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性教育バッシング⑨中学生に避妊を教えるその2.

 このあたりから、中学生たちの顔がどんどん真剣になって、こちらの顔をじっと見つめています。

『膣外射精をしていたのに妊娠したという人が29%。やっぱり100人中30人近くの人が妊娠しているのですね。

 さすがにコンドームを毎回欠かさず、手抜きせずにちゃんと使ったという人たちの妊娠率は、ずっと低くて、13.5%。この人たちはお気の毒で、どうして?ちゃんと避妊してたのに、と言われます。どうしてっと言われても、コンドームの避妊率は1年間でで85%。一年以内に100カップル中15カップルが妊娠すると言われています。それとホント近い数値、13.5%という数が私たちの所でも出ました。』

 もう、この辺りの中学生の反応はすごいものがあります。後での感想文で
「外に出せば大丈夫と思ってた」とか、
「コンドームを使っても13.5%の人が妊娠するなんて、本当にびっくりした」
「自分はほんとうに無知だったとわかった」
などが満載となります。

『それから、安全日、危険日。これほどダメなものはないんでね。女性の体は機械ではないのです。機械だって時々故障するのに。まして、女性のからだ、排卵とか月経とか妊娠とかは微妙なホルモンで左右されています。それも、ここ(と額を押さえます。それまで下を向いていた生徒たちが一斉に顔を上げます。じっと下を向いても、耳はしっかりこっちを向いていたことが分かります)、脳から出るホルモンによって左右されているんですね。うーんと憂鬱なことがあれば、ホルモンの出が押さえられたり、ワーッと興奮すると、ワーッとホルモンが出たり、こんなことは日常繰り返されているのですね。

 だから、もうそろそろ生理だから大丈夫なんてと思っていると、わーっとホルモンが出て、ということはしょっちゅうあること。(私は不妊治療などで沢山の基礎体温を見ています。なかには、そろそろ月経というころに、もう一度体温が上がって二段の排卵というのを沢山見ています)女性のからだはいつでも妊娠するからだと考えていつでも避妊をしなければならないのですね。安全日なんて、こんな言葉を作った大人が悪いと思っています。

 安全日危険日、これ単独の人は少なくて、9人しかいませんでした。危ない時はコンドームという人はコンドーム時々という方に入れましたので。統計的意味は持たないので、参考までに。9人の内実に7人が妊娠していました。77.77%。こんなのは避妊とは言わないよね。

 多くのカップルが沢山子どもを産まなくなった今、避妊というのは、とても大切なことなのだけれど、いまだに100%安全で100%確実に避妊法というのは、ないのですね。

 ピル、経口避妊薬、これは女性が確実に飲んでいれば、確実に避妊できるという意味で、女性にとっては大きな福音でもあります。もし、将来、確実に避妊したいということになれば、ピルの処方の相談に産婦人科に行くのも選択肢の一つであると、言っておきますね(ピルを飲めと言っているのではありません。ピルの相談に産婦人科に行くといっていますので)』

 ピルの副作用、飲んではいけない人の話もここでします。35才以上でたばこを一日15本以上吸う人とか、コントロールできない高血圧症の人とか、前兆のある片頭痛の人とか。ただ、人工中絶の副作用にくらべれば、副作用の発現率は極めて少数であることも。それでも、基本は相談に行った産婦人科でしっかり副作用、特に血栓症のリスクとか、その対応などの話を聞いたうえで決めることです。

 そして、ピルは望まない妊娠は防いでくれるけれども、HIVエイズウィルスに代表される性感染症の前にはまったく無力であることも。これからの君たちの時代なのだから、望まない妊娠はしない、させない、同時に性感染症も防衛すること。その話をします。そのためにはコンドームともう一つ。WHOでは、避妊は確実なピルで、性感染症の予防はコンドームで、その両建てで、と勧めています。

 大切なのは、そこまでできるか、そこまでできる関係であるか、ということ。もし、二人で話合って、そこまでできるのであれば、それはコミュニケションの取れ遭ったいい関係なのでしょうね。でも、若者の性は、妊娠したらどうしよう、しないためには、どうしようか、という話合いするしないままに、行動が先行している、とても貧しい性を実行してると思います。

話したいことは満載です。

 ただ、基本はセックスを怖いものであると脅すのではなく、素敵なもの。素敵なものを素敵なものとして実行できる大人になってほしいという思いで。

 そして、素敵な性とは何だろうと話は続きます。少なくとも、びくびくしながらの性、警戒しながらの性は決していいものにはならないということ。妊娠したらどうしよう、だれかにばれはしないかしら、親に知られたらどうしよう、それから、この人はどんな人なのか、そこから出会い系サイトの話に繋がっていきます。

『今、君たちは中学生で携帯を持っている人は少ないでしょうが、高校生にもなると多くの人が持つでしょう。携帯を持つと、出会い系サイトの情報がどんどんと入って来ます。今、フィルターがかけられて、出会い系サイトは少なくなっていても、それに代わるものとして、「掲示板」があります。ゲームの掲示板、学校掲示板、学校うら掲示版など。掲示板にアドレスを晒すということは、これはメールの交換だけでは終わりませんよ。これは必ず会おうということにつながります。会う目的は?』

 ごめんなさい、なかなか終わりません。また次に続きます。でも、こんな話をさせてくれる所は、まだまだ少数なのです。バッシングに影響されている学校や地域ではこれでも「過激な性教育」と言われるのですから。

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コメント

こうの先生、
コメントへのお返事、ありがとうございます。
仰る通り、あの、単語にだけ反応してる批判ブログが無かったら、先生の言葉や性の被害者の方の声には触れていませんでした。

そして高校中退の私が社会学の本まで読むようになる事も無く、本の知識だけでは知り得ない事を自分が体験している事にも気付けなかった。
「性教育なんか受けた事ないけど、何故か自然に覚えちゃたんだ」なんて笑ってる気持ち悪い首長と議員達や、「性教育は結婚してから」と言う議員よりも、性の多面性や実際を知っている。
幸せで震えるようなセックスは性風俗では売ってない事や、奪ったセックスからは苦しみや虚しさや後悔が記憶される事を教えられる人がまだまだ少ないんですね。では私は質の悪いオトコに刺さる性教育を考えます。

投稿: 一般男性(42) | 2014年1月12日 (日) 04時01分

膣外射精でも妊娠するんだと初めてしりました。また避妊においてはピルとコンドームがいいという噂がありましたが、ほんとうにそうだったとはしりませんでした。中学生がピルを含めた避妊指導をするうえでホルモンの分泌を教えていこうとなさっているのも大変驚き、中学生の避妊指導で実際に採血してホルモン数値をはかりきちんとピルとコンドームをつかったうえの採血をしているようなことをおききしたら安心しました。ただ日本の多くの母親が娘になにかしらの理由をつけて産婦人科にいくのもためらう、生理痛ですらためらう、変な意味での保守意識ってどうにかできないのでしょうか?欧米先進国では初潮がきたら当たり前のように産婦人科にいく習慣があるようです。また、あらたな個人的な驚きがありますが、ひごろ妊活で基礎体温をはかってましたが、実は排卵が二回あることに気がつき悩んではいます、また、FSHが年齢平均よりたかいといわれて急いできました。妊活がおわり妊娠出産したあとあいだをおきたい場合は主治医と相談しながら出産の間隔あけることのアドバイスは素晴らしいなって感じます。また先生におききしますが、精子が不健康な場合、具体的に乏精子症でも避妊しなければ妊娠の確率

投稿: 愛ちゃん | 2014年1月12日 (日) 08時47分

> 「性教育なんか受けた事ないけど、何故か自然に覚えちゃたんだ」なんて笑ってる気持ち悪い首長と議員達

気持ち悪いと感じるのは勝手ですが、それで他人を納得させられると思ってるとしたらそれこそ気持ち悪いですね。

投稿: | 2014年1月16日 (木) 00時00分

> 「性教育なんか受けた事ないけど、何故か自然に覚えちゃたんだ」なんて笑ってる気持ち悪い首長と議員達
正しくない性知識によってリスクを押し付けられるのがどんな人か,を考えると
体験や伝聞で得られる性知識で十分と言い張り,真剣に考えない政治家(ほぼ男性)は
特に女性にとっては気持ち悪いだろうと思います.

私は男ですが,自分の知識がどこから来たか思い返すと
小学校5,6年の頃に目にした週刊誌の記事に始まり,中学時代は小説(not成人向け)と一応保健体育の教科書(授業は記憶にない),
高校は寮生活の男子校でコンビニ売りレベルの成人向け雑誌が追加,
なぜかリズム法?(いわゆる安全日危険日)の解説を読んでおり,
精子・卵子の生存期間を考えると妊娠しない時期がほとんどないことを知って驚いた記憶があります.
大学進学(工学部)するも半引きこもり状態になってしばらく休学した後に中退し現在に至る.お察しの通りリアルな女性との接点はありません.
主に知的好奇心から,こうして専門家の発する正しそうで有益そうな知識・情報を集めている感じです.
#こうして見ると標準から外れ過ぎてて全然役に立ちそうにないサンプルだ(苦笑)

投稿: 育野 | 2014年1月23日 (木) 19時29分

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