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海螢の昼行燈 -To be determined-

中国

22 11月

タスキーギ梅毒実験を例にあげられているようなので-アゴラへのトラックバック

民主主義は魔法の杖か-石水智尚 : アゴラ - ライブドアブログ


アゴラの本論からは話がそれてしまうのですが、タスキーギ梅毒実験は政治制度とは関係のない状況で発生しました。もとは梅毒の治療とともに公衆衛生管理を含む国家プロジェクトだったのですが、経済大恐慌
のために予算が尽きて、プロジェクトそのものが廃止されそうになりました。存続のために短期間病気の自然経過を追うという低予算研究にして生き延びた梅毒の研究プロジェクトです(1932年)。その当時、梅毒に本当に有効な治療法は、まだ確立されていませんでした。

 

その後この実験は、惰性とも言える状況で長期間続くことになったのです。

 

もともとの主任研究者は、実験が始まって1年で退官し、その時点でこの応急処置的避難である「梅毒の自然経過を追う」というプロジェクトは打ち切るか方向を変えるはずだったのですが、実際の実験に従事してプロジェクトを引き継いだ、考えの未熟な比較的若い医師や研究者が、そのまま継続しました。この世代の職員も退官し、その後抗生物質のペニシリンによる梅毒の治療が1947年までに確立した後も、米国公衆衛生局“お役人医師研究者”は、自分が何をしているのか自問自答することなく、この「伝説」と呼ばれた研究を漫然と引き継いで行きました。

 

最終的に内部告発により衆目に触れ、ようやく中止されました。1972年のことです。

40年が経過していました。

 

実験停止後、事件に驚愕した米国社会は、しかし、これを機会に患者の知る権利、保護のための現在の臨床研究の規制、基準を作り上げました。起こった出来事はとてつもなくひどいことでしたが、ジャーナリズムも世論も、独裁政権下とは異なり健全に機能し、その反省から、一歩進んで、臨床研究を専門家による密室内の研究環境から開放し、社会が納得・共有できるルールを作り上げたのです(National Research Act, 1974)。

 

大変な痛ましい事件でしたが、それを白日のもとにさらして、議論を積み上げ、現在の最も先進した臨床研究のルールを生み出したのは、民主主義のアメリカ合衆国ならではです。

 

現在の中国のような独裁政権による厳しい社会統制下では想像も及ばない出来事でしょう、

 

というか、中国の庶民は、政府がそのようなひどいことをしていても、知る由もないですね。

 

 

 

Jones, JH.  Bad Blood:  The Tuskegee Syphilis Experiment, New and Expanded Edition.  The Free Press.  New York, NY.  1981.


 

 

 

10 11月

中国とは適正な距離を保つのが良いと思う

bobbyさんは、最近私の名をご指名で記事を立てられているようなので、ちょっと一言。

 

お説から推察するに、日本はアメリカか中国のどちらかの傘下に入らないといけないらしい。それが合理的とのお考えのようなのだが、どうも私の理解の範囲を超えている。

 

日本は、現在アメリカの傘下にあるが、アメリカの力は衰えつつある。ここら辺で、いい加減に自立の道を探って、最終的には本当の独立国になって欲しいと思う。何もアメリカに対する復讐心で言っているわけではない。太平洋戦争では大変な目に会わされたが、その後の日本の復興、現在の経済的繁栄、平和な暮らしは、アメリカによるところが大きい。
今後対等な関係に近づいて行くことは、イギリスから独立を勝ち取ったアメリカが、その後逆にイギリスに大きく貢献したように、将来何かの折に、アメリカに対して日本が何らかの恩恵をもたらすことになるのではないかと思う。


大体、民族的心情としては、戦中の日本人は、アメリカより日本の軍国主義・全体主義に徹底的に苦しめられたと感じ、大多数の国民は、戦後アメリカ輸入の民主主義を大歓迎したようにしか見えない。

 

また、bobbyさんは、中国の一般人は未だに貧乏で、多民族社会なので、政府による厳しい統制が国の発展のためには必要であり、日本のように皆が豊かになれば、自然に“東洋的”民主主義ないしはそれに近いものが実現する、すなわち「衣食足りて礼節を知る」状態になるという御主張のようだが、私にはそうは思えない。

 

日本人が苦しめられた戦時中には、特高というのがあって、言論の統制、従わない者にはリンチ・拷問が確かにあった。しかしこれは、基本的には、共産党や無政府主義者などの、実際に社会転覆を企てる思想家・政治運動家に限定されていたと思う。リンチ・拷問も、単に殴る、蹴るだけで、中国人のするような残虐な方法は取られていなかった。

また戦時中でも、『贅沢は敵だ』と書かれた標識や看板に“素”を加えて、『贅沢は敵だ』なんてちゃかす、ユーモアをかます余裕もあった。

 

一方現在の、中国政府の社会統制の例をあげてみよう。

 

法輪功という健康増進法がある。

健康増進法のどこが『社会秩序を乱す』原因とみなされるのか、なぜ厳しい弾圧の対象になるのか、“合理的”には全く理解できないのが、日本人並びに、世界の他の国の人々の一般的な考えだと思う。

changchun-sunshuxiang

これはSun Shuxuangという法輪功実践女性の、強制労働キャンプから釈放10日後の写真だそうである。以下のリンクのニュース記事によれば、彼女は53歳で、釈放から4ヶ月後、今年1031日に亡くなられた。この世の地獄から開放されて、今は安らかに冥福を楽しまれていることを心からお祈りしたい。

http://www.theepochtimes.com/n2/content/view/45496/

 

法輪功実践者に対する拷問については、他にもYou Tube などで、もっとむごたらしい写真やビデオが出回っているので、ご存知の方も多いと思う。

 

「中国政府が残虐な弾圧を行っている」

 

ことは、「人権」なんて小難しい言葉を使わなくとも、直感的に感知できるシンプルな事実だ。

 

法輪功は社会運動ではないし、別に貧乏人を反政府運動に駆り立てるような思想ではない。

従って、法輪功実践者をここまで弾圧する理由は、中国人が貧乏かどうかとは関連がないと思う。つまり貧困とは無関係に弾圧があるわけだから、いくら経済が発展して裕福になっても同じことをしている可能性が高いと考えるのは、極めて“合理的”な推測だと思う。

 

中国政府が、なぜ法輪功をそれほど危険視するのか全く理解できないが、

私は、中国人の本心など別段理解しなくても良いと思う。また、法輪功実践者やチベット族その他の、弾圧されている人達のような目には会いたくないので、そういう意味でも中国とは適正な「距離」を保ちたいし、中国政府の非道な行為については声を挙げて非難すべきだと思う。そして、日本という国にもそうして欲しいというのが、私の日本人としての正直な気持ちである。

 

bobbyさん個人が親中国でおられることには全然異存はないが、なぜ私を親中国へと議論で説得したいとお思いになるのか理解できないし、説得されることはないです。

 

10 5月

中国性病事情

Tucker J et al. Syphilis and Social Upheaval in China.  NEJM 2010; 362: 1658-61

 

 

梅毒という細菌感染による性病があります。

哲学者のニーチェは脳梅毒で亡くなったと言いますし、日本では現在ほとんど見かけないと思いますが、有名人では俳優の石原裕次郎氏が、梅毒による解離性大動脈瘤がもとで亡くなりました(と思ったらWikipediaには違うことが書いてありました)。

 

さて50年前、中国では梅毒はほとんど撲滅状態でした。ところが、たとえば中国最大の都市上海では、現在最も一般にみられる伝染病になり、蔓延しているのだそうです。

このようなグラフがあります。
03f1画像を直接クリックしていただくと、グラフがご覧になれます。 


グラフの縦軸は病気の発生率あるいは出生率、横軸は西暦年です。紺色のひし形は梅毒の発生率で、の正方形は先天性梅毒の出生率です。
1995年以降、指数関数的うなぎのぼりの上昇を示しています。

2008年、中国では1時間に1人を超えるペースで、先天性梅毒の赤ちゃんが誕生しました。

梅毒の特効薬であるペニシリンの発見以来、世界中どこの国にも、このような奇妙な現象はありません。


1980年代、中国経済が自由化を進めるにつれ、金持ちの男性ビジネスマンと貧しい若い女性という組み合わせが、中国のセックス産業を拡大して行きました。

 

セックス産業労働者、男性との性交渉のある男性の間には梅毒患者が異常に多いのです。

中国では、同性との性交渉を持つ男性の少なくとも3分の1は結婚しており、彼らによる妻や子供への梅毒の伝染が深刻な問題になっています。

 

 

中国の伝統的な社会規範では、性の売買、男性の同性愛は激しい非難の対象となります。

これらの人々はセーフ・セックス(コンドームの使用)を行わなかった場合でも、一般良識から逸脱した性行動が明るみにされ、社会不適格者の烙印を押されることを恐れ、自ら医療機関を訪れることはありません。これが梅毒のスクリーニング検査の普及を強力に阻害する要因になっています。

 

またセックス産業従事者は当局役人をことさらに恐れ、まともな医療機関に行くことを避けるのです。

警察の商業性売買に対するこれまでの対応というのは、罰金から“再教育センター”までと幅がありますが、検挙されることは、セックス産業従事者にとって、今だに深刻な結果を意味するのです。

 

戦争のような大きな社会変動があると性病が増加することが知られています。

本エントリーの元記事の著者であるタッカーらは、現在戦時下ではない中国において、この異様なまでの急激な梅毒の増加は、中国の急激な自由経済化による社会的歪みから来ているとしています。

 

 

これについて遠藤誉氏は日経ビジネスオンラインに連載された「中国“A 女”の悲劇」の中で、自由経済主義導入に際して、中国は共産党一党独裁を維持するため、自由経済のモラルを支える民主主義思想を受け入れる訳には行かず、民主主義的モラルの最も根底となる部分が欠落したまま、資本主義の享楽的なものだけが入ってきて、その結果封建主義時代の価値観が復活したという興味深い考察をしています。

 

それが性売買、結婚後の不倫や同性愛性交渉の急増と同時に、逸脱性行為従事者に対する激烈な村八分をもたらしたということになります。

 

 

いずれにせよ、これらの社会の片隅に押しやられた梅毒感染ハイリスク・グループの人々に、どうやって系統だって梅毒のテストと病気の予防・治療をするかというのが中国における大きな公衆衛生の課題です。

 

ところで1960年代までに、中国から性病が消え去ったのは、中国共産党による大規模な撲滅運動によるものでした。

 1950年代初期、中国共産党は数週間のうちに何百もの売春宿をシャットダウンし、何千人もの娼婦にペニシリン治療を継続的に施しました。この処置が取られて10年後、梅毒は、実際に中国から消え去リ、その他の性病もほとんどみられなくなったそうです。

 

同じような大規模な処置は近代中国では実現が難しいと考えられています(なぜでしょうね?)。しかし基本的にはこれを模したアプローチとして、現在共産党政府は、非政府の民間団体を組織し、当局に替わって梅毒のカウンセリングやテストを行うプログラムを支援し、その運動を各地に広げて行こうとしています。

 

それにしても経済でない分野で非政府組織活動を支援というのは、共産党独裁制にもかかわらず、まるで小さな政府指向であるかのようで、独裁政権弱体化になりはしないのでしょうか。

 

またこの非政府組織の実際の活動とは、基本的に社会的に疎外されている人々に対する援助活動です。こういう活動に、民間人がまじめに取り組むと、人権、差別であるとか、社会問題に目覚めてしまい、民主化思想を促すような気がします。

というわけで、こんな記事をわざわざ、アメリカで最も権威があるとされる臨床国際雑誌に発表するというのは、中国共産党の意図は本当はどこにあるのだろうかと、不思議に思ったのでした。

 

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