しっとう？岩田亜矢那

僕らの高校には
不可思議な噂がある


ふとした時に…
机に菊の花が飾られている

それだけならいいのだが
その机の主はその日に
死んでしまうらしいのだ




朝登校すると
なんだか教室が騒がしい

「いったいどうした？」

友人のＡは言う
「見てみろよ…」
指さす先にあったのは

いじめられっ子の
Ｂの机の上の菊の花だ


正義感が強いＡはこう叫んだ
「誰だよ！こんな酷いことしたのは！」


みなざわついている…

と、そこにＢが入ってきた

Ｂは何も言わず
その菊の花をどけて
机に座る


「みんな座れー！」

先生が入ってくると
みな静まって各々机に座る


どうやら先生は
この空気に気付いていない
様子だった。





それから翌日の話だ

登校時刻を過ぎても
Ｂがやってこない

心配してると
先生が暗い顔で入ってきた

「皆…よく聞いてくれ
昨日…Ｂが…亡くなった」


沈黙の中、更にこう続けた

「家の近くの階段で
足を滑らせ頭を強打…即死らしい」


そのとき僕は、ふと思い出した
"あの不思議な噂"を


いや、まさか…

その時、Ａが叫んだ

「あいつはこのクラスで
イジメを受けていたんですよ!?
分からなかったんですか!?」

先生は少し動揺してから
「それが本当なら、話を聞きたい
…話してくれるな？」
そう言ってＡを連れて行った


その日の昼休み
移動教室からクラスへ
戻ってくると違和感を感じた


…あったのだ

菊の花が


Ａの机の上に








翌朝先生から聞いたのは
こんな言葉だった

「昨日、だな
Ａが…交通事故で亡くなった
ひき逃げ犯はいまだに
捕まっていないらしい」


目の前が大きく回った
Ａが…？嘘…だろ…

僕はその日ずっと放心状態で
授業にも参加せずに
校内をふらふら歩いていた







翌朝の話だ…
教室の皆が騒がしい…


確かに置かれていた

菊の花が先生の教卓に


「う…うわぁぁぁぁ」
情けない声の先には
先生が立っていた

「嘘だぁぁ!!!」
そう叫ぶと先生は教室から
転がり出た


僕はその姿が
たまらなくおかしくなった


「ははっ…、
あはははははははは!!」

その日の放課後
先生は屋上から飛び降り
亡くなった"らしい"