若手社員「課長、勢い、量ともに課長を超えました。記録更新です!」
課長「なに?! よし、もう一杯飲むか。記録を塗り替えてやる。あっ、店員さん、生ビール大ジョッキ追加で!」
仕事帰りの居酒屋で、男たちがある機器を使って熱戦を繰り広げている。舞台はなんとトイレ。セガが開発した、用を足しながらゲームを楽しめるトイレ用のサイネージ機器「トイレッツ」が、男たちを熱くさせているのだ(図1)。
トイレッツでは、放出された尿の速度や量などを算出し、そのデータを元にゲームを楽しめる。具体的には、野球のスピードガンで用いるマイクロ波センサを利用して、尿の速度を算出し、尿の量などを推定する。例えば、尿の放出速度が速かったり、量が多かったりすると、対戦ゲームで勝利できる。
1~2分間同じ場所に立ち続けるという性質から、男性用小便器の上に設置するポスター広告などは以前からあった。セガはそこにゲーム性を持ち込み、ユーザーの競争心やゲームを楽しみたくなる心理を刺激することで、広告効果の向上を狙った。
トイレッツでは、ゲーム中やゲーム終了直後に表示される結果画面の中に、飲食物の広告情報などを提示する(図2)。例えば画面内に「ビール大ジョッキ、今なら××割引」などと書いておけば、ゲームに敗れたユーザーは「もう一杯」となってしまう。
実際、ある居酒屋でトイレッツを試験運用したところ、紙のPOPで告知する場合と比較して、告知した飲み物の1週間の注文数が一気に2.2倍に伸びたという。
セガは、2011年11月から15万円でトイレッツの一般販売を開始した注1)。居酒屋チェーンなどを展開する養老乃瀧は、既に同年10月から順次、同社の居酒屋約40店舗にトイレッツを先行設置している。
注1)これはゲーム・ソフト1種類込みの価格。ゲームは5種類あり、「通常版」のゲームを無料で楽しめる。本文にあるように、対戦機能などを加えた有料(10円)の「デラックス版」もある。試験運用では、トイレッツ1台あたり、1日平均580円を売り上げたという。つまり、1年以内で購入代金を回収できる計算だ。
セガによれば、居酒屋の他にパチンコ店やショッピング・モールなどで多くの引き合いがあるとする。国内だけでなく、「米国や英国、フランス、デンマーク、ロシアなど海外からの問い合わせも多い」(同社)。顧客からも、トイレッツ活用に向けたさまざまな提案を受けているという。