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カーネーション:再放送 (第89,90回・2018/7/30) 感想

連続テレビ小説「カーネーション」

NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』公式
第16週『揺れる心』の『第89,90回』の感想。


 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。


【第89回】
北村(星田英利)の工場での初日、監督として現れたのは、周防(綾野剛)だった。うろたえた糸子(尾野真千子)だったが、2年前の水玉ワンピースを作れという北村の言葉に、婦人服の流行を知らないのかと声を荒げる。驚いた北村は逃げ出し、糸子は周防に流行の「ディオール」の服を説明することに。家に戻った糸子は、工場の監督について昌子(玄覺悠子)に尋ねられ、思わず言いよどむ。後ろめたい思いにがく然とする糸子。

【第90回】
糸子(尾野真千子)が指導すると聞いて工場に来たと言う周防(綾野剛)。糸子は周防の言葉を、仕事上のことにすぎないと思い込もうとする。工場では、ディオールのラインの洋服が順調に出来上がる。生地代がかかりすぎると認めない北村(星田英利)を、糸子は勉強のためオハラ洋装店に連れていく。2人は言い合いになりかけるが、千代(麻生祐未)らは喜んで北村を歓待する。独身の北村は感激し、心ならずも癒やされてしまう。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---

【第89回】柱時計のネジを巻く動作だけで…

本放送時は、2012年1月12日(木)。時は昭和23年か。糸子が北村の工場で働く初日だ。誰よりも早く工場に着いた糸子が、ミシンを見つけると目を輝かせるのがとても可愛い。まるで、少女のようだ。しかし、目の前の柱時計が止まっているのに気づくと…

糸子「うん? 止まってんで。
   こうゆうことをな きちっと しとかなあかんねん。きちっと」

糸子は椅子の上に乗り、柱時計のネジを巻いていると、背後から工場に誰かが入って来る。まず、こう言う糸子の気遣いの細かな描写はとっても大事。この表現1つで、糸子が仕事に関して “きっちり” していることが分かるから。

ここで言うのも何だが、『半分、青い。』に数多く欠けていることの1つだ。そして、周防が現れて、周防に気を取られて、ネジを巻き過ぎて壊してしまうおっちょこちょいな一面も描く。僅か数秒でこれだけ描くのだから、満足度が高いのは当然だ。

ヒロインが舌打ちしても、全く気にならない

2年前に糸子が作って流行らせた水玉のワンピースを工場で作れと言う北村の言葉に、舌打ちをして「(婦人服を)一から 勉強してもらいましょか」と言い、戦前からの婦人服の変遷を自ら作った資料で説明する糸子。

普通なら、いくらヒロインでも舌打ちをしたら感じ悪く映りそうだが、舌打ちこそ必然性があるから、全く気にならない。むしろ、こちらも北村に説教した位だからだ。そして、糸子の権幕が凄いから、さっさとその場を去ってしまう北村。すると、自然と糸子は周防と二人きりに。ここの糸子の表情や口調の変化が実に楽しい。

そして、糸子は世界で流行中の「ディオール」を周防に説明する。偶然だが、今放送中の『ハゲタカ』と『この世界の片隅に』に出演中の2人が、全く違う役どころで演じているのがとても愉快。これも再放送の醍醐味だ。

糸子の揺れる思いを分かり易く強調した、私が好きなシーン

その翌日の朝食の席。千代と昌子が工場の監督はどんな人かと糸子に聞くが、サクッと周防だと答えず、もごもごしながら周防であると答えるくだりも、よ~く糸子の感情が分かる描写だ。そして、工場へ出勤するために家を出た糸子は、自問自答する。

糸子(M)「うち さっき… 周防さんに会うた事 みんなに隠そうとした」
糸   子「何でや?」
糸子(M)「後ろめたかったからや」
糸   子「何がや? 何も 後ろめたない事なんか…」
糸子(M)「いや ある。ごっつう 後ろめたい事が心の奥の方に…
     あ~ 何 考えてんや!あかん あかん あかん あかん!」
糸   子「うん! 仕事や… 仕事!」

糸子は自分の右頬を思いきり叩きながら、自分に言い聞かせた。この辺りの表現は、本作らしい自分の感情を視聴者に良く喋る糸子が活かされてる。更に良いのは、モノローグと実際の身体の動きが連動していること。

これまでも似たような描写はあったが、頬を叩くと言う動作だけで「自分よ、目を覚ませ!」と言う意味が通じる動作なのに、そこへ更にモノローグの感情と重ねて、強調したと言うことだ。糸子の揺れる気持ちを分かり易く描写した上に強調した、私は好きなシーンだ。

何と、いじらしい女心の描写だろう…

ドアの外から頬を叩く音が聞こえてくるのが楽しいではないか。工場では既に周防が柱時計の修理をしている。右頬が赤くなっているのを指摘する周防に「ああ やりにくい」と言う糸子。その後、糸子は周防に婦人服の型紙の説明を始めるが、紳士服が専門なのに婦人服のことも呑み込みが早いため、今度は「仕事は やりやすい」と。

そして、糸子が針を取ろうと針山(ピン・クッション)に手を伸ばすと、周防の手に当たると「やっぱし やりにくい」と言う。何と、いじらしい女心の描写だろう。こう言うやり取りも実に楽しい。

糸子が、フリーズするのが楽しい

終盤。なぜ紳士服が専門の周防が婦人服製造の工場の監督になったのか聞く糸子。

糸子「婦人服にも興味がありますか?」
周防「そいと 小原さんが指導に来るって聞いたけん」

これを聞いた糸子がフリーズ(硬直)してしまうのも楽しい。効果音と周防が弾く三味線の音のタイミングも音響効果もピッタリだ。

物語が、かなり糸子と周防に偏り始めたから…

この15分を全体的に…。それにしても、糸子の表情や言動が面白おかしく描かれており、糸子の心の変化を上手に視聴者に楽しませてた。そんな15分だったように思う。そして、物語は、かなり糸子と周防に偏り始めた。

と言うより、奈津、玉枝、八重子の出番が極端に減ったために、ちょっと寂しさと違和感を覚え始めているのが正直なところ。それに、「ごんた」もあまり描かれない。更に、先に見せたいものがあり、それを引き延ばしていると言う感じも否めないのが残念。

しかし、しかしだ。やはり、尾野真千子さんと、彼女が演じる糸子の人間的な魅力に圧倒されて、それらのマイナス要素が気にならないと言う感じだ。あと、もう少しだけ、「ごんた」を描いてくれると、満足度が増すのだが…



【第90回】「ごんた」が登場すると一気にホームドラマらしく…

まるで「恋煩い」を患ったようなボケーっとした顔で、工場から帰って来た糸子。これには、流石の木之元も気が付くが、「熱なんてないわ!」と激高。「恋煩い」を井戸水で洗い流して家に着くと、三姉妹が正座をして待っていた。

優子「お母ちゃん」
直子「話あんねん」
糸子「どき! どき!」
三人「ピアノ 買うて下さい!」

糸子に土下座をして要求する三姉妹。その姿を見て、糸子は亡き父・善作にパッチ屋で働きたいと願い出たことを思い出したが、三姉妹に言った言葉は…

糸子「あかん!」

やはり、「ごんた」が登場すると本作が一気にホームドラマらしくなる。個人的には、こう言うのをもっと見たいのだ。でも、本作って当初の頃から、“子ども” の描き方には困惑している部分があったのは承知している。

そして、娘たちが小さい頃は “やんちゃ” を描いていれば良かったような部分があったが、今の年頃になると “子どもらしさ” の表現が難しいことも分かるが、「ピアノ」だけでは物足りない。この辺は、今後に大いに期待をしたい。だって、子どもが子どもに見える内に出来ることだから。

北村と糸子の丁々発止なやり取りが面白い

さて、お話としては、あくまでも「繋ぎ」なのだが、糸子の「商売の心得」と「婦人服への拘り」を単純に描くのでなく、北村に糸子の “思想” を教える(伝授する)と言う構成を選んで、結果的に北村が「婦人服」や「女性」を知り、学んだと言う物語。

やはり、この脚本家は脇役の主役への絡ませ方や、互いの関係性を巧みに使った捻りの利いたエピソードを作ると上手い。もちろん、「一話完結」の面白さもあるし。で、例えば、北村と糸子の丁々発止なやり取りが面白い。

北村「お前な 売値120円のもん 作ろうかちゅうてんのに
   何 生地代に 20円も使てんや。
   どんだけ割悪い商売させようと思っとんじゃ。嫌がらせけ?」
糸子「北村さん。お宅 店を流行らせたいんですやろ?」
北村「当たり前じゃ」
糸子「ほな 人が欲しがるもん 安う売る。
   それを徹底的にやらんと あきません。
   特に 開店が一番 肝心なんです。
   あの店は 値段以上の物を安 売ってくれる。
   そない お客さんに信用してもらお思たら
   最初は 多少の我慢もせなあかんのです!」
北村「ああ やかまし! やかまし やかまし!
   ここの社長は 誰じゃ。わいじゃ!
   おのれらはな わいの言うとおりにしちゃったら ええんじゃ!」

このシーンの糸子、いつの間にか、父親の善作に似て来たなと。そう言えば、前述のピアノ欲しさに三姉妹が糸子を待っている場面で、糸子は「あかん!」って物(手拭いか?)を叩き付ける。

以前、糸子が「パッチ屋で働きたい」と言い出した時に、湯呑を投げて割るシーンがあり、それと繋がっているように思えた。父の勝がいないから糸子が父親代わりもやる決意みたいなものが見えた瞬間だ。このように、糸子が善作をリスペクトしているのも良いし。

北村を手懐けてしまった千代が、なんか痛快で楽しかった!

そして、まるで “おっさん” のような善作似の糸子と、相変わらずの千代との “疑似夫婦的な雰囲気” も好きだ。そんな場面が中盤から終盤にかけてあった。糸子が北村を自分の店に連れて行き、婦人服の商売を直接見せると言うくだりだ。

一人一人の客に丁寧に対応することで、客単価が上がることを見せる。で、夕方、糸子は北村に感想を聞くが、予想外の的外れな返事に呆れる。そこで、千代が北村を強引に夕食に誘う。夕食を食べ始めると、北村は女性たちに囲まれ酒に酔って上機嫌になって…

北村「ここは あの お客さん来たゆうたら
   毎回こない もてなしますんかいな?」

千代は、亡き夫が酒好きだったから、男性が家で酒を飲むのが好きだと話す。一方のキタムラは、男ばっかりに囲まれて育ったことを話し…

北村「家に女がおるっちゅうのは 何ちゅうんやろな
   そんな 変な意味 違うてやで こう… ええもんやなあ」
昌子「え? 泣いてる。何で泣くんですか!」
北村「泣いてない 泣いてない」

妙にしんみりとしてしまった北村を昌子が茶化す。酒の席は夜まで続き、そして翌朝、北村は小原家の女性たちが台所で朝食を作る声と音で目を覚ますが、その音を慈しむように再び目を閉じる…。糸子と一緒に工場に来た北村。何か思いつめたような表情で事務所に入ると、すぐにソファにドスンと座ってこう言う。

北村「わいな… 女も服も よう分からへん。
   せやから 全部 こいつに任せら。ほなな」

北村は、そう言い残して、静かに工場を出て行く。

周防「何のあったとですか?」
糸子「よう分からへんけど
   毒気を抜いてもうたみたいで お母ちゃんが」

久し振りに千代の天然さが糸子を助けたエピソード。北村を手懐けてしまった千代が、なんか痛快で楽しかった。

あとがき

再放送ゆえに、2回連続で見ると、前回で欠けていた部分が次回で補強されたり、2回連続だからこそ展開がスムーズに見えたりすると言う、良い効果がありますね。これが、1日1回ずつ進む本放送と違う味わい。今日は再放送ならではの、商売人と家庭人としての「小原糸子」を面白おかしく描いてくれました。

ただ、何となく糸子と周防のことが無意味に引っ張られているのが少々気になりますので、もっと子供たちを描いてみたらどうかと思います。

最後に。最後に。前回の感想(3週間前になりますが)に 106回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。今週いっぱいで、また休止するようですが、今週も楽しんで行きましょう。ただ、感想の投稿は遅れるかも知れません(謝)
夕ドラ『カーネーション』再放送 7/30(月)より再開 予約録画お忘れなく ※追記あり

残念ながら、ご本人は気付かずに(だと思いますが、結果的に)ネタバレを書いて「教えてあげるよ」と言わんばかりの人が増えて、困っています。本当にネタバレは止めて下さい! 私以外にも、今回が初見で番組と感想を楽しみにしている読者さんがおられるので。引き続き、ご協力お願いいたします。 ※また、今週末までテンプレです(謝)

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Author : みっきー

★管理人:みっきー

★職業:宴会/映像ディレクター(フリーランス)

★略歴:東京下町生まれ千葉県在住。ホテル音響照明映像オペレータ会社を経て、2001年独立。ホテルでイベント、パーティー、映像コンテンツ等の演出を手掛ける。活動拠点は都内と舞浜の有名ホテル等。

★ブログについて:フリーの宴席/映像ディレクターが、テレビ,映画,CM,ディズニー,音楽,仕事等を綴ります。記事により毒を吐きますのでご勘弁を。

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