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2011/10/01(土) 06:42 大鬼
文科省の報告(PDF資料)によると、プルトニウム(アルファ線核種)・ストロンチウム(ベータ線核種)の調査は、これまでにたったの100カ所。その極めてやる気のない調査は実は6月に実施されており、3ヶ月以上の時間をかけて9月30日にようやくその結果が一般公開された。プルトニウム238/239・ストロンチウム89/90以外のアルファ線・ベータ線核種については検査は行われていない。

調査の結果、プルトニウムが原発から少なくとも45km地点まで飛散したこと、ストロンチウムが少なくとも80km地点まで飛散したことが確認された。


文科省プルトニウム汚染マップ

文科省プルトニウム検出マップ


文科省ストロンチウム汚染マップ
文科省ストロンチウム検出マップ

<画像をクリックすると拡大されます>


マップ上の緑の点は、核種の比率の分析から異常な比率が見つかった地点、つまり今回の原発災害によるものと明確に推定される地点、という意味であり、そこだけでプルトニウムやストロンチウムが見つかったという意味ではない。マスコミは緑の地点だけに注目しているが、それ以外の地点にも原発から飛んでいないという証拠はない。同じ検出値でも核種比率分析という方法で政府系専門家が原発由来だと判断しない検出値については数値のみが記載されている。また「検出限界」を下回る濃度の地点はすべて「不検出」とされている。

政府系専門家が原発由来と判断するかどうかは解釈の問題であり、すべての人がそれを納得する必要はない。検出値は検出値だ。例えば原発から80kmほどの茨城県北部の計測地点(北茨城市南端)ではプルトニウム239が9.2Bq/m2検出されていて、この値は避難エリア内の多くの計測地点の値よりも高い。政府系専門家らはこれを原発由来だと判断していないようだが、茨城北部で異常なレベルのプルトニウムが検出されている事実はそれはそれとして重大だ。利権や名声ではなく命を守らなければならない一般庶民にとって、解釈論の結論を待っている時間はない。少なくとも80km以上プルトニウムが拡散した可能性を考えて行動した方がいい、私なら同じデータからそう考える。

いずれにしてもこの程度の規模の検査から、全体的な拡散の程度を云々することには無理がある。そしてあまりにもやることが遅い。今回の報告書では「放射性ストロンチウム及び放射性セシウムの沈着量の分布は一様ではないことが確認された」から一部で「追跡調査を行う」としながらも、別の箇所では「今後の被ばく線量評価や除染対策においては、セシウム134、137の沈着量に着目していくことが適切である」として、セシウムばかりに注目していれば大丈夫といった従来の姿勢を崩していないようだ。今後のアルファ線・ベータ線核種の検査の継続および強化については一切述べていない。

まさかこれでおしまい?


追記3:首都圏で相次いで検出されるストロンチウム

ストロンチウム等の猛毒核種についての情報隠蔽もそろそろ限界のようだ。首都圏で相次いでストロンチウムが検出されている。まず神奈川県横浜市港北区の道路脇土と新横浜周辺の噴水沈殿物から(横浜市発表)、そして神奈川県逗子市の小学校の土からも(市議発表)、ストロンチウム(Sr89とSr90)が検出された。また東京都世田谷区の大気中からもストロンチウムが検出されている。東京都は6月に判明していた測定結果を11月1日まで情報隠蔽していたということである。「健康に影響を及ぼす可能性は低い」などと弁明しているが、そうした一判断が測定結果を公開しないことへの正当な根拠になりえないことは誰でも分かる。


追記2:セシウムの濃度だけ測っても他の核種の濃度は分からない

政府は広域ではセシウムの濃度を調べておしまいにしたいようだが、ストロンチウムなど他の核種はかなり異なる飛散パターンを示しており、核種ごとの独自の広域測定が必要なことは明らかである。セシウムと他の核種の拡散パターンが異なることは、以下のようにテルル129mや銀110mのセシウム137に対する割合が一定でないことを見れば視覚的にも容易に理解できることである(資料出所)。ところがこの資料は地域をいくつかに区分することで、あたかもセシウム137とテルル129mの濃度割合が一定であるかのようなグラフを載せている(さすがに文章では相関があるとは書いていないが)。なぜこんなバカげた作業に彼らがこだわったかといえば、セシウムの濃度を測れば他の核種はもう測らなくていいだろう、と言いたかったのであろう。役人や御用学者の知的能力の無駄遣いには心底あきれ果てる。普通の良識ある人間にとってこの調査から読み取るべき大事なことは、地域によってまた核種によってセシウムとの濃度割合が全く違うというシンプルな事実であり、したがってセシウム濃度だけ測ればいいという判断はできないということであ る。私たちはまだ肝心な情報を持っていない。

セシウム137に対するテルル129mおよび銀110mの濃度割合セシウム137に対するテルル129の割合
セシウム137に対する銀110mの割合

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追記1:3号機核暴走・3月15日分WSPEEDI・気象庁データ・航空モニタリング・日本政府プルト検出資料・米国EPAデータを全部つないで考えると謎が解ける!?

ツイッターで北茨城の高濃度プルト239検出について指摘されてはっと思い出した。政府がこそこそ隠していてNHKが一瞬だけ報じた3月15日のWSPEEDIデータ、当ブログでも紹介したあの福島から南向きで関東をえぐるような放射性プルームの軌道だ。後に公式発表された微妙に異なる3月15日WSPEEDIデータを見ても風向き・軌道はほぼ同じ。3号機が爆発した14日分放出分については、気象庁が市民にではなくIAEAに向けて作成した英語の予測拡散マップがあり、そこでも14日から15日まで南向きの拡散進路が推定されている(その後太平洋上は西向きに)。つまり3号機の爆発で出たプルトニウム等が、原発から南に向かい、北茨城あたりでいったん太平洋側に出て、そこから茨城県南部に再上陸して千葉北部そして東京東部や北関東へと向かう放射能雲と、太平洋上をさらに南下してから西へと拡散した放射能雲(その一部がグアムや西海岸にも到達する)に分かれた、という仮説が成り立つように思う。北茨城でのプルトニウム検出や、航空モニタリングに示された鹿島灘から東京方面へと向かう汚染ラインとも整合的だ。3月15日・16日あたりに首都圏を含むこの軌道上のエリアでマスクなしで呼吸していた人には気の毒なことだが。リアルタイムに警報を出し得たのに原発政策擁護のために情報隠蔽に走る政府、そして原発産業を含む日本の政治経済の中枢による巨大な犯罪である。


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