今年(2004年)のMLB生観戦は、全部で3試合。7月6日・7日はCOL@SF。9日はARI@SF。COLは昔デンバーで見たことがあるが、SFとARIは初観戦だった。
9日のDバックス先発予定は、かのランディ・ジョンソン。そう、今回のお目当ては、そろそろ選手生活終盤かなというボンズとジョンソンである。
8日も観戦したかったが、昼間ナパバレーのワインツアーに行く予定だったので、夕方バタバタするのも嫌だなということで、夜の予定を入れずにおいた。
その8日の朝。ツアーガイド氏と待ち合わせのホテルロビーに、9時過ぎに着いた。少し早かったかなーと思い、あたりをぶらぶらしていると突然、嫁の表情が変わった。
「どうしたの?」と声をかけたが、何だかあたふたしている。
その指さす先に、彼、ランディ・ジョンソンがいた。
ロビーの一番隅のソファに座っていた彼は、目隠しの仕切り板のために、比較的目立たなかった。チョコクロワッサンのようなものを食べ、コーヒーを飲んでいた。
確かに先発投手なので、先乗りで遠征地に来ていることは考えられる。それにしてもホテルのロビーで、一人で朝食を取っているとは!
幸い、なのかどうか分からないが、隣のテーブルは空いていた。吸い込まれるようにそこに座った。嫁が私の向かいに座った。つまり、一つのソファーに、ランディと僕が並んで座ったわけだ。
あまりにも素晴らしい状況だけに、どうしていいのか分からない。しばらくおとなしくしていた。
ランディも、隣に変な男が座って、チラチラ自分の方を見ているのに気づいたようだ。しばらくしたあと、低い声で、
「このホテルに泊まっているの?」
何と!彼の方から僕に話しかけてきてくれた!!
「…ん~、イエス…」とか何とか答えた、ように思う。(実は、最初に何と言われたのか、あまりよく覚えていない。というか、思い出せない。気が動転していたのか?)
「そーですか。」
また食事に戻るランディ。
そこでこちらも我に返った。
このスーパーチャンスを何とする!必死に英語を絞り出そうとした。
「あ…I'm a tourist. I hope your great pitching for tonight's game...」
とか何とか言ったように思う。
ランディがこちらを向き、顔を寄せてきた。
「Perdon?」
うひゃー、通じんかったみたいや。
落ち着いてもう一度言い直した。今度は分かってもらえたようだ。
「私ハ旅行者デス。アナタノ試合ヲ見ニ来マシタ。アナタノ今夜ノ素晴ラシイぴっちんぐヲ期待シテイマス。」
「あー、いやいや、俺が投げるのは明日だよ。」
うひゃひゃひゃ。そうでしたそうでした。何舞い上がってんだろう、俺。
するとランディ。
「Where are you from?」
「From...Japan!」
「Oh. オーアヨウ!」
あ、お早う、って言ってくれたんですね。日米野球で日本に来たときに覚えたんですか?
とその時、チームスタッフのような人が現れ、彼に同行を促した。あらかた食事も終えていたランディが、紙袋やら何やらをガサガサと手でまとめて立ち上がった。
そこで、周りの何人かのアメリカ人たちも、ランディ・ジョンソンに気づいた。何といったって2メートル8センチの大男だし。特徴のあるヒゲだし。
「バ、バーイ…」と声をかけたが、そのまますーっと行ってしまった。
サインどころか、握手もできなかった(というか、ランディは手づかみでパン食べてて、手がドロドロだったし)。でもしかし、お話ししてもらえるなんて。もう、ワインツアーも何も、頭の中から吹っ飛んでいってしまった。
「オアヨウ」と声をかけてくれたとき、彼は微笑みかけてくれたようだった。もともと、それほど表情の豊かな人ではないので、微妙な感じだったが。
いやあ、素晴らしい思い出のできた旅行だった。
それにしても、ランディ・ジョンソンに「Perdon?」と言われた日本人、なんて、ちょっと珍しいんじゃないだろうか。うれしいような、恥ずかしいような。
SF 8-3 ARI
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