今日の目的地はGoogleの本社。行きたいところだらけの訪問先の中でも特に目玉である。ここに勤める日本人エンジニアである廣島直己氏のご好意で,Googleplex(本社社屋)の見学,社内食堂でのランチが予定されていた。ツアーの仲間たち約30人と車に分乗して出かけた。

 思えば僕のGoogleとの出会いは2001年。初めてGoogleの検索に触れたとき,そのシンプルな画面,必要なサイトが上位に出ることに感銘したものだ。それ以降,画像検索,Google Maps, Google Docs, Gmailなど,次々とサービスに驚かされてきた。僕には,エンジニア中心で,信念に向かってとんでもないスピードで突き進んでいる会社に見える。必要以上にほめるつもりもないが,あこがれの場所である。

 車を駐車場に停めて,受付とされる建物を目指して歩き始める。その敷地はスタンフォード大と同様に,IT企業の敷地内とは思えない広さで,案内地図の縮尺にとまどいを覚えるほどだった。

 受付で手続きをして,名札を付けているときのことである。テレビの撮影クルーのような人たちが横を通った。そしてそのカメラの先には,CEOのEric Emerson Schmidtが。まさかの遭遇に僕は「あっ!」と声を出してしまった。Schmidt氏はそんな僕を見て苦笑いしたように思う。ただの自意識過剰かもしれない。

記事だけだった世界

 ホストして下さった廣島氏が受付へ降りて来て,社内見学が始まる。Googleplexの記事で読んだ,すでに知っていたことを説明されるのだが,改めてそれが事実だと感じられる。

 例えば,すべてフリーの飲食物。オフィスの空間のいたるところにミニキッチンと呼ばれる場所が存在し,冷蔵庫にはジュースからコーヒーまで,アルミラックにはお菓子からインスタント食品までぎっしりと並べられている。

 社内の人は,その中から必要なものを,カードや現金を取り出すこともなく,自然に取っていく。このことを知らなかった仲間はもちろん,記事で読んでいた僕も「記事の通りだったんだ,本当だったんだ…」と,その光景を見るたびに驚きながら社内を進んだ。

 ほかにも中庭にバレーボール・コートがあったり,プールがあったり。詳細は以下の動画(英語)がわかりやすい。

 案内の中で特に面白かったのはマッサージ・チェアである。空間の端っこのほうに二つずつ置いてあるマッサージ・チェアは,創設者の二人が秋葉原を訪れたときに感動して買って帰ったものが最初だという話だ。

 残念ながら室内は撮影禁止。以下の写真はよく紹介されているテラスである。記事でよく見た写真を自分で撮ることになるとは。

googleplex

食堂でも80/20

 Googleplexには,複数のカフェやレストランがある。これらはときどき競合関係にもなるそうだ。セルフサービスで受け取る目の前でシェフたちが料理をしていて,メニューも豊富である。“社内食堂”と言うのもはばかられる光景である。

 Googleには,仕事の時間の20%を自分がやりたい課題に割くことができ,その成果を会社へ定期的に定量化して報告する「20%プロジェクト」という制度がある。ここで働くシェフも,その周りでジュースの補充などをするスタッフも,この「20%プロジェクト」に取り組んでいるそうだ。例えば,シェフが新しい配膳の方法を提案,実践して,どれだけ作業が効率化されたかを数値で報告するといった具合である。

 エンジニアにとって魅力的な世界を目の当たりにし続けて,あっという間に時間が過ぎてしまい,早々に去る時間が訪れた。忙しい時間を割いて,最後まで土産物屋「GoogleStore Beta」で粘り続けていた僕たちを案内してくれた廣島氏たちには,本当に感謝したい。