部を(6月初旬から半ばの間に)こっそり公開していた。情報隠蔽により人々に無駄な被曝をさせて犠牲者を増やしたことへの謝罪はない。当ブログの読者である天狗さんからいただいた画像により、政府はすでに3月15日にWSPEEDIのデータを持っていたことは分かっていたが、なぜかそれとは違うデータが出てきた。以下は、実測値ではないが、3月15日に発生したクリプトン85・ヨウ素129・セシウム137の拡散予測データである。当然絶対量は分からないが、相対的な濃度分布と放射性プルームの予測進路は示されている。濃い放射性プルームが首都圏にまで届いていたことが分かる。

WSPEEDI20110315クリプトン85


■ 猛毒放射性物質も検出される中、遅れに遅れる検査:人命優先への政策シフトを急げ!

政府・東電はこれまで、内部被曝で問題となるいくつかのα・β線核種について情報を隠蔽してきたが、2011年6月5日に放送されたETV特集「続報:放射能汚染地図」により、2km地点の住宅地の土壌から福島第一原発由来のプルトニウムが検出されたことが明らかにされた(金沢大学が測定)。その後、6月13日に文科省が公表した報告によると、4月29日から5月1日に採取された20km圏内の土壌から、ストロンチウム89/90、ウラン234/235/238、プルトニウム239、アメリシウム241、キュリウム242が検出された(例によってUとPuについては屁理屈をこねているが)。アメリシウムもキュリウムもα線を出す猛毒の放射性物質であり、ごく微量でも摂取すると危険だ。海と水産物の放射能汚染は前代未聞のレベルになっている。

こうした危機的状況にもかかわらず、政府は効果的な放射能除去対策をほとんど行わず、必要不可欠な検査も著しく遅れている。ようやくこの6月下旬から福島県内で内部被曝検査が始まるが、最初は1日数十人しか検査できないという。一体何をやっているのか。ホールボディカウンタが不足しているのは誰の目にも明らかであり、国内で早く増産すべきだ。当然のことながら、α線・β線を計測できる排出物検査もあわせて行う必要がある。また広域汚染地図からも明らかなように、首都圏でも相当な内部被曝をしている人々がいるため(ベラルーシでも内部被曝量については低濃度汚染地域と高濃度汚染地域で大差なかった)、広域での無料の内部被曝検診も求められる。被曝検査を抽出検査にするとか超高濃度汚染地域に限定するといったバカげたことを国がいい始めたら世論で変えさせよう。

将来の犠牲者を少なくするには、内部被曝を予防するための食品の検査と情報公開が何よりも重要だ。現状では厚生労働省の非人道的政策により、緩すぎる暫定基準の問題に加え、十分に検査できる機器も人材もそろえていないために、ほとんどすべての食品が検査を受けずにお店に並んでいる。農水省は超高濃度汚染地域でも作付けを認めており、水産物は捕れた水域ではなく漁港を産地としている有様だ。科学的には放射能に安全な量などないのだから、放射能が残留してないことを証明しなければ「風評」という主張はそもそも成り立たない。むしろ情報をなるべく与えず安全とだまして放射能を食べさせるという前時代的な政策が、東日本の食品や国内水産物から良識ある人々を遠ざけている。保健所を中心とした食品・飲料品・給食等の放射能検査体制を抜本的に拡充し、暫定基準にかかわらず食品の放射能情報を公開すべきだ。
 

関連記事
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根本から間違っていた計算方法:放射能安全基準をめぐるICRPとECRRの対立
 
 
2011/06/09(木) 14:27 大鬼
611脱原発公式バナーs

永田町の原発推進派は菅降ろしに躍起になっていますが、ここで時代を逆戻りさせるわけにはいきません。わたしたちの揺るぎない答えは脱原発だということをはっきり示してやりましょう。家族・友達みんな引き連れて、6・11の乱・世界同時脱原発100万人アクションに参加しよう!

「6・11脱原発100万人アクション」公式ホームページ
とりあえず賛同フォームに登録しておきましょう


■ 国内の主なイベント開催地

2011年6月11日(土)全国47都道府県のうち40都道府県(6月8日現在)でイベントが実施されます!これは歴史的大乱だと思います。

北海道:札幌、江別、旭川、函館、釧路
青森:青森
秋田:秋田
宮城:仙台
福島:郡山x2、南相馬
茨城:つくば
栃木:宇都宮
群馬:前橋
埼玉:さいたまx3、越谷
千葉:千葉x2
東京:練馬、新宿x4(18:00アルタ前)、渋谷(13:00代々木公園)、千代田x2、江戸川x2、港、台東、中野、小平、小金井、国立、町田、八丈島
神奈川:横浜x3、横須賀x2、鎌倉、秦野
新潟:新潟
富山:富山
石川:河北
福井:福井
山梨:甲府、北杜
長野:松本、長野、中野、佐久
岐阜:岐阜
静岡:浜松、静岡
愛知:名古屋x2、愛西
三重:伊勢
滋賀:高島x2
京都:京都x3
大阪:大阪x2、豊中
兵庫:神戸、加古川、篠山
岡山:岡山x2、倉敷
鳥取:米子
島根:松江
広島:広島x4、福山
山口:上関、山口x2、宇部
香川:高松
愛媛:松山
高知:高知
福岡:福岡
熊本:熊本、天草
宮崎:宮崎
鹿児島:鹿児島
沖縄:那覇x2、西表島



全国の最寄りイベントの検索・詳細はここから(右の方から一覧表もダウンロード可)



完全ライブ中継プロジェクト日本の独立系メディアが総力を挙げて配信予定!中継ボランティアも募集中


ポスターはご自身で用意するかここからダウンロードして印刷しましょう

脱原発ポスター展作品のスライドショー動画




■ 海外の主なイベント開催地


台湾
2011年6月11日 13:00 -
全土200ヶ所以上の駅
http://www.tepu.org.tw/

サンフランシスコ
2011年6月10日 15:30 - 17:30
The Consulate General of Japan (50 Fremont St), San Francisco, CA
http://nonuclearaction.wordpress.com/610action/

ニューヨーク
2011年6月11日 13:00 - 15:00
Tompkins Sq Park(9th Street & Avenue A), New York, NY
http://bit.ly/mH2jfH

ハワイ
2011年6月12日 11:00 - 19:20
ハワイ島/コナ Old Airport Pavilion

ドイツ
2011年6月11日 10:30 - 17:00
Treffpunkt Freiburg Schwarzwaldstr. 78d 79102 Freiburg-Oberwiehre/Waldsee Germany Zentrum Oberwiehre (ZO) の裏側

フランス
2011年6月11日 14:00 - 20:00
レピュブリック広場からオテルドヴィルまで14時からデモ行進

オーストラリア
2011年6月11日 11:00 -
メルボルン・シティ中心部バークストリートモールのGPO前


■ 各地の611チラシを勝手に紹介

<ベスト10>
※画像をクリックすると拡大されます


群馬県前橋より:大鬼賞、クオリティ高い!魚のってるよ。原発なくてもエエジャナイカ大行進
611脱原発群馬



愛知県愛西より:中鬼賞、真ん中に木があってかわいいデザイン、いのちこそたからですね
611脱原発愛知


広島県広島より:原爆ドームから呼びかける、伊方・島根・上関原発をストップ!
611脱原発広島


熊本県熊本より:うーんすごいデザインだ、さよなら原発
611脱原発熊本


秋田県秋田より:かっこいい!原発反対秋田デモ
611脱原発秋田


福岡県福岡より:パンクで核心を突いていますね、玄海再開を許すな、サウンドデモin福岡
611脱原発福岡


兵庫県神戸より:命優先の社会を!いのちを考える神戸パレード
611脱原発神戸


岡山県岡山より:エネパレ、唄って踊って脱原発
611脱原発岡山


埼玉県越谷より:セシウム暫定基準ぎりぎり!でもこうやってきちんとベクレル表示してほしい。検査なんてやっていないに等しいので、放射能の表示がないのが一番こわい。
611脱原発埼玉  


富山県富山より:志賀原発にモノ申す越中騒動!絵がすばらしい!シフトエナジーサウンドデモinとやま
611脱原発富山


<他にも日本全国チラシがいっぱい!>
※画像をクリックすると拡大されます


福島県郡山より:福島から日本を変える時が来ました!
611脱原発福島


神奈川県横浜より:ゆるっ。子供の未来のために一緒に歩こう
611脱原発横浜


北海道札幌より:かわいい。ぴくにつくでも
611脱原発札幌


京都府京都より:京都ピースウォークです、次は若狭の原発を止めましょう!
611脱原発京都


東京都国立より:あるいてみにゃー、原発どうする!たまウォーク
611脱原発東京国立


北海道旭川より:なのはなウォークにいきましょう

611脱原発北海道旭川


滋賀県高島より:オルタナティブ名世界へ向けて田植え
611脱原発滋賀


茨城県筑波より:みんな唱ってる、お星様と赤ちゃんがイラナイと言ってる
611脱原発茨城


静岡県静岡より:静岡は浜岡なくても風力王国になれるよ、菜の花パレードはまおか
611脱原発静岡


鹿児島県鹿児島より:鹿児島の皆さんお願いします、川内原発を廃炉にして!げんぱついらないパレードinかごしま
611脱原発鹿児島


<海外より>

米国サンフランシスコ・ニューヨークより:福島のどさくさに紛れて核実験をした米国からの反乱、核兵器のない世界を!6.11 No Nuke Action

611脱原発米国



■ テンション上げ用動画

さあテンションあがってきましたか?まだ足りないですか?じゃあこれを!

手のひらを太陽に
グリーングリーン(ua)
花・すべての人の心に花を
海行かば山行かば踊るかばね
2011反原発リミックス【NEW】
誰にも見えない匂いもない2011【NEW】
宇宙大シャッフル
JUMP



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世界と日本の反原発ソング集:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、ボブ・マーリー、レディオヘッド、クラフトワーク、ニューエストモデル、ブルーハーツ、忌野清志郎、中島みゆき、加藤登紀子、斉藤和義ほか
つぶやき(3)アレバの汚染水処理はデタラメ!、電力会社の違法労働現場、原発資本が放射能薬剤に関与、原発メーカー東芝WH・日立GEに反省なし
つぶやき(1)「菅降ろし」は与野党内の原発推進派による悪あがき、「電力不足」は嘘だった!
 
 
2011/06/08(水) 09:41 大鬼
つぶやきシリーズ:ツイッター上での自分のつぶやきとリツイートから、これだけは保存しておきたいものをテーマ別にまとめて掲載。補足コメントや参考資料なども順次追加。
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■ この東京三鷹の母乳セシウム137濃度4.8Bq/kgは、ドイツ放射線防護協会がこれ以上は子供に与えないようにとしている4Bq/kgという値を上回っています<http://bit.ly/m823Ov(2011年5月21日つぶやき)


<補足コメント>

国がちゃんとした検査をやらないので、市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」が5月に独自に調査しました。

<参考資料>

OurPlanet-TVのHPより引用

母乳の検査は、前回4月21日に公表した9人に加え、新たに福島県、茨城県、千葉県、栃木県、東京都在住の母親計40名から母乳の提供を受け検査をした。
 
検査の結果、茨城県土浦市在住の母親からは、1キログラムあたり、セシウム137が8ベクレル。福島県福島市の母親の母乳からは、セシウム134が 5.1ベクレル、福島県西白河郡の母親からは、セシウム134が4.8ベクレル、セシウム137が5.7ベクレル。福島県いわき市の母親からは、ヨウ素 131が5.5ベクレル。東京都三鷹の母親から、セシウム137を4.8ベクレル検出した。

東京在住の母親からもセシウムが検出されていることから、母乳調査・母子支援ネットワークの発起人で四日市大非常勤講師の河田 昌東さんは「特定はできないが、食べ物、飲み物が原因と考えられる」「母親が摂取した放射性物質の20%が母乳に入る」という。

日本の食品の暫定基準は、飲料水/牛乳・乳製品が、ヨウ素で1リットル300ベクレル以下、セシウムでは1リットル200ベクレル以下と定められているが、ヨウ素、セシウムともに1リットル10ベクレル以下としているWHOの基準より、20倍から30倍緩い基準となっている。

母乳の放射能汚染に関する調査結果

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■ 福島県21人中7人の母乳から最大13ベクレル/kgの放射性セシウム検出。厚労省側は「乳児に影響なし」主張。ドイツ放射線防護協会の4Bq、米国水基準7.4Bq、WHO水基準10Bqからみれば「微量」どころか基準オーバー <http://bit.ly/kRL6b2(2011年6月8日つぶやき)


<補足コメント>


赤ちゃんはたくさんお乳を飲むのです。

<参考資料>

毎日新聞(2011年6月7日WEB版)より引用

厚生労働省研究班は7日、母乳中の放射性物質の調査結果を発表した。福島県など8県の108人を調べ、福島県在住の7人から微量の放射性セシウムを検出したが、主任研究者の欅田(くぬぎた)尚樹・国立保健医療科学院生活環境研究部長は「非常に低いレベルで、母体や乳児への影響はない」としている。

調査は福島県と周辺の宮城、山形、茨城、栃木、群馬、千葉の各県と、比較のため原発事故の影響がないとみられる高知県の女性を対象に実施。福島県内の21人中、いわき市などの7人から最大1キログラム当たり1.9~13.1ベクレルの放射性セシウムを検出。

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■ ガンダーセン氏:東京の空気中から極めて毒性の強いアメリシウム(α線核種)とストロンチウム(β線核種)を検出<http://bit.ly/ks59tP(2011年6月7日つぶやき)


<補足コメント>

アメリシウムはやばいです。当ブログでは3号機使用済み核燃料プールでの核反応爆発説の論客として以前紹介した、米国の元原発エンジニアのアーノルド・ガンダーセンさんへの2011年6月3日付けのインタビューです。EX-SKFさんのブログが丁寧に和訳してくれました。エンジニア視点で状況がきめ細かく説明されていますので、できれば全文お読み下さい。以下はポイントのみ。

(1)事態はまったく危機を脱していない。
(2)1号機・2号機はすでにメルトスルーして溶岩状の燃料が少なくとも格納容器の底まで落ちている。すでに最悪の状況。
(3)3号機は燃料の一部がまだ圧力容器内にある可能性があり、米国NRCは圧力容器が一気に割れることを懸念している。そうなれば格納容器内での水蒸気爆発の危険性もある。
(4)4号機が実は一番厄介。燃料プールが高い位置にあるので新たに建屋を建設する必要があるが、余震などでもしも4号機が倒壊したら「日本の友人の皆さん、逃げなさい」
(5)東京を走る車のエアフィルターを送ってくれた人がいて、7個中2つが「信じがたいほど放射能に汚染されていました」。アメリシウムとストロンチウムも検出された。
(6)一番問題なのが大量の高濃度汚染水で、それが地下水を汚染したり海に漏れているが、深さ20メートルくらいの堀で取り囲んでゼオライトで満たすことをなぜやらないのか「理解に苦しみます」。

<参考資料>

http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/blog-post_05.html
http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/blog-post_06.html

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■ <GotoTetsushi>徹底追及 水産庁「魚は安全」捏造していた<gendai.ismedia.jp/articles/-/5692>この記事拍手拍手!!(2011年5月27日リツイート)


<補足コメント>

「放射性物質は魚体で生態濃縮しない」は水産庁のねつ造だった、という週刊現代の衝撃の告発記事です。国の言っている「安全」がいかにデタラメかを象徴する一件でした。当ブログでもコウナゴの検出結果に着目して「セシウムは濃縮しない」は嘘だと指摘してきました

<参考資料1>

『週刊現代』(2011年5月25日WEB版)より要約引用。

「国が展開する『汚染物質は海で希釈・拡散されるから大丈夫』というキャンペーンのウソ」

水産庁のレポート「水産生物における放射性物質について」では、海洋学者の故・笠松不二男氏の論文をねつ造して使い、「水銀と違って放射性物質は魚体で生物濃縮しないから大丈夫」と断言している。

水口憲哉・東京海洋大学名誉教授によれば、笠松氏の論文はセシウム137について魚の食物連鎖を通じた生態濃縮を証明して魚を摂取することによる内部被ばくを警告している。水産庁のいう「濃縮しないなんて、まったくデタラメ・・完全な『その場しのぎ』の産物と言えます」と語る。

勝川俊雄・三重大学海洋個体群動態学准教授もこう述べる。「生物濃縮が起こるというのは当たり前の話で、水産庁が言うような『起こらない』という論文を、僕は見たことがありません。しかも、水産庁はセシウム 137と有毒農薬のDDTを比較して、『食物連鎖を通じた生物濃縮はほとんどない』としている。それは、DDTという濃縮しやすいものと比べると少ない、という指摘に過ぎず、それで『濃縮しない』とは言えない。問題のすり替えが行われているんです」

「このように、専門家にはあっという間に見抜かれる「すり替え」も、素人である国民にはバレないと水産庁は思ったのか。」「放射性物質の内部被曝は、国民の健康を直撃する。いや国民だけではない。世界中の人々の生命を脅かす危険性すらある。そのような『究極の非常時』に、水産庁が故人の論文を都合よく使って安全を『捏造』することは、国家による殺人行為、まさに水俣病の再来に他ならない。」

本誌の追求に対し水産庁は、「こちらの意図としては、『濃縮して蓄積しつづけない』という意味で使用しており、『濃縮しない、かつ蓄積しない』という意味で使用しているわけではありません。」と反論しつつ、「濃縮・蓄積しない」と断言していたものを「蓄積しつづけるわけではない」に修正した。

しかし「蓄積しつづけるわけではない」という議論も信頼できない。水産庁の根拠は「蓄積が続く前提条件は、原発から放射性物質が放出され続けることであり、現在は流出がないことから、蓄積する環境ではない」というものだが、「原発からの放射性物質流出は止まってなどいない」。それに流出が仮に止まっても生態濃縮はすぐには止まらない。

「国が本気で国民の生命と安全を考えていないことを証明する、もう一つの事実がある。」

「本誌は前号で、菅政権がオランダ政府からの海洋調査の要望を、極秘裏に断っていたことを書いた。そのことに関する、官邸の内部文書を入手した。タイトルは『緊急参集チーム協議』、日付は4月22日~25日となっている。緊急参集チームとは、有事に首相官邸に設置される危機対応チーム。各省庁の局長クラスが参集する。」

内部文書からの抜粋------

河相官房副長官補「グリーンピースが正式にオランダ政府を通して海洋調査を申請してきた。断れば、日本は閉鎖的という批判を受けることになり、受け入れても新たな風評被害が出るかもしれない。また、適正とは思えない数値がグリーンピースから出てきた時に政府として反論できる体制をとることが必要」

危機管理監「グリーンピースが泥の調査を実施すれば反論できないため、グリーンピースの調査までに対応・対抗できるように関係省庁で調整してもらいたい」

抜粋ここまで--------

「オランダ政府が公式に申請してきたにもかかわらず、首相官邸には『風評被害の元凶』という認識しかない。『適正とは思えない』、つまり危険な数値が出た時も、政府として国民の健康を考えるのではなく、いかにして『反論できる体制をとる』かに腐心している。」

「政府がグリーンピースの船に対して『領海内の調査は認めない』と妨害したことは前号で述べたが、グリーンピースはそれに対抗して、自分たちの船を使わず漁師たちから提供された海産物の調査を行った。」

「政府が震災以来、国民の健康被害より風評被害を重視しているのは、周知のことだろう。その理由は簡単だ。目に見えない放射能の健康被害が起きるのは数年、ひょっとしたら数十年先だが、風評被害による一次産業への補償は、目の前の問題だからである。要するに、政府は補償で払うカネをできるだけ少なくしたいのだ。」


<参考資料2>

国際環境NGOグリーンピースは、2011年5月26日、「海洋放射能汚染に関する調査の結果」を発表した。

それによると、福島県沖で捕れた海産物の21サンプル中14サンプルの放射性セシウム濃度が、ゆるすぎる日本の暫定基準値(500ベクレル/kg)すら超えていた。例えば、5月5日に福島県四倉港付近で採取した海藻カヤモノリの放射性セシウム濃度(Cs134とCs137の合計)は2840ベクレル/kg、5月5日に福島県江名港付近で採取した海藻アカモクは同1640ベクレル/kg、同5月5日に福島県久ノ浜港付近で採取したマナマコは同1285ベクレル/kg、など。

ヨウ素131についても、日本のひどい暫定基準(2000ベクレル/kg)を上回るサンプルが8つ見つかった。例えば、5月5日に福島県江名港付近で採取した海藻アカモクのヨウ素131濃度は127000ベクレル/kg、5月4日に原発から南東52km地点で採取したアカモクは同119000ベクレル/kgであった。

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■ 魚の放射性セシウム濃度が核実験時代と比べても100倍以上高くなっているという水産専門家の記事<katukawa.com/?p=4549>たった5日間で9800兆ベクレルも海に出た放射能汚染水<bit.ly/fCx2Pm(2011年6月2日つぶやき)


<補足コメント>


勝川俊雄・三重大学水産資源学准教授のブログに、魚が全然大丈夫ではないことが一目で分かるグラフがありました。別の記事には、水産庁のデータに基づく県別の濃度が示されていて、「今のところ」高い濃度が出ている海産物や福島・茨城・千葉の3つの産地を避ければ、「(日本の暫定基準よりも厳しい)ECRR基準でも、十分にいけそう」とアドバイスしてくれています。ただし問題なのは、厳密に海産物が捕れた水域ではなく「水揚げ港の属する都道府県名」を「産地」として表示することが法的に可能になっていることです。それに魚は移動しますので、今後汚染の範囲が変わってくる可能性はあります。つまりお店で表示されている「産地」を見るだけでは、安全性の確認にならないということを認識する必要があると当ブログは考えます。

<参考資料>

著者の結論部分

「主要な内部被曝源であるCs-137は、1960年代の平均値が0.37Bq/kgに対して、2011年は42Bq/kgですから、すでに100倍以上に増えています。陸上へのフォールアウトもどうやら福島の方が桁違いに多いようです(http://twitpic.com/4wy6hm)。『核実験時代と311のインパクトは同程度だから、大丈夫』という主張は、無理があると思います。」


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2011/06/08(水) 09:26 大鬼
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■ アレバの汚染水処理はデタラメ:福島への装置貸出しでぼろ儲けの原発企業アレバ社、自社の再処理工場で「クリーン」なはずの排気・排水に大量の放射能が含まれ白血病まで引き起こし、米国NRCでもその技術に懐疑的意見あり<http://bit.ly/kz12T8
(2011年6月4日つぶやき)


<補足コメント>

世界最大の原発企業アレバ(本社フランス、三菱重工と提携)。欧州の研究者やグリーンピースの追跡によって、放射能をたれ流す悪徳企業であることが分かっています。そのデタラメな放射能除去技術を、1トンあたり2億円もの法外な額で売りつけてきました。日本にはそれより安価で優れた技術があります。原発企業が原発事故で儲けるな!金があるなら被爆者・被災者のために使え!アレバとの契約は破棄すべきです。

<参考資料>

フォーブス(2011年4月25日)記事「フランスによる福島原発汚染水浄化システムはヨーロッパで白血病を引き起こし浜辺を汚染している」のリンク先サイト和訳より要約引用。

「フランス企業アレバが福島の放射能汚染水を浄化するのに使用しようとしているプロセスは、フランス本国で多数の白血病を生じさせ、海辺の汚染ばかりでなく汚染水を英仏海峡から北極海へ拡散させていると非難されてきたものだ。」「同社のラ・ハーグ核燃料再処理施設で採用されている共沈殿法を使うつもりらしい。」アレバ社は「99.99%の放射能を除去できる」と確約しているが・・

米国NRC委員長グレゴリー・ヤツコ氏によると、この方式は放射能「拡散抑止の有効性に疑問があり」米国内では忌避されている。またグリーンピースやPSR(社会的責任を追及する物理学者組織)からも強く非難されてきた。

実際、アレバ社のラ・ハーグ再処理施設から海と大気に放出されている廃棄物には「高い放射能をもち、半減期の長い放射性同位体が含まれている」。「健康調査の結果、ラ・ハーグの近くでは高い確率で白血病が生じていることが報告されている。」

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■ 【必見】原発労働者27万人のうち6.5万人の生死不明、限度量を超えても線量計はずし(鳴き殺し)や線量虚偽報告は日常茶飯事。違法な労働現場、無視される非正規労働者の人権<http://bit.ly/m1MR3K(2011年6月1日つぶやき)


<補足コメント>

人の犠牲の上に成り立つ原発ビジネス。3・11前にこんなことほとんど知らなかった自分が恥ずかしい。使い捨てられていく人たちの姿に涙が出ました。事故のあるなしにかかわらず、原発は存在自体が罪です。絶対に見て下さい。



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■ プルトニウムなどの排出を促す薬を厚労省が認可方針。経団連米倉の住友と福島第一メーカーのGEが出資する日本メジフィジックスが利益を得る。効果・副作用などは不明<http://bit.ly/lo2qlW(2011年6月7日つぶやき)


<補足コメント>

EX-SKFさんが詳しく調べてくれていました。それによると、プルトニウムなどを体内に取り込んでからすぐに投薬しないと効果がほとんどなく、また副作用も厳しいとのことです。また東京茶とら猫さんのブログにはいくつかの報告書へのリンクがあります。私は薬そのものについてはよく分かりませんが、何がおかしいのかは分かります。本当に人の命を守りたいのなら、いま一番やるべきことは、保健所の検査体制を大拡充して食品放射能を徹底的に監視・表示すること、そして体内被ばく検診を広範囲で実施することです。それらを頑なに拒みつつ、企業が儲かる薬はあっさりとGOサインを出す、そういう厚労省の姿勢がとんでもないと思うのです。しかも輸入業者とはいえその利益は原発産業とも結びついているというおまけつきで。

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■ <kamitori>日立と東芝の製品は、ボイコット!!RT @hosriki ひどいな日本企業、日立と東芝はいつになったら学習するんだろ? @Reuters_co_jp リトアニア原発建設、日立と東芝の2陣営が応札(2011年6月1日リツイート)


<補足コメント>
3・11にもかかわらず、海外では原発メーカーが受注競争を繰り広げています。東芝、日立、三菱、住友は、原発事業から撤退するまでボイコットします。

<参考資料>

ロイター(2011年6月2日WEB版)より
「リトアニア政府は1日、同国の原子力発電所建設計画に、日立製作所と米GEの合弁会社であるGE日立ニュークリアエナジー、および東芝傘下のウェスチングハウスの2社が応札したと発表した。・・夏までに発注業者を選定する。」


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原発報道買収か:東電のマスコミ重鎮への接待旅行が発覚

 
 
2011/06/08(水) 07:33 大鬼
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■ やはり地震で壊れていた!柏崎も若狭も全部危ない。石橋克彦教授を中心に全国原発リスク評価・廃炉計画を早急に実施して下さい<http://bit.ly/limINq(2011年5月23日つぶやき、リンク先更新)


<補足コメント>

原発は地震で簡単に壊れます。ぜんぶ津波のせいにして防波堤さえ建てればいいとか、ありえません。耐震基準を見直してもリスクはゼロになりません。御用学者はバカの一つ覚えのように自動車にだってリスクはあるといった詭弁を持ち出しますが、リスクの規模が極端すぎて日本中・世界中の人々・子どもを巻き添えにする原発のような代物の場合は、リスクがゼロでないことがやってはいけない理由になるのです。

<参考資料>

東京新聞(2011年5月26日WEB版)より要約引用。

東電の資料に「地震発生直後に1号機の原子炉圧力容器か、容器に付随する配管の一部が破損し、圧力容器を取り囲む原子炉格納容器に蒸気が漏れ出ていた可能性を示すデータ」が見つかった。「11日の地震直後に1号機の格納容器で温度と圧力が瞬間的に急上昇していた。」田中三彦氏(元原発技師)によると「圧力容器か容器につながる配管の一部が破損し、格納容器に高温の蒸気が漏れたようだ」。3号機の「高圧注水系」システムも地震の揺れで破損したことが疑われており、「国の耐震設計指針の信頼性が大きく揺らぐことになる。」

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■ 0%の福島第一でレベル7発生、87%の浜岡だけが危険と言い張る政府、説得力ありません<http://bit.ly/kw9cwY(2011年5月8日つぶやき、リンク先更新)


<補足コメント>

菅首相が5月6日に静岡県浜岡原発の一時停止を中部電力に要請したことは評価します。しかし浜岡以外は安全だという主張がおかしいことは、簡単な計算のできる子供にも分かります。浜岡の危険性の根拠となった地震調査委員会の地震発生予測によると、2011年1月以降の30年間に震度6強以上の地震が起こる確率は、浜岡では84%で他の原発より10倍以上高いですが、実際には確率0%とされていた福島第一原発でこの大災害が起きました。まともな人間なら「浜岡以外は全部安全」ではなく「浜岡以外も全部危ないかも」と判断するはずです。

<参考資料>

石橋克彦教授(地震学者)の参議院行政監視委員会での発言(2011年5月23日)より

「リスクの筆頭は浜岡原発でありますけれども、これは津波対策が完了するまでとりあえず閉鎖なんてものではなくて、永久に閉鎖する必要があります。といいますのは東海地震による地震の揺れ、大きな余震の続発、地盤の隆起変形、それから大津波、それがすべて恐ろしいのでありまして、津波対策さえすれば大丈夫というものではありません。」

「浜岡以外の原発は大丈夫というようなことが言われていますけれども、とんでもないことでありまして。・・いろんな理由があってですね、あの若狭湾の原発群を始めとして日本全国危険な原発はたくさんあります。でそれらについて早急に点検をして、順次閉鎖に向かっていくことが必要です。」

新潟の柏崎刈羽原発が2007年に中越沖地震で停止した際、原子力安全委員会、保安院、そして東京電力は、原発沖合の海底活断層を長さ60kmが考えられるところを36kmと過小評価して、「もう原発耐震偽装と言ってもいいこと・・を保安院、安全委員会も率先して組織的に行なった。」さらに地震地質学分野の学会、大学の研究者も「海底活断層を無視することに加担している。」

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■ 浜岡原発「停止したからひと安心」は大間違い。燃料が震源地の真上にある状態は何ら変わっていない。福島第一は津波以前に地震で壊れたし4号機は停止していたことを思い起こそう<
http://bit.ly/j0X4zx(2011年6月3日つぶやき、リンク先更新)


<参考資料>

東京新聞(2011年5月15日WEB版)より要約引用。

三沢毅・京都大学原子炉実験所教授によると、浜岡原発は「運転を止めたからといって、地震や津波が起きても大丈夫、とはならない」。浜岡には運転停止後も、使用済み燃料6600体を含む9000体の燃料がある(1体が数十本の束)。福島第一4号機のように運転を停止していても燃料が冷却できない状態に陥れば事故となる。「危険と隣り合わせのため、燃料は簡単に運び出せない。国内では高速増殖炉などでの再利用も難航し、地下深くに埋める最終処分も受け入れ自治体が決まっていない。」

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■ 福井県の敦賀原発2号機の配管33カ所に穴、1987年稼働以来点検もせず、5月中に放射能49億ベクレルが漏洩したが1700兆ベクレルまでは問題ないと強弁する日本原子力発電<http://bit.ly/im0Pkv(2011年6月3日つぶやき、リンク先更新)


<補足コメント>

地震がなくても普通に壊れます。原発銀座と言われる若狭湾に乱立している原発が重大事故を起こせば、中部と関西で多くの人が死にます。石橋さんも浜岡の次に危険な原発はどこかと国会で聞かれて、若狭湾と答えました。1700兆ベクレルというのはスリーマイル島原発災害の公式放出量0.6兆ベクレルの2800倍です。そんな膨大な放射能を出しても問題にならないというデタラメな操業が許されている原発とは、重大事故を起こさなくても普段から放射能をまき散らすものだと考えるべきです。今回は世論が厳しくなっている中で起きたためにたまたま発覚しただけ。


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原子力団追放!:元福島県知事「汚職」ともんじゅ担当職員「自殺」から見える原子力利権の闇
 
 
2011/06/08(水) 07:23 大鬼
つぶやきシリーズ:ツイッター上での自分のつぶやきとリツイートから、これだけは保存しておきたいものをテーマ別にまとめて掲載。補足コメントや参考資料なども順次追加。
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■ 「菅降ろし」は与野党内の原発推進派による悪あがき!茶番はもううんざり。脱原発をめざすなら世論を築きプレッシャーをかけ続けよう。今かなり冴えてる東京新聞こちら特報部(6月3日)<http://bit.ly/lCOjNm><http://bit.ly/kL5ylj>
(2011年6月6日つぶやき)


<補足コメント>

当ブログは3・11後にありえない政策を続けてきた菅政権にはもちろん批判的ですが、菅の「ブレ」を快く思っていない「反菅」勢力については、もっと冷ややかな目で見ています。自民党や経団連を中心とした往年の原発推進派は、脱原発を求める人々とは真逆の立場から、人々の怒りに便乗して内閣不信任案を出すなど、ろくでもない権力争いにあけくれています。彼らの本当の誤算は、民主党内の原発推進派が裏切ったことではなく、多くの人々が彼らの茶番にだまされるほどマヌケではないということです。現在のシステムでは政権交代に大きな期待をしても無駄です。ましてや財界や保守メディアが必死で宣伝している「大連立」「挙党一致」とは、命を守るために出される異論をことごとく抑圧するためのファシズムです。まともな世論を地道に築いていくことと、議会政治のルールを民主化する(小選挙区制を全廃する+少なすぎる国会議員定数を増やす)ことが急務だと当ブログは考えます。

<参考資料>

東京新聞(2011年6月3日)こちら特報部「管降ろしに原発の影:与野党に『電力人脈』」より要約引用。

菅降ろしに原発の影

「菅降ろし」の風はなぜ急に力を得たのか。「背後に見え隠れするのは、やはり『原発』の影だ。初の市民運動出身宰相は、この国の禁忌(タブー)に触れたのでは」。

「菅首相が原子力政策の見直しに傾斜するのと呼応するように、自民、公明両党、民主党内の反菅勢力の動きが激化していった」。

例えば菅首相は、5月6日には浜岡原発の一時停止を、5月18日には電力事業の発電・送電の分離を検討する考えを表明、5月24日には「事故調査・検証委員会」を設置、さらに5月25日には再生可能な自然エネルギーの占める割合を2020年代早期に20%へと拡大する方針も打ち出した。

他方で自民・公明は、表向きは震災復興を言うが、不信任決議案の提出を進めたのには「原発をめぐる首相の言動が念頭にあったことは間違いない。実際、自民党の石原伸晃幹事長は6月2日、不信任への賛成討論で『電力の安定供給の見通しもないまま、発送電の分離を検討』『日本の電力の3割が原発によって賄われているのに、科学的検証もないままやみくもに原発を止めた』と攻撃。菅降ろしの最大の理由の一つが原発問題にあることを"告白"した。」

民主党内でも、「電力業界との縁が深い小沢一郎」周辺が、5月の連休後に不信任可決に向けた多数派工作を開始、5月24日には「自民党時代から地元福島で原発を推進してきた」渡部恒三が合流した。

日本経団連の米倉弘昌会長も首相の足を引っ張り続けた。「浜岡停止要請は『思考の過程がブラックボックス』、発送電分離は『賠償問題に絡んで出てきた議論で動機が不純』、自然エネルギーの拡大には『目的だけが独り歩きする』という具合だ。」

今回の福島第一原発災害には「当然、自公両党にも大きな責任があるわけだが、『管政権の不手際』に問題を矮小化しようとする意図が見える。」

与野党に「電力人脈」

自民党と原発:1954年中曽根康弘が中心となって「原子力の平和利用」つまり原発予算を初めて成立させる。1955年、自民党誕生の年に原子力基本法成立。1974年田中角栄政権期に電源三法、地方へのばらまきで原発立地を一気に進める。2009年の自民党への政治献金報告には電力会社の会長・社長・副社長・常務クラスが名を連ねている。元自民党政調副会長の加納時男は元東京電力副社長で自民党内で原発推進の旗振り役を務めた。

民主党と原発:元東京電力社長・会長で1990年から94年まで経団連会長の平岩外四は、小沢一郎が設立した「ジョン万次郎の会」を通じて小沢を支援。東京電力擁護の発言をしている与謝野馨も元日本原子力発電の社員。電力会社の御用組合である電力総連も有力な民主党支持団体、「労働組合とはいえ労使一体で・・原発推進を掲げてきた。」小林正夫(東京電力労組出身)・藤原正司(関西電力労組出身)など組織議員も。

「エネルギー政策の見直しを打ちだした菅首相は、これだけの勢力を敵に回した可能性がある。結局、菅首相は『死に体』となり、発送電分離や再生可能エネルギー拡大への道筋は不透明になった。・・すべてを『菅政権の不手際』で"収束"させるシナリオが進行している。」

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■ 電力不足は嘘だった!電力会社と経産省がグルになって情報操作し原発存続を企んでいる。東京新聞よくやった <http://bit.ly/jwlyXm(2011年5月12日つぶやき)


<補足コメント>

東京新聞の「株」が一気に上がったすばらしい記事でした。佐藤圭さんはマスコミでは珍しく信頼できる方のようです。常に人々の側に立って真実をもって体制・権力にたてつくのがジャーナリズム魂です。

<参考資料>

東京新聞(2011年5月12日)こちら特報部「『電力不足キャンペーン』にモノ申す」より要約引用。

「浜岡原発の停止決定を機に、またぞろ『電力不足キャンペーン』が始まった・・・東京電力広野火力発電所が7月中旬にも全面復旧する。そうなれば真夏のピーク時も電力は不足しない。国民を欺くような"情報操作"の裏には、なおも原発に固執する政府や電力会社の姿勢が垣間見える。」

東電が公表した「電力供給見通し」では7月末時点で5200万キロワット。そのうち中部・西日本からの融通分は100万キロワット(浜岡原発分はさらにその一部)にすぎない。広野火力は380万キロワット、さらに東電管内の揚水発電は最大1050万ワット。今年の夏の最大需要予測5500万キロワットは十分足りる計算になる。

こうしたことを隠ぺいしている東京電力は、「"得意の情報隠し"で危機をあおっている」。

政府も「電力不足キャンペーン」を煽っている。「計画停電」の狙いは「原発存続」ではないか。事故後の世論調査で原発維持派が多かったのは「国民や産業界が計画停電で不便を被ったことが一因」だった。「政府は震災直後、揚水発電の存在を積極的に公表せず、需要が供給を上回った瞬間に起きる『大規模停電』を言い立ててきた」。

NPO法人「環境エネルギー政策研究所」によると、すべての原発を停止しても電力不足など生じない。原発が半分を占める関電でさえも、揚水に加えて自家発電からの買い上げなどで「問題ない受給レベル」になる。同所長に言わせれば、この電力不足キャンペーンは「明らかに浜岡以外の原発を止めないためのプロパガンダ。電力会社と経産省がグルになっている」。


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2011/06/01(水) 03:43 大鬼
4月末に当ブログの記事で紹介した米国でのプルトニウム・ウラン増大という事実について、『サンデー毎日』(2011年6月12日号)が、武田邦彦氏らの解説とともに取り上げました。ネットの世界では知っている人も少なくないですが、マスコミや著名な専門家が取り上げたことでさらに多くの人々がこの重大な問題を知ることになりますので、意味のあることだと思います。以下、『サンデー毎日』の記事から一部を要約して紹介させていただきます。

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『サンデー毎日』(2011年6月12日号)「太平洋を越えたプルトニウムの謎」(p19-21)より(「」内は記事内から引用、それ以外は大鬼の要約・解釈

米国環境保護局(EPA)が3月後半から4月初旬にかけて環太平洋岸諸州(グアム・ハワイ・カリフォルニア・アラスカなど)で検出したプルトニウム・ウランは、「過去20年間で最大値」を示していた。他にも「ハワイ州の牛乳からストロンチウムが検出される」など、米国では「異常なデータ」が見つかっている。

EPAが検出したプルトニウム・ウランのデータについて、元原子力安全委員会委員・中部大学教授の武田邦彦氏は、「福島第1原発から飛び散ったとしか考えられない。3号機で使用していたプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の可能性もある」と述べる。

また武田氏はドイツ気象庁の放射能拡散予測データにもとづき、「米国に到達したプルトニウムの100倍以上の物質が国内に飛散した可能性が高い」とも指摘する。

この米国のデータと、早い段階でのメルトダウンや格納容器破損など様々な状況をふまえると、一つの疑惑が浮かび上がる。武田氏は、プルトニウムなどが爆発で巻き上げられたとすれば、「政府と東電が、水素爆発の状況に関して隠ぺいしている事実があるのかもしれない」と率直だ。

さらに武田氏は、米国政府が4月6日に出した文書で、検出値が出ているはずのプルトニウムをすべて「ND(未検出)」として公表した問題について、日本政府・東電の事故に関する公式発表との「整合性を考慮して」そのように発表したのではないかと疑問を投げかける。

いずれにしても、EPAのデータは日本国内での知られていない被ばく被害の少なくとも可能性を警告するものとして「非常に価値がある」(武田氏)。

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武田さん、よく言ってくれました。私たちも何度でも言いますが、アルファ線核種の存在をも考慮に入れて、内部被ばく検診(排泄物検査&ホールボディカウンタ)、食品のベクレル数表示義務化、水・土壌・大気の全核種モニタリングを大規模に実施し、徹底的な放射能除去対策を行うべきです。

なおここで紹介した記事には他にも、「東電が発注する(汚染水の)除染フィルターではプルトニウムは除染できない」(逸見彰男・愛媛大学教授)といった、かなり重要な話がいろいろ書かれています。6月1日現在、店頭にたくさん出回っていると思いますので、ぜひ読んでみて下さい。また『サンデー毎日』はEPAにも取材を申し込んだようなので、同誌の奮闘に期待したいです。


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2011/05/20(金) 02:28 大鬼
各地が放射能汚染の程度や危険性を考える上で、政府やマスコミが必死に宣伝しているいわゆる「放射線量」(ガンマ線空間線量)は測れてないものが多すぎて全然参考にならないが、土壌調査は放射性物質の積もった量を計測するため重要な手がかりの一つとなる。放射性セシウムの地表濃度について、当ブログで把握している土壌調査の結果(放射性セシウム濃度のみ)をまとめてみた。※なお土壌調査については同じ市町村内でも計測ポイントや地表の状態によって全く違う値が出ることが分かってきましたので、一つの検出値だけでこのエリアは安全だとか全部がこの濃度だといったような判断はできないことをご注意願います。

土壌セシウム濃度一覧表  
※画像をクリックすると拡大されます
※表内「セシウム全体」とはCs134とCs137の合計
※農水省の「稲作規制基準」については追記参照


■ 山崎秀夫・近畿大学教授による土壌調査について

単位が1キログラムあたりのベクレル数なので、これを平方メートルに換算して比較することは厳密には難しい。ただしいろいろ調べたところ、今中哲二氏が検討したことがある20倍にする方式と、安全委員会が文部科学省データについて回答したという65倍にする方式とがあるようなので、参考までに両方の方式で換算してみた。(※換算方法は採取した土の深さや土の質量によって違ってくるようです。農林水産省のように15cmくらいまで採取する場合はキログラムあたりの値が極端に小さくなりますので150倍にする方式で換算しないといけません)

上の換算方式で推定するなら、福島市光が丘のセシウム137濃度(20倍換算で7.5キュリー/km2、65倍換算なら24.3キュリー/km2)は、少なくとも【参考】に書いたチェルノブイリでの第二区分に相当することになる。これが人口の多い福島市中心地や福島大学からも近いエリアでの値なので、深刻に受けとめざるを得ない。東京都江東区亀戸の土壌中濃度(20倍換算で0.9キュリー/km2、65倍換算なら2.8キュリー/km2)は、少なくともチェルノブイリ第三区分にほぼ匹敵する濃度になる。アスファルトの上は一般的に雨などで放射性物質が下水に流されるため土砂の地表よりは汚染されていないと思われるが、東京でも部分的には相当な汚染があることがこの土壌調査からも分かる。

資料出所:朝日新聞・2011年5月15日朝刊


■ 文部科学省の土壌調査について

文科省の土壌調査もキログラム単位であるが、文科省のデータの場合は65倍換算で良いらしいので比較できる。福島県内の比較的原発から近いエリアのみであるが、飯舘村Aポイントでの143キュリー/km2や浪江町での685キュリー/km2は目を疑うような値だ。今回の福島原発から出ている放射性物質の量のすさまじさを改めて見せつけられる。

資料出所:リンク1リンク2


■ 木村真三氏による土壌調査について(ETV特集の感想を兼ねて)

ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」(5月16日放映)は多くの方が指摘されているように良い番組だった。番組内ではっきりと数値が分かったものは限られているが、元厚生労働省の調査員である木村さんが事故発生直後から自分で現地に赴き、多くのポイントで土壌を調べた。このような人がいることは本当に心強い。

この番組を見た人の多くがこの国の政府のひどさを改めて痛感したと思う。政府は事故発生から2ヶ月近く、20kmから30kmのエリアを一様に屋内退避などと言って避難させなかったが、浪江町赤宇木の避難所の人たちもまた政府の言葉を信じてそこで暮らしていた。ところが木村さんが土壌を計測すると、54キュリー/km2というチェルノブイリ第一区分つまり強制移住となったエリアの濃度をはるかに上回る値のセシウム137が検出された。この避難所の方々はたまたま木村さんに正しい情報を伝えられて避難所を出た。そもそも木村さんは、こうした自主的な調査を行おうとして、厚生労働省の上司からやるなと言われ、辞職を決意したという。なぜ人々の命を守るための調査をしてはいけないと命令したのか、厚生労働省は説明すべきだ。

文部科学省もその非人道さで負けていない。福島県郡山市の学校は校庭の土砂に堆積した放射性物質を懸念していたが、文科省は使用時間を制限すれば(年間20ミリシーベルトを越えないから)放射能を除去する必要はないと言った。郡山市の学校が独自の判断で校庭の土の表面を3センチほど取り除くことを決定したが、それに対しても文科省は、かき集めた汚染土の山の処理を助けもせず校庭内に保管させた。なぜ子供たちのリスクを最大限下げようとしないのか。腹立たしい。

ただ興味深かった点は、5月2日に福島県の住民らが政府と交渉した際、文科省に20ミリシーベルトの助言を行ったはずの原子力安全委員会が、文科省の代表者とは食い違う以下のような発言をしていたことだ。「20ミリシーベルトを基準とすることは、これはもう認められない。これははっきり申し上げさせてもらいます。20ミリシーベルトを基準とすること、これはもう原子力安全委員会は認めておりません。(会場ざわめき)認めておりません!年間20ミリシーベルトの被曝は許容しません、子供に関しては。それはもうはっきり原子力安全委員会として言わさせていただきます。」世論の力におされて、政府内でも異論が出始めているのでは?と少し希望をもった。

資料出所:NHK・ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」(5月16日放送)※この方が文字起こしをして下さっています(You


■ 日本分析センターの土壌調査について

過去の記事でも書いたが、千葉市の一部で1.4キュリー/km2というチェルノブイリ第三区分に相当するセシウム137汚染が出たことは重大である。

資料出所:日本分析センターの報告


■ 大量汚染が示されている以上、体内被曝検診を実施すべき。ホールボディカウンタ車・尿検診を要求しよう!

原発利権集団が、情報を隠し計測をボイコットしゆるい暫定基準まで作って被害を隠し、風評だ何だと言って原発災害の責任を一般庶民に転嫁することを、これ以上認めるわけにはいかない。得られるデータを総合的に見て言えることは、福島原発から放出された放射性物質はとてつもない量であり、汚染は相当広範囲に広がっている。今のところ土壌調査はごく限られたポイントでしか計測されていないため、土壌調査だけからは全体像はまだ見えてこないが(同じ市町村内でも計測ポイントや土質等によってかなりのばらつきがある)、先日公表されたWSPEEDIの広域予測値もあわせて考えれば、首都圏も含めてかなり広範囲に放射能汚染が広がっていることは疑いようがない。大地が汚染されていれば水もそうであり、生き物の生態濃縮や食べ物を通じて内部被曝を被る人々が増える。

大規模かつ広範囲の放射能汚染が示された以上、実際の被曝被害から目を背けるべきではない。政府は土壌・食品・水・空気などの中のアルファ線物質(プルトニウム・ウランなど)やベータ線物質(ヨウ素・セシウム・ストロンチウムなど)も含む放射性核種ごとの徹底的な調査をすべきであるとともに、もはや人体を直接調査すべき事態であると考える。服などに付着した放射能をただ測るのではなく、一人一人の体内被曝量を計測できるホールボディカウンタ車を増産して各エリアに配置し、アルファ線・ベータ線物質が検出できる尿検査も含めて、巡回して子供から順に無償で検診を始めるべきだ。あなたやあなたの家族が10年後や20年後にガンや白血病を発病しても、今現時点でどれだけ被曝しているかのデータを示せなければ、因果関係がはっきりしないとかいろいろ理屈を出してきて被害や補償を認めないという理不尽が起きることは目に見えている。現にチェルノブイリ被害者の多くがそうした経験をしてきた。自分の被曝量が分からないままでは不安は払拭できないし、今ならまだ被曝量を把握した上で対策を考える時間がある(最初の頃に体内に取り込んでしまった半減期の短いヨウ素の被曝量を測るにはもう手遅れかもしれないけどセシウムその他の被曝量が分かるだけでも全然まし)。そして体内被曝が計測されるということが、行政にしっかりとした放射能対策をさせるプレッシャーともなる。みなさん、体内被曝検診を自治体などに要求していきましょう!

<ホールボディカウンタ車・体内被曝量計測機器>
ホールボディカウンター車


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2011/05/13(金) 02:43 大鬼
■ WSPEEDI情報の一部がようやく公開された・・・

文部科学省が5月10日、隠し続けてきたWSPEEDI情報の一部をついに公開した。WSPEEDI(第二世代SPEEDI)とは数千km圏内をカバーする広域SPEEDIのことで、日本全域が範囲内のはずだが、今回公表されたのは静岡・長野の一部から岩手・秋田の一部まで、しかも3月25日まで、ヨウ素131のみ、というごく限られたデータである。予測値ではあっても、4月に気象庁が公表した飛散濃度予測マップよりもかなり細かい放射性物質汚染分布が分かるので、人々の安全にとって最重要情報の一つであるはずだ。事故発生から約2ヶ月経ってのこの公開はあまりにも遅すぎると言わざるをえない。情報隠蔽を決定した者たちの罪が法廷で問われるべきであるが、その怒りはここではいったん抑えて、今回公開されたWSPEEDIのヨウ素131の地表堆積量(沈着積算量)の濃度区分から読み解ける新たな情報を見ていきたい。

資料出所:文科省のリンク元ページ(3月25日のところ)、PDF文書「福島第1原子力発電所(特定条件WSPEEDI)[3月25日]」(3ページ目が地表堆積量)


■ ヨウ素131汚染区分(3月25日時点の地表堆積量)

WSPEEDI_ヨウ素131地表堆積分布図
※画像をクリックすると拡大されます

超高濃度汚染地区(黄色):1,000,000-10,000,000Bq/m2
福島県東部(避難エリア)だけでなく郡山市北部から福島市中心地を経て宮城県白石市南部あたりまで、そしていわき市より南の茨城県北茨城市・日立市あたりまでのエリア。ちなみに同じ資料の2ページ目を見ると、福島県本宮市や茨城県高萩市あたりまでヨウ素131による幼児甲状腺等価線量が50-100ミリシーベルトという凄まじいレベルの汚染エリア(オレンジ色)、福島県福島市や宮城・茨城・千葉の一部に20ミリシーベルト以上の超高濃度汚染エリア(黄色)が広がっていることが分かる。

高濃度汚染地区(緑色):100,000-1,000,000Bq/m2
福島県中部の大部分、宮城県の約8割、山形県の南東部、茨城県のほぼ全域、栃木県の約5割、千葉県の北部・東部と南端部、埼玉県の約4割、群馬県の約2割、東京都の奥多摩を除く大部分、神奈川県の約5割(横浜市の一部含む)、静岡県伊豆半島(熱海市から伊東市にかけて)などのエリア。

中濃度汚染地区(水色):10,000-100,000Bq/m2
上記以外の東北・関東・静岡・山梨のほぼすべて、秋田県南東部、新潟県の約5割(南側)・長野県北東部などのエリア(※福島県西部は東京都心より濃度低い)。

低濃度汚染地区(濃い水色):1,000-10,000Bq/m2
東海地方の一部、日本海側の北陸・東北地方の一部。

※超高濃度・高濃度・中濃度・低濃度という言葉は当ブログ独自もので、あくまでWSPEEDIの濃度区分に便宜上当てはめただけです。画像にある通り「実際の放射線量」ではなくあくまで予報データではありますが、広域での各地の相対的なヨウ素131堆積濃度については今のところ一番信頼できる情報だと思います(都道府県別降下量実測データは3月18日以前の一番肝心な部分が抜けている点が致命的)。ちなみにヨウ素131は放射線を出し終わるとキセノン131という放射性物質に変化します。


■ セシウム137の地表堆積量を推定してみる

当ブログでは文科省が公表してきたヨウ素131・セシウム137の地表降下量(3月19日以降、福島・宮城はデータ欠損)を集計してきたが、3月25日までの降下量累積でヨウ素131のセシウム137に対する倍率を求めると、静岡3.3倍、茨城8.1倍、東京13.2倍、千葉40倍など地域によってかなりばらつきがある(福島県についてはデータの得られる3月28日以降の1週間の合計値で比較すると約20倍)。この比率をWSPEEDIデータに適用して、3月25日時点でのセシウム137堆積量を推定すると、以下のようになる。

<セシウム137:推定値>
千葉県千葉市:250-2,500Bq/m2(実測値では53,000Bq/m2)
東京(奥多摩以外の大部分):7,700-77,000Bq/m2
静岡県の一部(熱海・伊東など):30,000-300,000Bq/m2
茨城県(北茨城・日立除く):12,500-125,000Bq/m2
福島県福島市中心地:50,000-500,000Bq/m2

ただし千葉市については日本分析センターの土壌調査(調査地点は4月14日)で、小石混じりの土の表面から、ヨウ素131が48000Bq/m2、セシウム134が53000Bq/m2、セシウム137が53000Bq/m2検出されている(3月26日から4月14日の分が含まれてしまっているが各種データを見れば3月25日までの分が圧倒的な割合を占めることは確実)。東京の大部分が千葉市よりも1ランク高濃度であるという新たに分かった事実と、この千葉市の53000Bq/m2という実測値を合わせて考えると、東京のホットスポットの値が53000Bq/m2を下回ることはほとんど考えられない(文科省の降下量データでも千葉より東京の方がセシウム137降下は多い)。また福島市の中心地より東側のエリアについては、5月6日に公開された航空モニタリングの結果でもセシウム137の堆積量が300,000Bq/m2以上という値が出ている。これらのことから、上の予測値の中の最低値よりも最高値の方が現実に近い値であると考えられる。

以上のように今回のWSPEEDIの一部公開によって、3月25日時点のおおまかな値ではあるが、各地のセシウム137の地表堆積量を以前よりはましな方法で推定できるようになった。それにしてもこの国の政府、アルファ線も地表からの放射線の多くもキャッチできないビル屋上で測った放射線量でよくもまあ人々を騙してくれたものだ。


■ チェルノブイリ汚染区分に当てはめてみると・・・

最後にチェルノブイリの汚染区分と比較しておこう。ここでは先述した理由から予測値の最高値を使って計算する。

<セシウム137:推定最大値>
東京(奥多摩以外の大部分):77,000Bq/m2(MBq/km2)=2.1Ci/km2
茨城(北茨城・日立除く):125,000Bq/m2(MBq/km2)=3.4Ci/km2
福島市中心地:500,000Bq/m2(MBq/km2)=13.5Ci/km2
※1Ci(キュリー)=37000MBq(MBqは百万ベクレル)
<チェルノブイリ>
第一区分(強制移住エリア):15Ci以上/km2
第二区分(補償つき任意移住エリア):5-15Ci/km2
第三区分(放射線管理エリア):1-5Ci/km2

福島市中心地の13.5Ci/km2とは、補償つき自主移住が進められたチェルノブイリの第二区分(5-15Ci/km2)に匹敵する。東京の2.1Ci/km2はチェルノブイリの第三区分(1-5Ci/km2)に匹敵する。この記事ですでに千葉市が第三区分に含まれると書いたが、WSPEEDIの情報から東京の大部分も第三区分に含まれる可能性が濃厚になった。この第三区分のエリアでは、住み続けても安全だと言われていたにもかかわらず、チェルノブイリ災害から10年から20年の間に、その地域で呼吸しその地域の食品を食べていた人々(成人含む)の中でガンや白血病や遺伝的病気が増加した

これらは3月25日までの堆積量の推定値であるが、もちろんその後もセシウムは放出され続けている。地表がコンクリートでかなり下水に流れたエリアを除けば、堆積量もさらに多くなっているはずだ。福島市近辺でもすでに第一区分(15Ci/km2以上)つまりソ連が強制移住としたレベルにまで達しているかもしれない。航空モニタリングのデータでは30km圏外の飯舘村で81Ci/km2以上(セシウム137)というとんでもない値が出ている。


引き続き政府には、まだ隠し持っているすべてのデータ・予測値の公表と、一向に行われないプルトニウムやウランの計測を求めたい。また25人に1人の子供をガン死させるレベルの学校の基準値や、国際基準より数十倍ゆるい食品・水の基準値を早急に見直し、徹底的な放射性物質の除去・排除に努めてもらいたい。

※たれ込みがあったので、追記もご覧下さい。


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まずは送電線を国有化しよう:独占・利益主義から分散・民主主義へ
 


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2011/05/06(金) 22:08 大鬼
■ 3号機棟爆発後の3月15日前後に最大値、ヨウ素135は桁違い、累積で全ヨウ素はヨウ素131の42倍・全セシウムはセシウム137の2倍以上

群馬県高崎市にあるCTBT放射性核種探知観測所で3・11以降に、大気中から高濃度のテクネチウム99m(Tc-99m)、バリウム140(Ba-140)、プロメチウム151(Pm-151)、ランタン140(La-140)、テルル129/129m/132(Te-)、ヨウ素131/132/133/135(I-)、セシウム134/136/137(Cs)、希ガス状のキセノン131m/133(Xe)などが検出されていた。キセノン131m/133については、3月15日前後の濃度が高すぎて計測不能となった。なおCTBTの観測所は包括的核実験禁止条約違反を監視する国際的観測ネットワークのひとつで、日本政府の機関ではない。報告1報告2 (※5月9日に一部データの訂正文書が出ていましたので追記をご覧ください)

CTBT放射性核種探知観測所のデータを集計してみた
TakasakiCTBT_FukushimaRadioactivity_stat
※画像をクリックすると拡大されます

この観測所のデータで特に注目されるのは3月15日から16日にかけて採取された空気中から極端に高濃度の放射性物質が検出されていたことだ。3号機での爆発(プール内での核爆発と思われる)直後の14日から15日にかけてのおそらく最も大量の放射能が出た日のデータだけがなぜか欠落しているものの、16日の濃度が桁違いであったことはデータで裏付けられている。文科省が公開しているヨウ素131とセシウム137の降下量データは3月19日以降の分だけで、当ブログでは気象庁の拡散予測データから3・11後の数日間に膨大な量の放射性物質が飛散していたはずと考えてきたが、そのことが証明されている。3月19日から4月19日までの空気中濃度の累積値よりも、3月16日の一日の値の方が大きい。政府が公開してきた3月19日以降のヨウ素・セシウムの降下量など、まさに氷山の一角に過ぎないということだ。

この観測所のデータからは他にも興味深いことが分かった。第一に、3月15日、3月21日、3月30日、4月18日と、断続的に放射能濃度の大幅上昇が見られること、つまり派手な爆発事象後も何度も濃度上昇があること。第二に、放射性セシウム全体の累積値はセシウム137の累積値の2倍以上、放射性ヨウ素全体の累積量はヨウ素131の累積値の42倍以上、特にヨウ素135が3月16日のみ検出であるが全核種中最大量であること。

ちなみにヨウ素131は放射線を出し終わるとキセノン131mに、ヨウ素135はキセノン135というそれぞれ別の放射性物質に変化し、さらにキセノン135はセシウム135(半減期230万年)に変化するとのこと。ということは日本の大地には今とんでもない量のセシウム135が堆積しているのでは?(※どこかセシウム135を計測してませんか?)。

※この謎の膨大なヨウ素135について、京都大学の小出裕章先生が3号機の核爆発(専門用語では核暴走)で出た可能性を指摘されています


■ 小出裕章氏が計測した3月15日東京の大気中放射能濃度

小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)が東京台東区で、これまでに最も放射能濃度が高かったと思われる3月15日に大気中放射能濃度を計測していた

それによると台東区の大気中放射能は以下のようになっていた。

 テルル132:570 Bq/m3(570,000,000 μBq/m3)
 ヨウ素131:720 Bq/m3(720,000,000 μBq/m3)
 ヨウ素132:450 Bq/m3(450,000,000 μBq/m3)
セシウム134:110 Bq/m3(110,000,000 μBq/m3) 
セシウム137:130 Bq/m3(130,000,000 μBq/m3) 

群馬県高崎市にあるCTBT観測所のデータにはこの3月15日の分が欠落している。計測ポイントが違うので一概に比較はできないが、CTBTデータにある最大値である3月16日と比較しても、桁が1・2つ違う、まさに桁違いの量の放射能が東京に降り注いでいたというわけだ。3月19日以降の分しか公表されていない文科省の降下量データが全体の降下量をいかに過小評価しているか、ここからも推し測れるだろう。原発利権政府は「パニックを防ぐ」などといったバカげた口実でWSPEEDIを隠蔽することで、このすさまじい量の放射能で多くの人が被曝することを黙ってみていたというわけだ。


■ 文科省、80km圏内でチェルノブイリ移住対象地域レベル、降下量データにはセシウム134だけを追加:セシウム134はセシウム137とほぼ同量、30km圏外でストロンチウム89/90

文科省が5月6日にそっと公開していた、「航空モニタリング」 (測定期間は4月6日から29日)で見つかった放射性セシウム134/137の地表蓄積値によると、30km圏外にある福島県飯舘村を含むエリアで3,000,000Bq/m2(81Ci/km2)以上、福島県伊達市を含む半径30km以上60km以下のエリアで600,000Bq/m2(16.2Ci /km2)以上、そして福島市(県庁所在地付近)を含む半径60km以上80km以下のエリアで300,000Bq/m2(8Ci/km2)以上の超高濃度汚染が見つかった。チェルノブイリではセシウム137の地表蓄積が5Ci/km2から15Ci/km2までの第二汚染エリアは補償つき自主移住、15Ci/km2以上の第一汚染エリアは強制移住とされた。原発災害後の避難・移住エリアの決定については日本政府があの旧ソ連政府よりも非人道的な対応をしていることが分かる。しかしこの航空観測データからはもっと広域で日本各地の地表にどのくらいの量が堆積しているのかは分からない。※1Ci(キュリー)=37,000,000,000Bq=37,000MBq(MBqは百万ベクレル)、1km2=1000,000m2

また文科省がHPで公開しているヨウ素131とセシウム137の降下量データに、4月25日からセシウム134(半減期2.1年)のデータが追加された。これまでセシウム134については全国的な降下量統計は公表されていなかった。公表された統計を見ると、セシウム137とあまり変わらない量のセシウム134が降っていることが分かる。さらに下記のようにセシウム136も放出されていることから、放射性セシウム全体の汚染量はこれまで報じられてきたセシウム137の値の2倍以上であることがこれではっきりした。

ちなみに単発の計測であるが、3月16日から19日の間に文科省は、原発から30km圏外の土壌や植物からストロンチウム90と89を検出していた。この時なぜヨウ素セシウム以外にストロンチウムだけを突然計測し、その後この計測がどうなったのかは不明である。

東京都は3月19日以降のセシウム134の降下量を公表しているが、それによると3月19日から5月1日までの東京でのセシウム134の累積降下量は6803MBq/km2(MBq=百万ベクレル)で、セシウム137の同6968MBq/km2とほぼ同量であった。米国EPAが米国内で観測したデータからもセシウム134とセシウム137はほぼ同量であったことから、日米の観測データに一致が見られた。


■ 千葉でセシウム137の地表蓄積が53000Bq/m2(チェルノブイリ第三汚染地域クラス)、キセノン133・セシウム136・テルル129/132なども検出

千葉県にある財団法人・日本分析センターがおこなった大気中濃度の測定によると、3月14日から22日までの間、キセノン133が通常値0.001Bq/m3の130万倍にあたる1300Bq/m3に急増していたことが分かった。その後キセノン133は減少しているが、4月中旬時点でも通常の600倍近い水準となっている。またその他にも大気中からクリプトン85・ヨウ素132・テルル129・テルル132などが検出された。観測地点は千葉市にある同センター敷地内である。なおプルトニウムやウランは同センターでも観測自体が行われていないとのこと。

また同センターがおこなった放射性物質の土への蓄積量の測定によると、4月14日の時点で、小石混じりの土の表面にはヨウ素131が約48000Bq/m2、セシウム134・137が各53000Bq/m2、セシウム136が1000Bq/m2以上検出された。また腐葉土の表面にはヨウ素131が16000Bq/m2、セシウム134・137が各26000Bq/m2蓄積していた(正確な数値は日本分析センターに問い合わせた)。また地中5センチの土からも放射能汚染が見つかった(5センチより深くは計測していないとのこと)。文科省が公開している千葉県のセシウム137の降下量の累積(3月19日から4月24日まで)は約5000MBq/km2つまり5000Bq/m2なので、その10倍以上のセシウム137が地表に蓄積されているという値は驚きである。ちなみに53000Bq/m2または53000MBq/km2または1.4Ci/km2という値は、10数年後にガンや白血病が発生しているチェルノブイリの第三汚染地帯のレベル(1Ci/km2以上5Ci/km2以下、つまり37000-185000MBq/km2)に相当する。これは土の地表の値でありコンクリート表面はそれより低い蓄積量だと推測されるが、いずれにしても文科省公開の降下量の累積値では千葉県よりも東京・茨城・山形・そしておそらく福島・宮城の方がセシウム137降下量が多いので、千葉で1Ci/km2を超える数値が出たということはかなり深刻な事態である。※Bq/m2=MBq/km2


■ 50km地点の土から高濃度のプルトニウム検出:食品メーカー公表渋る

5月14日、原発から50km離れた水田の土から、高い濃度のプルトニウムが検出されたという記事が出された。具体的な場所や、計測した食品メーカーの名前は伏せられている。以下、この記事からの引用である。

「この食品メーカーによると、現時点でその結果を公表するのは影響が大きすぎるため発表は控えているとのことだが、その田んぼの土からは高い濃度のプルトニウムも検出されたそうだ。」

命への影響はどうしてくれるんだと思うが、何より問題は政府がプルトニウムやウランの計測を全く行っていない、もしくはその計測結果を全く公表していないことだ。


■ その他の国内検出情報(I-131・Cs-137以外)

群馬県(政府)ではヨウ素131・ヨウ素132・セシウム134・セシウム136・セシウム137・テクネチウム99m・テルル132の降下が検出されている。

静岡県(政府)でも3月中にヨウ素131・セシウム134・セシウム137・カリウム40の降下が確認された。これによると3月1日から31日までのセシウム137の総降下量が約600Bq/m2。文科省公表データで3月19日から31日までの静岡県のCs137総降下量が約120Bq/m2なので、その5倍もの量が最初の1週間に降ったということが考えられる。

※CTBT観測所については当ブログ読者のIさん、東京都については読者Mさん、群馬県については読者Kさん、静岡県については読者Tさん、小出先生の指摘については読者Bさんから、それぞれ教えていただきました。日本分析センターの方にも質問にご返答頂きました。みなさま貴重な情報提供ありがとうございました。


■ SPEEDIは本当にすべて「公開」されたのか?

政府はこれまで都道府県に緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報を公表しないように圧力をかけるなど明らかにコソコソとしていたが、それがやっとすべて「公開」されたというニュースを知り、早速見てみた。

しかし公開されたSPEEDI情報は原発数十キロ圏内の拡散情報だけで、それより広域の情報や放出された放射性物質がそれぞれどう拡散したのかを予測できる情報はなかった。政府は近隣諸国をカバーするほどの範囲で放射能拡散情報を持っているはずで(WSPEEDIや第三世代SPEEDI)、物質ごとの大気中濃度や降下量データも持っているはずだから、こんな程度の情報しか出せないはずがない。細野統合本部事務局長は「いま政府が持っているSPEEDIに関するデータはすべて公開した。その(半径30キロ圏の)外側について、有意の情報があるとは承知していない」と説明したが、文科省による学校の殺人基準でさすがに怖じ気づいた(?)御用学者が内閣官房参与の職を辞任する際に残した爆弾発言、WSPEEDIの広域データなどがまだ隠蔽されているという暴露は、政府にとって誤算だったようだ。5月2日文科省は、隠し持っていたSPEEDIを用いたベント時の放射性物質放出状況等のデータを5000枚公表すると発表した。政府が意図的に市民の命にかかわる情報を隠蔽することや、ゆるい基準値をつくって放射能摂取を推進することは重大犯罪である。多くの人が情報の欠如や基準値によって騙され無駄な被曝をしたのだ。この重大犯罪の決定にかかわったすべての東電上層部・政府高官をいずれ法廷に引きずり出す必要がある。

人々が欲しがっているのは事実であり、原子力村の専門家が取捨選択した情報や、「パニックを防ぐ」といった情報隠蔽を正当化するための稚拙な言い訳ではない。海外の情報も常に入ってくる中、これ以上事実を隠しても政府は信頼を落とすだけだ。一体どんな放射性物質が、どれだけ、どこに拡散したのか、しているのか。この疑問にもっとストレートに答えるべきだ。汚染の程度を考える上で重要な地域ごとの降下量データは一部公開されてきたが、検出対象が2・3種類だけで、検出地点も各県に一つしかなく、おまけに最も大量の放射性物質が放出された事故発生後数日間のデータが抜け落ちている。米国(グアム・ハワイ・カリフォルニアなど)ではすでにプルトニウム・ウランテルル・ストロンチウム・コバルトなどが検出されているが、日本ではヨウ素・セシウム以外の放射性物質の検出データや予測値がほとんど公表されていない。日本全国で地表堆積量を調べないのもおかしい。人々の命にかかわる重大な情報なのに、国内でのこの情報不足はあまりにひどい。情報を独占している者が元データを隠して何を言おうと信頼しようがない。政府はすべてのデータと予測値を無条件で公開してほしい。


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続きをどうぞ

 
2011/04/29(金) 04:36 大鬼
※お知らせ:ついに専門家とマスコミがこの件を取り上げてくれました

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米国環境保護局(EPA)のRadNetのデータベースを詳細に調べてみたところ、3月下旬から4月初旬にかけて行われたグアム・ハワイや米国西海岸での計測において、異常な濃度のプルトニウム・ウランが検出されていたことが分かった。これにより福島第一原発から最も毒性の強いプルトニウムやウランが大気中に飛散していることが裏付けられた(当然海中にも放出されていることになる)。この事実に日本の政府・マスコミ・東電・御用学者はだんまりを決め込んでいるが(米国政府もアクセスの多い一般向けのページにはごく一部の放射性物質の情報しか掲載していない)、すでに海外の専門家の間やネットでは隠しきれない事実になりつつある。

今回当ブログで集計したのは、プルトニウムとウランが検出されたカリフォルニア・アラスカ・ハワイ・グアムでのフィルタ方式で検出された大気中の放射性物質濃度である(このほかにワシントン州やサイパンでもプルトニウムが検出されたとの情報があるがここでは省略する)。2011年3月11日以降の計測はほとんどの場所で1回から3回程度観測されただけで、なぜか4月上旬以来観測がされていない(これについては米国内で批判もあるようだ)。以下の図表はEPAのデータに基づいて作成したものである。

※ご自身で個別のデータベースを確認されたい方はEPAのRadNetデータベースで検索してみて下さい。「Air-Filter」「CA(州名)」「Plutonium-239(核種名)」などと選択して一番下の「Search Database」ボタンをクリックすると結果が出てきます。ちなみにグアムはGU、ハワイはHI、アラスカはAK、カリフォルニアはCA、ウランはUranium、プルトニウムはPlutoniumです。表計算(CVS)ファイルとしてもダウンロードできます。なお2011年以降のデータは単位がaCi/m3ではなくpCi/m3になっているので注意してください。私は放射能の専門家ではありませんので、できれば多くの方にEPAのデータベースを検索・検証していただけたらありがたいです。

<単位変換式と表内記号>
1pCi=1,000,000aCi
1pCi=0.037Bq
1km3=1,000,000,000m3
aCi/m3=1立方メートルあたりのアトキュリー数(大気中の放射性物質濃度を表す)
Bq/km3=1立方キロメートルあたりのベクレル数(大気中の放射性物質濃度を表す)
Pu=プルトニウム
U=ウラン
放射性核種ごとの詳細データはこちら


■ 大気中濃度の経年グラフ

カリフォルニアでのプルトニウム239の増大(過去20年)
California Plutonium239 Detection EPA
※画像をクリックすると拡大されます

アラスカでのウラン234の増大(過去20年)
Alaska Uranium234 Detection EPA
※画像をクリックすると拡大されます

ハワイでのウラン238の増大(過去20年)
Hawaii Uranium238 Detection EPA
※画像をクリックすると拡大されます


■ 3・11前の20年間と3・11後の大気中濃度平均(Bq/km3)の比較

カリフォルニア Pu238 Pu239 U234 U235 U238
3・11前の20年間 14 4 790 56 687
3・11以降 -67 78 1098 99 638
倍率 -4.8 17.5 1.4 1.8 0.9

アラスカ Pu238 Pu239 U234 U235 U238
3・11前の20年間 7 13 419 29 330
3・11以降 -63 -43 4995 -52 5680
倍率 -9.6 -3.3 11.9 -1.8 17.2

ハワイ Pu238 Pu239 U234 U235 U238
3・11前の20年間 8 4 235 20 160
3・11以降 -962 -159 7141 296 7955
倍率 -124.3 -41.1 30.4 15.1 49.6

グアム Pu238 Pu239 U234 U235 U238
3・11前の20年間
3・11以降 -296 444 6623 1554 8214
倍率 初検出 初検出 初検出 初検出 初検出


1991年から2011年2月までの20年間の平均濃度に比べて、3月11日以降、カリフォルニアではプルトニウム239が18倍に、アラスカではウラン238が17倍に、ハワイではウラン234が30倍・ウラン238が50倍に増大し、グアムではプルトニウム239とウラン234・235・238が観測史上初めて検出された。半減期は、プルトニウム239が2.4万年、ウラン234は24万年、ウラン235は7億年、ウラン238は44.7億年であり、いずれも気が遠くなるほどの時間放射能を出し続ける。プルトニウムもウランも強烈なアルファ線を出す極めて毒性の強い放射性物質だ。

これが福島原発から放出されたものである根拠は2つある。第一に、以上のような3・11以降の突然かつ大幅な濃度上昇は、上記の経年グラフからも分かるように、過去20年間一度も見られたことがない。第二に、プルトニウム・ウランが3・11以降に大幅に増加して検出されているのはグアム・ハワイ・アラスカ・カリフォルニアといった日本から最も近い環太平洋地域であり、特にグアムやハワイでの増大が目立つ。カリフォルニア(日本から8700km)とグアム(日本から2500km)の3・11後の検出濃度を比べてみてほしい。プルトニウム239は78倍、ウラン234は6倍、ウラン235は16倍、ウラン238は13倍、グアムの方が濃度が高い。東海岸諸州(メイン・マサチューセッツ・ニューヨーク・ヴァージニア・ノースカロライナ・サウスカロライナ・フロリダなど)のデータも確認してみたがプルトニウム・ウランは検出されていない(ちなみにフロリダではヨウ素131・132とセシウム136・137が検出されている)。以上のように、3・11以降の増大のパターンの異常さと地理的な観点からして、福島原発からの飛来であることは間違いないだろう。

結論:最も凶悪な放射性物質であるプルトニウム・ウランも福島原発から大気中に飛散している。


■ 日本でも飛んでいるプルトニウムとウラン

では日本の大気中のプルトニウム・ウランの濃度はどのくらいになるだろうか。残念ながら東電・日本政府・マスコミ・御用学者らが反原発世論を押さえ込むためにこれらの重大な情報を隠蔽している以上、既存のデータから自力で推測するしかない。情報の制約から、以下はかなり雑な計算になることをご理解いただきたい。

この記事に詳しく書いたが、気象庁が公開した放射性物質拡散予報データによると、2011年3月末あたりで、日本近海での最も低濃度の飛散予測エリアは福島原発上空の100兆分の1という濃度になっていた。おそらくグアムではそれよりも低い濃度で飛来していると思われるが、あえて「保守的」な計算方法(グアムの対福島希釈倍率を高めに設定すれば日本の濃度を逆算した場合に控えめな値が出るという意味)で、この100兆分の1という濃度をグアムに適用して考えてみると、3月26日放出分のデータで茨城は原発付近の約100億分の1、東京は1兆分の1の濃度なので、それぞれグアムの1万倍、100倍というおおざっぱな想定が導き出せる(グアムでの計測日は3月31日と4月1日、希釈倍率データはヨウ素131のもの)。

2011年3月末の気象庁予報データとグアム検出値からの予測濃度(Bq/km3)
希釈倍率Pu239U234U235U238
グアム100兆分の1444662315548214
東京1兆分の144400662300155400821400
茨城100億分の14440000662300001554000082140000


正確な値までは分からないが、アメリカでプルトニウムやウランが飛んでいる以上、日本の空気中には少なくともそれよりも高い濃度で飛んでいることは確実であろう。政府は放出されたヨウ素131とセシウム137の量からレベル7であることを認めたが、放射性物質の種類からみてもチェルノブイリ事故に並んでしまった(最終的な被害人数の観点からすればチェルノブイリより状況は悪い)。プルトニウムやウランはヨウ素やセシウムよりもはるかに人体に与える影響は大きいが、それらが出すアルファ線は短い距離しか飛ばないため放射線量モニタリングでは計測できない。身の回りにたくさん降っていることに気づかず体内に入れてしまえば致命的なリスクを抱えることになるのに、東電・日本政府はプルトニウムやウランについての情報を出していない。25人に1人の子どものガン死させる暫定基準を決定した文科省は、なんとこの体内被曝分を全く計算に入れないでそれだけの被曝を認めるという。10年・20年後の人体への影響についてはこちらへ


もう隠しきれないな。どうする、斑目!


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■ 追記1:データの解釈について

この記事は修正・バージョンアップされたものです。先のバージョンではデータベース結果に出てくる検出値が"Result Amount"(以下、RA)なのか"Minimum Detection Concentration"(以下、MDC)なのか分からないので両方のケースで表を掲載していました。理由はRAの値の中にマイナスのものが多数見ら れたため、素人である私は計測値がマイナスになるはずがないと疑い、マイナス値のないMDCが検出値なのかもしれないと思ったからです。しかしEPAサイ ト内のRAの定義を見つけて、RAが検出値だと確信しました。したがってMDCのケースで計算した内容をすべて削除しました。この変更によって「米国で大気中のプルトニウ ム・ウランが大幅に増加した」という結論が変わることはありません。特に日本から近い地域でプルトニウムやウランの検出値に大きな上昇が見られたことが重 要です。なおMDCを「検出限界」などと言っている人を見かけましたが、直訳すれば「最小検出濃度」であり、MDCの定義に よると、これ以下だと誤検出率が5%以上になりうる検出濃度という意味のようです。5%以下か以上かは程度問題であり、考慮する必要はあってもMDC未満 の検出値を無視していいとは思いませんし、決して検出不可とか検出値ゼロという意味ではありません。またデータベースの結果を時系列に並べ替えて気づいた のですが、MDCは1992年以降の統計にしか書かれていません。最後に、誠意と根拠をもってご指摘いただいた方々とは別に、原子力村の人たちが「デマ」 という言葉を使って必死に情報攪乱していた(おまけに東大の大先生?が単位間違えてこの記事を否定してた)ようですが、普通の人たちの良識を信頼します。


■ 追記2:検出結果の一部を公表していない政府文書について


米国EPAがPDFファイルで3・11以降の観測データをまとめて公表していることを知りました(以下、PDF資料)。それでPDF資料とEPAの元のデータベースの結果にズレがあること、正確に言えば、PDF資料から欠落したデータがあることが分かりました。例えばカリフォルニアのウラン238については、PDF資料では2つの検出値データ(0.000014pCi/m3と0.000019pCi/m3)のみが公表されていて、これらは私がダウンロードしたEPAデータの中にも見つかりました。しかしEPAのデータベースにはもう一つ「0.0000186pCi/m3(3月25日)」という検出値データがあるのですが、これがPDF資料には欠落しています(MDCは他のデータと同じ)。他にもPDF資料からの欠落データがいくつも見つかりました。要するに一部のデータを抜かして公表しているのです。プルトニウムについてもPDF資料ではすべて「ND」と公表されていますが、やはりEPAのデータベースを見る限り検出値は出ています。つまりこの「ND」とはゼロを意味するものではなく、単に「未検出」ということにしたという意味でしかありません。もしも何らかのからくりでプルトニウムの計測値を「ND」にするという政治的決定があるのであればそれはそれで興味深いですが、私としては海外の専門家がデータベースに値が隠されていると述べていたことを思い出して、一番元となるEPAデータベースを直接調べ、この記事に書きました。官僚のフィルターを通した資料よりも元の生データが一番信頼できるということは言うまでもないでしょう。


■ 追記3:福島由来であることについて


私が元データを集計する際に重視したのは、3・11前と後を比較して増えているか、どこでどの程度増えたか、という事実です。米国で観測された値の絶対値が微量だから取るに足らないか否かといったことや、かつてネバダ州などで何度も核実験をやって放射能をまき散らかしていた頃と比較して今回の検出値がどうかとか、そういう関係ない議論はこの記事では問題にしていません(wikipediaによれば米国が核実験を行っていたのは1945年から1992年まで。2011年3月31日の「新型核実験」については、実験が行われたニューメキシコ州で大幅な上昇が見られなかったことから少なくとも環太平洋諸州での大幅な上昇の説明にはならない)。大事なことは、プルトニウムやウランが3・11後に突然増えたということ、その量が過去20年間のパターンからして異常であること、地理的に日本からの距離が近い環太平洋諸州で大幅な増大が見られたこと(日本に近いほど大きな値を示したこと)などから、福島原発から飛んできているという判断ができ、それは日本の人々にとって極めて深刻な事実を示唆するものだと考えました。

多くの人にこの深刻な事実を伝えていただけたらありがたいです。


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チェルノブイリ原発災害25周年:クリス・バスビー教授インタビュー和訳
 
 
2011/04/22(金) 20:06 大鬼
やはり原発は必要なかった。私たちは全く不必要なもののために、多額の税金をつぎこみ、最低の利権集団に権力を握らせ、レベル7の大災害を引き起こし、大地と海を汚し、野菜や魚を放射能まみれにし、25人に1人の子どもをガンで殺すことを容認する基準まで作り、何万年も放射能を出し続ける廃棄物の管理を子孫に押しつける、ということをやってきた。もし3・11でも変われなければ日本は放射能まみれで衰退していくだろう。だが今なら希望はある。

先日公表された環境省「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」報告書によると、日本の風力だけで、原子炉950基分に相当する電力を生み出せることが分かった。日本にはとてつもない量の利用されていない再生可能な自然エネルギーが眠っており、それを有効活用すれば、原発をすべて停止・廃棄しても日本は十分にやっていけるということが、初めて政府の調査から証明された。「原子力は日本の電力の3割を担っている」というお話が原発容認の根拠にならないことが、これを読めば誰にでも納得できるはずだ。

報告書は、再生可能な自然エネルギーとして、太陽光・風力・水力・地熱を取り上げ(日本では最も将来性がある波力は含まれていない)、その「賦存量」(化石燃料でいえば埋蔵量を意味する)だけでなく、「ポテンシャル」(地理的・社会的な制約を考慮して環境省官僚が判断した実際に活用可能な量)を算出している。これは現在の技術レベルで官僚が現実的と考えた範囲内でのポテンシャルであり、社会的条件の変化や技術の進歩などによって上方修正も可能な値である。

報告書によると、風力だけでも以下のようにとんでもない量のポテンシャルがあることが分かった。参照ページ:104-108

陸上風力発電
シナリオ3(風速5.5m/s以上エリア・稼働率26%):6838億kWh/年(原子炉133基分)
シナリオ2(風速6.5m/s以上エリア・稼働率31%):4588億kWh/年(原子炉89基分)
シナリオ1(風速7.5m/s以上エリア・稼働率37%):2258億kWh/年(原子炉44基分)

洋上着床式風力発電
シナリオ3(風速6.5m/s以上エリア・稼働率30%):8009億kWh/年(原子炉156基分)
シナリオ2(風速7.5m/s以上エリア・稼働率35%):2903億kWh/年(原子炉57基分)
シナリオ1(風速8.5m/s以上エリア・稼働率41%):183億kWh/年(原子炉4基分)

洋上浮体式風力発電
シナリオ3(風速6.5m/s以上エリア・稼働率31%):33900億kWh/年(原子炉661基分)
シナリオ2(風速7.5m/s以上エリア・稼働率36%):16222億kWh/年(原子炉316基分)
シナリオ1(風速8.5m/s以上エリア・稼働率41%):2013億kWh/年(原子炉39基分)

風力発電合計
シナリオ3合計:48747億kWh/年(原子炉950基分)
シナリオ2合計:23713億kWh/年(原子炉462基分)
シナリオ1合計:4454億kWh/年(原子炉87基分)

解説:陸上風力シナリオ3の「風速5.5m/s以上エリア」とは、高度80メートル地点で風速5.5メートル以上が見込まれるエリアに風車を設置していった場合の発電量、という意味である。シナリオ1は風が最も強いごく限られたエリア(下記マップ上の赤色部分)にのみ風車を設置した場合であり、シナリオ2はそれよりも少し風が弱いエリアも含めた場合(下記マップ上の赤・黄色部分まで)、シナリオ3はさらに設置エリアを拡大した場合(下記マップ上の赤・黄・緑色の部分まで)である。シナリオ1は短期的に最優先エリアの風力で得られる発電量、シナリオ3は中長期的に見込まれる全風車からの総発電量、と言い換えてもいいだろう。風は常に吹いているとは限らないので稼働率も考慮されている。シナリオ1のエリアは風が最も安定しているので稼働率をやや高めに想定できるが、エリアを拡大すれば全体の想定稼働率は下がる。

原子力発電の原子炉1基あたり発電量については、このサイトを参考にして以下のように計算した。
2009年の日本全体の年間総発電量=9565億kWh/年
うち原子力は29%=2774億kWh/年
これを原子炉数54で割ると=1基あたり51.3億kWh/年

陸上風力のシナリオ1というのは、陸上で風が最も強く安定している限られたエリア(下記マップ上の陸上の赤い部分)にだけ風車を設置した場合、つまり私たちが最も努力をせずにごく短期間で作れる陸上の風車だけからの発電量であるが、これですら原発44基分に相当するエネルギー(日本の総発電量の4分の1)が生み出せる。もうちょっとやる気を出して陸上シナリオ2に以降する頃には、原発89基分のエネルギー(日本の総発電量の約半分)が作り出せている。何度も言うがこれは陸上の風車だけの発電量である。すべての原発をごく短期間で全部停止しても供給電力は一切減らないことが分かる。

シナリオ3の陸上・洋上風力の合計発電量は現在の日本の総発電量の5倍、原発950基分つまり全世界にある原発435基すべての発電量の2倍を上回る量である。これは現在の技術レベルで可能な、稼働率なども考慮された値であり、発電量を算定したのは控えめな数値しか出さない国家公務員の専門家である。今後普及が見込まれるらせん状回転棒を使った風車(風速50メートルの台風にも耐えるし鳥や低周波の問題も抑えられる)なら従来のプロペラ式風車の約4倍ものエネルギーが生み出せるが、ここで計算されている発電量はあくまで従来型の風車を想定した値である。自然エネルギーが「貧弱・安定しない・時期尚早・効率悪い」といった議論は利権集団がまき散らしてきた根も葉もない嘘である。「発電単価」でも自然エネルギーは原子力より全然安い。もともと原子力の「発電単価」とは、何万年も放射性廃棄物の管理を後世に強いるコストや頻発する事故への賠償コストなどを除外したインチキな値であったが、インチキしても負けているという有様である。私たちは思い込みをやめて科学的事実を受け入れ、圧倒的な自然の恵みを再認識すべきである。もしも私たちが本気を出せば、風力だけで原発と化石燃料火力をすべてやめても十分おつりが来る発電が可能だ。

もちろんこれはあくまで可能だという意味であって、風力だけで不必要な電気まで作るべきだと言っているわけではない。持続可能性と安定性を最大化するエネルギー源は、枯渇しないだけでなく多様で地の利を活かしていることが望ましい。特に国土の10倍以上の洋上面積をもつ日本では、洋上での太陽光・波力・風力を組み合わせたハイブリッド発電が合理的選択となる。これは海に囲まれた島国、日本ならではの自然との共存のあり方であろう。さらに火山国であるという特質を活かした地熱発電や、水が豊富にある地の利を活かした水力発電を、バランス良く組み合わせていくことが望まれる(なおバイオマスは再生可能とするためには植林を併用しなければならないようなので当ブログでは再生可能エネルギーに含めないことにした)。


◇ 風力発電で高いポテンシャルのあるエリア
※風速:赤>黄>緑、上記シナリオ1は赤のみ、シナリオ2は赤と黄のみ、シナリオ3は赤・黄・緑のエリアに風車を並べていった場合の発電量
※色のついた部分はあくまで最も効率の良いエリアであり、色のついていない部分でも風力資源が十分確保できるエリアはたくさんある

風力ポテンシャル_北海道

風力ポテンシャル_東北

風力ポテンシャル_北陸北関東

風力ポテンシャル_首都圏

風力ポテンシャル_中部近畿

風力ポテンシャル_若狭

風力ポテンシャル_中国四国

風力ポテンシャル_九州

風力ポテンシャル_沖縄


<画像をクリックすると拡大されます>


◇ 地熱資源の「埋蔵量」が多いエリア
※53度以上の地熱が見込まれるエリア、熱量・発電量は赤>黄>緑

地熱埋蔵量_北海道

地熱埋蔵量_東北北陸

地熱埋蔵量_関東中部

地熱埋蔵量_中国四国

地熱埋蔵量_九州



マップを見ると、既存の技術でもすぐに大量の電力を作り出せる風力エネルギーは、人口が密集していない地方に有利だということが分かる。特に北海道や東北は、原発依存社会を続ける限り核のゴミ捨て場とされてしまうが、原発をやめて自然エネルギー社会を実現すれば日本最大のエネルギー供給地に生まれ変わる。静岡県は風力資源埋蔵量と大都市との距離から考えると風力王国として末永く栄えることができるが、近いうちに確実に起こる東海大地震の震源の真上に建てられた浜岡原発を即刻停止させなければ、首都圏と名古屋圏を巻き添えにして人の住めない場所になるだろう。これは原発反対か推進かの選択というより繁栄か滅亡かの選択だ。東日本大震災の被災地域もこれまで原発・再処理施設を受け入れる見返りに補助金に依存してきた地方も、再生可能エネルギーの導入によってより地域密着型で持続可能な産業と雇用を生み出すことができる。自然エネルギーを活用すれば資源輸入に無駄な金を使ったり自然に怯えながら綱渡りする必要はなくなる。そのためにも国レベルでは送電線を国有化してエネルギーシフトを国策として進めなければならない。そして毎年何兆円も払ってウランなど発電用枯渇燃料を輸入することや年間4500億円もの原子力予算をやめて、その豊富な資金を再生可能エネルギーの方に振り向けるべきである。

再生可能エネルギーは日本だけでなく全世界のエネルギーを満たせる。ヨーロッパ諸国は再生可能エネルギーへの転換で日本よりも先を行っている。以下は、米国科学アカデミー会誌(2009年6月)掲載論文で算定された世界の風力ポテンシャル(単位は億kWh/年)である。どの国でも自然エネルギーだけで電力需要が満たせることが分かる。例えばアメリカの風力発電のポテンシャルは年間消費電力の23倍にも達している。

年間消費電力 陸上風力ポテンシャル 洋上風力ポテンシャル 全風力ポテンシャル 全風力/全消費電力
米国 38159 740000 140000 880000 23.1
中国 23985 390000 46000 436000 18.2
ロシア 7796 1200000 230000 1430000 183.4
日本 9741 5700 27000 32700 3.4
インド 4888 29000 11000 40000 8.2
ドイツ 5457 32000 9400 41400 7.6
カナダ 5405 780000 210000 990000 183.2
イギリス 3486 44000 62000 106000 30.4
韓国 3522 1300 9900 11200 3.2
イタリア 3075 2500 1600 4100 1.3

もう自然に反する生き方や科学の誤用はやめ、自然と共に生きるかたちで科学を使おう。この地震大国で一握りの人間を儲けさせるためだけに事故を起こしては放射能をまき散らし数万年も放射性廃棄物で私たちの子孫を無駄に苦しめる原発はすぐに全部廃止して、地球温暖化をもたらす化石燃料を使った火力発電もやめ、安全でクリーンで大量で安くて雇用と均衡発展をもたらす再生可能な自然エネルギーによって成り立つ持続可能な社会を築いていこう。


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2011/04/22(金) 01:57 大鬼
■ 政策転換?:管首相が原子力政策を「白紙」にすることを表明

報道によれば、菅直人首相は4月18日参議院において、「一度白紙から検証して再検討する必要がある。安全性を確認することを抜きに、これまでの計画をそのまま進めていくことにはならない」と述べた。内閣総理大臣が日本の従来の国策であった原子力エネルギー推進政策について見直しを示唆した歴史的にもきわめて重大な発言である。また佐藤雄平福島県知事は4月22日、福島県庁を訪れた清水正孝東京電力社長に対し、福島第一・第二原発の再稼働は「ありえません」と断言した。原発問題をめぐる状況は新たな局面に入った。

■ 原子力大政翼賛会の崩壊?:毎日と朝日は脱原発へ

毎日新聞と朝日新聞は最近になってようやく多少まともな社説を書き始めている(これまでの情報操作をまずは読者に詫びてほしいものだが)。例えば毎日の4月15日社説「地震国の原発・政策の大転換を図れ」では、石橋克彦・神戸大名誉教授という珍しくまともな地震学者が紹介され、「想定外の津波という言葉で事故を総括することは許されない」とし、事故後の原子力安全委の班目春樹(通称デタラメハルキ)委員長による「割り切らなければ原発は設計できない」発言に対して「納得できない・・・割り切り方を間違えなければ大事故は起きないのか。安全規制を厳しくし、設備や緊急時の対応策を整えれば、事足りるのか・・・どこまで安全装置を重ねても絶対の安全はな」いと論じた。さらに「原発政策の大転換を図るしかない。」「予測不能な地震と原発の掛け算のようなリスクを、このまま許容できるとは思えない・・・今後の原発の新設は事実上不可能だろう。」「原子力による電源に頼らなくても・・・再生可能エネルギーの促進や低エネルギー社会の実現がひとつの鍵となるはずだ。地震国日本に適した電源と、それに基づく暮らし方を、今こそ探っていく時だ。」という、日本のマスコミのレベルとは思えない程まともな言葉で結んでいる。また朝日の4月20日社説「原発をどうするか・脱依存へかじを切れ」では、「『原子力村』の専門家たちが右往左往する様は、これまで安全神話を信じ込まされてきた国民にとっては悪夢としかいいようがない」などと、神話構築に加担してきたメディアの一つとしての反省の弁はやはりないものの、「これまで脇役に追いやられていた太陽光発電など、自然エネルギーの拡大を柱に据え・・・原子力行政は、推進から抑制へと軸足を移す・・・こうした方向性に異論は少ないのではないか。」と脱原発色をなんとか打ち出したただし朝日ビジネス面では、"原発反対論者には対案が欠如している"というおきまりのデマを書いてる記者もいるので(反対論に欠如しているのではなくマスコミ報道が伝えないだけ)、朝日内にも原発利権の息のかかった勢力がいるようだ。ちなみに管首相の「白紙化」を宣言した重大な発言について、読売新聞と産経新聞のネット版は報道すらしなかった。保守系の新聞上層部は昔ながらの情報操作で今後も原発を推進できると考えているようだ。

■ 日本と世界の人々は脱原発を選択し始めた:ギャラップ国際世論調査(WIN)

各国の世論調査団体が加盟するギャラップインターナショナル(Gallup International Association, スイスに本部、米国ギャラップ社とは別組織)が4月19日に公表した47カ国での世論調査結果によると、福島原発大災害の前と後で、世界中で原発支持が減少し、反対世論が増加したことが明らかになった。とりわけ日本の世論が最も大きく変わり、日本では原発反対派が多数になった。こんな目に遭ってるんだから当然といえば当然の結果ではあるが、日本人の多くはまだ日本人が世界の世論をリードしているという事実に無自覚だ。3・11後の国内メディアによる世論調査では原発支持派が減ったとはいえまだ過半数を維持しているという怪しげな結果が出ていたが、他方でロイターのオンライン世論調査では7割以上が原発全廃を選ぶなど、聞き方・やり方次第で結果には大きな違いが出る。オンライン調査は投票者がネットユーザーに偏り全体世論を必ずしも正確に反映しないことは事実であるが、他方で被災地域を調査対象から除外したり正しい知識を与えず誘導的な情報だけを添えたような原子力産業に買収されてきた国内大手メディアによる世論調査も信頼性が乏しい。したがってオンライン調査ではなく、なおかつ日本の原発利権に直接的な利害関係もない、このギャラップインターナショナルの世論調査が、現時点での日本の世論についての最も信頼できる情報であると考えられる。では調査結果を見てみよう。

311と原発への態度 前支持率 前不支持率 前不明率 後支持率 後不支持率 後不明率 支持率変化 不支持率変化 バランス変化
米国 53% 37% 10% 47% 44% 9% -6% 7% 13%
中国 83% 16% 1% 70% 30% 0% -13% 14% 27%
韓国 65% 10% 25% 64% 24% 12% -1% 14% 15%
フランス 66% 33% 1% 58% 41% 1% -8% 8% 16%
ロシア 63% 32% 5% 52% 27% 21% -11% -5% 6%
エジプト 65% 22% 13% 52% 44% 4% -13% 22% 35%
イラク 62% 24% 14% 49% 37% 14% -13% 13% 26%
インド 58% 17% 25% 49% 35% 16% -9% 18% 27%
日本 62% 28% 10% 39% 47% 14% -23% 19% 42%
(香港) 48% 41% 11% 40% 48% 12% -8% 7% 15%
カナダ 51% 43% 6% 43% 50% 7% -8% 7% 15%
オランダ 51% 43% 6% 44% 50% 6% -7% 7% 14%
チュニジア 44% 29% 27% 39% 41% 20% -5% 12% 17%
ドイツ 34% 64% 2% 26% 72% 2% -8% 8% 16%
イタリア 28% 71% 1% 24% 75% 1% -4% 4% 8%
オーストリア 13% 87% 0% 9% 90% 1% -4% 3% 7%
スイス 40% 56% 4% 34% 62% 4% -6% 6% 12%
トルコ 45% 51% 4% 41% 57% 2% -4% 6% 10%
ケニア 32% 58% 10% 21% 70% 9% -11% 12% 23%
ブラジル 34% 49% 17% 32% 54% 14% -2% 5% 7%
コロンビア 24% 69% 7% 23% 73% 4% -1% 4% 5%

資料出所

3・11後に全世界的に原発神話が崩壊し脱原発世論が急増していることが明らかだ。まず世界の原子炉の半数を保有する原発三大国、米国・フランス・日本で原発不支持が増えている。アメリカでは3・11前には原発支持53%・原発不支持が37%であったが、3・11後には支持47%・不支持44%とほぼ拮抗するようになった(支持減少分と不支持増加分を足したバランス変化量は13%)。フランスもまだ支持が不支持を上回っているものの、バランスが16%変化して不支持が増加した。そして当事者である日本では、バランス変化量が42%と世界で最も大きくなった。日本では3・11前に62%が原発に賛成していたが、3・11後には不支持が多数派の47%となり支持39%を引き離すことで世論が逆転した。いま世界中が日本の人々の変化に希望を抱きはじめている。日本で原発反対派が多数派となり米国でも世論が拮抗してきたことは非常に重要な変化だ。原発大国での不支持世論増大は原発産業の中枢への大きなダメージとなり、その原発輸出先である途上国でも原発をやめて持続可能な発展を目指す動きが強まるからだ。

3・11前から原発の問題に世論が気づいて反対してきたドイツ・イタリアなどヨーロッパ諸国では原発不支持がもはや圧倒的な世論となった。カナダ・オランダ・チュニジアなどでは、日本のように多数世論が原発支持から脱原発に、つまり再生可能自然エネルギーへの転換支持に変わった。中国やインドなど途上国の一部では、情報統制や反対世論弾圧(日本の原発産業が利権を広げようとしているインドでは4月18日、フランス・アレバ社が契約している原発建設予定地で行われたデモが弾圧され死者が出た)なども影響していまだに支持が多数を占めてはいるが、そんな中国とインドでも不支持が大幅に増えていることに注目すべきである。民主化革命が進行中であるアフリカ諸国の一部で大幅な世論バランスの変化が起きていることも興味深い。

地球温暖化防止を口実にした「原発ルネサンス」という原子力利権の描いたシナリオを狂わせたのは福島原発大災害であるが、それを本当に打破して持続可能な世界を実現するのは世界の人々の力である。日本の世論は国際世論動向の鍵を握っている。日本の経済政策を「白紙」から「後退」ではなく「転換」にするには、日本の世論と民主主義がもっと力を発揮しないといけない。

■ 日本の政治はいつ変わるのか:民主主義を見つめ直そう

まだ多くの国の政府が脱原発を求める世論を無視し、原発推進政策を変えないと強弁している。しかし中には民主主義の力でふざけた政府の方針を変えさせた国もある。その代表がドイツとイタリアだ。ドイツでは社会民主党・緑の党が2020年代までの原発全廃を決定した後、政権を握った保守派が原発を2040年まで延長することを決めたばかりであったが、3・11後の数十万人規模の反原発デモと選挙での緑の党の躍進を受けて、メルケル首相が原発延長方針を撤回し、原発に最終的な終止符を打つことになった。チェルノブイリ直後の国民投票で原発の即時廃止が決定され1990年代からずっと原発に依存せずにやってきたイタリアでも、右派のベルルスコーニ政権が原発建設再開のための国民投票を準備し始めていたが、3・11後に強化された圧倒的な反原発世論を前にして政府は4月19日、原発再開計画を断念することを発表した。人々がまともな判断力をもって民主主義の力を使うことができれば、原発をなくして自然エネルギー社会を実現することは可能だ。

日本でも署名活動やデモなども行われるようになり世論も大きく変化してきたが、世論と選挙政治にはズレがある。ドイツやイタリアの有権者たちが次の時代へ進もうとする意志を毅然と示したのに対し、4月の地方選前半戦では日本の有権者の混迷が目立った。いまだに原発利権による情報操作から原発の必要性をナイーブに信じ込み、もう持続可能でないことが証明された従来のシステムに必死にしがみつこうとする年配者の票が、行き場を失い漂流を続ける投票率の低い若者の票を押しつぶした。それを象徴するのが、原発は安全だから東京に作ってもいいなどと虚勢を張ってきた原発推進論者(核武装論者)石原の都知事四選だ。

しかしより大きな問題は、選択肢がない、あるいは死票にされるリスクが大きすぎて選択肢が2つしかなくなりどちらの選択肢もクソである、というポンコツシステムが世論と政治の乖離を拡大していることだ。民主党政権が非道であることはこの間の動きで明らかだが、それへの対案がこれまで原発を推進してきた張本人で電力会社から多額の献金を受けてきた自民党でしかないのであれば、選挙など何度やってもインチキが繰り返されるだけだ。日本の二大政党は両方とも原発推進派で目くそ鼻くそだ。二大政党が競ってやることといったら、放射能で子どもを被曝させてまで原発利権を守ることや、さんざん儲けてきた組織が何兆円も出せるのにぎりぎりでやりくりしている庶民から消費税を上げてまで搾りとることや、ちゃっかりと議員定数を削減して小選挙区を増やすことで議会を世論から遠ざけるといったことだ。日本の国会議員定数は米国に次いで少なすぎて世論を正確に反映する機能に乏しく、ヨーロッパ水準の民主的議会にするには議員定数を少なくとも2・3倍に増やさなければならないはずだが(※下記参照)、昨今では議員減らせば政治が良くなるといった大嘘で有権者をだまそうとするクソ政治家が目立つ。小選挙区制は死票を最大にして世論を歪めるために導入された、最も非民主的な選挙制度である。ドイツで少数政党である緑の党の躍進が大政党を動かし原発政策を変えたように、利権よりも人命が重視される政治を実現するためには、地道な世論づくりの他に、民意が議会に極力正確に反映されるようなルールが必要だ。民意をゆがめる政治献金や小選挙区制を撲滅し、議員定数・選挙区・比例代表・住民投票機会を拡大し、さらに移譲式投票のような死票を最小にしながら政党比例代表を補完する制度を取り入れるなど、民主政治の基本設計から問い直すべき時だ。

※国会レベルの単位代表人口(議員1人が代表する人口数:この数値が大きいほど人口のわりに議員定数が少ないため世論が正確に反映されにくい非民主的な議会になる)
米国=71万人(下院435議席・人口3億896万人)
日本=28.6万人(衆議院480議席・人口1億2729万人)
韓国=16.2万人(国会299議席・人口4833万人)
ドイツ=13.3万人(下院614議席・人口8175万人)
フランス=11.3万人(国民議会577議席・人口6545万人)
オランダ=11.1万人(下院150議席・人口1659万人)
イギリス=9.5万人(庶民院646議席・人口6157万人)
スウェーデン=2.7万人(議会349議席・人口934万人)


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原子力団追放!:元福島県知事「汚職」ともんじゅ担当職員「自殺」から見える原子力利権の闇
 
 
2011/04/18(月) 16:08 大鬼
■ 権力者たちの案:札束で事態収拾図ってまた原発推進?

権力者たちから、賠償がらみで、原発と東電の存続を前提にしたゴミのような案がいっぱい出てきた。

まず政府内にある東京電力分社化案。これは巨額の損失を抱え込む原発部門だけを一時東電本体から切り離して、一時的に国営にして税金で尻ぬぐいさせて黒字にしてから電力会社にお返しする、というもの。

次に財界の東電責任なし・政府は金だけ払え論。日本経団連の米倉弘昌(住友化学代表取締役会長)は、今回の原発災害は想定外の天災によるものだから東電に賠償責任はなく、政府=納税者が責任を負うべきで、国有化など問題外、何より株価や原子力産業を守ることが大事だと言っている(ちなみに住友グループといえば茨城県東海村の臨界事故で賠償責任を負ったJCOの親会社が住友金属だ)。

東電以外の電力会社(ただし原発メーカーや出資銀行は入っていない)による「共済制度」を作って共同で賠償金の一部を支払わせる案も急浮上してきた。もっとも、東電はまるまる存続させて利益を認めて、その利益からいくらか出させるというわけだ。

これら案に共通する特徴は、第一に東京電力という重犯罪企業を今後も存続させようとしていること、第二に被曝の被害に遭っている人々の声よりも誰が金を払うかということに関心が集中していること、第三に原発推進というエネルギー政策の基本を見直すといった大局的な視角=反省の欠如である。原発の停止・廃棄の方向性は議論すらされず、耐震基準を見直すだとか電気系統を補強するといった、ちょっと「想定」を変えてみました的なごまかしでまた安全神話を作り、あくまで原発にしがみつくつもりのようだ。ふざけているのか。そんなに短期的な利益が欲しいのか。民主党も自民党も財界も、こんな連中に決定を委ねていては次の浜岡原発大災害=首都圏放棄へとまっしぐらだ。

■ 再生可能自然エネルギー社会と抵抗勢力

チェルノブイリ級の大惨事を現実に引き起こして多大な被害を与えていること、放射能の被害は人体にきわめて深刻で取り返しのつかないものであること、1万年以上私たちの子孫に核のゴミ(放射性廃棄物)の管理を強いるというとんでもないコスト(史上最大の無駄)、原発は技術として欠陥があるだけでなく経済的にも非効率で時代遅れであること、実は自然エネルギーだけで電力需要をすべて満たせること、さらに日本列島が千年に一度の大地震活動期に入ったことなどから、常識的に考えれば分かることだが、原発は直ちに全面停止し廃炉を始めるべき時が来ている。

しかし利権の世界は人間的良識で動くものではない。原子力・石油などリスクが大きく未来もない斜陽産業の大企業が再生可能エネルギーを受け入れないのは当たり前だ。太陽や風や水のエネルギーはどこでも手に入るから、地域や小規模のグループでもローカルに発電ができ、大企業が従来のように利益を独占できなくなる可能性が出てくる。だから大企業の利益の恩恵に与っている御用学者や政治家も一生懸命ポンコツエネルギーを守るため、それがないと世界がまわらないかのような流言飛語を繰り返している。それに加えて核兵器が大好きな脳筋議員も抵抗勢力に加わっていることを見逃してはならない。この連中の特徴は人命よりも利権を優先するという点にある。私たちはただ安心して暮らしていくために、放射能だけでなくこういった権力者ともたたかわなければならない状況にある。

■ 送電線を国有化しなければならない理由

ではどうやって再生可能エネルギー社会に移行するのか。まずは日本全国の送電線をすべて国有化して、電力会社の権力の源である電力流通支配を打ち砕くことだ。

送電線を道路、電気を車にして考えれば分かりやすい。東電のような地域独占企業が送電事業も独占している現状というのは、いわば道路が特定の企業によって独占されていて(彼らは車も作っていて)、彼らの車を買わなければ道路を走ることが許されないという状態である。道路を占有されている以上、あなたがいくらすばらしい車をつくってもそれを走らせることはできない。しかも彼らの作る車とはひどい公害車か、事故を起こせば大爆発して周りを巻き込むような車ばかりである。独占企業から道路を取り上げて国(公共組織)が管理し、逆にクリーンな車を走らせて危ない車はなくしていくような公的な規制を作ることが必要である。つまり送電線を独占企業の手から引き離して公有・公共財産とすることで、ローカルな再生可能エネルギー発電を抑圧せずにむしろ推進していくことが可能になる。(ちなみに同じ国有化でも政府内の一部にある「原子力発電部門のみ一時国有化」という議論が東電を喜ばせるだけで庶民にデメリットしかもたらさないゴミ案であることはもうお分かりいただけたかと)

この問題は賠償とも関係する。おそらく今回の賠償をまともにやるならば10兆を越えるだろう。ここでも書いたように、賠償はまず原発産業全体が可能な限り負うべきであるが、その上で政府が電力会社の送電部門を収用することを必須の条件として賠償金を一部肩代わりする、というのが被曝した人々や納税者にも納得がいくやり方だ(米倉の言うような税金で東電を救っておいて東電は儲け続けるし公的資産は一切増えないしでは誰も納得できるわけがない!)。

送電線の国有化で困るのは、電力会社とそれに出資してる銀行くらいで、基本的にこれをやらない政府は人々の利益を損ねていると考えて良い。

■ サステイナビリティの意味:自由化ではなく民主化を

では発電部門はどうすべきか。一昔前には何でもかんでも自由化・民営化すればいいといった風潮があったが、それは一部の人間が公共財産を私物化して儲けるための躰のいい言い訳に過ぎない。自由化=市場主義というのは短期的には機会を増やすように見えるが、長期的には資本力のある企業がより強くなって各地の電力供給をまた独占しはじめる(実際自由化した国でその傾向が見られる)。そして自由化=市場主義では利潤動機(金儲け主義)ばかりが重視され、地域を良くしたいとか安全に暮らしたいといった他の動機が軽視され、最終的には持続可能性のない格差社会が作り出される傾向がある。

エネルギーや環境の持続可能性を追求するならば、社会も均衡のとれた持続可能なものにすべきではないか。そのためには好き勝手やらせるだけではダメで、利益よりも人命が尊重される社会にするためのいろんなルールを民主的に決めていくことが必要だ。例えば送電部門を取得した政府は、原子力を含む旧式有害エネルギーの廃棄・再生可能エネルギー普及促進といった大きな基本方針を作った上で、それがまともな雇用を創出したり都道府県・自治体・地域の零細業者・非営利組織・地方大学などが持続的・分散的に発電供給にかかわれるような社会的ルールも作れるはずだ(ドイツは再生可能エネルギーへの転換を政策的に正規雇用創出・ワークシェアリングと結びつけた)。状況によってはもっと利益の出る場所に資本移動ができてしまうような大企業に依存するよりも、その土地で生きていく人々が自治体に雇われたり自治体と契約したりして発電を直接営む方が、職業の長期的持続可能性という視点で考えれば優れている。一元管理となる旧式発電所では難しかったが、太陽光・風力・波力・地熱・水力など自然エネルギー発電の場合はローカルな管理こそ適している。これまで原発で儲けてきた電力会社には原発の廃炉・燃料廃棄という当然の責任を果たしてもらうことに専念してもらおう。地域住民がグリーンエネルギーの供給権を掌握できれば、地方経済活性化や災害復興の助けにもなるだろう。このように本当の意味でサステイナブルな社会をつくっていくには、市場原理ではなく住民世論、つまり民主主義の力が必要である。

まずは再生可能エネルギーのことを学び(ざっと調べたらこんなのが見つかりました~パネルなし太陽光発電ジャイロ式波力発電洋上ハイブリッド風車マイクロらせん水車)、住んでいる場所や近海でどんな発電が可能なのかを考えてみよう。そして自治体が何をやっているか、やっていないのかを調べて、市議会議員に聞いてみよう。


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2011/04/18(月) 11:19 大鬼
3・11後の原発推進派による情報隠蔽や非科学的な放射能摂取推進キャンペーンを目の当たりにして、原子力権力の理不尽さや腐敗を知ることになった人は多い。今回はこの原発権力の闇の部分に少し焦点を当ててみたい。

週刊朝日の記事(2011年3月30日)によると、福島原発大災害が天災ではなく人災であると断言する佐藤栄佐久・元福島県知事は、もともとは原発推進派であった。彼が原発の安全性への疑念を抱くようになったのは、1988年末に福島第二原発3号機原子炉で破損事故が発生して警報が鳴り続けていたにもかかわらず、東京電力が情報を隠して運転を続けていたということが発覚したからであった。この時彼は知事として通産省(現・経産省)に抗議したが無視されたという。

さらに2002年の夏、東電が福島第一・第二原発の原子炉のひび割れを隠蔽している、という恐ろしい内容の内部告発が何者かによって福島県庁にもたらされた。経産省の原子力安全・保安院はこの情報を2年前につかんでいながら、調査をするどころか東電に内部告発内容を逆リークしていた。このことが発覚し、東電幹部の責任が追及されて17ある東電管理下の原子炉すべての一時停止にまで事態は及んだものの、経産省はその後も何食わぬ顔で「原発は絶対安全だ」キャンペーンを続けた。

佐藤元知事は、1998年に一旦は条件付きで認めた福島第一原発3号機のプルサーマル(MOX燃料を使う原子炉)計画に対して、2003年に受け入れ拒否を表明した。その理由は、青森県六ヶ所村の使用済み燃料再処理工場がトラブル続きで、原発燃料の行き場がなくなることが明らかになったため、特にプルトニウム・ウランを混ぜたMOX燃料を福島原発の燃料プールに保管しておくことがあまりに危険だと判断したからである。

以上のように福島原発をめぐっては過去にいろいろなトラブルがあり不確定な状況が続いていたのだ。過去の不祥事で停止に追い込んでいれば、今頃こんな惨事にはなっていなかったであろう。しかし2006年、反小泉改革の姿勢を鮮明にしていた佐藤知事を東京地検特捜部が汚職容疑で逮捕した。特捜という集団は、これまでも米国や財界によく思われていない田中角栄系(アジア重視派)の政治家ばかりを汚職スキャンダルのターゲットにしてきた国策捜査組織であるが、その組織が原発政策にとって障害となっていた福島県知事を排除するために動いた。ちなみに控訴審で「収賄額ゼロ」の「有罪判決」が出ているが、詳しくは、佐藤栄佐久著『知事抹殺:つくられた福島県汚職事件』(2009年・平凡社)に書かれているとのこと。前知事辞職を受けて、佐藤雄平・現福島県知事が就任、2010年に福島第一3号機のプルサーマル受け入れを決定した。

福島原発大災害は、これまで原発権力が住民の安全にかかわる重大な情報を隠蔽し、彼らの政策にとっての障害物を排除しつつ利権をむさぼってきたことの結果であり、人々を欺いた権力者たちが招いた人災である。

一方、福井県では高速増殖炉「もんじゅ」のトラブルがらみで、動燃・日本原子力研究開発機構の関係者が変死する事件が起きている。

もんじゅにはこれまで2兆円以上の税金が注ぎ込まれ、1日数千万円の維持費で、これまでの総発電量はゼロ、トラブル続きで信頼性ゼロ、さらに活断層付近にあり下手をすると大量のプルトニウムをまき散らかして関西・中部に取り返しのつかない被害をもたらすという、国家プロジェクトの高速増殖炉だ。2010年夏には重さ3トンもの燃料交換装置が炉心内に落下するという事故を起こし、現在でも落ちた装置が溶けて変形して取り出せなくなっているため異常事態が続いている。そしてこの装置の管理担当者であった日本原子力機構の課長が、2011年2月に付近の山中で「自殺」したと報道された。一体、管理者自らがさじを投げるしかないような代物を、どうやって信頼しろというのだろうか。

もんじゅがらみの「自殺」事件は過去にも起こっていた。もんじゅが1995年にナトリウム漏れ事故を起こした際、現場を撮影したビデオ映像が編集で隠蔽されていたことが判明し、動燃の汚いやり方に批判が集中していた。1996年1月、動燃のビデオ改ざん問題で内部調査を行っていた西村総務部次長が「自殺」したとの報道を機に、メディアは一斉に本件への追求をやめた。しかし西村さんの遺族は、遺体の状態から警察発表にあるホテル11階からの飛び降り自殺説には多くの無理があることや、西村次長が前日の記者会見で虚偽の内容の発表を強要されていたことから納得いかず、裁判でこの問題を追及した。しかしメディアも司法も遺族の声を取り上げなかった。もんじゅの不始末で生じた原子力政策への批判的世論を抑えるため、この「自殺」事件が幕引きに利用されたようだ。

「汚職」事件も「自殺」事件も真相は分からないが、その周辺情報から浮かび上がってくる原子力利権の姿はかなりいかれている。チェルノブイリ級の大惨事を引き起こしながら、奴らが性懲りもなく「原発は安全になった」と言い出すのも時間の問題だ。これ以上奴らのウソに振り回されて、奴らに社会をめちゃくちゃにさせるわけにはいかない。もう公式の情報をナイーブに信じたり、誰かが何とかしてくれるなどと期待することなどできない。一人一人が学び、発言し、世論のちからでこの強大な原発利権から日本列島を取り戻そう。


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2011/04/13(水) 23:34 大鬼
以下のサイトが、公表された食品・水道水の放射能汚染値と毎日の放射性物質降下量を見やすくまとめてくれています。このサイトは他にも、原子炉のデータや海水の放射能値などかなり詳細に情報収集していますが、健康防衛上の最重要のデータは体内被曝にかかわる以下の3つなので、ここにリンクを貼らせていただきます。こまめにチェックした方がいい情報です。

食品の放射能値(地域別)
水道水の放射能値(都道府県別)
新規の放射性物質降下量(都道府県別)

これを見ると、福島県だけでなく北関東・首都圏や長野・静岡・新潟の一部まで野菜の汚染が広がっていることが分かります。生態濃縮にはある程度時間がかかるので、今後は特に魚や家畜の放射能の動向にも注意が必要です。

データを見る際の注意点ですが、日本の「基準値」以下なら安全だなどと絶対に思ってはいけません。放射能は低濃度でも確率的被害(1万人中何人がガンになるか)を被り、被曝量に比例してリスクが上昇するため、ここからが安全という「しきい値」など存在しません。基本的にわずかでも残留放射能が検出されたら、他に代わりとなる食品が全くない場合以外は摂取を避けるべきです。とりわけ幼児・青少年・今後子作りする可能性のある人がいる家庭では、絶対に日本政府の言うことを信じてはいけません。年配の人やもう子供をつくらない人に対して、どうしても基準があった方がいいというなら、日本の緩すぎる暫定基準ではなく、最も精密な調査に基づいて考えられているドイツ放射線防護協会の基準「8ベクレル/kg」(水・食品全般)を推奨します。8Bq/kgを越えるものは摂取を避けるように。

もう一つの注意点として、公表されているヨウ素とセシウムは放射性物質の氷山の一角に過ぎないという点です。福島原発からはプルトニウムやストロンチウムなど他にも有害な物質が放出されていますが、政府は意図的にこれらのデータを公表していません。

多くの人が政府の「基準」を盲信して「まあ大丈夫だ」などと根拠もなく思い込んでしまっている限り、放射能対策は前進せず、被害が出ているのに被害がないことにされてしまいます。原発推進派を喜ばせるだけです。多くの人が厳しい目をもって放射能摂取回避行動をとることによって、真っ当な対策が避けられない状態を作り出すことになり、そのことが多くの人命を救うことにつながりますし、原発が経済的にも割に合わない事業だということを政府に分からせる力にもなります。政府は速やかに基準を厳格にし、汚染食品の徹底した排除と対策を行い、水道局は速やかに放射能除去装置の導入をおこなうべきです。チェルノブイリ級の大惨事を引き起こしながら原発政策を見直さず、税金を使った賠償で金を払えばすむなどとふざけた考えを抱いている原発利権集団に対し、日常生活のレベルから抵抗していきましょう。そしてこの体験を脱原発・自然エネルギー社会に向かわせる世論の力にしていきましょう。


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都道府県別放射性物質累積量:首都圏にも大量の放射能が降っている
 
 
2011/04/12(火) 08:41 大鬼
報道によると、内閣・原子力安全委員会は4月11日、福島原発災害の発生直後、1時間あたり最大1万テラベクレル(1京Bq)の放射性物質が放出されていた。また原子力安全委員会は4月12日、3月11日から4月5日までのヨウ素・セシウムの大気中への放出総量を63万テラベクレルとの推計を発表した。ここにきて同委員会はようやく、福島原発災害が最悪のINESレベル(深刻度)であるレベル7に相当するとの見方を示した。

今回の政府の発表内容で最も驚きなのは、結局最初からレベル7になっていたということである。INES基準で最悪のレベル7は、放射性物質放出量が数京Bqになる原発災害であり、1時間あたり数千テラBqの放出であったとしても3月11日の間にすでにチェルノブイリと並ぶレベル7の大惨事が発生していたと見なすことができるはずだ。

問題は事故発生直後の数日のデータをこれまで政府が隠してきたことにある。別の記事で書いたが、気象庁は3月11日から数日間に異常に高濃度な放射性物質が飛散すると予報していたにもかかわらず、政府はこの予報を4月5日まで隠していた。より精密な予測をしているSPEEDIのデータのリアルタイム公開を拒み続けている。文科省が公表している放射性物質の降下量データも、3月11日~18日の部分が完全にぬけている(よって当ブログで公開している都道府県別放射性物質総降下量も3月19日以降の累積であるが、3月11日放出分の降下量を独自に計算してみたところ桁違いの量になった)。

つまり政府は、事故発生直後に放出されていた桁違いの量の放射能についての情報を隠し、適切な注意喚起を怠り、安全だ安全だと言い続けることで世論を誤った方向に誘導し、多くの人々に不必要な被曝被害を与えたということだ。チェルノブイリ級の事象が生じ「制御不能」の状態に現場が追い込まれていた時、政府もマスコミも御用学者ものんきにレントゲンの話などをしていたわけだ。原子力利権集団はどれだけ人をバカにしているのか。ニューヨークタイムズによれば米国の専門家も、日本政府がチェルノブイリ級の放射能放出を1ヶ月間も隠してきたことに衝撃を受けている。この記事に書いたように、チェルノブイリ原発災害では25年間に100万人が被曝が原因の病気で死んだ。政府は一連の情報隠蔽を正式に謝罪し、すべての情報を速やかに公開し、食品・水の基準を厳格にするなどして被害を最小にしなければならない。そして利権のために人命と持続可能な経済社会を犠牲にする原子力は、「安全性を高めて存続」といったインチキ茶番劇第二幕の準備に必死になっているが、産業まるごとこの世から消えてもらわねば困る。電力は自然エネルギーで十分足りるので原発を全部なくしても原子力利権集団以外に誰も困らない。

※原子力安全委員会は4月10日、非公開にしてきたSPEEDIデータを元に、原発周辺自治体における3月12日6時から4月6日0時までの外部被ばくの積算線量を公表した。これに基づいて避難地域をどうするかを議論しているわけだが、桁違いの放射能が出ていた3月11日の分を除外していることに注目してほしい。またこれは外部被曝の累積量であり、内部被曝はこれとは比べものにならないほど大きくなるが、そういう一番大事なことは計算から除外している。そしてそもそも予測のために使うはずだったSPEEDIを事後的にこんな被害でしたという形で使う。これが情報操作というものである。


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2011/04/10(日) 21:04 大鬼
■ 20ミリシーベルト:子供に200倍の被曝を認める文科省

ICRP(原発推進派の国際組織)は、年間1000マイクロシーベルトを被曝許容量としているが、今のような「緊急時」には20000マイクロSv(20ミリSv)まで認めるべきだと日本政府に働きかけてきた。

報道によると、文部科学省は4月10日、福島県の幼稚園や学校に、大気中の放射線量のモニタリングデータに基づき、児童・生徒たちの校庭活動での被曝を年間20ミリシーベルトまで許可する方針を検討している。

日本政府はこれまで、水・食品の暫定基準など、国際的基準よりも20~30倍高いゆるい規制値をなし崩し的に決めてきたが、今回は子供たちの年間被曝量基準を、ICRP通常時基準の20倍、ECRR(環境・人命重視派の国際組織)基準の200倍にしてしまうというものだ。


■ 25人に1人を殺す基準

20ミリシーベルト/年とはどういう放射線量か。もともと日本では原発作業員など極めて特殊な職業の人に年間50ミリSvまでを許容してきたが(現在作業員は250ミリSvにまで許容されているが)、それと大して違わない被曝量を子供に認めるということは、どんな事態をもたらすのか。

基本的に放射能の被害は確率的被害であり、ここからは絶対に安心という値など存在しない(※この点については別の記事で詳しく述べましたが、他にも説明している人が何人かおられます)。京都大学の小出裕章先生によると、年間1000マイクロSvの確率的被害とは、数年~数十年の間に、1万人中4人が被曝によるガンにかかる、というものである。つまりICRPの基準とはそのレベルの確率的被害までは安全ということにしようという意味だ。30歳くらいの大人であれば、年間20ミリ(20,000マイクロSv)という基準は、125人に1人が被曝による癌で死ぬ、という確率的被害を認める値である。

しかしこれは成人についての確率的被害なので、幼児・未成年の場合はこれよりもさらに発癌率は高くなる。小出先生によれば概算で子供は5倍の影響を受けるため、年間20ミリSvをあびてしまえば、25人に1人の子供が将来ガン死することになる。

なお米国の「社会的責任のための医師会」も、この20ミリSv/年という基準は200人に1人、2年間だと100人に1人をガン死させると言っています。

※この記事を書いた時点では、大鬼は20ミリシーベルトの確率的被害を、1000人に1人であると思っていましたが、これでは被害をかなり過小評価していると考え修正しました。


■ 体内被曝を含めれば恐ろしい被曝量に

大気中の放射線量で判断するということは外部被曝量しか計算しないということだ。しかし本当の危険は体外被曝ではなくて放射性物質を吸い込んだり飲んだり食べたりすることで起こる体内被曝であることは、当ブログでも繰り返し説明してきた。空間からの外部被曝で20ミリSv付近に達する頃には、体内からそれとは比べものならないほど大量の被曝を被っている。リスクの計測方法がそもそも間違っているので、致命的な「想定外」の事態を招くことは明らかである。


■ 緊急時用の基準という理不尽な発想


そもそも「緊急時」だから通常時よりもあまい基準を適用するという発想はおかしい。私たち住民の立場から言えば、緊急時こそ厳格な基準が求められる。というか、被曝量の基準が問題になるのは常に緊急時である。そして緊急時だからといって人間の放射能耐性が増えるわけでもない。ではなぜ原発推進派は「緊急時」基準といったバカげたことを強引に決めようとしているのか。動機は非常に分かりやすい。反原発世論を抑え込み厄介事を回避するために、基準をゆるめて被害をないものにする、という話である。彼らはことあるごとに定説はないとかいろいろと理屈をならべるが、行動パターンを見れば、原発利権を守るために人命を犠牲にしていることは明らかである。


■ 子供たちを守って!文科省に意見を書いてください

20ミリSvという基準が既成事実化すれば、他の地域の学校にも適用されていくだろう。こんなことを認めてはいけない。以下のフォームに意見を書いて子供たちの命を守ろう。地域の学校にも声を伝えよう。

文科省の政策評価に関するご意見フォーム



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2011/04/10(日) 13:41 大鬼
■ 米原子力規制委員会の極秘報告書が示唆した格納容器内水素爆発の危機

事態を楽観しし続けてきた日本政府とは対照的に、米国政府内には最悪の事態が起こる可能性への深刻な懸念があることが明らかになった。ニューヨークタイムズが4月5日にリークした、3月26日付のアメリカ原子力規制委員会(NRC)の極秘文書には、1~3号機の格納容器(炉心の最終防壁)が破裂・爆発を起こす可能性が言及されている。

これまでに起きた水素爆発はいずれも格納容器外での爆発だったので、最悪の事態には至っていなかった。極秘文書によると、大量の海水を入れたことで塩が各所に固着して水の通りが妨げられ(この点では1号機が最も深刻で「(水の注入が)おそらくブロックされ」ている)、そのことが炉心溶融を促進している。そこから二つの問題が出てくる。ひとつは水素の発生の促進である。高レベル放射線が水を酸素と水素に分解し、それが格納容器内に充満すると水素爆発に至る可能性がある。もう一つの問題は、溶けた燃料で原子炉圧力容器が破損し、圧力容器から出た溶けた燃料が格納容器内にたまり、さらに格納容器を破損させて外部に出てしまうという、いわゆるメルトダウンの進行だ。いずれにしても格納容器が突破されたり爆発した場合、これまでとは桁違いの量の放射能が放出されることになる。格納容器内で水素爆発が起きたら、もちろん使用済み燃料プールも吹き飛ばされる。

現在行われている真水への切替えと窒素の注入は、このNRCの危機判断に基づき、塩の固着を食い止め、容器内の水素の充満を防ぐために行われている。日本は高度な科学力を持ちながら、原子力の安全性への過信ゆえに危機管理能力を失い、米国NRCに頼らざるを得なくなっている(米国の技術や管理能力への過信もまた幻想なのだが・・)。

米国NRCは、少なくとも2号機では溶けた燃料が圧力容器の外に漏れだして格納容器の底に沈殿していると見ている。これがさらに進行すると、格納容器の底が破壊されて、漏れ出したウラン燃料が様々な物質と反応して爆発的放射能放出を引き起こすという。事態は日本人がメディアで聞かされているよりもはるかに深刻である。


■ これまでの放射能放出量は全体の4%


では格納容器爆発が起きた場合、どれだけの放射能が放出されることになるのか。朝日新聞は米国NRCの計算式に基づいて、1~3号機の原子炉内に放射性ヨウ素が590万テラベクレル(テラ=兆)、放射性セシウムが同13~22万テラBqあり、3月24日に公表されたSPEEDIのデータから、そのうち3月24日までに大気中にヨウ素が3~11万テラBq(セシウム未公表)が放出され、水には4万テラBq(セシウム1.2万ベクレル)が流出した、と試算した

ちなみに数万テラBq(数京ベクレル)を超えれば国際基準でレベル7であるから、3月24日までにすでにレベル7に到達していたことになる。チェルノブイリ原発災害では合計で数十京ベクレルの放射性ヨウ素(全放射性物質だと100京以上か)が放出されたので、もはや福島はチェルノブイリに並んだと見るべきだ。

3月24日までの大気中へのヨウ素放出量を間をとって7万テラBqとすると、1日あたり5000テラBqなので、4月10日現在までに約15万テラBqが大気中に放出されたことになる(放出量の変化が推定できるようなデータを政府が公表しないため放出量を一定とした)。これまでに水に混じって流出したヨウ素を多く見積もって10万テラBqとしても、全体の4%程度しかまだ格納容器外に出ていない計算になる。もともとあった放射性ヨウ素590万テラBqのうち565万テラBq(これまで大気中に放出された量の38倍)がまだ格納容器内部に残っている。もちろんこれ以外に、使用済み核燃料プール内にある膨大な放射性物質もある。格納容器が爆発すれば、これら桁違いの量の放射能が一気にばらまかれることになる。もし爆発が避けられたとしても、格納容器が一部でも破損すれば放射能放出量は確実に増加する。


■ 1号機で再臨界が起きていることを示すデータ~小出裕章氏が警告

これまで制御棒が挿入されて核反応が停止した福島第一では燃料の再臨界(核反応が再び始まること)は起きないと説明されてきた。しかしここにきて、再臨界が生じている可能性を示唆する証拠が次々に出てきた。再臨界(チェーンリアクション)が発生すると炉心の温度が一気に上がり、冷却がさらに困難となり、格納容器内水素爆発の可能性も高まる。

小出裕章・京都大学原子炉実験所助教は、videonews.comの番組で、1号機で再臨界が起きている可能性が高い理由を説明した。第一に、1号機の原子炉圧力容器内の放射線量が4月8日に、30Sv/hから100Sv/hに急上昇した(3月21日にも10Sv/hから50Sv/hへの急上昇が発生していた)。炉心温度も急上昇しており、こうした炉心内の急変は再臨界でしか説明がつかない。保安院は計器故障だとしているが証拠を出していない。第二に、3月25日に東京電力が、敷地内汚染水から極めて高濃度の塩素38(Cl38)を検出した。塩素38は海水中の塩素37が中性子を受けることで発生する物質で、再臨界しか大量の中性子が出たことが説明できない。

小出氏によれば、もしも再臨界がこのまま状況を悪化させれば(それを抑えるにはホウ素を注入しなければいけない)格納容器内爆発の可能性も高まる。格納容器が爆発すれば、とんでもない量の放射性物質が数百キロ圏内に飛んでいく。その時南西向きの風になっていたら、東京も放棄せざるを得なくなる。もっとも首都圏の人口が半日以内に西に避難するのは不可能なので、そうなった場合はもう甚大な被害は避けがたい。


4月8日の余震で女川原発の外部電源が3分の2断絶し、六ヶ所村再処理工場も電源を断たれて非常用ディーゼルという信頼性のない電源に依拠せざるをえない事態に陥った。4月7日には米国ワシントン州の原発で小規模な水素爆発が発生して一時避難騒ぎとなった。原子力は、あまりにもろく、あまりに厄介で、あまりに被害リスクが大きすぎる。


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2011/04/09(土) 13:57 大鬼
クラフトワークRadioactivity  

※反原発・反核ソング集。個人的に一番好きなのはタイマーズとクラフトワーク(上の画像)の曲ですが、数日前にゲリラ的に中継された斉藤和義さんの歌がネットでは大人気です。他にも見つけ次第、随時更新していこうと思います。追記に歌詞があります。


■ ボブ・マーリー(Bob Marley)
: Redemption Song
http://www.youtube.com/watch?v=6yXRGdZdonM

■ レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against the Machine)
: Renegades Of Funk
http://www.youtube.com/watch?v=1rDe7LpHsuU

■ デュラン・デュラン(Duran Duran)
: Playing with Uranium
http://www.youtube.com/watch?v=Q2apWlNo8Co

■ レディオ・ヘッド(Radiohead)
: Idioteque
http://www.youtube.com/watch?v=9qkSZyj_1Ns

■ オイ・ポロイ(Oi Polloi)
: No Filthy Nuclear Power
http://www.youtube.com/watch?v=gEsFAh9u1xI
: Nuclear Waster
http://www.youtube.com/watch?v=UHORHE7YcbM&feature=related

■ クラフトワーク(Kraftwerk)
: Radioactivity [remix 2004 Live]
http://youtu.be/095iyCeJSbs

■ アンクル・テュペロ(Uncle Tupelo)
: Atomic Power
http://www.youtube.com/watch?v=PDNX4fRcHoY

■ サン・ラ、ヨ・ラ・テンゴ
: Nuclear War [Sun Ra]
http://youtu.be/e6qbSHKzcmI
: Nuclear War remix [Yo La Tengo]
http://youtu.be/FShnILtLnoQ


■ RCサクセション(忌野清志郎)
: サマータイムブルース
http://www.youtube.com/watch?v=MIbrxhv_s_M

■ ザ・タイマーズ(The Timers)
: Love Me Tender(なにいってんだぁ)
http://www.youtube.com/watch?v=q0cmuaNgf8s
: メルトダウン
http://www.youtube.com/watch?v=9RZbvjQw7Kk&feature=related
: 原発賛成音頭
http://www.youtube.com/watch?v=N4PiP-xCn4g&feature=related

■ 割烹着ーず 【NEW!!】
: Love Me Tender やんばるバージョン
http://youtu.be/DKQlL6QWmjs

■ ザ・ブルーハーツ(The Blue Hearts)
: チェルノブイリ
http://www.youtube.com/watch?v=9zdnFdfle_c
: 旅人
http://www.youtube.com/watch?v=yRKKPUBBGaY

■ ニューエスト・モデル(Newest Model・ソウルフラワーユニオンの前身)
: Pretty Picture Book
http://www.youtube.com/watch?v=le5jRECUDOA
: Radiation
http://youtu.be/sATv9QoCMaI

■ 中島みゆき
: 吹雪
http://www.youtube.com/watch?v=YTQCqP4qbCw

■ 加藤登紀子
: 原発ジプシー
http://youtu.be/UZ3Ih0mFh84
: チェルノブイリ(カバー)
http://www.youtube.com/watch?v=2X_fYaBzpMY&feature=related
: 時を超えて(カバー)
http://www.youtube.com/watch?v=ujJMmDKLqzw&feature=related

■ 佐野元春
: 警告どおり、計画どおり
http://www.youtube.com/watch?v=Mj0uCpl4Xa8

■ 斉藤和義
: ずっとウソだった
http://www.youtube.com/watch?v=q_rY6y24NAU

■ ランキン・タクシー
: 誰にも見えない、匂いもない
http://youtu.be/aSYXISXKGP8
: 誰にも見えない、匂いもない 2011(ダブアイヌバンド・トンコリ追加バージョン)
http://youtu.be/Z_Tg3sW9ElU

■ FRYING DUTCHMAN
: humanERROR
http://youtu.be/ENBV0oUjvs0
←普通に情報としても有益なので是非聞いてみて下さい。

■ ???(どなたか情報をください)
: 2011反原発リミックス "NO NUKES ECD REPORT 2011"
http://youtu.be/od_GZX3DR0o

■ Coma-Chi
: Say "NO"!
http://bit.ly/jCK2mF

■ その他(反原発関係ない曲含む)
: 東京湾で!音頭
http://www.youtube.com/watch?v=GQxRKlxh5XA&feature=related
: ダッ!ダッ!脱・原発の歌(制服向上委員会)
http://youtu.be/ByP8m3XOZdw
: ウランのテーマ(鉄腕アトム)
http://www.youtube.com/watch?v=wvmo_pqytK8
: 夏のエアコン・地球に優しいでんこちゃん(東京電力)
http://www.youtube.com/watch?v=tQDiBqs5pDw
: 新ぽぽぽぽーん
http://youtu.be/MqaRrI_Y1WA
http://youtu.be/hSog79nItp8
: 脱原発アルゴリズム(フルアーマー枝野)
http://youtu.be/axadjDy03_s
: 無茶苦茶節・原発バージョン(珍多摩5)
http://youtu.be/3Iz-AOUmm0s



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続きをどうぞ

 
2011/04/08(金) 15:31 大鬼
■史上最悪の海洋放射能汚染

福島第一原発に本格的な放水が開始された3月19日頃から今までずっと疑問に思っていたことがある。あの大量の水は一体どこに行くのか。東電も政府もメディアも、3月24日に3号機で水に浸かった作業員3人が急性症被曝となり病院に送られるまで、水の行き先について(溶融した炉心の放射能が漏れていることにも)何も語らなかった。その後はさすがに炉心溶融の進行と格納容器の破損という事態を隠しきれなくなったが、汚染水の処理問題がここまで切羽詰まっていることを一般の人が知ったのは、4月2日に2号機取水口付近の亀裂から超高濃度の放射能汚染水が海に漏れ出していることが発覚した時であった。4月4日東電は超高濃度汚染水を移し替えるためにやむを得ぬ措置として、11500トンの高濃度汚染水を海洋放出する方針を発表、政府は即座にこれを了承した。これはロンドン条約違反の迷惑な海洋汚染として諸外国のひんしゅくを買い、応援される被災国であった日本はここ数日の内に無策で自分勝手な加害国と見なされ始めた。

1~4号機の炉心と使用済み燃料を冷却する必要から、毎日500トン以上、これまでに1万トン程が放水されてきた。問題は炉心が溶け圧力容器・格納容器からも放射性物質を大量に含む水が漏れ、それが建屋内に溜まり続けていることだ。ではここ数日でどれだけの放射性物質が海に放出されたのか。


■1700億ベクレルの意図的排水

まず11500トンの意図的な海洋排水について、東電やマスコミは「低レベル」「低濃度」の汚染水と表現しているが、十分に高濃度の放射能水である。報道によれば、この11500トンに含まれる放射性物質の総量は1700億ベクレルで、濃度は14783ベクレル/kgとなる。これはWHOの水道水放射能上限値(10Bq/kg)の約1500倍の高濃度汚染水である。

この汚染水中の放射性物質の内訳は、ヨウ素131が930億ベクレル(処理施設1万トンの濃度6,300,000Bq/トン、5・6号機地下水1500トンの最大濃度20,000,000Bq/トンより計算)で54.7%、セシウム137は93億ベクレル(ヨウ素とセシウムの累積降下量比率からの推測値)で5.5%、その他の放射性物質が677億ベクレルで39.8%と推定される。

しかし東電が汚染水の漏洩経路をしっかり把握していないことは誰の目にも明らかであり、報道されていない汚染水の海洋廃棄は相当な規模になっていると考えざるをえない。


■9800兆ベクレルの流出事故:桁違いの量に注目!

4月2日から7日まで2号機取水口付近から漏れ出していた(炉心が溶け出していると思われる)超高濃度汚染水には、桁違いの量の放射能が含まれていた。これは史上類を見ない海洋の原発災害である。これが本当に避けられない事故であったのかどうかは分からないが、放水開始と同時に汚水処理のことを考えるべきであった東電が、炉心が溶けて大量の放射能が水といっしょに出てくる可能性を考えず、結果として6万トンもの超高濃度汚染水を抱え込むまでこれといった汚水処理対策もせず、汚染水を移し替えるための仮設タンクを発注したのが10日も経った3月28日で納品が4月15日に、といった展開を理解することなど到底できない。

この流出水は2号機トレンチ内の汚染水と同程度の濃度であったと考えられる。報道によると、2号機トレンチ内の汚染水の濃度は11兆6600億ベクレル/トン(116.6億Bq/kg)であった。これはWHO水道水基準値の11億6600万倍に相当する。また別の報道では、亀裂から出ていた水の量は推定で毎時7トン、5日間(120時間)で840トンが流出したと考えられるため、総量にして9794.4兆ベクレルの放射性物質が海に混入したことになる。

なお放射性物質の内訳(トレンチ内)は、ヨウ素131が59%、セシウム137が6%(推定)、セシウム134が17%、その他15%(推定)である。


■「魚を食べても安心」キャンペーンの嘘

予想通り、東電・政府・マスコミ・御用学者による「魚を食べても安心」キャンペーンが展開されている。厚労省は国際基準より数十倍ゆるい野菜の暫定基準を海産物にも適用すると決定。原発推進派による人命よりも利権を優先した姿勢、非科学的な汚染食品摂取キャンペーンが、長期的な健康被害と風評被害を同時に引き起こしている。原発推進派には、日本のすばらしい海産物を信じられないような量の放射能で汚したということへの罪の意識は微塵もないのだろうか。

以下は原発推進派がよく言う4つ嘘である。いいかげん、いたずらに安心を煽る流言飛語をやめてもらえないものか。


■嘘その1「放射能は海に入ると希釈されるから安心」

問題は生物の体内の放射能濃度であり海水そのものの濃度ではない(海水の放射能濃度も単純に距離に比例して薄まるわけではない)。いくつかの有害な化学物質と同様に、放射性物質は生物の体内に蓄積され、食物連鎖を通じて生態濃縮が起こる。

米国ワシントン州では1970年代に核兵器生産用原子炉から長期間放射性物質が河川に放出されていたことが判明した。そこでの調査によると、川の水の放射能濃度に対して、プランクトンの中ですでに2000倍、小魚の体内で15000倍、その魚を食べるアヒルで4万倍、水鳥の卵で100万倍、になっていた。海であれば膨大な数のプランクトンやオキアミや小魚をエサにする大型の魚の体内で多くの放射性物質が蓄積される。したがって海は広くて薄くなるからいいといった単純な話にはならない。


■嘘その2「ヨウ素は半減期が短い・セシウムは濃縮しないから問題ない」

放射性ヨウ素は顕著な生態濃縮が起こる物質である。なので御用学者はたいてい半減期が8日程度である点を強調する。しかし半減期というのは放射線が半分の強さになる期間であって、その後もずっと放射線は弱くなりながらも出続ける。体内被曝の場合、内臓に付着した放射性物質からの被曝量は膨大になるため、半減期を過ぎた微量の放射線からでもがん細胞は形成されうる。

放射性セシウムについては、半減期が30年と長いものの、特定の臓器に蓄積されないので生態濃縮が起こりにくいとの主張がある。しかし特定の臓器に蓄えられない=体内に蓄えられない、ということにはならない。実際に生じている事実をもとに考えてみよう。まず2号機取水口付近から漏れた超高濃度汚染水の内訳(上記)によれば、放射性セシウムは放射性ヨウ素の39%であった。報道によると、4月4日茨城県沖で捕獲されたコウナゴから検出された放射性物質の量は1kgあたり、放射性ヨウ素4080ベクレル、放射性セシウム526ベクレルなので、放射性セシウムは放射性ヨウ素の12.9%になっていた。つまり放射性ヨウ素の方が放射性セシウムよりも26%生態濃縮されやすいが、違いはこの程度であり、放射性セシウムが体内に蓄積されにくいとまでは言えない。さらに4月9日の報道によれば、福島県いわき市沖で捕れたコウナゴからはヨウ素1700ベクレル・セシウム570ベクレル(ヨウ素の34%)が検出された。事実によってセシウムが危険なレベルにまで生態濃縮していることが証明された。

さらに忘れてはならないのが、ヨウ素・セシウム以外の放射性物質(コバルト、ウラン、ストロンチウム、プルトニウムなど)だ。15%でも1470兆ベクレルに相当する。これまでは地表に降る放射性物質に目が向いていたため、ガス化して飛散しやすいヨウ素とセシウムばかりが注目されたが、海洋への排水では他の物質も確実に混ざっている。ヨウ素とセシウムしか計測・公表されていないことは致命的な勘違いを生じさせている。福島第一原発の敷地内で遅くとも3月20日にはすでにプルトニウム(α線の強さや半減期の長さの点から最悪の物質)が放出されていたことが判明している。プルト君(かつて動燃が税金で制作した悪名高い洗脳動画に出てくる小僧)はプルトニウムを食べても大部分排泄するから大丈夫だと言ったが、小部分であろうと命取りになるほど異常な毒性であるという点にはもちろん触れていない。


■嘘その3「安全基準があるから売ってる魚は絶対大丈夫」

日本の食品放射能基準(暫定規制値)は、国際的な水準よりも20倍緩い。「厳しすぎる」というデマがいまだに聞かれるが、当ブログの他の記事で正している。より重要なことは、放射線の健康被害とは長期的であると同時に、1万人中何人死ぬリスクかといった確率的被害であり、ここからは絶対に安全といった「しきい値」など存在しないということである(この点はこの記事にある「BEIR-VII 2005」によって証明されている)。そのことを理解した上で食べるという選択はあり得るが、むやみに安心メッセージを繰り返してリスクを隠すという前時代的なやり方ではもう多くの人が納得しない。

本来、食品安全基準は有害なものを排除するために必要とされるのであり、汚染されたものを食べさせるためにあるものではない。今日の政治は人命よりも利権を優先しているため、食べさせるための基準になっている。こんな基準ならない方がましだ。今必要なのは徹底した食品残留放射能のチェック体制(保健所が厳格にやるべき)とその情報公開である。魚を安心して食べられるようにする唯一の方法は、人命尊重の立場で基準を厳格にしベクレル数をきちんと表示して販売し徹底的に汚染食品を排除する体制を作ることである。そのために我々は民主主義を持っている。魚文化を守るために嫌なものは嫌だと声を上げよう。


■嘘その4「風評被害が漁民を困らせている」

困らせているのは原発である。歴史上例のない大規模な原発海洋汚染が発生していて不確定要因が多すぎる中、どの程度の健康被害が発生しどこからが風評被害になるのかすら分からない。さらに政府の暫定基準がゆる過ぎるため汚染食品が流通している可能性がある以上、多くの人がリスク回避のために買わないという行動に出ることは全く正当かつ合理的な行動である。今回の災害の第一の責任者は原発産業であり、農家や漁民が被る被害はまず彼らに弁償させるべきで、住民に放射能を食べさえることで彼らの罪を免責すべきではない(賠償については別の記事へ)。


最後に、水産物の産地表示について、国産の場合は水域または水揚げ港(もしくはそれらの属する都道府県名)の表示が義務づけられているが、漁港の方で○○県と表示されていても実際どこで捕れたものか見当もつかない。個々のパッケージごとにベクレル数を表示してくれるなら別だが、現状ではリスクを避ける有効な方法はない。


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2011/04/07(木) 16:44 大鬼
福島第一原発から3月中に放出された放射性物質からの被曝が原因でガンを発症する人の数は、原発200km圏内で今後10年間に224000人になるという予測が発表された(トンデルモデル)。今後50年間で200km圏内で42万人が被曝発癌の犠牲になるとの予測になった(ECRRリスクモデル)。いずれも3月中に放出された放射性物質の量についてはIAEAが報告した情報を使っているとのこと。


■ トンデルモデル

スウェーデンの疫学研究者マーティン・トンデル(Martin Tondel)氏は1988~2004年に、スウェーデン北部自治体におけるチェルノブイリ後のガン発生率増加と、各自治体におけるチェルノブイリ原発由来のセシウム137の降下量(低濃度)との相関関係を調査し、100,000ベクレル/m2(100,000メガベクレル/km2)の降下量につきガン発症率が11%高まったとの結論を得た。イギリスのクリス・バズビー(Chris Busby)氏が、このトンデルの数式を今回のケースに当てはめ、日本各地の人口や3・11前の発癌率(人口の0.00462%)などを元に計算した。

ただしこれはずっとその場に住み続けた場合、また当時のスウェーデン人と同程度の放射能対策をしていた場合の値であり、避難・放射能対策・基準値の程度や流通のあり方など社会的条件によっては実際の被害は変わってくるはずだ。3月30日以降も放射能放出が続き、基準値も緩いままでまともな放射能除去対策が行われない場合、これよりも大きな被害が出たり200km圏外でも被害が出る可能性はある。なのでこの数字は運命的なものというより警告として受けとめるべきであろう。


■ ICRPリスクモデルとECRRリスクモデル


原発推進派国際機関であるICRPと環境派国際機関であるECRRは異なるリスクモデルをもっているので、3月中に降った200km圏内の放射性物質量を適用すればガン発症予測も異なる数値が出てくる。バスビー氏の計算によれば、ICRPのリスクモデルを使うと50年間で6158人、ECRRのリスクモデルを使えば50年間で417000人が、被曝によってガンになると想定される。ちなみにICRPの1ミリシーベルト/年という基準は1万人に1人がガンで死ぬといった確率的被害が出る値であり、低濃度汚染でも被曝すればするほど被害者数は増加する。


このような膨大な被害を出さないように、「原発村」の御用学者たちが何を言おうと、放射能被害は恐ろしいものだということを周りの人にもっと知ってもらい、徹底的な汚染除去対策をさせるような声を上げていこう。


資料出所(英文)
http://www.llrc.org/fukushima/subtopic/fukushimariskcalc.htm
http://llrc.org/fukushima/fukushimariskcalc.pdf


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2011/04/07(木) 02:18 大鬼
火力を化石燃料に依存する限り、地球温暖化を止められず、日本は資源小国のまま。原子力に依存する限り、地震津波のリスクが最も高い日本の人々は、命の危険と隣り合わせ。このまま自ら資源小国と思い込み、危険な原発のために大地と海の力に怯えながら生きていくことが賢明なのか。

日本の庶民はかつては自然と共に生きるすばらしい知恵を持っていた。高度な科学力というもう一つの知恵を得た今日、自然と共に生きる方向で科学を使えないものか。

時には災害をもたらす大地や風や海の力は、膨大なエネルギー源として恵みをもたらしてくれる。自然エネルギーは持続可能な社会をつくっていく上で不可欠だ。しかし自然エネルギーはローカルな発電システムであるため、庶民には好ましくても巨大な企業が利益を独占できない。自然エネルギーの普及を妨げてきたのは石油・原発産業などの利権であり、マスコミも政府も上層部は利権で動いている。理不尽なシステムを変えるには、より多くの人が声を上げるしかない。

原発の安全神話が崩れた今、民主的な自然エネルギー社会への移行を本気で考える時が来た。原発を止めても停電は起きない、自然エネルギーだけで十分にやっていける、という正しい認識を一人でも多くの人と共有していこう。


以下は、田中優氏の講演のユースト動画リンクと、自然エネルギーに関する講演内容のまとめ(※は大鬼による補足、自然エネルギーの話は動画の後半部分です)。

http://www.ustream.tv/recorded/13373990


■原子力は最も経済効率が悪い
原発の発電単価は13.9円、これは自然エネルギーの中で効率の点では最も劣っているとされてきた水力発電の13.6円よりも効率が悪い(発電所設置許可申請書より)。しかも原発の発電単価の計算には必然的に生じる核燃料の再処理コストが一切考慮されていないので、トータルの発電コストは異常なまでに悪い。(※自然エネルギーにこれまで大規模な投資がされてこなかったし、分散型なので生産体制さえ充実すれば単価はもっと安くなる)

■もんじゅという無駄
原子力の高コストを象徴するのが若狭湾にある高速増殖炉もんじゅだ。もんじゅにはこれまで2兆円以上の金が注ぎ込まれてきたが、生み出したのは(※関西・中部地方を滅ぼしかねない事故につながる)数々のトラブルだけで、発電量はゼロ。しかも活断層の上にある。

■電力会社が高コストの原発にこだわる理由
電力会社は法律で、資産・経費の3.5%を収益にできる。高価な施設をばんばん作って経費を使えば使うほど収益が増えるという特殊な産業だ。だから原発のような高コストな施設が実は効率が悪くても収益のために原発にしがみつく。当然電気代も上がる。しかも宣伝費も収益増大につながるので、日本最大の広告主になり、嘘デタラメを広める権力を持つに至った。メディアは電力利権が恐くて本当のことを言えない。

■原子力予算=税金でぼろ儲け
さらに原発はほとんど税金で作ったも同然だ。原発への補助金は約5000億円。貨幣価値を調整すると、50年近くずっとこれだけの補助金を原発に使ってきた。原子炉1つあたりの現在の新設費用は3000億円で、現在日本には54原子炉ある。つまりすべての原発を作った費用よりもこれまで注ぎ込んできた補助金の方が大きい。

■もう一つの無駄:送電コスト
電力会社の経費の中の最大のコストは送電コストである。田舎に建設して都市に電力を運ぶ一点集中型の原子力は、送電コストの点でも不利。(※自然エネルギーは分散的なローカル発電網になるため送電コストははるかに安い)

■その結果、日本の電力は異常に高くなった
アメリカの3倍。電力消費のほとんどは一般家庭ではなく企業。(※田中氏は別の場所で、一般家庭への電力課金が使えば使うほど高くなるのに対して、企業は使えば使うほど安くなるように設定されていることを指摘している。要するに一番損してるのは私たち一般家庭ということ。電力消費はピーク時と平均との差が大きくなるほど無駄な発電キャパシティを必要とするためピーク消費量を抑制することが重要であるが、そのためには電力の大半を使っている企業への電力課金方式を一般家庭と同様にしなければならない。)

■ヨーロッパでは自然エネルギーが主力に
2009年にヨーロッパでは新設の発電所の6割が自然エネルギーになった。米国でも原子力の発電単価よりも太陽光の発電単価の方が安くなったという報告が出た。日本だけが自然エネルギーをいまだに軽視して次世代エネルギー開発から取り残されている。

■日本にとって自然エネルギー利用が最も賢明な選択
日本の高度な科学力、巨大な海洋国家であること(海を含めると面積は12倍に!)、膨大な大地のエネルギー(火山・地震)があること、偏西風や台風の力も利用できること、これらをうまく利用すれば、日本の電力供給は自然エネルギーだけでおつりがくるほど足りるし、将来はエネルギー輸出国にすらなれる。

■実は風車だけで日本の全電力需要をまかなえる
東京電力が東京大学に委託した調査の結果によれば、千葉県・犬吠埼の沖合に風車を並べただけで、2005年度の東電の総電力販売量(日本の総電力の3分の1)に匹敵する電力が生み出されることが判明した。東電はこのデータを未公表にした。これまで日本の海は浅瀬が少ないため洋上風力発電に不向きと思わされてきたが、九州大学が開発した浮上式洋上風車というすばらしい技術がある。東電は四半世紀後に取り組むなどとしてまじめに取り組もうとしない。さらに秋田のある零細会社が開発した風車は、構造的に非常に効率がいいだけでなく、ゆっくりまわるので低周波も出さず鳥もぶつかりにくく、風速50メートルでも発電できる、つまり日本が通り道になっている台風のエネルギーを利用できる。

■地熱だけでも日本の電力の3割をまかなえる
アイスランドは地熱に熱心な国として知られているが、そこで使われているシステムは日本製である。日本は地熱が豊富にある火山国でありながら、この膨大なエネルギーをほとんど使ってこなかった。もしも日本がアイスランドのように日本製の地熱発電システムを本気で取り組めば、日本の電力需要の約3割を地熱だけでまかなえる。

■無視されてきた海の恵み~島国を救う波力発電
神戸大学院の開発した浮上ジャイロ式波力発電が注目されている。海に浮かべて波の動きをエネルギーに変換するもので、太陽光発電の15倍(45キロワット発電)という非常に高いエネルギー変換効率を実現した。波さえあればずっと発電するので、海に囲まれた島国にとっては最も将来性のある発電方式だ。(※同じ島国であるイギリスでは波力発電推進のため国家が実験海域を確保するなどしているが、原発推進にこだわる日本では波力発電の実験すら困難)

■日本の省エネ技術のすごさ
これまで使ってきた家電製品を最新の省エネ製品にすべて置き換えると電力消費は半分で済む。LED電球は白熱電球の20分の1、冷蔵庫は15年前の10分の1の電力消費で済む。省エネ技術の進歩を考えれば、電力需要が高まる一方だとか、現在の生活水準を維持したければ今までと同じ発電量が必要だ、などという考えは間違っている。

■利権によって妨げられているローカル発電ネットワーク
省エネを徹底すれば、家庭の電力は8畳間1つ分の太陽光パネルでまかなえる。4メートルくらいの落差でつくる簡単な小規模水力装置1つで4人家族1つの電力がまかなえる。しかし自分の敷地内で発電した電力しか自分で使うことができず、地域内でローカル発電をやりくりすることが禁止されている。つまり電力会社に買ってもらって膨大なコストのかかる長距離の送電線を介してしか利用されないが、電力会社は当然一つ一つの小規模電力など相手にしない。彼らの電力流通独占が自然エネルギーの普及を妨げている。

■民主的で持続可能な社会に向けて
利権のために高コストを強いられ、放射能で命の危機と隣り合わせの暮らしを強いられ、多くの人を殺してまで石油を奪い、自然の恵みを無視するような、理不尽な社会はもうやめよう。自然エネルギーは技術として優れているだけでなく多くの雇用も生み出す。ドイツは炭素税財源を正規雇用創出に結びつけた。原発被害には援助への期待ではなく正当な賠償請求で対応し、電力流通独占を打破して自然エネルギー普及につなげるためにまずは送電線を国有化=自由利用にすべき。この危機を民主的な日本の再生に向けた転換点にしよう。
 
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