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泥臭いWEBの底から~WEBディレクター覚書~

WEBディレクターというのは何を考えておるのか。その一例。

「位置ゲー」が注目を集めているらしい。本当かどうか知らないが。手がけたことはないから勘違いは多々あるだろうが、そういうジャンルのゲームを企画提案する機会が今後ないとも言えないので、ちょっと考えてみたい。考えてみたいとは言ったものの「なにを考えれば良さそうか」についてまとめてみる、と言ったところか。

位置ゲーは「量」「質」大きく分けて二つある。「量」は移動距離、「質」は「どこへ行ったか」という部分がゲームに反映される。もちろん「量と質」のハイブリッドもある。

「量」を反映させるゲームは「質」に比べて開発する際に必要なネタの数が少なくて済む。どこへ行ったかによって、発生させるものを変えなくてもいいからだ。シンプルな例だと移動距離によって何らかのポイントが加算されるシステム。距離とポイントの割り振りさえしてしまえば、「位置ゲー」として考慮する部分はとりあえず出来上がる。

一方で「質」は必要なネタの数が多い。違う場所へ行けば違う何かを発生させる必要があるからだ。この「行き場所に応じて違うことを発生させる」という場合は「範囲」と「粒度」が重要になってくる。
「範囲」というのは文字通りで、全国にするのか、特定の場所に限るのか。「粒度」というのは「どれくらい細かく要素を分割するか?」で、都道府県なら最低でも47のバリエーションを考えれば済むが、市区町村レベルになると一気に膨大な数になる。あるいは「ケータイ国盗り合戦」「ココ釣りマスター」のように分割を現在の都道府県や市区町村ベースにせず、それでいて全国を対象とすることも考えられる。言うまでもなく「全国」という範囲の方がそれだけ多くの人を「見込みユーザー」にできる。範囲限定なら自治体や企業など、どこかしらとのタイアップ的なものになるだろう。

この「粒度」がなかなかの曲者で、細かすぎると要素をそれだけ揃えるのが難しく、広すぎると物足りない。また、都道府県レベルの粒度でも「外出はよくするけれど、ゲーム上では同一区域内ばかり」という人の場合、早々に飽きられてしまう。「ケータイ国盗り合戦」でも日替わりクイズやコミュニティなど、「同一区域内しか移動しない期間」でも遊べるような要素を取り入れている。その意味ではサービスが位置ゲーのみで自立していない、とも言える。

こうした位置ゲーの話でよく取り上げられるのが「出張の多いビジネスマンに人気」というもので、考えてみればケータイゲームのメイン層である中高生はそうそう都道府県をまたいだ移動などしない。位置ゲーのためだけに遠征するという人も少ないだろう。その点、出張が少なくても大人ならこのために都道府県をまたいで移動することだって比較的やりやすい。「量」に比重を置いたゲームでも、「通学」に比べればおおむね「通勤」の方が移動距離は多く有利だろう。
ということは、演出にせよなんにせよ、この手のゲームを企画するときは中高生ではなく大学生以上をターゲットとした方がよさそうだ。

また、「妄想の監獄」は「相対位置情報」を採用しており、ゲーム内の移動のために現実の場所移動をしなければならない、という形をとっている。発想としてはファミリートレーナーのようなものだが、「量」「質」以外の扱い方もあるということに気付く。

個条書きにすると、位置ゲーを企画する場合は
・「量」「質」以外の扱い方を模索するか
・「量」「質」どちらに比重を置くか
・両方の場合、どのような混ぜ合せ方にするか
・「質」の場合、「範囲」と「粒度」をどう設定するか
・移動によってなにが発生するのか
・移動がないときに何をさせるか
・大人向けとしてどういう見せ方をするか
というところだろうか。

今のところ「位置ゲー」と言えば携帯電話がその代表だが、これからネットブック他「ケータイ以外の携帯デバイス」の普及が進めば、より複雑で要素の多い「手の込んだ」ものも増えてくるだろう。まあ朝から晩までPCの前に座り、通勤と休日のちょっとした外出以外はあまり出歩かない自分にとって、プレイヤーとしてはあまり魅惑的なジャンルでもないのだけれど、作る側としてはまだまだ伸び代があって面白そうな分野ではある。
Google Phoneがテスト中で、発売された暁には「すべてが変わる」らしい。
Google Phoneですべてが変わる
「世界が変わる」「革命的」「歴史に刻まれる」「大変革」…今年入ってからでもこれでこの手のフレーズを見るのは何度目だろう。威勢のいいこと書きたいのは解るが、日本に限っても景気が一段と悪化して情勢的にもジリ貧なのがハッキリしてきた以外になにか変わったのかね? iPhoneのおかげでヒマ潰しに困らなくなったことくらいか? セカイカメラでラブホを眺めるドキドキ感が得られたことか? 上記みたいな威勢のいいフレーズで形容されるものは一個もなくていいから「不景気が終わる」みたいなのが1個でも出てきた方がいいよ。

上記記事にしてもGoogle Phone発表か? という以外は「とにかくマジスゲーんだって。なにがどうなるかもどうすごいのかも判んねーけど、とにかくハンパなくすごいことになるんだってば」と言ってるだけである。この記事を書いたライターが痛々しいだけなんだろうけど、Google Phoneの発売によるインパクトがどうなのかはさておき、この記事はひどい。

ところで一方、どこかで2009年「究極のウェブ」とかいうのが決まったらしい。毎年選出してたそうで、それは知らなかった。「究極」というからにはさぞスゴイものがあるんだろうと思って見てみたのだが、期待を裏切らない素晴らしいものだった。

10位 Twitter
 →究極かどうかはともかく、今年の勢いからすればこうしたランキングに入るのももっともな気はする。しかしこれで10位って。まあ技術とかやってること自体は超革新的というわけでもないし。インパクトの大きさによるところがスゴイからか。あと、今年スタートでもないし。
 
9位 nanapi
 →Yahoo!知恵袋とか、あのへんのノウハウ系の後発サイト。多くの人にはブックオフで「伊藤家の食卓」の本でも買った方が普段の生活で役立つ気がする。

8位 テレビジン
 →テレビ番組の盛り上がりを様々なデータから可視化してくれる。技術的には価値あるのかもしれないが、今どのテレビ番組がどう盛り上がっているかを知ってどうなるというものでもない。あと、テレビを観ない人にはたいして役に立たない。
 
7位 AppBank
 →iPhoneアプリをたくさんレビューしているサイト。iPhoneアプリであることが大事で、同程度の情報量と質であっても書籍や映画、コミック、ゲームなどのレビューサイトよりもこの点で素晴らしい。

6位 美人時計
 →1分ごとに違う女性が表示される時計サイト。ウィジェットとかアプリもある。安易な2番煎じ企画の新定番を作ってくれた功績は大きい。

5位 ほめられサロン
 →名前・性別・職業を入れると自分のことをホメまくってくれるサイト。それだけ。だが、6位以下よりも素晴らしい。

4位 Revilist
 →ISBNでAmazonのAPIを使ってレビューだけを表示してくれる。専門学校生が課題で作ったような素晴らしいアイデアと技術であり、「Amazonのレビューだけ見たい。他のページ構成要素は1片たりとも見たくない。そのためならAmazonで該当書籍のISBNを調べてRevilistに入力することもいとわない」というよくある需要に見事に応えている。なので5位以下より上位にランクインするのも当然と言える。

3位 Joker Blog
 →ネットでラジコンが操作できるJoker Racerの製作者がやってるブログ。あの素晴らしすぎるJoker RacerのPR情報が読めるという感無類のブログであり、TOP3の名にふさわしい「究極」具合である。あなたや制作チームが多大な苦労を払って制作したサイトやサービスよりもむろん、はるかに「究極」と呼ばれ賞賛されてしかるべきなのは納得いただけるだろう。

2位 Lang-8
 →世界中のユーザが自分の母語以外で日記を書き、その言語を母語としている人が添削しあうという言語学習サイト。昨年も「究極のwebランキング」で5位に入ったのだが、今でも月10万円ほどの売上しかないので2位に。言語学習においてかつてなく効果的でクールで、助け合いの精神を実感させてくれるという素晴らしいサイトである。
 
1位 モバツイッター
 →普通の携帯電でもツイッターができるようにしてくれたサービス。この1文以上は説明の必要もなく、そもそも説明しきれてないところがないのだが、これが今年最も「究極」を冠するにふさわしく素晴らしいサービスであることは誰にも明瞭だろう。
 
さて、こうして見ると今年も日本のweb業界は全然残念ではなかった。むしろ超イケてる。セクシーすぎて夜も眠れない。梅田望夫さんもこのランキングを見て「早まったことを言った」と後悔されているのではないだろうか。

日本にもシリコンバレーは出来かかっていた」という話があるが、このランキングを見てももっともなことだと、素直にそう思える。

ちなみに、上記ランキングの受賞理由についていささか無理のある説明をしている記事が以下である。「どんなものでも褒められないことはない」という言葉のいい実例だろう。

2009年の究極のウェブは「モバツイッター」。忘年会議2009で究極のウェブトップ10が発表に。
業務上の遣り取りをTwitterでやってみている、という一部先鋭的な人の話をブログで見た気がする。あれは夢だったのか…。じゃなくて。そりゃヘタに流行ったら困るよ、というお話。

PCの前で仕事をしているみなさんにおかれましては、基本的に業務中メーラーは起動しっぱなしだと思う。新着があればなんらかの通知がされるかどうかは設定しだいだけど、業務上の遣り取りはせいぜいメーラーと電話に気を配っていればいい。あとまあ、人によってはIMか。

で、仕事の遣り取りをTwittrerのDMでやる人が増えてくると、サイトじゃおっつかないのでTwitterクライアントを何がしか常時起動する必要がある。そのクライアントがDMを受信するとポップアップなりで通知してくれるならいいが、してくれない場合はいつDMが来るか知れたものではない。ときどき呼び出して確認が必要になる。面倒くさい話だ。

DMが来ると登録したメルアドに通知メールが来るのだけれど(これって設定しだいだっけ?)、これだと「DM通知メール受信→TWitterで内容確認→返事をDMで」ってじゃあメールで最初っから連絡くれよ、となる。

あと複数の案件が同時進行している場合のメッセージの管理機能も(現時点では)メールに比べて貧弱だ。いや、Twitterクライアントの中にはそういうのを上手くこなすのもあるのかもしれないけど。
あと添付の遣り取りなんかも相手のクライアントソフトに関わらずドラッグアンドドロップで上手いことやってくれるクライアントってあるんだっけ?

あと、ダイレクトメッセージは文字数制限がある。その文字数以内に「一連の遣り取りが全て」収まるならいいけど、そうでない場合は途中でまどろっこしくなって遣り取りの途中でメールにシフトすることになる。だいたい、文字数制限の範囲内に収まるように文章を工夫する時間と労力がもったいない。

というわけで、Twitterで仕事の遣り取りをするというのは、一部のユーザが実験的に試みる、という程度で留まっていていただきたいし、個人的にはあんまりそれを喧伝したりはしないで欲しいところ。許容できるケースとしてはまあ、Becky!なんかのメーラーの右側にTwitterクライアントがくっついて、DMはメーラー内で通常のメールと同じく扱われる、とかになれば。

Google Waveについても、役に立とうが立つまいが自分としては本当にもう素晴らしいと思っているのだけれど、あんまり仕事の遣り取りやブレストなどで使う人が増えないといいがなあ、と思う。

複数人でのミーティングを置き換えるというならいいのだろうけど、それ以外の用途でも使う場合、あれのメリットはリアルタイム性なのだろうから、複数の担当者が同時にPCの前で拘束されることになる。途中で抜けたり別のメールに対応したり、ちょいと他の作業をしたり、ということがしにくい。ヘタに複数の相手と別案件に関する遣り取りがGoogle Wave上でバッティングすると、さながら将棋の多面指しみたいになって非常に不利だ。というわけで、最初に取り組んでいる相手以外からGoogle Wave上でなにか話がしたいと言われても断るか後にしてもらうしかない。

というわけで、最悪に面倒なケースは仕事上の遣り取りのツールとして「電話、メール、IM、Twitter、Google Wave」が並存してしまう状態。もう、むちゅくちゅしいことこのうえない。どれで誰となにをしろと。
目的に応じて使い分けるにしても、どういう用途でどれ、という認識が人によってバラつきそうだし、そもそもそんなに目的に応じて使える選択肢が細かく分けられなくとも結構じゃないか。

あとまあ、個人的にはせっかくメールの登場で仕事上の遣り取りが「リアルタイム一択(書簡は除くとして)」というくびきから開放されたのに、なんでまたリアルタイムコミュニケーションの比重を増やさないといかんのか、という気持ちもある。実を言うと仕事の遣り取りだけに限らないのだが。

【追記】MarkupDancingでも同じようなこと(と、自分としては言いたい)が書かれていた。
Google Waveがダメな理由、それでも使うようになる理由
ちなみに、MarkupDancingを書いている人のことはまったく知らないけれども、個人的に「もっともカッコイイ憧れの人-ブログ読んでて思う」部門の1位だ。
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