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2011/06/17(金) 21:38 大鬼
菅降ろしに必死になっている原発推進派の政治家と財界は、人々の怒りを利用して勝手に首相退陣を既成事実化し、「大連立」という強権政治で人命軽視の政策を押し切ろうと企んでいる。菅降ろしでふっきれた首相は、自然エネルギー促進にやる気を出している。人命優先の政策にこの国を転換させるには、普通の人々が情報を共有して、本当のリスクを知り、アクションを起こしていくしかない。


これまで広域での放射能汚染の実態は、事故から2ヶ月経ってたった2日分が公開されたWSPEEDIの予測データと、実測ではあるが局所的な土壌調査の結果から、全体像を推測するしかなかったが、6月に入り新たな情報が出てきた。


■ 筑波大のセシウム137広域汚染地図

筑波大学アイソトープ総合センターの調査団が、3月下旬から5月初旬にかけて、首都圏の一部を含む国道沿いの空き地など110カ所で土壌を採取し、地表のセシウム137濃度を測定した。数値は3月29日時点のものに換算されている。サンプル数の少なさから考えればこれも完全な実測データとは言い難いが、これまでよりは精度の高い広域汚染地図を示した意義は大きい。以下の画像は報道された調査結果に地図を重ねたものである(英数テキストは大鬼が追加)。

筑波大学土壌セシウム広域汚染地図
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福島市・郡山市など福島県内で人口の多い地域や栃木県の一部が、チェルノブイリでソ連政府により補償付き任意移住が認められたゾーン(5-15Ci/km2)と同じレベルの超高濃度汚染エリアとなっていることが分かる。また首都圏の一部でいわき市などと同レベルの高濃度の汚染エリアが確認された。ちなみにそれと同じレベルのベラルーシの放射線管理強化ゾーン(1-5Ci/km2)で、安全に生活できると言われていたにもかかわらず、チェルノブイリ後の20年間にガンや白血病などの増加が見られた事実については、こちらの記事に書いた。全体的にみれば、WSPEEDIの予測データとほぼ同じ結論が得られたことになる。つまり、福島の市街地の一部は人が住むのに適さないほど汚染されており、また首都圏も対策なしに暮らしていけば犠牲者が出るレベルにまで汚染されている。セシウム137の半減期は30年で、微量となるには100年以上かかる。


■ 東京23区地表放射線量マップ(有志)


政府の公式の空間線量(場所によってはビルの屋上で測っていたりする実用性の乏しいデータ)に基づく広域空間線量マップもあるが、それよりもガイガーカウンタを所持している有志が各地で計測してくれている地表面の放射線量の方が汚染状況を把握する上で参考になる。以下はこちらのサイトからキャプチャさせていただいた東京23区内の一部で計測された地表線量地図(赤=2-1μSv/h、紫=1-0.5μSv/h、黄=0.5-0.25μSv/h、青=0.25-0.1μSv/h、何の表示もないエリアの大半は未計測)。錦糸町でも毎時1.75マイクロシーベルトという非常に高い放射線が検出されていることに注目。0.1マイクロシーベルト/hは年間で1ミリシーベルト。

東京都23区地表放射線量マップ ※画像をクリックすると拡大されます


■ 航空モニタリング第二弾


文部科学省と米国エネルギー省によるヘリを使った航空モニタリングの5月26日版が公開された前回のものと比べてわずかにしか広域になっていないのはあまりに残念だが、福島を中心とした超高濃度汚染エリアのより細かな分布が分かる。空間線量は地表から1メートル地点でのガンマ線の値である。最も恐い内部被曝で問題になるアルファ線やベータ線は計測していない。最もリスクが大きい幼い子供のことを考えれば、なるべく地表付近で計測すべきである(地表ではこの数倍となる)。0.1マイクロシーベルト/hは年間で1ミリシーベルト。

航空モニタリング5月26日土壌セシウム 航空モニタリング5月26日空間線量
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6月24日追記:6月17-20日に実施された福島市一斉放射線測定では、市内1118カ所(高さ1メートル地点)のうち73%が1μSv/h(年間で10ミリシーベルト、上の図では緑色)以上、最高6.7μSv(上の図では黄色)であった。


■ 文科省WSPEEDI3月15日分の一部を公開

あいかわらずWSPEEDIを隠蔽し続けている文科省が、3月15日分の予測データの一部を(6月初旬から半ばの間に)こっそり公開していた。情報隠蔽により人々に無駄な被曝をさせて犠牲者を増やしたことへの謝罪はない。当ブログの読者である天狗さんからいただいた画像により、政府はすでに3月15日にWSPEEDIのデータを持っていたことは分かっていたが、なぜかそれとは違うデータが出てきた。以下は、実測値ではないが、3月15日に発生したクリプトン85・ヨウ素129・セシウム137の拡散予測データである。当然絶対量は分からないが、相対的な濃度分布と放射性プルームの予測進路は示されている。濃い放射性プルームが首都圏にまで届いていたことが分かる。

WSPEEDI20110315クリプトン85


■ 猛毒放射性物質も検出される中、遅れに遅れる検査:人命優先への政策シフトを急げ!

政府・東電はこれまで、内部被曝で問題となるいくつかのα・β線核種について情報を隠蔽してきたが、2011年6月5日に放送されたETV特集「続報:放射能汚染地図」により、2km地点の住宅地の土壌から福島第一原発由来のプルトニウムが検出されたことが明らかにされた(金沢大学が測定)。その後、6月13日に文科省が公表した報告によると、4月29日から5月1日に採取された20km圏内の土壌から、ストロンチウム89/90、ウラン234/235/238、プルトニウム239、アメリシウム241、キュリウム242が検出された(例によってUとPuについては屁理屈をこねているが)。アメリシウムもキュリウムもα線を出す猛毒の放射性物質であり、ごく微量でも摂取すると危険だ。海と水産物の放射能汚染は前代未聞のレベルになっている。

こうした危機的状況にもかかわらず、政府は効果的な放射能除去対策をほとんど行わず、必要不可欠な検査も著しく遅れている。ようやくこの6月下旬から福島県内で内部被曝検査が始まるが、最初は1日数十人しか検査できないという。一体何をやっているのか。ホールボディカウンタが不足しているのは誰の目にも明らかであり、国内で早く増産すべきだ。当然のことながら、α線・β線を計測できる排出物検査もあわせて行う必要がある。また広域汚染地図からも明らかなように、首都圏でも相当な内部被曝をしている人々がいるため(ベラルーシでも内部被曝量については低濃度汚染地域と高濃度汚染地域で大差なかった)、広域での無料の内部被曝検診も求められる。被曝検査を抽出検査にするとか超高濃度汚染地域に限定するといったバカげたことを国がいい始めたら世論で変えさせよう。

将来の犠牲者を少なくするには、内部被曝を予防するための食品の検査と情報公開が何よりも重要だ。現状では厚生労働省の非人道的政策により、緩すぎる暫定基準の問題に加え、十分に検査できる機器も人材もそろえていないために、ほとんどすべての食品が検査を受けずにお店に並んでいる。農水省は超高濃度汚染地域でも作付けを認めており、水産物は捕れた水域ではなく漁港を産地としている有様だ。科学的には放射能に安全な量などないのだから、放射能が残留してないことを証明しなければ「風評」という主張はそもそも成り立たない。むしろ情報をなるべく与えず安全とだまして放射能を食べさせるという前時代的な政策が、東日本の食品や国内水産物から良識ある人々を遠ざけている。保健所を中心とした食品・飲料品・給食等の放射能検査体制を抜本的に拡充し、暫定基準にかかわらず食品の放射能情報を公開すべきだ。
 

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