私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

前回の記事に頂いたコメントへのお礼

2023-07-11 22:13:32 | æ—¥è¨˜ãƒ»ã‚¨ãƒƒã‚»ã‚¤ãƒ»ã‚³ãƒ©ãƒ 

山椒魚様

以前(2019-02-07)に頂いたコメントに、「もし、沖縄が独立するといった場合、大和民族はどのように振る舞うのでしょうか。かつて朝鮮半島を植民地にし、大陸に攻め入り何十万人も殺戮した民族が、琉球の独立を認めるでしょうか」とありました。私は今もそのことを考えています。これは疑問文ではなく、山椒魚さんのお心の痛みの表現であることもよく分かっています。

 2021-07-02には自然法則の必然性に関連して、「人間同士が殺戮を重ねているこの状態は,必然的で変えることはできないのか,いつも考えていますが」というコメントを頂きました。物理学者の端くれとして、このお言葉も重く受け止めております。

海坊主様

 入信のお言葉、身を正して、繰り返し拝読しています。私は九州大学理学部物理学教室で理論物理の原島鮮先生の教えを受けました。先生はキリスト教信者でした。敗戦間近の1945年6月16日から17日にかけての福岡市大空襲で家屋と家財の大部分を失われた原島先生は、その後、市の東部で焼失を免れた陋屋に移住しておられました。ひどい造りで先生の机のあった二階の畳部屋の床は傾いていて丸いものは転がりました。お人柄まことに温厚な優れた理論物理学者で、私の憧れの的でした。しかし、理論物理学者が神の存在を一途に信じるという事が私には納得が行かず、しばしば、床の傾いたお部屋にお邪魔して、信仰について議論に応じて頂きました。無神論者として、先生の信仰に挑んだ訳ではなかったのですが、結局のところ、「私はキリスト教のドグマを信じています」という先生のやや厳しい言葉で、議論が終わりになりました。縁なき衆生の悲しさです。

 カトリック教修道僧トマス・マートンが書いた七篇のアルベール・カミュ論があります。私はその翻訳をほぼ済ませたところです。カミュは非信仰者で、人間は、神に頼らず、人間らしく、立派に生きることが出来る筈だという立場を取りました。トマス・マートンはアルベール・カミュに強い親近感を抱き、カミュは本当のキリスト教、本当のキリスト教徒を知らなかったからだと惜しんでいます。恩寵という、私にはよくわからない言葉を使えば、マートンは恩寵に預かり、カミュはそうでなかったということでしょう。縁なき衆生の私もそうです。

ただ、「悪」の存在は、私の内にも、また、外にも、確かに存在するように私には思われます。「悪の凡庸さ」についての問題があります。人間は、本来、善的な存在であって、悪しき行為は思考の欠如と無知から結果すると考えることも出来ましょう。しかし、眼前の事実として物理的現象としての「悪しき状態」は否定し難く存在します。「悪」は存在し現前します。例えば、世界に溢れる難民の苦難、これは、我々が消滅に力を尽くすべき「悪」ではありますまいか。パレスチナの人々の苦しみは、単なる、人間の思考の欠如と無知から結果しているとは、私にはどうしても思われません。地球上に現前する「悪」の状態を何とか解消しようと我々は努力すべきではありますまいか。トマス・マートンもドロシー・デイも確かに神の恩寵に預かったキリスト教徒でしたが、この世の悪を正すことに力を尽くしました。そのため、デイは幾度も投獄され、マートンはCIAによって暗殺された可能性もあります。省みますと、これまで数多の卓見を寄せて頂きました。どうか今後も引き続きよろしくお願いいたします。

井原大地(名無しの整備士)様

 Rodney Barker ã®ã€ŒThe Hiroshima Maidens」の立派な和訳を出版して頂いて有難うございました。ロドニー・バーカーさんの「前書き」にあるように、本書が沢山の人々に読まれて、反核の書として大いに役立ってくれるものと信じています。ご苦労様でした。

https://www.amazon.co.jp/ヒロシマ・メイデンズ-ロドニー・バーカー-ebook/dp/B0BG8413ZS

<付記>井原大地さんのお仕事に便乗して、私の出版物「オペ・おかめ」の宣伝をさせて頂きます。ロドニー・バーカー著「広島乙女」は戯科学小説「オペ・おかめ」の272頁に出てきます。私としては、サイエンス小説の形を借りて核戦争反対の声をあげたつもりなのですが、「小説として薄っぺらで体をなしてない」とか「作中のキャラクターが全く描けてない」とか、散々な批評を受けました。老いた物理学徒に同情して褒めて下さった方もあるにはありますが:

https://yomodalite.blog.fc2.com/blog-entry-1884.html

小説として、文学作品として駄作なことは十分自覚していますが、反核の志の一つの表明として読んでいただければ嬉しく存じます。

Oseitutu Miki 様

 これまで多くの貴重なコメントを寄せて頂きました。この機会に、他の方々にも読んで頂きたいと考え、Miki 様に関係したいくつかのブログ記事を引用することをお許しください:

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/599591b3b186826bb00986f3bfbdd529#comment-list

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/18884b195540b2daf4f282a2f8e1e90b

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/4bd3cd1e2089819766cd8d36c9cd6a05

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/9830e02981531882526f91e53cbe361f

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/f97a3d8865f8fb1aa29b40ed4578f365#comment-list

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/f97a3d8865f8fb1aa29b40ed4578f365#comment-list

Miki 様とお姉様がそれぞれの人生をどのようにして選ばれたか存じませんが、私の場合、私がいわゆる人種偏見なるものを身に付けずに育ったのは、私の父親のおかげだと思っています。人種偏見は親が、あるいは社会が、子供に与えるものではありますまいか。

櫻井元様

 4年ほど前、7回にわたって寄稿して下さった記事シリース『侵略の共犯ー侵略者のウソに加担する者の罪』は、出版物で言えばPerennial Best Seller で、未だに読者が絶えません。今後とも宜しくお願い致します。

<付記>櫻井さんへのお礼の場を借りて、これまで大変お世話になってきましたコメンテーターの方々に熱く御礼を申し上げます。

藤永茂(2023年7月11日)