カーネーション:再放送 (第79,80回・2018/7/2) 感想
NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』(公式)
第14週『明るい未来』の『第79回』と、第15週『愛する力』の『第80回』の感想。
※ 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
【第79回】
糸子(尾野真千子)は八重子(田丸麻紀)と昌子(玄覺悠子)と一緒に、パーマ機と洋服の生地の調達のため上京する。空襲の爪痕が残る東京でパーマ機を探し当て、糸子は得意の値切り交渉をする。パーマ機を手に入れた一行だが、宿は雑魚寝で、糸子たちは気をつけようと言い合う。案の定、貧しい子どもたちが金品を盗みに来る。ようやく追い出してほっとしたのもつかの間、糸子は自分の布団の中に幼い少女が隠れていることに気づく。
【第80回】
昭和20年暮れ。糸子(尾野真千子)は八重子(田丸麻紀)にパーマをあててもらい、改めて頑張ろうと思う。大みそかには、来年はよい年になるようにと祈った。年が明けた昭和21年。まだ生地は不足ながらも、洋裁の仕事が忙しくなってきた糸子。ある日、夫・勝と同じ部隊に属していた復員兵が訪ねて来た。糸子の脳裏に勝の思い出がよみがえる。勝が常に身に付けていた、と渡されたのは、勝と糸子、娘たちの家族写真だった。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
【第79回】「数日後」で済ませなかっただけの事はある
第14週『明るい未来』の年明けで全4回しかなく、この第79回が土曜日の放送だった。時は、昭和20年(1945)10月で第77回から同じ。糸子が八重子のためにパーマ機を買いに、昌子と一緒に東京へ買い出しに行く話だ。当然、「数日後」とテロップと語りで済ませないのだから、簡単に買うことは出来ない訳で…
単純な主人公がトラブルに巻き込まれるエピソードに終わらない
戦争前には良くあった、主人公がトラブルに巻き込まれると言うエピソードだ。しかし、今回も「一話完結」と「連ドラ」の楽しさが上手に共存していた。まず、「一話完結」の面白さは、何と言っても “時代を反映させた、ちょっといい感じの人情話” になっていた点だ。
宿が男たち3人と相部屋で、糸子たちはお金が盗まれないように気をつけて寝るも、押し入れに隠れていた子供たちと外にいた男が元締めで子供たちと “盗人一味” で、結果的にお金は盗まれてしまう。
しかし、盗みを働いてでも生きて行こうとする、ガリガリに痩せた女の子の将来や未来を、岸和田にいる自分の娘たちが美味しそうにチョコレートを食べる姿に重ねて、糸子がこう↓案じる…
糸子(M)「生き延びや。
おばちゃんら 頑張って
もっともっとええ世の中にしちゃるさかい
生き延びるんやで」
必死に生きてる人と生きてることが幸せな人を対比させて…
「生きること」、「生き抜くこと」を真正面から描いているのが本作であるのは、これまで通りなのだが…
今回は戦後の貧しい時代背景でしか描けない “少年犯罪” を15分間の背骨に通して、ただ戦後の混乱を描いて終わるのでなく、「生き抜こうと必死な家族」と「生きていることが幸せな家族」を上手に対比させて、糸子の懐の深さと優しさで締め括ったのはお見事。
年明けの「繋ぎの4回」にしては、仕上がりが良過ぎる
年始と言うことで、全4回の1週間だったが、『明るい未来』と言うサブタイトルに相応しい4回だった。
振り返ると…。月曜日には、戦争が終わったことを “だんじりと娘の直子” で描き、火曜日には、あの長谷ヤス子のお蔭で糸子が心機一転して洋裁業を再開し、水曜日には、落ち込む八重子に生きる希望を与え、木曜日には、生き抜くことの大切さと大人の責任を教えてくれた。
年明けで本格始動の第15週との「繋ぎの4回」と言うには、仕上がりが良過ぎる。更にスゴイのは、「安岡美容室」と奈津の今後の展開へのフラグもきちんと立てて終わらせたこと。益々、本格始動する次週への期待が高まった。
【第80回】パーマをあてる喜びと、パーマをあてた喜び
本放送時は、2012年1月9日(月)。本作は「全151回」だから約53%を過ぎたことになる。月曜日分だけに、まずアバンタイトルで先週を軽くおさらい。この辺も相変わらず丁寧だ。そして時は、昭和20年(1945)12月で、前回の2か月後だ。八重子の店にやっとミシンが届く。
前回の闇市でミシンを見つけた時の “夢心地のような八重子” も印象的だが、今回の冒頭で笑顔でオハラ洋裁店に駆け込んで来た八重子も印象的だ。そして、午前中の昌子に続いて、午後に糸子も小走りで安岡髪結い店へ。仏壇の勘助と泰蔵の写真に手を合わせる糸子と、糸子の後ろ姿を見る八重子の会話が良かった。
糸 子「勘助 泰蔵にいちゃん。
うちも いよいよ パーマ あてんねんで」
八重子「失敗したら 2人に怒られるさかい絶対 失敗でけへんわ」
糸 子「おばちゃんは?」
八重子「はあ…。上。
うちが 勝手に パーマ機 買うたんが 気に食わんらして
降りてけえへんようになってしもた」
糸 子「ほうか…」
八重子「いや せやけどかまへん。
うちの仕事や。うちの好きにさしてもらうわ」
さり気なく、安岡玉枝の近況と時代の移り変わりを挟んで、且つ八重子と玉枝の今の関係性も描いて、更に八重子の仕事への気構えまで描いた。もちろん、今は亡き勘助と泰蔵も加えて、面白おかしく…だ。
惜しいのは、このあとにパーマをあてた糸子が闇市で例の若い女性と張り合うカットを入れたのなら、ここで、階段の上から2人の会話を覗き込むか、じっと寝ている玉枝の1カットがあれば、100点満点だったが。年越し蕎麦の時とは違う理由で欲しかった。なぜ、玉枝の描写は不足がちになるのか? スケジュールの都合とか???
糸子の "けじめ" を描きながら、"時の流れ" も丁寧に紡ぐ
そして、紅白歌合戦と年越し蕎麦を描いて時間経過させ、時は昭和21年(1946)2月へ。仕事も順調、娘たちも成長し、まずは順風満帆と言った糸子。
そこへ、亡き夫・勝と同じ部隊にいたという復員兵の男(土平ドンペイ)が訪ねて来る。で、傍目には、勝は最期まで “上機嫌” だったと話し、勝が大切にしていた家族写真を返しに来たと言う。
男性が帰った後、糸子は一人、縁側で火鉢に「勝の浮気写真」を入れて、燃やし始める。そして、ボーッと夕焼け空を見上げながら、こう呟いた。
糸 子「しゃあない 堪忍しちゃら」
糸子(M)「うちは この写真を やっと 燃やす事がでけました」
糸 子「はあ…」
大きく溜め息をつくと、静子の呼ぶ声がしたので糸子は「はーい」と返事をした。
終戦の年の年末から年始、そして2月までの約3が月の “時の流れ” を静かに描写しながら、その “時の流れ” の中で糸子と勝と言う夫婦にも “一つのけじめ” がついた…そんな15分間だった。
浮気写真を燃やしたことも、パーマをあてたことも、全てが糸子にとっての “けじめ” を表現するアイテムになっていた。そんな視覚的に分かり易いアイテムで糸子の “けじめ” を描きながら、必要ならば登場人物を増やして、しっかりと “時の流れ” を描くことで、物語が少しずつ進んで行く。
あくまで人間を描き、その人間が動き、感じることで、物語が綴られて行く。普通のことを普通にやっているだけなのだが、それを迷い無く、きちんとやり続けているから、見ていて楽しいに違いない。
あとがき
やんちゃな直子役は、第1週で少女時代の糸子を演じた二宮星(にのみや あかり)さんだったんですね。それにして、半年の半分を過ぎたのに、全く奇を衒った部分や、強引な部分が見られません。自然に登場人物たちが描かれ、ドラマが組み上がっています。流石に「名作」の予感がして来ました。
最後に。前回の感想に 164回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。年明けも順調に良い感じで進んでますね。今のところ減速しそうな気はしません。ホント、最後までこのまま行っちゃうのかなぁ。そうしたら、本当に凄い朝ドラになりますね。
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/11551/
【これまでの感想】
第1週『あこがれ』
1,2 3,4 5,6
第2週『運命を開く』
7,8 9,10 11,12
第3週『熱い思い』
13,14 15,16> 17,18
第4週『誇り』
19,20 21,22 23,24
第5週『私を見て』
25,26 27,28 29,30
第6週『乙女の真心』
31,32 33,34 35,36
第7週『移りゆく日々』
37,38 39,40 41 42
第8週『果報者』
43 44,45 46,47 48
第9週『いつも想う』
49 50,51 52,53 54
第10週『秘密』
55 56,57 58,59 60
第11週『切なる願い』
61 62,63 64,65 66
第12週『薄れゆく希望』
67 68,69 70 71,72
第13週『生きる』
73,74 75
第14週『明るい未来』
76 77,78
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