チケットの親子関係が持つ意味
さかばさんのBlogを読んで考えたことをメモ。
【元ネタ】
[TiDD] RedmineのWBS: ソフトウェアさかば
プロジェクトの初期にタスク洗い出しとして作られるWBSは普通、5階層までが良いと言われている。
WBSの階層が深いと管理しにくいが、階層化しなければ、タスクの見通しが悪い。
Ver0.8までのRedmineでは
「プロジェクト-サブプロジェクト-バージョン-チケット」
の構造を持つので、4階層になるようにWBSを作ればいい。
しかし、実際はもっと深く作りたい時もあるから、その場合は階層を省略するなど無理するしか無かった。
Ver0.9では、プロジェクトの階層が無制限へ機能改善されたので、
「プロジェクト-サブプロジェクト1-サブプロジェクト2-バージョン-チケット」
のように、5階層のWBSを簡単に作ることができる。
ここで、さかばさんの指摘のように、下記のように対応付ければ、小規模リリースを簡単に実現できる。
チケット←→モジュール(部品・機能)
バージョン←→コンポーネント(リリース可能な最小の稼動できるモジュール)
しかし、チケットをタスクカードに見立てることはRedmineで簡単に実現できるが、ストーリーカードを実現するのは難しい。
ストーリーカードを実現するには結局、チケットの親子関係、つまり、チケットの階層構造を作らなければならない。
そして、ストーリーカードとタスクカードには、Redmineの各機能から眺めたチケット駆動開発の課題:プログラマの思索のような制約が必要になる。
もし、この制約が実装できたならば、下記のイメージのようなRedmineで要件管理も可能になるだろう。
チケット管理の観点:プロジェクト-サブプロジェクト1-サブプロジェクト2-バージョン-チケット
要件とタスクの観点:ストーリーカード1-ストーリーカード2-ストーリーカード3-ストーリーカード4-タスクカード
つまり、要件をストーリーカード1~ストーリーカード4の単位で階層化・細分化し、タスクカードを最下層に配置する構造が対応するようにできる。
そして、要件の階層は、ステークホルダーの観点で進捗管理する単位にすればいいと思う。
例えば、第1~3階層までは顧客や管理者向け、第4~5階層は開発者やライブラリアンの観点で、要件や作業をチケットにすればいい。
上記のようなツリー構造をRedmine上で実現できれば、要件からモジュールまでのトレーサビリティが容易に可能になる。
例えば、モジュールでバグが発生した場合、バグが発生したストーリーカードを探せば、その階層構造から影響するストーリー(要件・機能)の範囲が分かるので、修正方法や修正工数の決定が楽になる。
あるいは、仕様変更が起きた場合、影響するストーリーカードの階層構造から、影響範囲が分かるので、対応工数を見積しやすくなるだろう。
即ち、チケットの親子関係という機能は要件管理と要件のトレーサビリティと密接に関係するからとても重要だ。
そして、要件管理が実現できれば、設計プロセスの品質改善に大きく役立つと思う。
何故なら、設計プロセスのバグである設計漏れの原因の大半が、要件漏れや要件の影響範囲の考慮漏れだからだ。
上記のアイデアは、既にRedmineのScrum系プラグインで実装されているが、Ver0.9で動くか確証がないし、Ver0.8でもそもそも不安定なプラグインもある。
早くRedmineのデフォルト機能として実現して欲しいと思う。
| 固定リンク
「プロジェクトマネジメント」カテゴリの記事
- チームトポロジーの感想~大規模アジャイル開発でも組織構造は大きく変化する(2025.01.01)
- 「スクラムの拡張による組織づくり」のScrum@Scaleの感想(2024.03.31)
- ストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いは何なのかpart2~プロセスのレイヤと達成目標のレイヤが異なる(2023.02.18)
- ストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いは何なのかpart1~CSFはWBSみたいなものと捉える(2023.02.14)
- PM理論では課業志向の方が関係志向よりも生産性が高いことを主張しているのではないか(2023.01.22)
「Redmine」カテゴリの記事
- Redmineは組織のナレッジ基盤として実現可能なのか~島津製作所の事例を読み解く #redmineT(2024.12.29)
- 「RedmineのUbuntu+Docker構築への移行」の感想 #redmineT(2024.11.24)
- 第27回redmine.tokyo勉強会の感想 #redmineT(2024.11.10)
- Redmineのバージョン設定でプロジェクトの設定方法が違う(2024.06.23)
- ウクライナのRedmine開発者が作ったRedmineテーマやプラグイン(2024.06.18)
「ソフトウェア工学」カテゴリの記事
- チームトポロジーの感想~大規模アジャイル開発でも組織構造は大きく変化する(2025.01.01)
- Redmineは組織のナレッジ基盤として実現可能なのか~島津製作所の事例を読み解く #redmineT(2024.12.29)
- アーキテクチャ設計はベストプラクティスを参照するプロセスに過ぎないのか?~Software Processes are Software, Too(ソフトウェアプロセスもまたソフトウェアである)(2024.09.22)
- 「システムアーキテクチャ構築の原理」の感想part2~非機能要件がシステムのアーキテクチャに影響を与える観点をプロセス化する(2024.05.06)
- 「システムアーキテクチャ構築の原理」の感想(2024.05.06)
「チケット駆動開発」カテゴリの記事
- Redmineは組織のナレッジ基盤として実現可能なのか~島津製作所の事例を読み解く #redmineT(2024.12.29)
- 第26回redmine.tokyo勉強会の感想~多様性はコミュニティが成功する重要な要因の一つ #redmineT(2024.06.15)
- チケットはデータでとプロセスの二面性を持つ #redmine(2023.12.24)
- 小説活動にプルリクエスト駆動が必要になってきた(2022.05.08)
- 知識は経験よりも大切か、経験は知識よりも勝るのか、SECIモデルは相互作用を語る(2022.04.26)
コメント