■anond:20251203122052

✕アメリカ軍がでて

✕中国の戦艦が

〇日本にミサイル飛んできたら

では具体的にどんな台湾有事シナリオなら要件を満たしそうか

いくつかモデルケースを作って「この場合はほぼアウト／グレー／ぎりぎりセーフ」みたいなライン引きも一緒に整理してください

0. 前提のルールをもう一度だけ整理

「存立危機事態（＝限定的な集団的自衛権）」の３要件は、ざっくりこうです：

• 密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生していること 代表例：アメリカ
• そのまま放置すれば、
  • 日本の存立が脅かされ、
  • 国民の権利が根底から覆される「明白な危険」があること
• それを防ぐ適当な手段が他になく,
  • 行使する武力が必要最小限度にとどまること

ここに当てはまりそうかどうかで

• ほぼアウト（要件を満たすのはかなり無理筋）
• グレー（理屈上はあり得るが、政治的ハードル高）
• ぎりぎりセーフ（現行解釈なら「なり得る」と政府も言っているライン）

くらいに分けてみます。

ケース1：台湾ローカルの小規模衝突（米軍はほぼ不介入）

想定シナリオ

• 中国が台湾の外島（金門・馬祖など）で武力示威
• 砲撃や限定的な上陸戦があるが、台湾本島・主要インフラは無事
• アメリカは政治・経済圧力が中心で、軍事的関与はほぼなし（艦隊を遠巻きに展開する程度）
• 日本の領域・日本船舶・在日米軍は攻撃されていない

要件チェック

• 「密接な関係にある他国への武力攻撃」
  • 台湾はそもそも日本の国内法上「密接な関係にある他国」と位置づけるかどうかが微妙
  • 米軍は撃たれていないので、アメリカもここに乗ってこない→ ①の時点でかなり苦しい
• 「日本の存立が脅かされる明白な危険」
  • 地域の緊張は高まるが、日本の独立や存立が即座に危ういとは言いにくい

⇒ 分類：ほぼアウト

集団的自衛権での武力行使はほぼ無理

あり得るとしたら、「周辺事態／重要影響事態」として、

後方支援・避難支援・情報提供などにとどまるイメージです。

ケース2：台湾本島への大規模侵攻＋米軍はグアムなどから関与（日本本土は無傷）

想定シナリオ

• 中国が台湾本島へ本格侵攻、空爆・上陸を伴う
• 米軍はグアム・ハワイ・フィリピン近辺から航空・海上戦力で介入
• ただし中国は「戦線拡大を避ける」建前で、在日米軍基地・日本船舶は攻撃しない
• 台湾周辺は危険だが、日本のシーレーンは辛うじて生きている

要件チェック

• 「密接な関係にある他国に対する武力攻撃」
  • 台湾への攻撃はあっても、アメリカへの「直接の武力攻撃」がないなら、①をどう評価するかがそもそも微妙
  • 「台湾＝密接な関係にある他国」とまで解釈を拡張するのは、現政府の説明からするとかなり勇気がいる
• 「日本の存立が脅かされる明白な危険」
  • 地政学的にはとんでもない危機だが、この事案だけで「日本の存立が直ちに危うい」とまでは言わない可能性もある

⇒ 分類：ほぼアウト〜グレー寄り

法技術的には「台湾も日本と密接な関係にある『他国に準ずる主体』だ」とか、

「台湾陥落は日本の存立を危うくする」と論じる余地はゼロではないですが、

現行の政府説明・国会答弁からすると、ここでいきなり存立危機事態と認定するのは相当ハードルが高いと思っておいた方が現実的です。

ケース3：台湾封鎖＋日本向けシーレーン・通信インフラが半分以上止まる（在日米軍は攻撃されない）

想定シナリオ

• 中国が台湾海峡〜南西諸島周辺で海空封鎖を実施
• 台湾だけでなく、日本向けの原油・LNGタンカーや重要な海底ケーブルも事実上通れない／切断される
• 在日米軍基地への直接攻撃は回避しているが、日本のエネルギー輸入が大幅に止まり、数ヶ月単位で見ると日本の経済・社会インフラが崩壊しかねない状況

要件チェック

• 密接な関係にある他国への武力攻撃
  • 米軍艦艇も攻撃を受けていないとすると、①は依然としてグレー
  • ただし、中国の封鎖行為が米艦の排除や攻撃を伴えば①はクリアしやすくなる
• 日本の存立が脅かされる明白な危険
  • ここはかなり強くYESを主張し得る場面
  • 長期的なエネルギー遮断・通信遮断が続けば、「国家の存立が危うい」レベルだ、と政権が言い張れる余地は大きい

⇒ 分類：グレー〜ぎりぎりセーフ候補

「封鎖が日本の存立を脅かす」として、政府が 「存立危機事態になり得る」 と答弁してきたのはまさにこういうパターンに近いです。

ただし、①（密接な関係にある他国への攻撃）をどう構成するかでまだ議論の余地があるので、理屈は立つが政治的には相当繊細なゾーン。

ケース4：台湾有事を口実に在日米軍基地がミサイル攻撃される（日本本土も被弾）

想定シナリオ

• 台湾侵攻に合わせ、中国が「米軍の妨害」を防ぐ目的で
• 嘉手納・横田・佐世保など在日米軍基地を弾道ミサイルで攻撃
• 日本の民間地域にも被害（ミサイルの着弾や誤射）が出る

要件チェック

ここは、もはや集団的自衛権の前に個別的自衛権がドンと立つケースです。

• 日本への武力攻撃そのもの（＝武力攻撃事態）
  • これは従来の自衛権の三要件で「個別的自衛権」を発動し得る場面
• 同時に、「密接な関係にある他国（米国）への攻撃」とも評価可能
  • 在日米軍は「米国の軍隊」であり、その基地への攻撃は米国への武力攻撃の一部とも整理できる

⇒ 分類：ほぼ確実IN（ただし集団的自衛権というより個別的自衛権が主）

• 法律論としては、
  • 「日本への攻撃」に対する個別的自衛権
  • 「米軍への攻撃」に対する集団的自衛権（存立危機事態）

が二重に成立し得る状況です。

実務的には「どのラベルで説明するか」の問題になり、

「台湾有事を理由にした対日攻撃が来たら、自衛隊が反撃しない選択肢はほぼない」レベルと言ってよいゾーン。

ケース5：台湾侵攻＋日本船舶・海保だけがピンポイントで攻撃される

想定シナリオ

• 中国は台湾本島に侵攻
• 日本政府が台湾周辺で邦人救出・船舶護衛をしようとしたところ、
  • 海上保安庁の船、
  • 自衛隊護衛艦、
  • 日本籍の民間タンカー
• が攻撃される
• 在日米軍や米艦船への攻撃は控えている

要件チェック

• 日本への武力攻撃（個別的自衛権）
  • 日本籍船舶や海保・自衛隊が攻撃されれば、それだけで「日本への武力攻撃」と整理可能
  • → 個別的自衛権での武力行使が議論の軸
• 集団的自衛権（存立危機）として見る意味は？
  • 「密接な関係にある他国への攻撃」というより、日本自身が直接やられているので、
  • わざわざ存立危機事態の箱に入れなくても、自国防衛で足りる場面

⇒ 分類：ほぼ確実IN（ただしこれはほぼ純粋な個別的自衛権案件）

このケースは「集団的自衛権の線引き」というより、

「台湾有事に巻き込まれて日本が直接殴られたらどうするか」という話になります。

ざっくり位置づけの一覧

最後にざっくりまとめると

• 「台湾で何か起きた」というだけでは、存立危機事態で武力行使はほぼアウト寄り。
• 日本のエネルギー・通信・海上交通が長期にわたって遮断され、日本が実質的に“詰む”レベルになってくると、
  • → 「グレー〜ぎりぎりセーフ」ゾーンに入ってくる。
• 日本や在日米軍基地が直接攻撃される段階では、
  • → 集団的自衛権以前に個別的自衛権の案件になり、「自衛隊が出ない」という選択肢は法的にはほぼ消える。

…というイメージです。

Permalink | 記事への反応(1) | 12:22

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