私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

国民国家のイデオロギーの否定

2022-03-26 09:33:05 | æ—¥è¨˜ãƒ»ã‚¨ãƒƒã‚»ã‚¤ãƒ»ã‚³ãƒ©ãƒ 

 ブログ『釈迦に説法』へのコメントの形で大橋晴夫さんから「国民国家のイデオロギーの否定」の問題を提起していただきました。いま荒れ狂っているウクライナ紛争は、もし核戦争が勃発しなければ、帝国と植民地政策の時代が終わりを迎え、国民国家が次第に消滅し始めるという世界史の大変革時代の開幕を促すであろうし、ぜひ、そうなって欲しいというのが、いまの私の偽らざる心情です。私はその日を見る事は出来ませんが。

 その世界変革の萌芽は、よく目を凝らせば、世界中のあちらこちらに既に見つかります。私が特に関心を持っているのは、メキシコのサパティスタ運動とクルド人指導者オジャランの思想に基づく革命運動です。この二つの運動に関連する記事として次の二つの記事を掲げておきます:

https://roarmag.org/essays/ramor-ryan-interview/

https://anfenglish.com/news/dr-brauns-Ocalan-s-paradigm-can-end-wars-58760

 始めの記事の中にはオジャランとクルド人たちの革命運動についての長い言及が含まれています。二番目の記事は「オジャランのパラダイムは戦争を終わらせる事ができる」という魅力的なタイトルです。次の機会に翻訳したいと思っています。

 しかし、現在、目前の世界情勢は、国民国家のイデオロギーの衰退を夢見るにはあまりにも苛酷なものです。米国とロシアの覇権争い、いや、米国がロシア国民を厳しく痛めつけてプーチンを失脚させ、ロシアという国の「レジーム・チェンジ」を遂げようと、ウクライナの一般国民をスケープゴートにして、猛烈にロシアに襲いかかっているのが現在の状況です。

 3月2日に行われた国連のロシア非難決議の投票結果は次の通りです:

193カ国中、賛成は141カ国。反対はベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリアの5カ国、棄権は中国やインドなど35カ国

棄権(35):アルジェリア、アンゴラ、アルメニア、バングラデシュ、ボリビア、ブルンジ、中央アフリカ、中国、コンゴ、キューバ、エル・サルバドル、赤道ギニア、インド、イラン、イラク、カザフスタン、キルギスタン、ラオス、マダガスカル、マリ、モンゴル、モザンビーク、ナミビア、ニカラグア、パキスタン、セネガル、南アフリカ、南スーダン、スリランカ、スーダン、タジキスタン、ウガンダ、タンザニア、ベトナム、ジンバブエ

意思を示さず(12):アゼルバイジャン、ブルキナファソ、エスワティニ、エチオピア、ギニア、ギニア・ビサウ、モロッコ、トーゴ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベネズエラ

これを見ると、賛成しなかった国の数は52カ国に登ります。忖度の上の賛成を除外することにすれば、積極的賛成は5指に満たないかも知れません。

 賛成を表明しなかった国として多数のアフリカの国家が含まれていることは注目に値します。アフリカ大陸の大国である南アフリカのラマポーザ大統領はウクライナ紛争について明確にNATOを批判する姿勢を表明しました:

https://www.reuters.com/world/africa/safricas-ramaphosa-blames-nato-russias-war-ukraine-2022-03-17/

アフリカは全体としてロシアを支持していると主張する別の記事、

https://libya360.wordpress.com/2022/03/21/africa-supports-russias-operation-in-ukraine-and-advocates-a-revival-of-the-non-aligned-movement/

によれば、ラマポーザ大統領は昔懐かしい“非同盟運動”の復活を提案しています:

In light of the conflict in Ukraine, South African President Cyril Ramaphosa called for a revival of the Non-Aligned Movement and also spoke of the weakness of the UN in the current situation. It should be recalled that the Non-Aligned Movement was an international organization, founded in 1961 during the Cold War, which brought together states in Asia, Africa, Latin America and Europe that adhered to the principle of non-alignment with any military bloc. Speaking to South Africa’s parliament, President Ramaphosa said: “We must work to revive the Non-Aligned Movement so that those countries that are not in a rivalry for hegemony between the major powers can work together to build world peace.” At the same time, he pointed out that while South Africa was in solidarity with the UN position calling for an end to military action in Ukraine, the entire situation demonstrated “the weakness of the structure and practical actions” of this organization. There is a need for a multilateral approach to peace and security issues, he said.

 世界中の国々を脅迫して自分の側につけたい米国は、「ロシアのウクライナ攻撃に賛成なのか反対なのかをはっきり表明しないのは人道上許されない」と公式に脅し文句を発して、前回のロシア非難決議から一月も経っていない3月24日に再度の国連総会を開き、再度の表決を強制しました。その結果は以前に紹介した青山弘之氏のサイトに詳しく出ています:

国連総会は特別緊急会合で、ロシア軍によるウクライナでの民間人やインフラ施設の無差別攻撃を非難し、即時停止を求める決議を140カ国の賛成、5カ国の反対、38カ国の棄権で採択した。

反対票を投じたのは、ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリア。

棄権したのは、アルジェリア、アンゴラ、アルメニア、ボリビア、ボツワナ、ブルネイ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、中国、コンゴ、キューバ、エルサルバドル、赤道ギニア共和国、エスワティニ、エチオピア、ギニアビサウ、インド、イラン、カザフスタン、キルギス、ラオス、マダガスカル、マリ、モンゴル、モザンビーク、ナミビア、ニカラグア、パキスタン、南アフリカ、スリランカ、スーダン、タジキスタン、トーゴ、ウガンダ、タンザニア、ウズベキスタン、ベトナム、ジンバブエ。

軍の即時撤退などを求めた3月2日の決議の賛成国数141から1カ国減り、棄権国は3カ国増えた。

決議案はフランスとメキシコが作成し、日米など計90カ国が共同提案した。(以下略)

3月2日と3月24日の評決結果をまとめて比較しましょう。

前回:総参加国193、賛成141、反対5、棄権35、無意思表示12

今回:総参加国193、賛成140、反対5、棄権38、無意思表示10

これを見ると、米国が発した脅し文句にもかかわらず、賛成票が1つ減り、意思表示を避けた国が2つ減り、棄権の票は3票増えました。つまり、米国批判ムードは拡大の兆候を示しているという事です。米国は脅しと宣伝の力を過信し、世界の人々の知能と感受力を見くびり過ぎています。アフリカや中南米の人々だけでなく、日本人やドイツ人も米国を牛耳っている好戦的支配権力の醜悪さを次第に見抜き始めているのだと私は感じます。

 私がプーチンより遥かに重罪の戦争犯罪人として挙げたマデレーナ・オルブライト全米国国務長官が3月23日に亡くなりました。クリントン大統領の下の国務長官として、米国がウソの理由を立ててイラク戦争を開始した時、食糧や医薬品の輸入封鎖という残酷不法なサンクション政策を実行し、そのため50万人のイラクの子供たちが死にました。それに対してこの女性は“It was worth it”(それだけの値打ちがあった)と言い切りました。歴史に残る暴言です。イラクの50万人の子供たちの命を犠牲にして、米国は一体何を得たのでしょうか。

藤永茂(2022年3月26日)


プーチンを戦争犯罪人として裁判にかける!?

2022-03-20 22:28:18 | æ—¥è¨˜ãƒ»ã‚¨ãƒƒã‚»ã‚¤ãƒ»ã‚³ãƒ©ãƒ 

 米国メディアは「プーチンは戦争犯罪者だ。国際法廷で裁判にかけよ」と叫んでいます。それを言うならば、裁かれなければならない大物の戦争犯罪人が世界にはウヨウヨしているではありませんか。

 軍事目標に限定せず、一般市民をも爆撃する、いわゆる、戦略爆撃の歴史はドイツ空軍のスペイン都市ゲルニカ爆撃(1937年)に始まり、1939年から1940年にかけての日本軍による重慶爆撃、ドイツ軍によるロンドン爆撃、英国軍によるハンブルグ爆撃、米英国軍によるドレスデン爆撃と続きました。日本海軍の真珠湾爆撃は、戦略爆撃ではなく、明らかに、戦術爆撃でしたが、太平洋戦争における、米軍の日本国内爆撃は完全に意図的無差別爆撃でした。東京大空襲、・・・、広島、長崎への原爆投下、全ては1990年に死去したカーチス・ルメイ米国空軍大将の総括指揮のもとに行われました。私の住む福岡市も、終戦直前の1945年6月19日から20日にかけて、大空襲を受け、1100人以上の死者行方不明者が出ました。私もその恐怖に曝され、親友の姉(中学生)は直撃弾で亡くなりました。

 そのカーチス・ルメイに、1964年、日本政府は勲一等旭日大綬章を贈りました。「日本の航空自衛隊を育成した」と言うのが贈呈の理由でした。今のプーチンが出来るだけ戦略爆撃をしないように努力しているのは、西側の宣伝放送画面自体の現状がそれを明確に示しています。プーチンが戦犯裁判の対象であるならば、カーチス・ルメイの戦犯罪状はプーチンとは比較にならない程重大なものです。死人を裁判にかける事は出来ないと言うのであれば、裁判にかけるべき戦争犯罪者は幾らでも生きてします。イラクとリビアの事を考えただけでも、マデレーナ・オルブライト、コンドリーサ・ライス、ヒラリー・クリントンの3人の女性前米国国務長官、また、ノコノコと臆面もなく広島にやって来た稀代のコンマン前大統領バラク・オバマも明らかに重罪の戦争犯罪人です。

 私が毎日訪れているサイトとして二つ:

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/

https://libya360.wordpress.com

挙げましたが、勿論、他にも幾つかあります。私は困難な状況を強いられているシリアという国とシリアに関連してクルド人問題に強い関心がありますので、私にとって貴重な次の二つのサイトも毎日読んでいます。その一つはクルド人の偉大な指導者アブデュッラー・オジャランの革命思想に忠実なクルド人たちの声を代表していると思われるANFNEWS:

https://anfenglish.com/news

であり、もう一つは青山浩之氏(東京外国語大学教授)の主宰する

http://syriaarabspring.info/?p=42201

です。このサイトに、最近、大変興味深い記事が出ました。それは、“「アサド大統領が「教師の日」に合わせて演説(2022å¹´3月17日)”という記事です。それによると、シリアの大統領はシリアの「教育の日」に合わせて、20年以上にわたって教職活動に従事してきた全国各県の教員、優秀な新任教師、カリキュラム開発・作成者、教育部門関係者らを前に演説を行ないました。次のように始まります:「人、心、思考を作る戦いの兵士、無知や後進性にかかる諸概念を矯正する戦いの兵士、我々の自我、文化、帰属を防衛し、我々の子供たちを意識、科学、知識で守る兵士であるみなさん教員を歓迎する。教員の日を祝しておめでとうと言いたい。」

この記事の全文を以下にコピーしたいのですが、版権のこともあり、上のサイトに直接アクセスして、ぜひ全文を読んでください。ここには、私が特に関心を持った部分を抜粋させていただきます:

***********

過去200年に及ぶ世界の問題のすべての原因は、西側が自らの利益を実現しようとして常に行ってきた戦争、占領、殺戮にある。何らかの問題について話したいと考える時、現代との共通項について話さざるを得ない。それは第1に、世界の苦しみの原因、今述べた通り、西側にあり、第2に、オスマン帝国が1916年に出て行って以降、シリアやこの地域で100年半にわたって続いている我々の苦しみが、フランスによる直接占領から今に至るまで、シリアへの陰謀を止めようとしない西側諸国に結びついているからである。また、西側は今日、より厳密に言うとウクライナでの戦争以降、自らの役割、存在、イメージにかかわる歴史的分岐点に立っている。シリアとリビアでの戦争は大きな影響を及ぼした。だが、ウクライナで今起きている戦争は、西側の役割にとって完全な分岐点だ。ソ連崩壊は重要な分岐点だったが、西側は自らが協力(強力?藤永)だと考えていた。だが、真の変化は第二次大戦の時から起きていた。今回は第2の大きな変化だ。すべての問題と混乱が西側と関連しているので、それに関連したいくつかの点を指摘したい。我々シリアにとって、そのほとんどは古くからあったもので、真新しくはない。だが、西側の民衆にとってそれは新しいものだ。世界でだまされてきた多くの人々にとっても新しいものだろう。それは、数日、数カ月、数年ではなく、おそらく数十年にわたって、我々がそれに依拠して自らの未来のヴィジョンを作り出しているものだ。第1の点は、帝国主義的な西側、私がこういう時、国民のことを言っているのではなく、西側の体制、西側の政策を主導する組織のことを言っているのであり、西側という時も、それらと緊密に動いている組織、ロビー、政府、あるいは体制のことをいっているのだが、その帝国主義的な西側は歴史を経てもいまだにまったく変わっていないということだ。いかなる変化も起きていない。違うのは、米国が1950年代に英国とフランスにとって代わり、これらの含む西側諸国が米国の政策に従属し、西側がそれ以前にも増してウソ、偽りを言うようになり、巧妙な仮面を身に着けて、様々な国民を従属させ、数十年にわたってそれをやり通してきたことだ。

西側は今日、人道的な概念を多用している。だが、世界の諸国民に対してこれまで以上の犯罪を行っている。しかし、実際のところ、数十年にわたって纏い続けてきたこうした仮面はいずれもシリアを一度たりとも騙すことはできなかった。これがシリア、そしてシリア国民との西側との問題だった。しかし、シリアで起きた様々な出来事によって、西側はこの仮面を徐々に剥ぎ取られることを余儀なくされた。ウクライナの戦争が始まり、西側は残った仮面も一度で剥ぎ取られてしまった。西側はまずはその民衆の前、続いてそれ以外の諸国民の前で完全に裸の状態となった。だが、仮面を剥ぎ取られた代償は大きかった。仮面を剥ぎ取られたことで、第二次大戦以降に築かれることになった西側のウソのプロパガンダの基礎が破壊された。第1に、西側は国際法にまったく関心がなく、もっとも多くを破壊してきたことが立証された。我々が西側という時の筆頭は米国だ。米国は過去数十年にわたって国際法の制度をもっとも踏みにじり、世界を密林へと変貌させた。若干のロマン主義と単純さをもって次のように自問する者もいるだろう。ウクライナへのロシアの介入の法的正統性、法的根拠は何なのか、と。我々は法律というのが文言ではなく、実行であることを知っておかねばならない。つまり、国に成文法があっても、司法がなく、判事も警察もいなければ、法律に何の価値があるのか? そのような国は密林同然だ。法律を尊重する者はだれもそうした国に居場所はない。そうした国は法律違反者、盗賊と盗人だけのものとなるだろう。事実、世界はソ連崩壊以降、密林状態で、西側が盗人だった。国際法など存在しなかった。国際機関も何もなかった。実体がなく、適用もされていない国際法について話すことは、意味のない言葉を発するようなものだ。ロシアの首脳らは15年前から公然と名言(明言?藤永)してきた。西側がめざす政策は力の政治だ、と。彼らが世界を密林に変えようとしているのだ。西側がよりどころとするもっとも重要な基礎の一つである表現や言論の自由について言うと、それは深淵に陥ってしまっている。少なくともジョージ・ブッシュ・ジュニアが20年ほど前に現れてから、アラブ世界全体が、政府、ロビー、企業、メディア、そして最近ではSNSから発信される一つの意見によって、同じ方向へと動かされた。数千万人が暮しているにもかかわらず、一つしか意見がない民主的なこの西側とはいったい何なのか? 米国がシリアに怒ると、世論全体が、突如として同じ概念を駆使してシリアに反対するようになる。

**********

 注意を喚起したいのは上の引用の中にはっきり述べられている「ウクライナ戦争が始まり、西側は残った仮面を一度で剥ぎ取られてしまった」という事実認識です。これは私が『プーチンの一分』で指摘した“終わりの始まり”と同様の認識です。私は、現アサド大統領が医師の卵として英国で勉強をしていたのに父親と兄の相次ぐ死亡によって、やむなく政治家になった頃から、この人物の言動をフォローして来ました。私はこの男に希望と信頼を置いています。もしもオジャランの革命運動が大きく成長した時には、アサド大統領が、かつてのスペインのフェリーペ二世のような革命弾圧に踏み切る事は絶対にないと私は信じています。

 

藤永茂(2022年3月20日)

 


釈迦に説法

2022-03-17 12:30:56 | æ—¥è¨˜ãƒ»ã‚¨ãƒƒã‚»ã‚¤ãƒ»ã‚³ãƒ©ãƒ 

 今回、このブログでウクライナの事を取り上げましたが、その記事に寄せられたコメントの数々を読んで大いに考えるところがありました。「釈迦に説法」の喩えは些か不適切ですが、私の書いた記事を読んでくださる方の多くは、問題意識も知識も私より上で、いろいろの事を教えて頂き、私のなすべき事、私にできる事は別にあるのだと強く感じはじめています。

例えば、『プーチンの一分』への、3月7日付のコメントに

「当然ながらウクライナへの共感を訴えるヨーロッパでは黒人差別が露呈しているとのこと。底の浅い人道主義は害でしかないのかもしれません。」

という指摘をいただきました。3月7日の時点では、戦禍を避けるためにウクライナから隣国へ逃れようとしたウクライナ在住の黒人がむごい差別を受けていたことを私は全く知りませんでした。調べてみると、YouTubeには3月2日、3日の時点で、すでに、この問題が報じられていますし、また、3月11日付の長文の記事も見つけました:

https://www.youtube.com/watch?v=rUja0J6mMds

https://www.youtube.com/watch?v=90DtDw-5TvU

https://libya360.wordpress.com/2022/03/11/shameful-racism-against-refugees-fleeing-the-russia-ukraine-conflict/

これは実にひどい話です。全く怪しからぬ話です。しかし、日本でも、私の住んでいる福岡でも、嘆かわしい現象が幾らも目につきます。行政機関としての県や市でも、民間の組織でも、諸手を挙げて、ウクライナからの難民を歓迎し、そのための募金を行っています。パレスチナ、リビア、シリア、あるいは、東南アジアからの難民入国希望者にこのような暖かい入国歓迎の声が上がったことは全く無いではありませんか!

 私は、北米大陸での私自身の被差別経験のことをこのブログでも何度か取り上げてきましたが、もう一度、マーチン・ルーサー・キングやフレデリック・ダグラスやフランツ・ファノンに戻って、根本的に、考え直さなければなりません。ヨーロッパ諸国と米国が白いウクライナ難民を差別的に歓迎している事実は、単に皮膚の色を越えた問題を包含しています。

 この日頃、マスコミのウクライナ報道に接するのが嫌で、殆どテレビのスイッチを入れませんが、同じような想いをしている人々が少なくない様子なので、一つ、うまい息の抜きの方法をお教えします。これまでにも何度も紹介してきましたが、近頃、特にお気に入りダントツのウェブサイトは

https://libya360.wordpress.com

です。このサイトには、思わず、Hear! Hear! と叫びたくなる記事ばかりが並んでいます。ぜひ覗いてみて下さい。私が見ているのは英語版で、他の言語からの翻訳も能力のある専門翻訳者が仕事に当たっていると思われますが、ここに掲げられている英語記事を自動翻訳で日本語に翻訳して読むことも出来ます。このサイトの記事の終末のところに表現言語を選ぶところがありますから、「日本語」を選んでください。自動翻訳文の出来上がり具合は「マアマア」といった感じで、時には意味不明や、意味反転の場合もあるようですが、全体としては、充分意味が正しく読み取れます。

 私の個人的な気持ちはメキシコの原住民集団サパティスタの人々と同じです。彼らは戦争を始めたプーチンを非難し、同時に、プーチンを挑発した西側を非難します。サパティスタの戦争反対の声明は3月2日に早くも発表されました。その説明解説は次のZCOMMにあります:

https://zcomm.org/znetarticle/the-zapatistas-and-the-invasion-of-ukraine/

サパティスタの声明の全文は次の二つの英文記事で読むことが出来ます(内容は同じです):

https://enoughisenough14.org/2022/03/05/there-will-be-no-landscape-after-the-battle-words-by-the-ezln-on-the-invasion-of-the-russian-army-into-ukraine/

https://enlacezapatista.ezln.org.mx/2022/03/07/after-the-battle-no-landscape-will-remain/

声明は6項目にまとめられていて、その4番目には、

“ Instead of turning to what the media and the social networks of the respective sides disseminate — and which both present as “news” — or to the “analyses” in the sudden proliferation of alleged experts in geopolitics, sudden fanatics of the Warsaw Pact and NATO – instead, we decided to seek out and ask those who, like us, are engaged in the struggle for life in Ukraine and Russia.”

とあります。The Struggle for Life:この指標こそ、我々の行動指標でなければなりません。

 

藤永茂(2022年3月17日)


外国からの傭兵がウクライナ市民を丸め込んでロシアと戦っている

2022-03-12 09:39:36 | æ—¥è¨˜ãƒ»ã‚¨ãƒƒã‚»ã‚¤ãƒ»ã‚³ãƒ©ãƒ 

 米国はプーチンがシリアからアサド大統領のシリア軍兵士をウクライナに運んで戦闘に参加させていると宣伝していますが、これは嘘でしょう。西側がシリア国内でアサド政府と戦わせている傭兵勢力、とりわけ、以前から悪名高いISISなどの獰猛な傭兵達をウクライナに運び込み、ウクライナ市民を丸め込んで、“悪漢”プーチンの侵略軍と戦わせているのが真実でしょう。状況証拠は充分にあります。

 昔、ISISがしきりに話題になり始めた頃、日本の専門家たちはISISが過激な宗教運動集団であると言っていました。私はシリア国内のISIS勢力が数百台もの石油運送大型トラックを連ねて、シリア国内産の石油をトルコに運び込んでいる航空写真をみた時から、専門家の見解に反して、ISISが傭兵的な集団であると考えるようになりました。自慢する気は毛頭ありませんが、今になってみると、私の見方の方が正しかったようです。

 今年1月下旬、シリア北東部にある刑務所に収容されていたISISのメンバーが大量に脱獄する事件が起こりました。いろいろの報道が錯綜して真相は不明瞭のままですが、この時の脱走兵達も恐らくウクライナ戦線に動員されたのではないかというのが私の見解です。そもそもこの監獄襲撃事件自体がISIS兵員のウクライナ派遣計画の一部として立案され遂行されたのではないかという疑問さえ私は抱いています。

 昨今のNHKテレビやテレビ朝日のウクライナ報道の偏向の酷さは全く目に余るものがあります。プーチンが侵攻直前に行ったスピーチで強調した、死者1万余人に及ぶ過去8年間のドンバス地域の一般市民の犠牲について、我々の大多数が何も知らなかったのは一体なぜなのか。このドンバス地域の一般市民の苦難は誰も否定することの出来ない決定的事実です。ある意味で、この事実は今回のロシア軍のウクライナ侵攻の真の引き金となったと言っても間違いではないと思います。

 今回の紛争で、ISISの傭兵性も白いヘルメットの傭兵性も、白日の下に露呈されました。エリック・プリンスの傭兵達もこの戦争に参加していて、プリンスは巨額の富を懐にしているのであろうと私は推測しています。

 今、3月12日(土)の朝九時半です。今朝のテレビ各社のニュース番組の反プーチン、反ロシアの宣伝放送の凄まじさはどうでしょう。私の生涯で経験した最高の凄まじさです。同じ想いを披歴している米国人がいます。物の考え方、感じ方、受け取り方で、現在の私が最も親近感を抱いている人物の一人です。もしお暇があれば、ぜひその声を読み取ってみてください:

https://dissidentvoice.org/2022/03/on-the-edge-of-a-nuclear-abyss/

 

藤永茂(2022年3月12日)


西側はロシアを銃撃したが自分自身の足に命中した

2022-03-11 21:08:00 | æ—¥è¨˜ãƒ»ã‚¨ãƒƒã‚»ã‚¤ãƒ»ã‚³ãƒ©ãƒ 

The West shot Russia and hit its own feet.

 西側(米国、NATO)は苛酷な財政、経済制裁をロシアに課しましたが、自らの側も大変な打撃を被っています。その状況を、今、最も象徴的に目撃できるのは、米国が目の仇にしていたマドゥロに宛てたベネズエラへのバイデン大統領の働きかけです。

 ベネズエラは南米大陸の最北部に位置し、重油埋蔵量では世界最大と言われていますが、1999年ウゴ・チャベスが大統領に就任して反米の姿勢を打ち出すまでは、米国の裏庭の一部として、米国石油資本の支配の下にありました。チャベスは2013年癌で亡くなり、彼の腹心のニコラス・マドゥロが大統領に就任しますが、米国はマドゥロ政権の転覆(レジーム・チェンジ)政策を強力に推し進め、重油精製停止を含む厳しい経済制裁を加えて、ベネズエラの一般国民の生活を困窮させ、国外への難民が急増しました。遂には、米国が選んだ傀儡政治家ファン・グアイドをニコラス・マドゥロに代わるベネズエラ大統領として承認し、この米国の傲慢極まる内政干渉に追随して、日本を含む五十数か国が、マドゥロではなくグアイドをベネズエラ大統領として承認しました。

 ところが、ウクライナ戦争が勃発して、石油価格が暴騰し、米国にとって困った状況が発生すると、バイデン大統領は、自分がベネズエラ大統領と承認しているグアイドではなく、マドゥロの方に、石油の生産販売を許してやるからロシア側から、米国側に寝返りをしないか、と声を掛けたのです。こんな人を馬鹿にした恥知らずの話があるでしょうか!!

https://www.aljazeera.com/news/2022/3/8/venezuela-talks-us

マドゥロ大統領はウクライナ紛争が西側の挑発によるという正しい見方を発表していますから:

https://www.rt.com/news/551455-venezuela-says-nato-expansion/

https://libya360.wordpress.com/2022/03/08/president-maduro-alerts-that-war-could-extend-throughout-the-world/

ここで簡単に西側に寝返りを打つことはあり得ません。マドゥロ大統領が、自国やウクライナの市民のために最善の政策をとってくれることを私は切望します。

 西側は、数多の有力民間企業をも動員して、総力戦的な経済制裁をロシアに加えていますが、そのダメージは自分自身にも及ぶであろうという見解が世界の多数の識者によって表明されています。ここではその二例だけを掲げておきます:

https://libya360.wordpress.com/2022/03/09/sanctions-on-russia-are-shaking-the-world-including-the-west-which-imposed-them/

https://www.paulcraigroberts.org/2022/03/09/the-sanctions-bite-the-west-not-russia/

 

藤永茂(2022年3月11日)