SGホールディングス傘下で倉庫や物流事業を展開する佐川グローバルロジスティクスは、中国・上海に3カ所目の物流拠点を開設するなど中国事業の拡大に意欲的だ。近く、日本企業と中国の物流事業に関する大型商談がまとまる予定という。着々と中国での事業基盤を確立する同社だが、これまでに2度、情報システムの整備に失敗している。
1度目は、住友商事や中国物流大手の大衆交通(集団)と合弁で設立した上海大衆佐川急便物流に貨物追跡システムを導入したケースだ。数億円を投じて日本のシステムを中国に移植したのだが、固有の業務プロセスの存在や稼働環境の違いから、システムが正常に動作しなかった。さらに、豊富な機能を備えていたために、現地社員が使いこなせないという事態が発生した。
2度目は、日本で蓄積したシステム構築のノウハウを中国に持ち込んだケースだ。システムの開発や運用・保守を現地のシステム開発会社に委託した。ところが、現地のシステム開発会社の運用・保守に関するスキルやノウハウが不十分で、不用意なシステム障害が多発。結局、システムを再構築しなければならなくなった。
現地のパッケージを導入
過去の失敗を踏まえて佐川グローバルロジスティクスは、日本のシステムや日本で蓄積したシステム構築のノウハウを中国に持ち込むのではなく、現地のパッケージソフトをカスタマイズして導入する道を選んだ。「短期・低コストで現地に見合ったシステムを導入できる」(芹澤貴史経営企画部ITシステム課主任)と考えたためだ。OSにオープンソースソフトのLinuxを採用することで、開発費をさらに抑える努力もした。
これらの施策が奏功し「初期投資を抑えつつ、短期間でシステムを導入できた」(芹澤主任)という。「日本のシステムを移植すると、たいていオーバースペックになる。中国における事業規模や現地社員のITスキルなどを見極めた上で、システム構築の基本方針を決めるべきだ」(同)とした。