カーネーション:再放送 (第48,49回・2018/6/6) 感想
NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』(公式)
第8週『果報者』の『第48回』と、第9週『いつも想う』の『第49回』の感想。
※ 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
【第48回】
糸子(尾野真千子)は勝(駿河太郎)と初めて話し合うことになった。仕事が好きで、奥さんらしいことができないかもしれないと打ち明けた糸子に、勝は、糸子の仕事をする姿にほれたのだから、思うように働けと言う。糸子はようやく結婚してよかったと思う。2年後、店は「オハラ洋装店」と名前を変えた。間もなく長女・優子を授かり、善作(小林薫)が世話を買って出る。母となり幸せいっぱいの糸子に、戦争の影が忍び寄っていた。
【第49回】
勘助(尾上寛之)に赤紙が来て、糸子(尾野真千子)らは盛大な壮行会を開いて送り出す。しばらくして勘助から届いたハガキは、検閲の墨で塗り潰されており、糸子は嫌悪感を覚える。翌年には国家総動員法が施行され、戦時色が強まっていくが、洋装店は繁盛する一方だった。昭和14年夏、2番目の子どもを妊娠中の糸子は、仕事中に立ちくらみを起こし、心配する善作(小林薫)によって強制的に神戸の松坂家へ行かされることになる。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
【第48回】2年間を "15分間" で描くとこうなってしまう
第46,47回の感想で書いた通り、いやそれ以上に展開が速過ぎる。前回も似たようなことを書いたが、やはり書かざるを得ない。第47回で21歳の糸子が結婚したのが1934年(昭和9年)で、今回の冒頭が昭和10年(1935年)1月。そこからから第1子、長女・優子が生まれ、昭和12年9月までを “15分間” で描くとこうなってしまう。
糸子が勝に自分と結婚した理由を聞き、結婚した喜びを、僅か6分30秒の映像と、この糸子のモノローグ↓で済ませてしまった。
糸子(M)「やっぱし 結婚して 良かったんや」
その後の、妊娠中や出産、そして仕事との両立については、この糸子のモノローグ↓で…
糸子(M)「やっかいやなあ。まあ 産むだけ産んだら
その日のうちから また 店 出ちゃろ」
出産そのものの糸子の喜びや、乳飲み子の育児の苦労についても…
糸子(M)「とにかく この…赤ん坊の かわいさです」
この糸子のモノローグ↑と、約5分間の映像で済ませてしまった。結婚生活が始まり軌道に乗るかどうかの地点から長女の誕生まで約11分間。言い過ぎなのを承知で書けば、この糸子のモノローグ↑までで、『糸子のだんじり物語』の最終回でも良かった位だ。その位に程好き余韻もあった。
これが半年間続く朝ドラと知らずに見ていたとして、優子の寝顔を幸せそうに見る糸子のカットのど真ん中に「完」と表示が出たら、2か月間の『糸子のだんじり物語』のエピローグとして完ぺきだったとさえ思ってしまった。
音声無しだと年表の箇条書きだが、語りが自叙伝風に
まあ、テンポは良い。しかし、音声を消して映像だけ見たら、内容が無いとまでは言わずとも、第7週までの濃厚で丁寧で緻密な脚本と演出で紡がれた映像と比較にならない程に、内容が薄っぺらだ。私が良く言う、主人公の年表の箇条書きの映像化って感じ。
ただ、救いなのは、恐らく脚本家も演出家もそう見えることは分かっているから、大量の糸子の語りを投入した。そのお陰で、音声無しの映像だけでは年表の箇条書きだったものが、糸子自身が語る自叙伝と言う雰囲気に変わった。まあ、最初からそう言う雰囲気の作品である一面はあったから、別に驚くことは無いが。
本作はまだ面白い。これは断言出来る!
これ、秀作では「脚本と演出と俳優の三位一体」なんて表現をするが、確かに第6週まではそうだった(過去形?)。しかし、第7週から物語の展開の拙速さが増したために、内容が薄くなって、それを俳優の魅力と俳優の演技力で補っているような気がする。演出面についても、第7話から明らかに細かな配慮が欠けているし。
でも、テレビドラマと言うのは、物語が良ければ良いと言うものでもない。物語は大したことは無くても俳優の魅力や、俳優が演じる登場人物の魅力で魅せるのもテレビドラマの面白さであり楽しみでもある。その点で、本作はまだ面白い。これは断言出来る。
【第49回】出来事を描くだけでなく、"糸子の思い" が大事
第9週『いつも想う』の月曜日だ。こう言っては何だが、勘助の出征のくだりも、優子の出産同様に凄く拙速さを感じてしまった。7分間50秒で、既に出征から2か月が経過。流石にもう少し、糸子の日常を描いた上で、勘助の赤紙からの出征の流れを描いても良かったのでは?
で、今回もたくさんの糸子の台詞とモノローグが入ったお蔭で、ぎりぎり本作らしさの中に「時代の足音」を盛り込んだように見えたが、これで良いのか…とは思ってしまった。
ただ、糸子が戦地の勘助から届いた葉書が、所々墨が塗られて読めなかったことをたいそう気にして、腕組みをして夕食にも手を付けずに言った、この台詞とモノローグが良かった。
糸子「ほんま あの墨 許せん」
勝「うん?」
糸子(M)「人の葉書を勝手に塗り潰す その胸くそ悪い墨みたいなもんは
そのあとも うちらの生活を ちょっとずつ塗り潰し始めました」
確かに糸子も家族も「戦争」と言う大きな傘の下に既に入って入るのだが、そのことにあまり実感を感じていない糸子が、これから感じて行くことと、「戦争」が糸子の「日常」にどんな影響を与えて行くのかを描きそうな予感をさせた。
先週、秀逸だった金曜日(第47回)以外は、出来事の箇条書き風になっていたが、今回は「将来」や「未来」を感じさせた。出来事をなぞるだけでなく、“糸子の思い” が描かれた。こんな描写が増えると、復活の兆しになると思う。
残念… もう少し糸子の子育てを見たかった
が、しかし、またもやサクッと2年が経過し、昭和14年(1939)となった。確かに「第2章」の始まりだから、説明が多くなるのはしょうがない。「オハラ洋装店」の経営も順調なのも、まあ良しとしよう。
でも、流石に第2子を妊娠中は速過ぎないか? と言うか、もう少し糸子の子育てを見たかった。だから、不満と言うより残念な気持ちだ。
このペースで、糸子の人生のどこまでを描くつもりなのか
そして、結果的にこの第49回で描かれた糸子の心情は、ラストのこのモノローグ↓だけとなった。
糸子(M)「お母ちゃんは弟かどうか 知らんし
店が心配で しゃあないです」
これ、1週で1人ずつ娘が生まれて行くのだろうか。だとすると、本作って糸子のどの時代まで描こうとしているのだろう。糸子が三姉妹を育て上げるまで? それとも、三姉妹が一人前になるまで? それとも、糸子の死まで?
小原糸子と言う女性の生き様を描くドラマとしては、どの時代まででも描くつもりになれば描けるはず。しかし、現時点で糸子は20代前半で2人目を妊娠中。そして、朝ドラとしては既に 1/3を過ぎている。先週あたりから、ちょっと盛り込み過ぎのような。
糸子の「子育て」を描かずに "何を描くのか?" って思う
演出面を見ても、流石にこのテンポで進んで行くと、粋な演出や細かな描写を入れている暇がないと思うし、実際にも今回で言えば印象的だったのは、善作とハルが息をピッタリ合わせて言った「大丈夫やない!」と「言う事 きけ!」の場面くらい。
以前にも書いたが、「コシノ3姉妹」を育て上げ、自らも晩年同じ職で活躍した「小篠綾子」の生涯をモチーフにした朝ドラが描くべきは、「子育て」では無いのか? そこを描かずに何を描くのかって思う…
あとがき
この先、どうなのでしょう? 好意的に見れば、「戦争」と言う事象を必要以上に掘り下げて、メッセージ性を持たせずに、2,3週間をかけて本作らしく笑いあり涙あり苦労あり喜びありのエピソードで「戦争」を乗り切りながら、その後の「子育て奮闘記」に繋げて行くと言う構想なのでしょうかね。
それだとしたら、むしろ一か月後、丁度半分の第13週あたりから「戦争」を乗り越えた糸子たち家族のファッションの物語になるのかな。いずれにしても、もう少し丁寧に描いて欲しいと思います。
最後に。1日遅れの上、これまでの称賛ばかりの内容と違う前回の感想に 71回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。先週(第8週)辺りから、雰囲気が変わってきましたね。これからどうなるのか楽しみではありますが、不安もあります。第7週までの『カーネーション』に戻ることを信じて…
ご本人は気付かずに(だと思いますが、結果的に)ネタバレをコメントに書いている人がいます。「この後あの役を誰が演じる」と言うのも困ります。ホント、ネタバレは止めて下さい! 私以外にも、今回が初見で番組と感想を楽しみにしている読者さんがおられるので。引き続き、ご協力お願いいたします。 ※しばらくテンプレです(謝)
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★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/11452/
【これまでの感想】
第1週『あこがれ』
1,2 3,4 5,6
第2週『運命を開く』
7,8 9,10 11,12
第3週『熱い思い』
13,14 15,16> 17,18
第4週『誇り』
19,20 21,22 23,24
第5週『私を見て』
25,26 27,28 29,30
第6週『乙女の真心』
31,32 33,34 35,36
第7週『移りゆく日々』
37,38 39,40 41 42
第8週『果報者』
43 44,45 46,47
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