カーネーション:再放送 (第39,40回・2018/5/30) 感想
NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』(公式)
第7週『移りゆく日々』
『第39,40回』の感想。
※ 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
【第39回】
安岡髪結い店で糸子(尾野真千子)の前に現れた奈津(栗山千明)は、元どおりの気位の高さだったが、糸子は奈津が涙した経緯を玉枝(濱田マリ)から聞き、一安心する。やがて生地屋の「末松商店」に勤め始めた糸子だったが、仕事はセーラー服の縫製だった。店を繁盛させねばと、糸子は店主(板尾創路)に談判し売り場に出るが、なかなか売り上げが伸びない。そこに洋服を作りたいという客・長谷ヤス子(中村美律子)がやって来る。
【第40回】
ある日、糸子(尾野真千子)が仕事から帰ると、千代(麻生祐未)が妙に浮かれている。意外にも紳士服店の職人・勝(駿河太郎)が訪ねて来ていたのだ。不思議がる糸子に勝は「顔を見にきた」と告げ、なぜか千代が照れる。一方、ヤス子(中村美律子)が洋服の出来に満足し、新たな客を連れて店に来る。糸子の生地選びと立体裁断のサービスはたちまち評判になり、客は次々に増え、店の縫い子たちまでが洋服を作りたがるようになる。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
【第39回】20秒間のアバンが、今朝の15分より濃厚でドラマチック
もう、やめてぇ~。なんで、あんなに心に響くアバンタイトルを作れるの?
前回のラストで良い感じの尻切れで終えた、安岡髪結い店の外から聞こえて来た八重子と子供たちの声に素早く反応した玉枝で描かれた “女心を知る大人の女性のさりげない優しさ” のシーンを、アバンの1カット目を玄関の扉の木の桟越しに見える髪を結う玉枝と丸髷が仕上がって行く奈津で魅せるとは!
ナメてる(画面手前にボヤけて映り込んでいる)桟の面積の方が多い位だからこそ、奥を見たくなる。しかし、ここは外にいる八重子に一旦カメラを移して、八重子の気持ちを描いて、その上で、カメラがグッと玉枝に寄るから、物凄い緊張感。僅か20秒間のアバンだが、今朝のどこぞの朝ドラの15分間よりも濃厚でドラマチックなのは間違いない。
「吉田さんて呼び!」で、奈津の人生の一区切りを描く!
かぁ~っ。主題歌明け、前回の続きで、紳士服店「ロイヤル」のくだりが続くかと思いきや、糸子が勘助と合流して安岡髪結い店へ。そして、店が閉まってるって流れ。もう、スゴイね。これで中から仕上がった奈津が出て来て、糸子と鉢合わせするのは見えちゃうもん。
前回の感想でも書いた通り、この予定調和なのにハラハラさせる構成が見事なのだ。で、店内で奈津の涙の経緯を玉枝に聞いて一安心した糸子。奈津の父が亡くなってから、あれこれ頭の中では奈津を心配し気遣って来た糸子だが、実際に奈津には遠くで思ってやるばかりだった。
そんな、糸子の無念な、いや糸子のやるせない気持ちをこのモノローグ1つで的確に表現した。
糸子(M)「何やろな? 安岡のおばちゃんには
奈津が気ぃ許せる 何かが あんねやろな」
ここまで、約4分半。糸子と奈津の直接の会話は無かったが、奈津の「吉田さんて呼び!」で、奈津の人生の一区切りを描き切ったと言えよう。そして、場面は「ロイヤル」を辞めて、次の職場である生地屋の「末松商店」に映る。糸子の人生も着実に一区切りをつけて、先に進んでいるのだ。
物語が、正しく期待する方向へ進んで行く…
糸子の今度の仕事は、セーラー服の縫製。これまで務めた職場は謂わば全て「男社会」だったのに、今度の職場は浪速のおばちゃんたちが集う「女社会」。だから、ちょっとは「男社会」と「女社会」の職場の違いを描いても良いのに…
糸子(M)「こら、ええ職場やなあ。そやけど…」
と、逆説の接続詞を使って、店を繁盛させる話に進んで行く。ホント、話が進むね。それも正しい方向に、こちらが期待する方向に。だから、面白い。だから、糸子に共感しちゃう。
予定調和やワンパターンに見せない、2つの工夫
糸子の「繁盛させちゃるで!」で始まった、店頭での売り子の仕事。スパニッシュ・ギターのテンポ良い劇伴と、威勢の良い糸子の言葉ときゃくのおばちゃんのやり取りがシンクロして、まるで漫才を見ている面白さ。そして、生地屋を繁盛させることの難しさ実感した糸子と劇伴が同時にストップ。ここでも、ちゃんと一区切り。
区切っては進み、区切っては進む。要望を出しては、一生懸命にやって、でも失敗して挫折して…の繰り返しなのだが、本作の脚本が巧みなのは、それをワンパターンに見せ難くしていることだ。
その工夫の1つが、糸子1人が頑張って挫折しての繰り返しにせず第三者、今回で言うなら洋服を作りたいという客・長谷ヤス子を絡める点。客が千差万別なのは誰もが知る事実。だから、視聴者が「今度の客をどうやって糸子は満足させるのか?」が見たくなる。見たくて見たくてしょうがなくなる。
そしてもう1つの工夫。その結論をもったいぶって次回に引き延ばさない点だ。今回も、残り4分間で描き出す。前回のラストは奈津と玉枝の気持ちをドラマチックに描く手法として、敢えて2分割して効果的に編集した。しかし、今回の糸子の工夫はドラマチックに描く必要が無い。むしろ、糸子のセンスを視聴者に魅せつけてやる位の作戦だ。
だから、気持ちの良い位に題し押見をせず描く、描く。カメラアングルも俯瞰(上から見下ろす)か煽り(下から見上げる)を巧みに使い分けて、更にハンディーカメラと細かいカット割りで、糸子の “大胆なのに繊細な部分” を編集で重ねて描いているのだ。
これがの~びりした劇伴とド~ンと引いたカットで描かれたら「ワンパターン」に見えちゃう。だから、やらない。やるはずがない。それが本作のいいとこだ。
ワンパターンでなく、“お約束” と思わせる!
そして、最後に “お約束” の酔っぱらいの善作が登場。ワンパターンでなく、“お約束” と思わせるって、とっても大切。今回はそれが証明された15分間だった。
【第40回】糸子の恋の予感…
ほらね。善作はアバンで使わないもんね。ドラマチックに描く必要ないんだから。だから、主題歌明けも、どんどん話が進んで行く。進んで行くのだけれど、ここでまた “あの小原勝” が登場。いいね、こう言うの。「ロイヤル」の話は済んでいるのに、過去に登場した人物を新展開中に登場させると、余計に話が進んでいることが描かれるから。
これも、前回同様に第三者を効果的に使う作戦だ。そして、「意外にも」って感じで糸子の前に現れて、糸子もまんざらでない様子で照れるのがいい。糸子と恋バナが、ここ暫くはご縁が無かったから、奈津が嫁入りしたことで、お年頃の糸子にも恋バナの1つがあっても不思議でないし、あるのが自然だし当然。
もちろん、小原勝を演じるのが駿河太郎さんだから、ただの脇役で終わるはずがない。実際、勝もこう言っていた。
勝「また… ちょくちょく 顔 見に来るよって」
糸子の恋の予感だね。ちゃんとフラグも立てて勝が帰ったしね。糸子の恋バナも楽しみだ。 ※ネタバレ厳禁で願います。
「立体裁断」と糸子の "洋裁師としての才能" の描き方
これ、好意的に見て良いのかな。いや、好意的に見た方がドラマは面白い。何のことかって言うと、先日の高価なダンス用ドレスで成功した「立体裁断」が、「末松商店」では比較的安価な庶民向けのワンピースでも成功していると言うように描かれていたことだ。
実は、高価で装飾などが多いであろうドレスの「立体裁断」の方が断然難しいのに、あっちが先に成功して、簡単に作れそうなワンピースはいとも簡単って流れが、どうかなって。縫製や裁縫に詳しい人なら、とっくに違和感を覚えていたのかも知れないが。
もしかしたら、朝ドラの過酷な撮影現場では難しくても、2つの「立体裁断」の違いを映像でも見せても良かったかなって。でも、普通に見ていれば、糸子の「立体裁断」が日々進化していると見て取れるから問題はない。問題ないのだけれど、ちょっと引っ掛かっちゃった。しかし、糸子の “洋裁師としての才能” を描くのには、間違いなく成功したのは言うまでもない。
「小篠綾子」をモデルした意味を、映像できちんと訴える!
そして、物語は糸子の “洋裁師としての才能” を、店の縫い子のおばちゃんたちも評価して…と進んで行く。客もどんどん増えて行く。
糸子の “洋裁師としての才能” が世間に認められることと、糸子の “商才” が確かなことを描きながら、台詞やモノローグでは一切語っていない「糸子に関わる女性たちが、新しい時代に即していく」ことや「糸子が周りの女性たちを洋服を着せることで、内面も変えて行く」ことを重ねて描いている。
これこそが、「コシノ3姉妹」を育て上げ、自らも晩年同じ職で活躍した「小篠綾子」の生涯をモチーフにした朝ドラが描くべきテーマなはず。それを映像できちんと訴えるのがスゴイところだ。
呑気な猫と大忙しの糸子の対比が、お洒落で粋だ!
そして、客でごった返す店内を見ているのか、糸子に構って貰えなくて寂しいのか、ラストに一鳴きする路地猫の1カット。こう言うのいいね。で、これも広い意味で第三者を使って、ちょっぴり呑気な猫と大忙しの糸子の対比をやってる。ホント、最後の最後まで手抜き無しの15分間だった。
あとがき
やはり、安定感が素晴らしいです。主人公の糸子を中心に、丁寧に確実に物語を紡いでいるのが、糸子の洋裁とピッタリ重なってますね。時に大胆に…も忘れずに、物語にもサプライズが組み込まれていますしね。さて、次回は「立体裁断」を1人1人にやっていては、客をこなせないので “新たなサービス” を思い付くのかな。楽しみです。
最後に。前回の感想に 152回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。完全に反響が『半分、青い。』を超えました。『半分、青い。』の感想が『カーネーション』の凡そ半分。複雑な心境です…
ご本人は気付かずに(だと思いますが、結果的に)ネタバレをコメントに書いている人が、多くて困っています。ホント、ネタバレは止めて下さい! 私以外にも、今回が初見で番組と感想を楽しみにしている読者さんがおられるので。引き続き、ご協力お願いいたします。 ※しばらくの間、テンプレです(謝)
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★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/11424/
【これまでの感想】
第1週『あこがれ』
1,2 3,4 5,6
第2週『運命を開く』
7,8 9,10 11,12
第3週『熱い思い』
13,14 15,16> 17,18
第4週『誇り』
19,20 21,22 23,24
第5週『私を見て』
25,26 27,28 29,30
第6週『乙女の真心』
31,32 33,34 35,36
第7週『移りゆく日々』
37,38
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