「一部の業務を除けば、外交員のほとんどの業務をスマホ上でできるようにした」(ソニー生命 共創戦略部の長谷川樹生統括部長)---。

 生命保険の外交員が利用するシステムの開発で、スマホファーストに取り組んでいるのがソニー生命保険だ。同社での取り組みで注目したい点は二つある。一つは従業員個人のスマホを業務用スキャナーとして活用していること。もう一つが、個人情報を端末に保存しなくてもコールセンター並みの応対ができるようにしたことだ。

 同社は2012年10月、生命保険の加入手続きなどに用いる顧客管理システムを「C-SAAF」として刷新。ペン入力が可能なタブレットPCを約5000台導入し、顧客と面会をしながら、その場で契約手続きを完結できるようにした。同社の取り組みがユニークなのは、外交員個人が保有しているスマホの利用を前提に、システムを企画・開発した点だ。

 例えば、生保の加入に必要となる顧客の健康診断書を外交員がスマホで撮影し、システムに送信できるアプリを開発した(図1)。従来は顧客に複数枚の健康診断書を紙で提出してもらっていたが、新システムでは顧客が持つ原本を外交員がスマホで撮影するだけで済む。健康診断書という顧客の重要な個人情報を外交員が紙で持ち歩く必要がなくなり、情報漏洩リスクを低減した。

図1●健康診断書をスマホでスキャンするソニー生命のシステム
図1●健康診断書をスマホでスキャンするソニー生命のシステム
営業担当者のスマホ(私物)の内蔵カメラを活用。専用の撮影アプリを使うことで、顧客管理システムに送信すると同時にデータが端末から消去される
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 デジタルカメラではなくスマホで撮影するのは、撮影データを自動消去し、ファイルとして残さないようにするためだ。ソニー生命は、独自のスマホ向けカメラアプリを開発。「撮影と同時に画像をタブレットに送信し、スマホには原理的に画像ファイルが残らないようにした」(IT戦略本部 IS開発2部高谷哲朗担当課長)。タブレット上の画像も本社のシステムへの送信後に自動消去される仕組みだ。デジカメで健康診断書を撮影し、PCに移してシステムに送信する「PCファースト」の方法では、ここまでセキュリティを徹底することは難しい。