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CLAYNOTE

クラシックと私 

私がピアノを習い始めたのは丁度五歳のとき。
私が生まれる前から家には何故かアップライトのピアノがあり、私は子供心に興味を抱いたのでしょう。
一つ一つ鍵盤を叩いて音を探りながら、当時通っていた幼稚園の園歌や覚えたての「みんなのうた」なんかを一本指打法で弾いていた記憶があります。

それに目を付けた母親が父親に相談して私をピアノ教室へ通わせたのかも知れません。
自分の意思とは関係なしに強制されたレッスンは決して楽しいものじゃなかったですが、ピアノを弾く事は好きでした。
しかし決められた楽譜を弾く事はやはり苦痛で、それよりも父親が所蔵していた映画音楽のスコアや、ザ・ビートルズのスコアを見ながら、主旋律に沿って勝手に和音伴奏を付ける事の方が数倍楽しかったのです。
そう言えばリチャード・クレイダーマンの楽曲集を弾くのも好きでした。

だがしかし、クラシックを毛嫌いしていたと言うわけではなく、中には好きなものもありました。
父親の話では、私は母親の胎内に居た頃からベートーヴェンを聞かされていたようですから、クラシックに傾倒する素地はあったのでしょう。
中でも一番好きだったのがチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第一番第一楽章」
このように私は“この作曲家が好き”と言うよりも、“この作曲家の作ったこの曲のこの部分が好き”と言うピンポイントな好みを感じる事が多く、そんな中で初めてこの作曲家が好きだ、と言える存在だったのが先述のルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンだったのです。

初めてそう感じた切欠は、今は亡き伝説のピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツ氏が奏でる三大ピアノソナタ(ピアノソナタ第8番「悲愴」、ピアノソナタ第14番「月光」、ピアノソナタ第23番「熱情」)でした。
初めて聞いた三大ピアノソナタがホロヴィッツ氏のものだったので、その後必死に練習した私の三大ソナタはほぼ彼の真似事でしたし、(当然あんな立派な演奏ではない)他のピアニストが弾いた三大ソナタには今でも違和感を覚えてしまいます。
それくらいホロヴィッツの演奏は私の中ではパーフェクトなものだったのです。


私のクラシックへの造詣は自ら接触した結果では無く、殆どが父親からの影響でした。
例えばリストの「ラ・カンパネラ」

これも私が好きなクラシック名曲の一つですが、父がこの弾き手として最も評価していたのがアンドレ・ワッツと言うドイツ生まれのアメリカ人で、当時はピアニストと言えば白人だと言う認識が蔓延する中、私が初めて知ったネグロイドのピアニストでした。言葉では上手く言い表せないのですが、彼の弾くカンパネラは酷く心地良かったのです。
最初は父が好んでいるから、無意識にそれに合わせてるんじゃないかと思ったりもしましたが、同じ様に父が好きだったグレン・グールドはあまり好きになれなかったので、自分が抱いた好感は飽くまで自分自身のものだと判明してホッとした記憶があります。


ところで私はクラシック以外のジャンルでも比較的メロディアスなものを好む傾向にあるのですが、そのせいか何故か何度聞いてもモーツァルトだけは好きになれません。
昔『アマデウス』と言う映画を見たことがありますが、アカデミー賞主要部門に軒並みノミネートされるほど優秀な出来だったあの映画に対する感銘が薄いのは、多分劇中に流れるモーツァルトの楽曲のせいじゃないかと思ってます。
実際はモーツァルトの楽曲ってメロディアスなものも多々あるんですけど、ただその組み立てが私の好みじゃないと言うか、ただ音階を行ったり来たりしてるだけの様な面白味の無いものに感じてしまうんですね。
どれを聴いても練習曲の様に聞こえてしまうと言うか何と言うか…。

私の父方の叔父もピアノを弾くんですが、彼はモーツァルトが大好きなようで正月挨拶回りに訪れる時は器用にキラキラ星変奏曲などを弾きこなしてお披露目するもんでその度に技術的には大したもんだなぁ…なんて思うのですが、楽曲自体は一体何が良いんだかさっぱりわかりませんでした。

にも関わらず、一度地元のホールにロンドンフィルがやって来た時に、CMで流れたモーツァルトの楽曲に感銘を受けて父親に無理矢理連れて行って貰った事がありましたが、あれが唯一私がモーツァルトの中で好きな曲です。
なのに題名が未だに解らん…。
確か変ロ長調だったと思うんだけど、モーツァルトにしては珍しく主旋律がゆったりとしていてメロディアスでとても美しい曲だった印象があります。
今これを書きながらも色々youtubeなどで調べてるんですが、どれも違う…。
そもそもまだ小学校低学年の頃の話なので、ピアノ協奏曲だったのか、交響曲だったのかも定かではないし、件の理由で私はモーツァルトに関しては殆ど造詣が無いのです。


まぁそれはとりあえず置いといて、とにかく私が一番最初に好きになったクラシック作曲家がベートーヴェン。
でも、一番好きな作曲家が彼だというわけでは無くて、やはり今となってはJ.S.バッハこそが私の最も愛すべき作曲家だと言えるでしょう。

これは飽くまで個人的意見ですが、何時何度聴いても廃れないクラシック音楽と言うのは、ロマン派、古典派以降よりもバロック時代の方が多い気がします。
ロマン派、古典派の音楽と言うのはとかく技巧に走りがちで、ともすればその点ばかりを耳が追ってしまうのに対し、バロック時代の音楽は構造がさほど複雑でない分理解しやすいと言うか、聞くと言うよりはフィーリングで感じることが出来る音楽だと思います。
J.S.バッハしかり、ヴィバルディしかり、ヘンデルしかり。


とまぁここまでクラシックの事をあれこれ私情を交えて書いてきましたが、要は何が一番言いたかったかと言うと、モーツァルトとベートーヴェン。
とかく比較されがちなこの二人の作曲家。
どちらに一票を投じるかと言えば、私は迷いなくベートーヴェンに入れる、とYoutubeで楽曲の比較動画をアップしている御人に言いたいわけです。

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