カーネーション:再放送 (第31,32回・2018/5/9) 感想
NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』(公式)
第6週『乙女の真心』
『第31,32回』の感想。
※ 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
【第31回】
糸子(尾野真千子)は小原「呉服店」で洋服作りを始め、妹の静子(柳生みゆ)が作ったチラシを配る。それを見た吉田屋の芸ぎ・駒子(宮嶋麻衣)が糸子の初めての客となる。別の店で作った洋服は失敗だったという駒子だが、糸子は体型や雰囲気に似合うデザインを考えて張り切る。しかし、生地代を善作(小林薫)から借りるのに一苦労する。一方、奈津(栗山千明)は結婚を控え、糸子には絶対に洋服を作ってもらわないと言い張る。
【第32回】
奈津の父が倒れたと聞き、糸子(尾野真千子)はひそかに心配する。一方、糸子が作った洋服の出来に喜んだ駒子(宮嶋麻衣)を説き伏せ、それを着て通りを歩かせ、糸子は大得意になる。女性を美しく装わせる喜びを知って舞い上がった糸子は、代金を払おうとする駒子に、次でよい、と受け取らなかった。しかし善作(小林薫)に、洋服の代金はおろか借りた生地代も返せず、商売は慈善事業ではないと一喝され…。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
【第31回】良くもまぁ気持ち良い方向に裏切ってくれる!
一応確認しておく。第31回は第6週の月曜日。第5週は、何とか小原家総出で仕上げたパッチ100枚が倍の音で売れ、糸子が「小原呉服店」で洋裁を商売にし始めたから、「呉服店」なのに何屋だか分からなくなった…と言う時点だ。そして週明けの月曜日分。その延長戦上で、会社勤めを始めた静子の代わりに仕事探しをする糸子で始まると思いきや…
怪しげな劇伴の中、まるで「必殺仕事人」風の逆光に浮かぶ善作と上半身裸で布団に横たわる男、それに蝋燭の炎。何かと思えば、善作が「びわの葉温灸」をしていると言う。良くもまぁ気持ち良い方向に裏切ってくれるものだ。そして、益々何屋か分からぬ状態に陥った「呉服店」。さて、今度はどんな奇策で仕事を得て、納品するのか楽しみだ。
どんよりしたアバンと活気触れる主題歌明けのメリハリ!
主題歌明けも、相変わらずテンポが良い。静子が勤め始めたのが印刷屋で、チラシを作って宣伝を始めるくだりになってる。チラシのデザインをどうこうしよう言う親子喧嘩は敢えて飛ばして、仕上がったチラシに文句を言う善作からスタート。それも昼間から酒を飲み酒癖悪そうな描写で、本業が相当暇なことが分かる。
更に、次第に時代遅れになり売れない呉服派の善作と、徐々に需要が高まりつつある洋服派の糸子が、しっかりと対立構造で描かれ、父親に負けたくないと言う勝気な糸子と人懐っこい糸子が営業に乗り出す姿が生き生きと描かれる。どんよりしたアバンと活気触れる主題歌明けのメリハリも健在。今週も調子よさそうだ。
駒子が "客第1号" になるまでの展開がお見事!
さて、物語は一旦奈津の結婚話へ…と思いきや、ここでも脚本が上手い方向に裏切ってくれる。奈津の母が髪結いで貰って来た小原呉服店のチラシが、高級料亭「吉田屋」に出入りする芸妓の一人・駒子の目に留まって…までを描いて、次のシーンはファッションに詳しい八重子が駒子を糸子の所へ連れ来るシーンと言う、サクサク展開。こう言うのが気持ちが良い。
糸子の商売人の気構えやセンスの良さが滲み出た台詞
そして、月曜日が始まって6分程で、糸子の “洋裁の客・第1号” に駒子がなる。ここまでは、進み過ぎる位のとんとん拍子で描いて、丁度15分の半分を過ぎた頃、駒子の好きな洋服への好みや期待値が、糸子の目に映った駒子の体形や雰囲気に似合いそうなものとかけ離れていることに気付く。いよいよ糸子の洋裁初仕事の苦悩と葛藤が始まる。
駒子の意向を何とか汲み取ろうと、あれこれ質問する中で、糸子が駒子にハッキリと言うこの台詞↓が、既に商売人としての気構えやセンスの良さらしさが滲み出ていて好きだ。
糸子「そら 店が下手やったんや」
駒子「下手?」
糸子「うん。生地の選び方が間違うてるから 顔色が悪う見えんねん。
スカートの丈が 脚に合うてへんから 短 見えんねん」
駒子「何かな 服は かいらいしいのに うちは 不細工に見えんねん。
そやから うちみたいな不細工は こんなかいらしいの 着たら
あかんて 言われてる気ぃがして…」
糸子「うちやったら もっと 似合うように作っちゃる」
そして、駒子から「うち ほんまは こうゆう かいらしいのが 好きやねん」と言う言葉を引き出すのに成功する。
ヒロインの成長物語としての完成度の高さは、別格だ!
別に比較する必要は無いのだが、朝ドラで言えば、前作『わろてんか』ではヒロインに商才があることを最後の最後まで中途半端に描いて終わった。今作『半分、青い。』では、ヒロインの漫画への愛着も努力も才能もほぼ描かぬまま、夢への一歩に進んでしまった。
しかし、本作はヒロインの洋服への思いを描くだけでなく、男女の性差や親子の立場の違いや、姉妹の長子としての立場なども絡めて、巧みに「洋裁と言う商売を天性の才能」として描くのに成功している。それも、僅か1か月と2週目で。やはり、ヒロインの成長物語としての完成度の高さは、例に挙げた2作と比較しても別格なのは確かだ。
コミカルな場面の入れるタイミングも絶妙だ!
そして、どんな時でもメリハリと紆余曲折を盛り込むのが本作。このまま上手く洋服が出来るはずがない。それをさらりと機嫌の良い善作でフラグを立てて、2円50銭の生地代をいやいや貸すくだりへ。どうやら善作は前回で入ったパッチ代を使い込んでる様子だ。この辺のコミカルな雰囲気があるから、間延びしないし、次が見たくなる訳だ。
"1週間の括り" と"2回分の括り" が上手に機能している
生地屋に見本を借りて上機嫌の糸子が、駒子の下へ向かうと、駒子は白粉を塗っている芸妓姿。ここも笑える。でも、簡単に諦めないのが面白いし、実はここをバッサリとカットして、「今日は、よう来てくれて…」と翌日の展開にしても構わなかった。その方が、話も早い。しかし、敢えて入れたことで、糸子の熱心さが描けた。
それに、序盤で描いた「吉田屋」のくだりが尻切れにならず、“次回への引導” にもなった。やはり本作は2回分で1つのまとまりを意識して作られているのかも知れない。毎日、2回続けて見ているせいもあると思うが、1週間の括りと2回分の括りが上手に機能して、コツコツとドラマを積み上げ、綴っているように感じた第31回だった…
【第32回】アバンが無い方がスッキリする…
いいね。敢えてアバンタイトルで糸子と駒子のやり取りを入れずに、主題歌明けからきちんと描くのが。実は私、アバンタイトルと言うのは15分間の朝ドラに必要か? と、毎回思うのだ。余程、前回を見ていないと分からない内容ならともかく、むしろ毎回見なくても、本編を見ればしっかりと内容は分かるように描くのが朝ドラで無いのかと。
だって、アバンって、何となく “お預けを食らった気分” にならないだろうか? もちろん、お預けされた餌が驚く程に美味しければ納得するが、大して旨くもない餌なら、もったいぶるなと言いたくならないか。おっと、本作と話がずれたが、アバンの有無の使い方にも、今後注目して感想も書いてみたい…
アバンの有無を含めた構成の妙が分かる糸子の語り…
でもって、最初の糸子と駒子のシーンに続くシーンが、勘助が勤める菓子屋。父親が倒れた奈津の気持ちを考えて、菓子を持って行こうとする糸子と、糸子と奈津を良く知る勘助だからこそのアドバイスのくだり。軽妙で楽しいシーンだが、これが主題歌明けだったら拍子抜けしたと思うし、ここまでアバンだったら長いと感じたに違いない。
そしてやはり、アバンの有無を含めた構成が見事だと言わざるを得ないと思ったのが、次の糸子の語りだ。ミシンを使いながらその直前の2つのシーンでの自分の感情をまとめて、締め括る台詞(語り)になっているのが分かると思う。
糸子(N)「勘助の言うてる意味も分かりました。
奈津には 奈津の意地があるやろ。
うちが 下手に心配なんかせん方が ええんかもしれへん」
語り終わりで、ミシンの音も終わる。脚本と演出がちゃんと噛み合っている。
あの1カットがこのシーンを引き締めた!
脚本と演出が噛み合っているのは、その後の洋服づくりが進む過程の1カットで見て取れる。糸子と駒子がファッション誌を手にし、糸子が煎餅を食べながら会話するシーンがある。そこで、1カットだけ駒子のアップが手持ちカメラで映る部分がある。
良く見ると、他のカットと違って少しだけソフトフォーカス(と言うか、手持ちだからピントが甘くなっているのだ)になっていて、夢の中の出来事のようにも見えるし、ドキュメンタリー風な臨場感も出ている。会話だけで聞いても十分に2人の仲の良さは伝わるが、あの1カットがこのシーンを引き締めたと言う訳だ。
駒子の洋服の完成を、3カットで巧みに焦らした!
演出の頑張りはまだ続く。ついに、駒子の洋服が完成した日のシーンだ。駒子も視聴者も早く見たいのは当然のこと。それを3カットを使って上手に焦らして魅せた。
まず1カット目は2階の外からのカメラアングルで糸子と姿見(鏡)を使って駒子を隠す。2カット目は、糸子ナメ(糸子を画面に少し映しこんで)で布の被った姿見のカットで、駒子と視聴者を同じ立場に置いた。そして、3カット目は客観カットで駒子の足元からパンアップして全身を映す。
焦らして、共感させて、客観視させて、ドラマの世界観を視聴者に楽しませる工夫を施したのだ。だから、「糸ちゃんには 分からへん」ことも、私たちにはちゃ~んと伝わるのだ。駒ちゃんの涙の意味が。そして、駒ちゃんの背中をポンと押した糸ちゃんの優しさが…
女同士の友情の物語であり、人間同士の信頼の情の物語
久し振りに登場した橋のシーン。初めてパッチ屋に行く時に通った橋。糸子の運命を変えた橋だ。あの時は、母と2人。今回は駒子と2人。今回はどんな風に糸子の運命を変えるのかと思ったら、初めての客から代金を受け取らないと来た。宣伝をしてくれたら十分だと。
なんと、男前のヒロインなんだ。そして、着実に商売を学んでいるヒロインでもある。一着の洋服が結び付けた女同士の友情の物語であり、一着の洋服を通して描かれた人間同士の信頼の情の物語でもあった。本当に見応えのある、えっ? まだ10分しか経っていないぞ。
やはり次が見たくなる…
で、前回と同じだ。娘が調子が良いと、ちょっと嫌がらせと嫌味を言う善作。糸子、一難去って一難だ。これがあるから面白い。さぞ、善作に言われ放題だったに違いない。夜、布団の中で悔し涙を流す糸子…と思ったら、隣の部屋から大声で泣く善作の声が響いてくる。商売人として代金を貰わなかった糸子を泣くほどに許せないらしい。
善作の涙の理由に、あまり合点がいっていない糸子の気持ちも分からないでもない。さてどうなるのだろう。やはり次が見たくなる…
あとがき
一難去ってまた一難が、しっかりと描かれていますね。そして、今回のラストでの善作の悔し涙にも似た泣きっぷりに、糸子を本気で商売人にしてやろうと言う気構えみたいなものが見えたような気がします。だとすると、今度は善作の息の掛った洋品店か何かに修行に行かせるのか? 益々、糸子の葛藤が描かれて、ドラマとして面白くなりそうです。
最後に。前回の感想にナント 160回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。第1号のお客さんの駒子と糸子のやり取りが、感動的でした。そして、流れも自然で、納得の30分間でした。それにしても、登場人物の設定が実に巧みですね。
ご本人は気付かずに(だと思いますが、結果的に)ネタバレをコメントに書いている人が、多くて困っています。ホント、ネタバレは止めて下さい! 私以外にも、今回が初見で番組と感想を楽しみにしている読者さんがおられるので。引き続き、ご協力お願いいたします。 ※しばらくの間、テンプレです(謝)
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みんなの朝ドラ (講談社現代新書)
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/11349/
【これまでの感想】
第1週『あこがれ』
1,2 3,4 5,6
第2週『運命を開く』
7,8 9,10 11,12
第3週『熱い思い』
13,14 15,16> 17,18
第4週『誇り』
19,20 21,22 23,24
第5週『私を見て』
25,26 27,28 29,30
第6週『乙女の真心』
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