「みどりがおか」が危ない?

takase222014-08-20

広島で大雨による大きな被害が出た。
《広島市北部で20日午前2時過ぎから、1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降り、広範囲にわたって土石流などが発生した。広島県警によると、20日午後7時半現在で36人が死亡、7人が行方不明になった。被害はさらに拡大する可能性がある。》(朝日新聞)
気候変動いわゆる温暖化が、集中豪雨の頻度を高くしているといわれる。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、地球温暖化が進むと、強い降水現象が多くの地域で増加する可能性がかなり高いと予測している。
その仕組みはこうだ。
《地球温暖化による長期的な気温の上昇にともなって、大気中の水蒸気が増えます。すると、雨をもたらす低気圧などの強さが変わらなかったとしても、水蒸気が多い分だけ割増で雨が降る傾向になり、大雨の頻度が徐々に増えていきます。》
スーパーコンピューターによる将来の気候変動予測では、《地球温暖化が進むと真夏日が増え、豪雨が増えることが計算結果から示唆されています。》
(国立環境研究所の地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室長 江守正多氏)http://www.cger.nies.go.jp/ja/

広島の被災地の航空写真からは、山際までたくさんの住宅が立ち並んでいるのが見てとれる。
被災した方にはお気の毒だが、こういう場所にそもそも宅地を造成してよかったのかという問題もあるのではないか。
大震災を取材してから、危ない土地に多くの人が住んでいる実態を知った。
『首都大地震〜揺れやすさマップ』という本が去年秋に出た。
首都直下型地震がいつ起きても不思議ではないとされるが、大地震で、どの場所が揺れが大きく被害が出そうかを詳細に予測した東京の地図である。出版される直前に、著者の目黒公郎東大教授に話を聞く機会があった。
全国で、危ない盛り土などに宅地造成が進められてきたという。行政も危機感をもち、地方自治体で盛り土マップを公開する動きも出てきた。例えば東京では;http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/takuzou/takuzou02.html

『首都大地震』にこんな指摘がある。
《専門家の間では有名な話ですが、宮城県沖地震(1978年)の仙台市、釧路沖地震(1993年)の釧路市、東北地方太平洋沖地震(2011年)の仙台市、白石市で、いずれも同じ地名の場所が、がけ崩れや地滑り、液状化現象などの甚大な地盤被害を受けました。何という地名でしょうか?
答えは「みどりがおか(表記は、仙台市が緑ヶ丘、釧路市が緑ヶ岡、白石市が緑が丘)」です。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。》
危ない土地を造成して、地勢(土地の生い立ちや特性)が残る地名から耳触りのよいイメージ地名に変えて売り出したからである。
とくに、「なんとかがおか」(希望が丘、美しが丘など)は、もともとは丘とは反対の窪地で、大規模盛り土がしてあるケースがよくあるという。
地名には、土地の歴史が刻まれていて、災害の経歴も示唆する場合がある。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20111204
造成による売り出しだけでなく、市町村合併などでの地名変更で、イメージ地名がどんどん増えている。その結果、土地の歴史が消されていくのは、被災リスクを高めることになる。

今回のニュースでは、天気の予測や警報をもっと早く出すべきだなどの提言がなされている。
それも大事だろうが、リスクの高い造成地には対策を講じるなど、地勢・土地の成り立ちを防災に生かすことがもっと強調されてよいのではないか。