8.6ヒロシマ平和の夕べのスタッフの仲間である山下徹さんが、この度、広島地裁の伊方原発運転差し止め広島裁判において原告の一人として意見陳述をしました。お昼時間に聞きに行きたかったのですが、午前中の診療が長引いて行くことができませんでした。でも、サイトに掲載されている山下氏の陳述を読んで、その素晴らしさに心打たれました。サイトのアドレスはここです。
http://saiban.hiroshima-net.org/
山下氏の了解を得て、私のブログにも陳述を転載させて頂きます。
伊方原発運転差止広島裁判は、広島高裁で仮処分の決定が出て、現在運転は止められています。この裁判は、その本裁判です。やはり、江田島に暮らす人々や生活についての陳述、「人」を感じるお話が胸を打つのですね。
『伊方原発広島裁判原告団
伊方原発運転差止等請求事件本案訴訟
2018 年 1 月 31 日第 9 回口頭弁論期日
意見陳述 要旨
原告 山下 徹(第 4 陣)
山下 徹と申します。瀬戸内海を死の海にしてはならない、それだけは絶対 阻止しなければならない、そういう思いで私は今回この裁判の原告になりまし た。本日は意見陳述の機会を与えていただき感謝いたします。
はじめに、2017年 12 月 13 日の広島高裁の四国電力伊方原発 3 号機の 運転即時停止の命令は伊方原発の危険性について抗告人側の主張を認めた画 期的な決定であり、心より感謝しています。
広島高裁決定が指摘するように、伊方原発は阿蘇カルデラの160km圏に すっぽり入っている“立地不適地”であり、私たちが日ごろ抱いている伊方原 発に対する不安は決して根拠のないものではないと思いました。
さらに伊方原発は日本最大の中央構造線断層帯の直近に位置していると聞 きますし、その意味では日本の原発の中でもっとも危険な原発ではないかとも 感じています。さらに3号機で使用されているのは通常ウラン燃料よりもさら に危険といわれる MOX 燃料と聞いています。
私は、広島県江田島市に住んでいます。1950 年 8 月生まれで、現在 67 歳です。脳出血による後遺症で失語症があり、寝たきりで要介護5の妻がいま す。
私が住む江田島市は、広島湾に浮かぶ江田島と能美島からなる人口約 2 万 4 千人の瀬戸内海で 4 番目に大きな島です。
江田島市は、江田島市内への通勤通学のほか、広島市や呉市を通勤通学圏と する人も多いのですが、ミカンなどの柑橘や、美観や緑化のための花卉、また キュウリ、トマトなどの野菜のハウス栽培をはじめとする農業、カキ養殖を始 めとする漁業に加え、新たに地域の活性化のために江田島市が打ち出した「オ リーブの島構想」でオリーブを特産品として育てていこうという取組もやっと 軌道に乗りかけています。また体験型修学旅行の訪問先として、主に海のない 地域の中学生や高校生たちも島を訪れてくれるようになりました。このため大規模な宿泊施設の乏しい江田島市では、新たに民泊産業とも呼ぶべき観光産業 も発展しつつあります。
人口減少と高齢化が進むなかで、これらの新たな取り組みをすることにどれ ほどの智恵とエネルギーが必要かはお分かりいただけると思います。
江田島市民のみなさんは、温暖少雨の気候と多島美など、瀬戸内海の海、山、 空の自然の恵みに、私たちの生活が、これまでもこれからも依拠していること を前提として、未来の豊かな江田島市の建設と都市圏への安全安心な食糧、食 材などの生産に誇りを持って日々いそしんでいるのです。
この瀬戸内海の面積は約19,700平方kmで、ほぼ四国の面積と同じだ そうです。 平均水深は約30数mと聞いています。 水深の分布は、10m~ 30mの水深が一番多く分布していて浅いところが多く、水深が70m以浅の 海域が全体の約98%を占めている閉鎖的な海域だそうです。
しかし、ひとたび伊方原発で事故が起きたら瀬戸内海はいつまでも汚染され、 この江田島市をはじめとする島嶼部や沿岸部で暮らす人々の生活がたちまち 破壊されてしまいます。私たちの努力も全く無に帰してしまうのです。
また、事故が起こらずとも、伊方原発の稼働による温排水によって瀬戸内海 の生態系が大きく影響を受けている可能性も指摘されています。また原子炉冷 却のために。豊かな生命を育んでいる瀬戸内海の海水を1秒間に数十トンも吸 い込み、全く稚魚、プランクトン、海の栄養分のない死の水に変えてまた瀬戸 内海に戻している、しかも海水温度から7度も高い温水に変えて吐き出してい るとも聞きます。長い目で見て、島の漁業や生態系に悪影響をあたえるだろう ことは子どもにもわかる理屈です。
江田島市は伊方原発から海を隔ててほぼ80km圏に位置しています。昨年 12月の広島高裁決定は、100km圏の広島市でも、事故が起これば放射性 物質によって生命・身体に直接的かつ重大な被害が及ぶ蓋然性が想定できる、 としています。江田島はもしかすると蓋然性どころか確実に被害が及ぶかも知 れません。
また伊方原発を運転する四国電力も、絶対苛酷事故を起こさないとは明言し ていないと聞きます。それどころか、伊方原発の地元では、将来起きるかも知 れない苛酷事故に備えて避難訓練を繰り返しているという報道も目にします。 絶対苛酷事故を起こさないなら、避難計画も避難訓練も必要ないはずです。想定されるどんな地震や津波にも耐えるのなら、原発に避難してもよいのです か?
福島第1原発事故のときは、病院や施設の入院患者や利用者のみなさんや、 人工透析患者など居宅で様々な援助を受ける人びとが避難できずに又は避難 の過程で多くの被害を受けたと聞いています。
18 歳のときから社会福祉を学び、社会福祉士として江田島市の高齢者施設 に勤務していた私は、その経験から瀬戸内海の島嶼部や沿岸部で暮らしながら 様々な支援、援助、配慮を求めている人たちの避難の困難性も肌で感じており ます。
もし伊方原発で過酷事故が起これば、間違いなく大量の放射性物質が瀬戸内 海になだれ込み、瀬戸内海は放射能で死の海になることでしょう。江田島で生 まれ育ち、そこで暮らしている者として、私たち島の人間が有形無形にどれほ ど瀬戸内海の恵みを受けているか、肌で感じております。
環境に放射能を放出するような事故を起こすことは絶対ないと保証される ならともかく、万が一でもその可能性があるなら運転しないでいただきたい。 私たちにとって命の海である瀬戸内海を放射能で死の海にすることだけはや めて欲しいのです。
科学的に安全だと思うから動かす、という説明をするのであれば、明らかに 間違いだと思います。そのように述べたとたんに、また新たな安全神話が作り 出されることになると思うのです。最近では、草津の本白根山の噴火もありま した。分からないことは分からない、リスクがあるのだということを認識した うえで、立地や再稼働の是非を判断すべきだろうと思うのです。
伊方原発を運転させてはならない、先人や私たちが営々として築いた生活を 壊してはならない、美しい瀬戸内海を子々孫々に残さなくてはならない。こう いう思いで本日意見陳述をさせていただきました。どうか伊方原発の運転停止 を命じていただきたいと心からお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。 』
私のクリニックには、毎週嵯峨御流の青野直甫さんがいけ花をいけて下さっています。いつもとてもかわいくて素敵なお花で私たちを和ませて下さいます。この一角はすっかり春ですね。
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