ページビュー(PV、総閲覧件数)頼みはもう止めよう――。こんな方針を掲げ、黎明期から続くネット業界特有のビジネスモデルから脱却を試みるネット企業が増えている。広告料金で稼ぐために自社のWebサイトに多くの閲覧者を集め、広告のクリック数を高めることに終始する従来手法とは違った世界を模索する。

 その一社がコミュニティサイト運営のnanapi(ナナピ)だ。KDDIが2014年10月にスマートフォン向けサービス構想「Syn.」を発表したのに合わせ買収したことで当時話題を呼んだ。社長である古川健介氏は著名な起業家としても知られる。ネット業界のキーマンの言動は、ときに波紋を起こしながらも注目を集めてきた。彼が今目指すのは「少PVでありながら、単価の高い広告」という新しいビジネスモデル。専門性の高いコンテンツで、質の高い読者を集められると意気込んでいる。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ

6月に「The First Penguin(TFP)」というサイトを立ち上げましたね。

 起業家やその予備軍に向けて、先輩に当たる起業家が自身の経験やノウハウ、起業への思いなどを発信するメディアです。起業家たちの生の体験を通じて、起業の参考になる情報を届けたいと考えました。

写真●nanapiの古川社長
写真●nanapiの古川社長
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 サイトの名称は、群れの中で最初に海へ飛び込むペンギンを意味します。最初に海へ飛び込むことはリスクをとるということ。起業家を指すときにも使われる表現です。

 書き手には元LINE社長で現在はC Channel社長の森川亮氏、日本交通の川鍋一朗社長、マネーフォワードの辻庸介社長、投資家の佐俣アンリ氏など10数人に参加していただいています。書き手の条件は、起業家もしくは投資家であること、そして「すごすぎない」こと(笑)。読み手にとって等身大の起業家像を感じてほしいからです。昨日の生徒が今日の先生になるイメージです。

どんな記事が読めるのか教えてください。

 記事のジャンルは様々です。起業にあたっての苦労話や事業にかける意気込み、新サービスの狙いなど。さらには、投資家から資金調達する際の契約書の書き方といったマニアックなものもあります。いずれも起業を経験した当事者だからこそ書ける内容だと自負しています。

nanapiの事業において、どんな位置付けを担うのでしょうか。

 ニッチな分野で高品質のコンテンツを配信するサービスとして運営していくつもりです。起業に関する専門性の高いコンテンツで、特定の読者層を集める。マス向けのコンテンツではありませんから、ページビュー(PV)は少なくなるでしょう。