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シリーズ記事目次 【オーヴェルニュ駆け足旅行 】
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その5
◆ 「ナルシス」と呼ばれる花が群生していた
フランスでは庭に植えていることも多いのでよく見かける「Narcisse(ナルシス)」が、たくさん咲いている牧場があちこちにあるので驚きました。
花がぎっしり咲いているのですが、栽培しているようには見えません。
私が野生植物を好きなのを知っている友人が車を止めるように声をかけてくれたので、二人で下りて少し中に入ってみまました。他の人たちは車から降りてこようともしない。

旅行したのは5月中旬。タンポポの花が綿毛になる時期だったので、それと一緒に生えていて見分けにくい牧場もありましたが、ナルシスの花ばかりが咲いている牧場もありました。
こんなに群生して咲いているのは、かって見たことがありませんでした。
私の庭にも少しだけナルシスの球根が植えられていますが、何年たっても株は増えないし、花が咲いても葉の間に幾つかあると言う程度です。今年は気温の具合が悪かったらしくて、庭のナルシスは1つも花を咲いてくれませんでした。
ここカンタル県にたくさん咲いていたのは、土壌が合っているからでしょうね。
◆ 香料の原料として売られるナルシス
この地域に別荘を持った友人が、野生で生えているけれど、花を摘んではいけないのだ、と言います。
「保護植物になっていて当然だものね」と答えたら、そうではなくて、土地を持っている農家の人が花を摘んで売るので、勝手に採ってはいけないのだそう。
フランスには5月1日にスズランの花を売る習慣がありますが、ナルシスを贈るというのは聞いたことがありません。
ナルシスは花の部分だけを収穫して売るのであって、花束や鉢植えで売るのではないのだそう。つまり、香料の原料として売られるのでした。
収穫の様子を言葉で説明してもらっただけでは想像できないので、動画を探してみました。
Des racines et des ailes en drone sur la récolte des narcisses.
野生のナルシスは、私たちがいたカンタル県と、その東南に隣接するロゼール県に跨るオーブラック高原の牧場にたくさん咲くとのことでした。
農家の人たちの副収入になっているそうです。
収穫は5月末から6月始め。ちょうど旅行したのがこの時期だから見れたのは幸運でした。庭のナルシスも夏になると葉はへたばってしまうので、牧場のナルシスもただの草に見える景色になってしまうのでしょうから。
収穫の仕方は、原始的なものから機械化されたものまであるそうです。
Les Secrets des Fleurs Sauvages : Les Narcisses
◆ 日本語では何と言う花?
フランスでは「narcisse」と呼びれる花です。でも、それでは「スイセン属」で曖昧なので、正式な名前で呼ぶには「Narcisse des poètes(詩人たちのナルシス)」と言います。
学名は、フランス語と同じで「Narcissus poeticus」。
日本では余り普及していない水仙のように思えました。売っている球根の名前を確認しようとしたら、ヒットしてくれなかったので。
似ているように見えたのは、こちら:
☆ 水仙:アクタエア3球入り
でも、花びらが寸詰まりで、フランスで見るナルシスとは少し違うように見える...。
学名から日本語名を探したら、こう出てきました:
ナルキッスス・ポエティクス(ヒガンバナ科スイセン属)
学名をカタカナにしただけではないですか。この名を言って花を想像できる日本人はごく少ないのでは?
ヒガンバナ科の多年草。地中海、中央ヨーロッパ原産で、日本には明治末年に渡来したのだそう。でも、日本では植物園か何かにしかないのかもしれない。
クチベニズイセン(口紅水仙)とも呼ばれていました。
副冠が赤みを帯びることから口紅を連想させて命名されたようです。
よく見ると、少しどぎついような花なのですよね。真っ赤な口紅を塗ってキスを迫ってくるみたい。しかも、香りはかなり強烈なのです。庭に咲いた花を少し花瓶に入れて玄関先に置くと、ドアを開けて入ったところから匂いが漂ってきます。
オーヴェルニュの牧場に咲いているナルシスを嗅いでみたら、それほど匂いがありませんでした。こんなので香水になるのかなと思ってしまったのですが、雨も降る曇天だったので芳香が漂っていなかったのだろうと思います。
香水の方は、フランス産を「ナルシス」として売られていました。
「口紅水仙」などという名前では売れないでしょうね。そもそも、日本人にとって「スイセン」の香りが強いとは連想しないのでは?
ナルキッスス・ポエティクスは他のスイセンとは区別しないと面白みがないと思います。
◆ ナルシス、ナルシスト、ナルシシズム
フランス語で narcisse、学名で Narcissus は、ギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスに由来しています。ナルキッソスはギリシャ語で、フランス語では花と全く同じに Narcisseです。
ナルキッソスのお話は、こんな具合です。
ナルキッソスは、その美しさにさまざまな相手から言い寄られたものの、高慢にはねつけて恨みを買った。ついには、そんな彼への呪いを聞き入れた復讐の女神ネメシスにより、水鏡に映った自分自身に恋してしまった。
水面の中の像は、ナルキッソスの想いに決して応えることはなく、彼はそのまま憔悴して死ぬ。水面の像に接吻をしようとして溺死したという説もある。
カラヴァッジオによって描かれたナルキッソス / Narcisse, par Le Caravage (v. 1595)
ナルキッソスの体は水辺でうつむきがちに咲くスイセンに変わった。だからこそスイセンは水辺であたかも自分の姿を覗き込むかのように咲くとも言われていました。
確かに、ナルシスの花は真っすぐ上を向いていたり、下に垂れていたりはしていないのです。
Narcisse des poètes, Narcissus poeticus
フロイトの心理学で使われたナルシシズムはナルキッソスに由来しています。
でも、「ナルシスト 水仙」で画像検索したら、フランス人がイメージするナルシスの花は殆ど出て来ませんでした。
日本人がスイセンと聞いたら、日本水仙を思い浮かべるかな?...
どぎつい口紅の赤がなかったら、ナルシストのイメージにならないと思うけど。
◆ 花を見ると神話の意味が伝わってくる
神話には花に姿を変えたというのが多いですね。
恋の妙薬を飲んで恋に落ちたトリスタンとイズー(トリスタンとイゾルデ)のお話しでは、愛し合う二人は死んでからスイカズラに変わったのですが、この花を初めてフランスで見た時にはびっくりしました。
良い香りがする花なのは想像していた通り。でも、可憐な花を思い描いていたのに、スイカズラは絡み合って、ものすごく生命力がある花だったのです。
これが二人の姿だとしたら、死んでも愛し合うのだという恐ろしいほどの執念を感じてしまいます。
スイカズラについては、以前にブログで書いていました:

★ 香りを放つスイカズラ 2009/06/01
◆ ブルゴーニュの森に咲く黄色い水仙もナルシスだった
フランス中部のブルゴーニュ地方では、野生のナルシスを見たことがないのですが、たくさん森に咲くスイセンがあります。

私は「黄水仙」と訳してブログでも何度も書いていますが、フランスでの呼び名は jonquille(ジョンキーユ)。
ナルシストの語源にもなっている「ナルシス」も「ジョンキーユ」も「スイセン」としてしまったらつまらないではないですか? フランス語では全く違う言葉で呼ぶ、と書こうと思ったら...
この黄水仙を「ジョンキーユ」と呼ぶのは、一般の人たちが行っている間違いなのだそう。
ジョンキーユの学名はNarcissus pseudonarcissus。Narcisse jaune(黄色いナルシス)あるいは Narcisse trompette(らっぱナルシス)とも呼ぶこともあるようです。
でも、友人に「ナルシス」という言葉を使ったら、白い口紅水仙を思い浮かべられると思うけれどな...。
本当の「jonquille(ジョンキーユ)は、学名がNarcissus jonquillaの水仙なのだそう。
こういう花だそうです。お花屋さんでよく売っているような気がします。
こちらの黄水仙の野生種は、フランス南西部、ポルトガル、スペインでよく見られるそうです。フランス中部にはないので、その土地にある黄水仙を地元の人たちは「ジョンキーユ」と呼ぶのかもしれない。
それにしても、フランスでは野生植物の群生をよく見かけます。特に、農薬は撒かれない牧草地帯や森の中などでは自然の花畑。
ところが、日本では、山に登ると高山植物が咲き乱れているのをテレビで見ますが、平野にいる限り、ほとんど見かけません。なぜなのかな? 小学生の頃には夏休みに植物採集の標本を作っていたので、あの頃に比べると日本の自然はかなり破壊されたということだろうか?...
続き:
★ オーヴェルニャとブーニャ
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★ 目次: 森や野原に咲く春を告げる花々
★ 目次: フランスの田園に咲く野生のラン
★ 総目次: テーマおよび連続記事ピックアップ
外部リンク:
☆ Les cueillettes de plantes à parfum en France
☆ Le narcisse l’or blanc du plateau de l’Aubrac
☆ Wikipédia: Narcisse des poètes
☆ Wikipédia: スイセン属 » Narcissus
☆ ガーデニングの図鑑: スイセンの育て方
☆ Wikipedia: ナルキッソス » Narcisse (mythologie)
☆ Wikipedia: ナルシシズム » Narcissisme
☆ Narcisse ou jonquille ?
☆ Narcisse ou Jonquille sauvage
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マロングラッセも古くはマロニエの実が使われたという。
フランスでは街路樹になっていたりするマロニエを見かけます。その樹木の命名が栗のマロンに由来する、というのはあり得そうな気がする。
でも、その実(マロン)でマロングラッセを作っていたというのは、信じがたい思いがします。フランスでは、有毒だから食べてはいけないとしか言われませんので!
◆ ニワトリが先か、卵が先か、の続き
マロングラッセについて以下の記事を書いたのですが、今回はその続きです。
いつマロングラッセが誕生したたかには諸説あるのですが、16世紀であろうというのが、フランスやイタリアでは定説になっているようでした。発祥地としては、フランスのリヨンと、イタリアのクーネオが登場しているのですが、現在の国境線が引かれた18世紀までは同じ文化圏だった地域と言えると思います。
栗を砂糖菓子にするレシピは、1667年に刊行された料理の本で初めて紹介されました。マロングラッセが大衆化したのは、工場生産に成功したフランスの企業が創設された1882年。
マロニエの木がヨーロッパに入ったのが、これらの時期の後であれば、マロングラッセをマロニエの実で作っていたというのは辻褄が合わないことになります。ヨーロッパでは、中世にはすでに栗は大切な食料となっていましたので。
以下に拾った情報を書きますが、私がたどり着いた結論から先に言っておきます。
マロングラッセが生まれたのは16世紀とすると、セイヨウトチノキで作っていたという話しあり得ない。17世紀以降だとすると、あり得ないこともない...。
とは言え、栗で作っても非常に手間がかかるマロングラッセを、毒性があり、皮をはがすのも容易ではないマロンで作っていたとは信じられないという先入観で私は染まっています...。
![]() Paradoxe de l'œuf et de la poule |
マロニエの木は、いつヨーロッパに入ったのか?
マロニエが入る前から、イタリアやフランスでは栗をマロンと呼んでいたのは確かだと思います。
ここまでに書いたことも含めて、まとめてみます。
栗の木: シャテニエ(châtaignier) | |
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ヨーロッパグリの学名はCastanea sativa。sativaは「栽培された」の意味。 栗の実は、フランスでも太古から食されていた。ギリシャのテッサリアは、古代から質の良い栗として定評があった。 栗の品質を良くするためにフランスで栽培が始まったのは中世。シャルルマーニュ(カール大帝)は、ワインを飲みながら焼き栗を食べていた、という伝説がある。 秋に収穫された栗はクリスマスまでも保存できない。そのまま調理しても美味しくない栗や、長期保存するための栗は、乾燥して粉にして小麦粉の代わりに使われることが多かった。また、栗は家畜の餌にもされたりしていた。 小麦が育たない地域では栗が小麦の代用となっており、栗の木は穀物の代わりになることから、シャテニエは「パンの木」、栗は「貧者のパン」などと呼ばれていた。家畜の餌になることから、「ソーセージの木」、「肉の木」とも呼ばれていた。 16世紀、大きくて風味もある上質の栗は「marron(マロン)」という"カテゴリー"で販売された。イタリアからも上質の栗はフランスに入ってきた。 17世紀には、リヨンの市場で扱われる栗が「marron de Lyon(リヨンのマロン)」として高い評価を受けていることが定着していた。 ※ 栗と同様に食糧難から人間を救う食料となるジャガイモは、フランスには1770年に入った。 19世紀ではフランスには栗林が非常に多かったが、20世紀になってからの農村から都市への人口移動、栗の木の病気によって栽培される栗の生産量はかなり減少した。 2006年、アルデッシュ県で生産される栗が「アルデッシュのシャテーニュ(Châtaigne d'Ardèche)」として、高品質保証のAOC(原産地統制呼称)を獲得した。 | |
セイヨウトチノキ: マロニエ(marronnier) | |
![]() | 実はマロン(marron)と呼ばれ、食用にはならない。 栗でなくトチノキであることを強調するためには、樹木はマロニエ・ダンド(marronnier d'Inde)、果実はマロン・ダンド(marron d'Inde)と呼ぶ。「ダンド」は「インドの」の意味だが、東インド会社から入ったものや、珍しいものには「インドの」と付けることがよくあった。 マロニエの学名Aesculus hippocastanum。Aesculusは、食用になる殻斗果のコナラの意味。ippocastanumの方は、馬 (hippos) とシャテーニュ(châtaigne ギリシャ語で(kastanon)に関係している。馬が名前に入っているのは、馬には少量なら与えても大丈夫なことから。 ※ 英語圏ではマロニエをhorse-chestnut、hippocastanumと、学名のままで呼ばれているようだ。イタリアでの名称はippocastanoないしcastagno d'Indiaで、マロニエはイタリア全土にある(特に多いのは中央北部)。 現在ではマロニエの葉や果実からは薬も作られている。マロンを馬に与えるにしても、薬にするにしても、毒性を抜く作業が必要である。 原産地は小アジア。氷河期の終わりころには生育していたとみられる。1557年に、バルカン半島にあったものがコンスタンチノープルに入ったと言われる。 1576年(あるいは1591年)、ウィーンにマロニエが入ったのがヨーロッパで初めてであると一般的に言われる。しかし最近では、考古学者と古生物学者が、もっとずっと前からヨーロッパに存在していたことを発見している。 フランスに入ったのは1615年というのが定説(ルイ13世の時代)。植えられたのは、パリのスービーズ館(Hôtel de Soubise)だと言われる。 マロニエが初めに植えられたのはパリの庭園であり、ヴェルサイユ宮殿でも庭園を飾ったことから、マロニエは緑陰樹として適していることからだったと思われる。 1718年、marronnier d'Inde(マロニエ・ダンド)という名称が文献に登場する。 18世紀になると、慢性気管支炎などを治療するために、マロニエの果実から薬を作るようになった。 |
フランスでは、いつから栗を「マロン」と呼んでいたのか?
ラ・フォンテーヌの『寓話』に登場する「火中の栗を拾う」という表現日本語で「火中の栗を拾う」という名訳ができている「tirer les marrons du feu」という表現がフランスにあります。
ラ・フォンテーヌ『寓話(Fables de La Fontaine)』の第9巻 第17話「猿と猫(Le Singe et le Chat)」に出ているために有名になった表現です。
ギュスターヴ・ドレの挿絵
この寓話が発表されたのは1678年。
でも、「tirer les marrons du feu(火中の栗を拾う)」はラ・フォンテーヌが考え出した表現ではなくて、その前から使われていた表現なのだそうです。
古い文献に現れた栗としてのマロンを挙げてみます。
- 1526年: Claude Grugetの『Les Diverses leçons de Pierre Messie』で、「fruit du marronnier(マロニエの果実)」として(P. 888)。
- 1640年: Antoine Oudinの『Curiosités françoises(フランス奇言集)』で、「tirer les Marrons du feu avec la patte du chat(猫の脚で火中のマロンを取り出す」として。
- 1655年: モリエールの喜劇『L'Étourdi ou les Contretemps(粗忽者)』で、「tirer les marrons de la patte du chat(猫の脚でマロンを取り出す)」として(第5幕)。
少なくとも、17世紀にはマロンと呼ぶ栗が身近な存在だったと言えると思います。
マロングラッセのレシピが初めて文献に登場したのも17世紀「
このレシピでも、栗はマロン(marron)という単語を使っています。
17世紀には、「Marron de Lyon(リヨンのマロン)」という栗が美味しいという定評が出来上がっていたそうですので、それを使ったレシピなのかもしれません。
リヨンのマロンといっても、リヨン市で栗が取れたわけではなくて、大都市なので周辺から栗が集まったためです。フランスの栗の産地であるアルデッシュ県にも近いし、イタリアにも遠くはない。少なくとも、パリよりはずっと栗が集まりやすい場所でした。
マロングラッセは、16世紀にリヨンで誕生したという説は、それをもとにしていると思われます。
16世紀には、大きくて美味しい栗を「マロン」と呼んでいたそうなのですが、イタリアから入った栗も、アルデッシュ産のものも、販売する価値があるような美しい栗はマロンと呼んでいたのではないでしょうか。
栗は小麦の代わりになるために「貧者のパン」とも呼ばれていたし、家畜の飼料にもされていたのですから、ただ栗の実であることを示す「シャテーニュ」ではなくて、「マロン」と呼びたかった気持ちは理解できる気がします。
マロンの語原はイタリア語marron(マロン)には色々な意味があるので複雑です。
フランス語の「マロン(marron)」という単語は、ラテン語のmaroに語源があると言われています。リヨン周辺地域で昔にあった言葉では、そのラテン語を受けて「marr-」という接頭語が「小石」の意味で使われていたのだそう。
フランスの植物情報では、マロニエ(marronnier)という名前が付いたのは、この実が小石(マロン)のように丸かったからという説明もありましたが、仏仏辞典には記載がなかったので、真偽のほどは分かりませんでした。
ともかく、イタリア語から入ったマロン(古いフランス語ではmaronと綴った)という単語は、10世紀のフランスでは使われていたようです。
マロニエの実(マロン)でマロングラッセを作っていたというのは信じられないので、おかしいと言いたくて背景を調べて書いてしまいました。
同じように疑問を持たれた方が記事を書かれています。こちらの方がスッキリしていて良いですね:
☆ マロングラッセはかつて本当にセイヨウトチノキ(マロニエ)の実が使用されていたのか
そこに書かれている情報によると、飢饉のときにマロニエの実を食べていたという記載があるそうなのですが、私が調べたフランス語情報では1つも出てきませんでした。マロンを食べるためのあく抜きをする方法も全くなし。
フランスは昔から食料には恵まれていたので、マロンまで食べなくても切り抜けられたのだろうと思いますけれど...。
飢饉も乗り越えられるジャガイモを普及させるために、フランス王家はかなり苦労していました(ジャガイモの花で書いています) 。日本のドイツ文学者とおしゃべりをしたとき、ドイツでは南米からジャガイモが入ったときには人々が簡単に飛びついていたと言われたので違いを感じて興味深かったのでした。
マロニエの実を食べていたはずはない、と少し違った角度からも立証してみたいと思って私も書いたわけなのですが、日本の百科事典に書かれていたことは本当なのだろうか? と調べる必要もなかった、と思っているのが正直な気持ちです...。
以下のことは分からなかったのですが、保留にしておきます:
栗の「マロン」は、植物学の定義ではイガの中に実が1つだけ大きく成長したものを指すのだそうですが、その定義がいつ出来たのかは分かりませんでした。
16世紀に「マロン」と呼んでフランスで販売されていた栗が、イガの中に実が1つだけの栗を指していたのかどうかの情報は見つけることができませんでした。植物学的定義がこの時代にはできていなかったとしたら、市場では栽培して大きな実になって美味しい栗を「マロン」と呼んでいた可能性は大きいと思います。
まだマロンには不思議が残っているので、もう少し(!)続けます。
続き:
★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!
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★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ
外部リンク:
【研究機関の情報、辞典】
☆ Cairn: Classer et nommer les fruits du châtaignier ou la construction d'un lien à la nature
☆ CNRTL: Définition de MARRON | Etymologie de MARRON
☆ Bibliothèque municipale de Lyon: Marrons et châtaignes
☆ Larousse: Définitions marron
☆ Littré: marron (définition, citations, étymologie)
☆ Tela Botanica: Le chataîgnier l'arbre à pain, providence de nos ancêtres
【その他のソース】
☆ Doctissimo: Marronier d'Inde (Aesculus hippocastanum)
☆ Introduction du marronnier en France
☆ Le Rendez-vous des Arts Culinaires: Histoire de la châtaigne
☆ Grand Paris: Caractéristiques du marronnier d'Inde
☆ La Châtaigne un peu de botanique
☆ L'atelier des Chefs: Tirer les marrons du feu… (avec la patte du chat)
☆ ルネサンスのセレブたち: 庶民の腹を満たした栗の話 イタリア情報
【火中の栗を拾う】
☆ 北鎌フランス語講座 - ことわざ編 成句 tirer les marrons du feu
☆ 故事ことわざ辞典: 火中の栗を拾う
☆ Wikipedia: The Monkey and the Cat
☆ Fable Jean de La Fontaine le singe et le chat
☆ 能楽さんぽ 火中の栗を拾う
【焼き売り屋(Marchand de marrons)】
☆ France pittoresque: Marchand de marrons d'autrefois
☆ Google Livres: Le Castoiement ou Instruction du perè à son fils
☆ Wikisource: Les rues de Paris-Les Vieilles Rues (Le Vieux Paris)
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シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい! 】
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その2
マロニエの木がよく目につくのは、パリです。どうしてパリにはあれほどマロニエの並木があるのかと気になっていたのですが、19世紀後半に意図的に植えたのだそう。
春になると、他の木々に先駆けて葉をだしていきます。それに対して、プラタナスの並木は枯れてしまっているのかと思ってしまうほど遅い。
マロニエは、きれいな花も咲かせます。

パリに住む友人は、マロニエ並木のおかげで春先に花粉症で苦しむ人が出るのだと言っていましたけれど。
マロニエ(marronnier)は、「インドの」というのを付けて「marronnier d'Inde」とも言われます。この木がフランスに入った当時はエキゾチックなものに「インドの」という名前がよく付けられたそうです。フランスの園芸店に行くと、「日本の」と付けられた植物が非常に多いのが目に付いていました。
1790年に、イギリス人の地質学者がマロニエの原産地はギリシャのマケドニアとブルガリアだと特定したそうです。なお、フランスにマロニエが入ったのは1615年だった、というのが定説になっています。
◆ マロニエの実「マロン」は食べることができない
マロニエの学名はAesculus hippocastanumで、日本ではセイヨウトチノキと呼ばれます。
マロニエの実は「マロン(marron)」と呼びます。

実を取り出せば栗に見えるのですが、毬(いが)が違います。
マロンと呼ばれる実ではありますが、これでマロングラッセ(Marron glacé)を作るわけではありません。マロングラッセは、栗の実を砂糖漬けにしたお菓子ですので。
マロニエの実は、食べることができないのです。
日本のトチノキの実は食用になりますが、これは学名がAesculus turbinata。同じトチノキ属とはいっても、フランスのマロニエとは品種が異なるのです。
日本では栃の実を食べるのだから、マロニエの実もあく抜きをすれば食べられるのではないか、とフランス人に言ったら、絶対に誰も食べないと断言されました。マロニエの実は不味いだけではなくて、多少の毒性もあるようなのです。
◆ マロニエの根っこ
ひところ、マロニエの木の写真をたくさん撮っていた頃がありました。カメラを向けるのは根元の部分。

なぜマロニエの足元が気になったかと言えば、サルトルの『嘔吐(La Nausée)』で重要な役割を果たしていたからです。推理小説のように読み進んでいると、突如としてマロニエの根っこが登場しました。
この小説を読んだ頃は、実際のマロニエは見たことがありませんでした。それで、マロニエの根っこは吐き気を催すほど気持ち悪いものなのかと知りたかったわけです。
フランスでマロニエの前を通ると根っこの部分を眺めていたわけですが、別に普通の樹木と比べて変わっているようには思えませんでした。
サルトルは、蟹が大嫌いだったので、マロニエの根っこはそれを連想させるから嘔吐を催したのだという解説があったので、根が薄気味悪いほど這いまわっている木を私は探したのでした。
根っこが露出している木があると、これか~!♪ と喜んだりしたのですが、そういうのはめったにはありませんでした。

このくらいでは蟹を連想したりはしないですよね?
書きながら画像検索したら、下の写真がWikipediaに入っていたので驚きました。
Arbre remarquable par le marcottage de ses branches.
ベルギーのRouveroy村にあるマロニエで、日本でいえば天然記念物のような指定も受けているマロニエです。
枝が地面におりて、そこから根を張ってしまっているのです。サルトルがこんな木を見たのかもしれないけれど、ただパリにはマロニエがたくさんあるので登場させただけではないかな...。
『嘔吐』にあった問題の箇所を読み直してみました。
根は「深くつき刺さっていた」というだけの表現だったのですね。しかも「根(racine)」は単数形。蟹に見えなくても良いのではないですか?! いい加減な記憶を持って無駄なことをしていた私...。
◆ 「マロン」には2通りある
マロニエ(marronnier)と呼ばれる木の実は「マロン(marron)」で、人間の食用にはなりません。
昔のフランスではマロニエの実の毒性が非常に強いと思われていたようです。でも、馬には少量なら与えても大丈夫らしく、マロニエの学名にあるhippocastanumは「馬の栗」という意味があるラテン語なのだそう。英語圏ではそういう呼び方もよくするようですが、フランスでもあるというchâtaignier des chevauxという呼び名を私は聞いたことがありません。
食べる栗はシャテニエ(châtaignier)という栗の木の実。この栗の木の実はシャテーニュ(châtaigne)なのですが、マロン(marron)と呼ばれます。
栗を取り出してみればそっくりに見えるのですが、この2つは、花も全く違うし、毬(いが)も違うので、取り出した実だけ見るのでなければ、2つを取り違えることはありません。
| 木の名前 (学名) | シャテニエ Châtaignier (Castanea) ブナ科 クリ属 ※ ヨーロッパグリ (Castanea_sativa) | ||
| 実の呼び名 | châtaigne / marron | marron | |
| 花 | ![]() | ||
| 実 | ![]() | ||
栗の実に独特なトーチ(たいまつ)を連想される部分を取ってしまうと、寄生虫が入ってくるので 保存時には注意する。 | ![]() | ||
Différencier Châtaignier et Marronnier
◆ 日本で定着している「マロン」の説明が不思議...
道端に転がっているマロニエの実を見たら、フランス人は「マロンだ」と言います。栗の木の実を見たら、例外なく「シャテーニュ」。栗の実が落ちているのを見て「マロンだ」と言ったら、「違う、シャテーニュだ」と直してきます。
普通に「マロン」と言えばマロニエの実、つまり食べられない実のことなのです。それなのに、食べる栗に、綴りも同じ「マロン」という言葉を使うのは不自然ではないですか?
マロングラッセという名のお菓子があるから、栗を「マロン」と呼ぶこともあるのかな程度に私は思って、気にしないでいました。
ところが、下にリンクする記事に入ったコメントを読んで、再び栗の実をマロンと呼ぶこともある理由を知りたくなって調べました:
★ フランス人が栗を嫌う理由 2012/11/06
「ひとつのイガに、ひとつの栗が入っているものがマロンだ」と教えてくださったのです。
そのコメントをいただいたのは1年近く前でした。そのときに見たWikipediaの「マロングラッセ」の記事は現在の記述とは同じではなかったかもしれませんが、今でもこう記載されています:
- フランス語でマロン(Marron)とは、イガの中に一つだけ入っている大きくて丸い栗のことである。
マロニエの実のマロンはそうですけれど、実が1つしか入っていない栗というのが存在するのでしょうか?
イガの中に1つしか入っていなかったら、イガはマロニエの実のように小さくなる。あるいは、普通の大きさの栗のイガの中に1つしか入っていなかったら、巨大な栗でなければいけないはず。
八百屋さんでマロンとして売っている栗は普通のより大粒ですけれど、そんなに特別に巨大なわけではありません。

この写真しか持っていなかったので入れましたが、これは普通のマロン。AOC/AOP(原産地呼称)を持っている栗は、高くても仕方ないなとは思うほど実がふっくらしていますけれど、これの2倍あるというほどではありません。
Wikipediaの説明を初めて読んだとき、イガに1つしか実が入っていない栗が存在しているのかも知れないけれど、そういうのがたくさんあるとは信じがたい思いがしました。
マロングラッセは高価なお菓子だから良いけれど、秋から冬にかけてのフランスでは、焼き栗を「マロン・ショー(marrons chauds)」として道端の屋台で売られるのです。ごく庶民的なおやつに、そんなに特別な栗は使えるはずはないでしょう?
Strasbourg, marchand de marrons chauds devant la Cathédrale
コメントでは簡単にお返事して、後で写真なども入れて記事にしようと思ったのですが、下書きを書きかけたまま、すっかり忘れていました。栗のシーズンになったら思い出して、再び調べながら栗シリーズを書き始めたわけです。
栗なのになぜ「マロン」と呼ばれるのか、ようやく明確に理解することができました。イガに実が1つしか入っていないのがマロンだとする他に、日本では奇妙なことが定説になっているのにも気がつきました。
もしかしたら、日本では全く語られることがない大発見をしたのかもしれない♪ 私のブログくらいで定説が覆されるはずはないけれど、書いておくことにします。
今回はイントロとしてマロニエの話しから始めました。フランスでは何を栗のマロンと呼ぶかなどについて書けるまでに、あと3つくらい記事を書く必要があるかな...。
⇒ 続き:
イガの中に実が1つだけの栗がマロンって、本当なの?★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!
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★ 目次: 文学者・哲学者、映画・テレビ番組
外部リンク:
☆ Faculté de Biologie: Le Marron, fruit du marronnier
☆ ENS de Lyon: Châtaigne ou marron Le regard du botaniste
☆ Quelle est la différence entre une châtaigne et un marron ?
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フランスで蚊の問題といえば南仏の湿原地帯。蚊を退治するために外来種の蚊を天敵として導入したら、その外来種が猛威を振るってしまって、さらに問題が大きくなったという話しを聞きました。薬を使わないで環境保護しようというのは、一歩間違えると逆効果なのでしょうね...。
ブルゴーニュでは6月半ばから1カ月くらいがピークだったと思います。友人たちとも、よく蚊がたまらないと話しました。
友達の一人は、とてもよく効く虫刺されの薬を見つけたと話していました。でも、その薬は50ユーロなのだそう。たかが虫刺されの薬に6,000円も払うつもりは全くないので、薬の名前は聞きませんでした。彼女の家では本格的な家庭菜園をしているので、畑に出ることは多いから、そのくらいの投資をする気になるだろうけど。
それにしても今年の蚊は異常に多かったです。ちょっと庭の外れにあるレタスを取りに行くと、蚊の大群が群がっている感じ。刺されないのではないかと楽観しているわけですが、耳のそばでブンブンされるのは煩い。
もともと、私はフランス人よりも肌が柔らかいせいか、夏にはかなり虫刺されになります。かゆいからとひっかいていると、手足は傷だらけ。みっともないけれど、気にしない!
◆ レモンバーム
フランスでよく庭に生えている植物で、蚊よけになると言われる植物があります。citronnelle(シトロネル)。今年は雨が多かったので、ミントど同様に元気に生えていました。
雑草扱いにしているので写真を撮ったことがありませんが、こういう草です ↓
レモンバーム(メリッサ・コウスイハッカ・セイヨウヤマハッカ・ビーバーム) ハーブ苗 9vp Lemon Balm |
繁殖力が強くて、庭のあちこちに生い茂ってしまうのです。ただし、レモンの香りがあり、不愉快な植物ではありません。フランス語ではレモンは「シトロン」なので、この草を「シトロネル」と呼ぶのでしょうね。
日本でも「レモンバーム」と呼ぶようです。
フランス人たちは蚊をよける草だと言うのですが、本当に効果があるとは思えないので奇妙。食事をしているときに花瓶に活けて飾ったり、切った草をウチワのようにして蚊を追い払ったりしたことがあるのですが、蚊の方は全く平気なのです。
レモンバームの葉をもみ潰して腕に塗ったりしましたが、蚊がいなくなる感じは全くありませんでした。
◆ 魔女になる
私は、考えるより、試してみてから判断する方が好き。
レモンバームを煎じてみることにしました。除去しないとどうしようもないほど群生しているレモンバームですから、失敗しても惜しくはありません。
家にある一番大きな鍋に水を入れる。庭でひっこ抜いてきたレモンバームの根の部分を捨て、ざっと洗ってから鍋に突っ込む。

沸騰して10分くらいすると液は茶色になってきて、これ以上は煮る必要はないというところで火をとめる。
冷めたところで草は取り出し、飲み終わったミネラルウオーターのペットボトルに漏斗で入れて出来上がり。
1回目に作ったときは、1リットル入りと1.5リットル入りのボトルで3本できました。
魔女が大鍋をかき回して毒薬を作っている気分になったので、なんとなく効くのではないかという気がしてきました。
レモンバーム液を古いオシボリにたっぷりとしみ込ませて、腕や足に塗ってからレタスを取りに行ってみました。
蚊が近寄ってこない!♪ 煩かった飛び交う音も、少しすると聞こえなくなりました。
翌日、ちょっと野菜畑に行くだけだからと液を塗らないでいったら、さっそく蚊に刺されたので、液を置いている納屋に行って私の薬を塗る。すると、虫刺されで赤く腫れたところが、少したつと消えていたのでした。
さらに、ラズベリーの畑に入って、トゲで傷ついた肌に塗っても腫れが収まるように感じました。
いい加減に作っ液だけれど、もしかしたら、効果があるのではないか?...
◆ レモンバームとレモングラスは違う
インターネットで調べてみたら、虫刺されの薬に使っているらしいシトロネルは、日本語ではレモングラスという植物で、私の家の庭に生えているシトロネルとは全く違うのでした。
レモングラスもレモンの香りがあるそうですが、こういう植物らしい ↓

私の草は、フランス人はシトロネルと呼ぶけれど、正式のフランス語名はMélisse officinaleで、学名はMelissa officinalis。日本語ならレモンバーム、ないしメリッサ。
でも、レモンバームも薬効効果はあるらしい。ハーブティーにもできるそうですが、なんとなく毛嫌いして飲んでみたことはありません。
レモンバーム(メリッサ)から作ったEau de mélisse(メリッサ水)というのもあり、昔には流行っていたようです。不死身の薬?

◆ レモンバームに蚊よけ効果があることを、釣り人が証明してくれた
家にやって来た一家の若い男性が、蚊に困っている話しをしました。彼は釣りに凝っていて、川のほとりでキャンプして夜を明かすことが多いのだそうですが、夜には蚊に襲われて大変なのだそう。
この人も蚊対策に50ユーロも出す人ではない。それで、ストックしていた私の液を1本と、それに使うオシボリ1つをプレゼントしました。たっぷり塗るように、と言って。
川のほとりにいる蚊といったら、すごいでしょうから、何も効果がなかったと言われると思っていたのですが、それを持っていった日は蚊に悩まされることなく夜を過ごせた、と報告されました。
そんなに効果があるかな... と、信じられないけど。
お気に召したので、一緒にあげたレモンバームの草でせんじ薬を作ったのだそう。どのくらい煮るのか分からないので、30分煮たら、液体が真っ黒になってしまったと言っていました。そんなに長く煮る必要はないのですよ~。といって、私だってレシピを見て作ったわけではないので、どのくらいが良いのか分からないのですけど。
ともかく彼は、近いうちに一軒家に引っ越すので、レモンバームを植えると言っていました。
効果があったと言われたので気を良くして、また追加で作りました。
そのうち、庭に殺虫剤をまく小型のスプレーがあったので、それに入れて手足に撒くようにしました。オシボリに浸すより、この方が足に撒くには便利。ペットボトルは納屋に置いているので、そこで裸足になってスプレーをかける。
さらに、日差しが強い日には、バケツに水を入れてレモンバームの枝をたくさん入れて、食事をするテーブルのそばに置いてみました。水が温められるので煎じたのと同じ効果があるはず。でも、肌につけるほどには効果はないみたい。つまり、遠くまでは効果を及ぼさないのではないかな。
もう一人、近所の友達仲間では、レモンバームで薬を作ったという女性がいて、「私も魔女になっちゃったわよ」と報告していた。彼女の家でも、レモンバームはどうしようもないほど生えているそうなのです。
こんなのを毎日肌に付けていたら、皮膚がおかしくなってしまうかもしれないと思ったのですが、大丈夫そう。
ただし、服につくとシミになります! 使っているオシボリは、みごとに薄茶色に染まりました。
皮膚も染まるのでしょうけれど、入浴すれば消えてしまうのではないかな。
いづれにしても、私は色素不足コンプレックスなので、日焼けは嬉しいくらいなので気にしていませんでした。子どもの頃は、海水浴に連れていってもらったくらいでは日焼けしないのがみっともなくて、午後3時に外に出てしばらく散歩するという苦労をしていたのです。当時は茶髪なんて流行っていなかったので、母親から髪の毛が黒くなるように海苔をたくさん食べろと強制されました。海苔を食べたら髪の毛が黒くなるなんて信じられなかったけれど...。
さすがに、8月になると蚊はほとんど姿を消していました。
たくさん液体を作ったので残ってしまった...。
レモンバームを利用することに関しては、フランス情報ではほとんど出てこなかったので、思いつきでやってみただけでした。でも、日本では注目されている植物なのかもしれない。これを書きながら見つけた情報へのリンクを入れておきます。雑草扱いしている草なのですが、何か他の使い方もありそう...。
外部リンク:
☆ メリッサ(レモンバーム)の効能
☆ 人気のハーブティー レモンバーム(メリッサ)の効能がすごい!
☆ レモンバーム/メリッサ
☆ フランス 3 メリッサ
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サントーバン村(Saint-Albain)を通ったので、教会の前で車を止めました。

Église de Saint-Albain
13世紀に建てられた教会で、歴史的建造物に指定されています。
この手の小さな教会ではよくあることなのですが、やはり入り口には鍵がかけられていて中に入ることができませんでした。仕方がないので、教会の周りをぐるりと歩いて建物の外を眺める。
すると、壁にリースのように生えている草が目にとまりました。
◆ この植物は、何という名前?
全く珍しくはない植物なのですが、石壁に張り付いているのが面白いと思っています。

見るからに雑草なのですが、小さな花はよく見ると美しいと思う。スミレかランの花を思わせるではないですか?

何という名前の植物なのだろう? この際なので調べてみることにしました。
「壁に張り付いた野生の花」をフランス語のキーワードにして画像検索したら、すぐに見つかりました。
フランス語ではCymbalaire des murs。学名はCymbalaria muralis。
mur(壁)というのが名前に入っているので検索に引っかかったのでしょうね。
和名はツタバウンラン。ゴマノハグサ科ツタバウンラン属だそうです。
ヨーロッパ原産の植物で、日本にも帰化していますが、「侵入生物」なんて言葉を使われていました! 別に害を与えるような草ではないと思うのですけど...。
ブログ内リンク:
★ 目次: 宗教建築物に関する記事
★ 目次: 森や野原に咲く春を告げる花々
★ 目次: フランスの田園に咲く野生のラン
外部リンク:
☆ L’Art Roman Bourguignon: Saint-Albain
☆ Wikipédia: Église de Saint-Albain
☆ Carte du patrimoine Roman en Bourgogne du sud
☆ 国立環境研究所: 侵入生物DB ツタバウンラン
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テレビでは、大雨による床上浸水の被害状況を報道しています。消防隊がポンプで水を吸い出す作業をするのですが、地下水の水位があがってしまって水を捨てる場所がないので排水作業を中止した地域もあったとか。
私がいるところは、どう間違っても床上浸水などにはならない場所なので幸いです。家の中に泥水が入ったのを掃除するなんて、したくない...。
早春の森や野原に咲く花々を見るのが大好きなのですが、それをしたのは4月初旬が最後。雨ばかり降っているので出かける気にならないのです。たまに晴れたときに「明日は森に行こう」と思うと、その翌日には雨が降って中止。こんな年って、今までに経験したことはなかった...。
それでも、少しは旅行した時に見た花々があるのでメモしておきます。
◆ 黄水仙

Jonquilleとして親しまれている花です。
黄色の濃淡が繊細で、花屋さんで売っているラッパスイセンより遥かに(!)美しいと思います。背の高さは20~40センチくらいなので派手さはないかも知れませんけれど。

Wikipediaのフランス語ページで「Narcissus pseudonarcissus」に入っていた画像です。これが学名のようなのですが、日本情報では全く違う花が入っています。ヨーロッパで自生する植物なのでしょうね。
これはたくさん咲いている花なので珍しくはありません。荒らされてしまうのを懸念する村では、「摘むのは一人1束にしてください」などと書いているのを見たことがありますが、自生する地域では花畑が広がっていて、道路にまで張り出してきてしまっているほど咲いています。
フランス人が森で花を摘むといったら、この黄色い水仙とスズラン。私も毎年摘みに行くのですが、今年は咲きだすのが遅くて、その後は雨ばかり降っていたので、1度もスズラン摘みに出かけませんでした。
◆ 森のヒヤシンス(イングリッシュ・ブルーベル)と野生のラン
今年の春に出会って一番嬉しかった花は、この青い花です。
フランスでは「Jacinthe des bois(森のヒヤシンス)」あるいは「Jacinthe sauvage(野生ヒヤシンス)」と呼ぶ植物。日本では英語名に従って「イングリッシュ・ブルーベル」と呼ばれています。学名はHyacinthoides non-scripta。
私の近所では土壌が合わないらしくて見かけないのですが、ブルゴーニュもモルヴァン地方では群生してえいたのでした。道路沿いに、幾らでも咲いていました。
こんな可憐な野草があるのかと驚いたときのことはブログに書いていました:
★ パリ近郊の森で見つけた「森のヒヤシンス(ブルーベル)」 2009/05/04
普通は、この青い花だけで地面がおおわれるのですが、道路沿いにランの花と一緒に咲いている場所がありした。色どりがあると美しい。
ランの方は、orchis mâle (学名: Orchis mascula)だろうと思います。これはよく見かける品種ですが、ピンクの色が鮮やか。
◆ 春に咲くクロッカス
標高1,000mくらいの山の上にある山小屋風のホテルに泊まったときのこと。天体観測所もある場所なので見晴らしの良い風景が広がっていることを期待して行ったのですが、下界が全く見えないので自分が高地にいるとは全く感じられない。3月末というのに根雪が残っていたので、高い場所にあるのだろうなと想像する程度。
でも、やたらに生温かい空気が漂っていて奇妙な気候なのでした。翌日のニュースで知ったのですが、この日はサハラ砂漠から熱風が吹いていたとのこと。
まだ冬景色しかなかったのですが、庭を散歩したらクロッカスが咲いていました。お花など植えて美しくしている感じのホテルではないので、自然に生えたクロッカスだろうと思います。
白いのと、むらさき色のと、その中間のような花が咲いていました。

これは、Crocus vernusと呼ぶクロッカスではないかと思います。開花時期は2月から5月となっています。
フランスでは、秋に野生のクロッカスのような花をよく見かけます。牧場に「Rosé des prés(ハラタケ)」と呼ぶキノコが生える時期、キノコに交じって咲いているのです。
秋に咲くのは「Colchique d'automne(イヌサフラン)」で、クロッカスではないのですよね。
こういう花です ↓
◆ フキノトウに見えた花
車を走らせていて、「わぁ~、フキノトウがたくさんある!」と叫びました。
駐車スペースがあったので車を止めて観察。
去年の春先、私は長野県でフキノトウ摘みをしたので見分けられるはず。でも、なんだか違うのですよね...。
摘んで匂いを嗅いでみると、フキノトウの香りどころか、何にも匂わない。やはり違うのだろうと結論しました。
以前にもフキノトウではないかと思う植物に出会ってブログに書いていたので、少し調べて書き直しました:
★ フランスで山菜を探す 【2. これはフキでしょうか?】 2006/07/05
◆ サクラソウ
花屋さんで売っているサクラソウに似た花が自生しているのは見ていたのですが、やたらに立派なので写真を撮りました。
フランス語名: Primevère élevée、coucou des bois
学名: Primula eliator
日本語名: セイタカセイヨウサクラソウ(?)
「森のククー」という愛称がついていました。ククー(coucou)と呼ばれる雑草は、余りにもありふれているので写真を撮ったこともなかったかもしれない。
Coucou(学名: Primula veris)とは、下の花で、全く違います。

この2つの品種は、どちらも花と葉を食べられるのだそう。
◆ ありふれた花だけれど
よく見かける花なのですが、名前を調べたことがないので写真を撮っておきました。でも焦点が全くあっていなかった...。
◆ 見たことがなかった動物
車に乗せてもらっているときには、何か珍しい植物が道端に生えていないかと眺めているのですが、こんな動物が3頭いるのが見えました。
鹿ではないというのは私にも分かる。白い部分に特徴があるので見分けがつく動物なのですが、何なのかを見つけ出すことはできませんでした。
森が広がる地域なので野生動物かとも思うのですが、もしかしたら飼育されているのかもしれない。
数日前からナイチンゲールだと見極めた鳥の声が今夜も聞こえます。昼間にも、それらしき鳴き声が聞こえるのですが、他の鳥の声と混じってしまっているので判別できません。ナイチンゲールだと分かるのは夜。鳥は時計を持っているわけではないので、夜の何時から鳴き始めるかは不定期。午後11時か、11時半からだ、と受け取りました。
本当に賑やかなさえずりです。ノンストップで鳴いています。いつまで鳴き続けているのか徹夜しては確かめていませんが、明け方に起きたときも鳴いていました。
近所の人に話したら、聞いていないと言われました。昔にはナイチンゲールがたくさんいたのかもしれませんが、今のフランスではとても珍しいのです。日本の田舎でウグイスの鳴き声を聞くのに比べたら、比較にならないほどの希少価値があります。
フランスにいるのはRossignol philomèle(学名: Luscinia megarhynchos)という品種のようです。rossignol(ロシニョル)の中に何種類かいるわけですが、philomèleというのは「音楽好き」のこと。上手に歌わないのがいるというわけでもないのでしょうけど。
Philomèleは、ギリシャ神話に登場するフィロメラでもあります。
Le concert du rossignol philomèle
渡り鳥で、9月にはアフリカに旅発つとのこと。夜に鳴いているのはナイチンゲールのオスで、伴侶を見つけたら鳴かなくなるのだと教えられました。まだお相手を見つけていないわけですか...。さえずりが聞こえなくなったら寂しいけど、彼のために喜んであげようと覚悟しておかないといけない...。
いま、ナイチンゲールの鳴き声をよく聞こうと思って庭に出てみたら、空には星がたくさん見えました。明日は青空が広がると嬉しいな...。週末には友人たちとワイン買い付けの小旅行をする予定なので、お天気が好転して欲しい...。
追記:
コメントで教えていただきました。
フランスにいるナイチンゲールRossignol philomèle(学名: Luscinia megarhynchos)の和名はサヨナキドリ(小夜啼鳥)でした。
セレナードが「小夜曲」なので、そんな風なロマンチックな鳴き方をすると思ってしまいそうな名前...。初めてナイチンゲールの声を聞いたときは、かなり近くにいたらしくて、熟睡していたのに目を覚ましてしまったくらいケタタマシイ鳴き声でした:
★ お城に到着 2008/05/22
ナイチンゲールの鳴き方を音楽にすることに挑戦した作曲家は何人もいますが、私が最もこれだと思うのは、モーツァルトの歌劇『魔笛』にある「夜の女王のアリア」で、声量のあるソプラノが歌い上げてくれる時です。夜中に目を覚ましたときに聞こえた鳥がナイチンゲールではないかと思ったのも、この曲のように聞こえたからだったと思います。
このアリアを、私が好きなナタリー・デセイ(Natalie Dessay)が歌っている動画を入れます。
Natalie dessay - la flute enchantée, l'air de la reine de la nuit
ブログ内リンク:
★ 目次: 森や野原に咲く春を告げる花々
★ 目次: フランスの田園に咲く野生のラン
★ オペラ・コミック『連隊の娘』をテレビで見る 2014/10/21
★ 総目次: テーマおよび連続記事ピックアップ
外部リンク:
☆ YouTube: APPRENDRE LES CHANTS D'OISEAUX
☆ YouTube: RECONNAITRE LES CHANTS D'OISEAUX
☆ ヨーロッパ鳥類図譜
☆ 第三章 ナイチンゲール(夜鳴きうぐいす)
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Domaine de Villarceauxと呼ばれる地所の中にありました。
もうフランスの主だった観光スポットは行ってしまったので、最近は余り知られていない場所に行くようにしています。ここも、大したことはないかもしれないと思って行ったのですが、なかなか良かったのでした。

イル・ド・フランス県が所有していまず。個人が住んでいる城とは違って生活を感じられないのは面白味に欠けますが、広々とした空間が良く、見学の価値がある城でした。
広大なドメーヌの中には、上に写真を入れた立派な城、ゴルフ場になっている土地にある城、農場部分だった土地にエコロジーのコンセプトで作った宿泊施設などがあり、あとは農地や森となっていました。
私はゴルフをしないので興味はないですが、ここにあるゴルフ場は城がクラブハウスになっているし、自然環境も良いので、フランスでゴルフをするのも悪くないかな、と思いながら入り口のところから眺めました。YouTubeに入っていたゴルフ場を見せる動画「Golf de Villarceaux - drone aerial video」を見ると、普通のゴルフ場かな...。
行ったのは去年の秋だったので忘れてしまっていましたが、ここに滞在して大変な思いをしたのでした。到着した日は城が閉まっていたので、庭園にそって歩きながら城を眺めることにしました。ぐるっと回って宿に戻るつもりだったのですが、延々と敷地の周りを歩くことになってしまったのです。
書きながら調べてみたら、このドメーヌは800ヘクタールもあるのだそう。何キロくらい歩いたのだろう?...
翌日は植木市も開かれて、城の内部などもガイド付きで見学できました。
このときの旅行のことはブログにメモしていなかったので、案内している動画を入れておきます。
Domaine de Villarceaux
Chaussy : domaine de Villarceaux, voyage à travers le temps
ブログ内リンク:
★ 目次: 城について書いた記事ピックアップ
外部リンク:
☆ オフィシャルサイト: Domaine de Villarceaux
☆ Wikipédia: Domaine de Villarceaux
☆ Jardins et Châteaux autour de Paris - Villarceaux
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夕立のような大雨が降って欲しいのに、時々シトシトと降る程度。大雨が1度くらい降って欲しいな...。テレビでは、各地に発生した山や野原の火事のニュースを見せています。
乾燥しきっているせいか、そういう時期なのか、庭の花も少なくなっています。

ラベンダーの花に蜜蜂や蝶が集まっているので写真を撮ったのですが、昆虫は見えない写真になってしまった...。
後ろに写っている植物が、乾燥にも負けず、とても元気です。
◆ ピラミッドアジサイ

泊まったお家にあった三角形に花が咲くアジサイが欲しい、と思っていたら売っていたので買ったのでした。
アジサイの仲間の植物は、特別な土を入れなければならないし、雨が多い地方でないと育たない。それで、この土地には合わないと思っていたのです。でも、春から元気に育ってきて、こんなに大きくなってくれました。
植物の名前を忘れた...。
旅行していたときに買ったので、宿のテラスに置いて撮影していました。

付いている札をアップにした写真もありました。植物を買ったときには、そういう写真を撮っておくと、私のように記憶力が弱い人間には便利ですね。ハーブなどは面白いので色々買ったのですが、後になると雑草なのかハーブなのか分からなくなって、使うこともないのがたくさんあります。
札には、こう書いてありました:
Hydrangea paniculata 'Silver dolar'
「Hydrangea paniculata」なんて、ここに書いても、またすぐに忘れそうな名前。ハイドランジア・パニキュラータと片仮名にしても覚えないだろうと思う。
普通のアジサイは、フランスではhortensiaと呼ぶと覚えているのですが、そう呼んではいけないのかな?... Wikipediaの記述が正しいとしたら、Hydrangea(アジサイ属)のことをフランスの園芸店では「hortensia」と呼んでいるのだそう。
paniculataは、円錐形の花を指す。
日本の名前はノリウツギでした。アジサイ科アジサイ属ですが、やはり「アジサイ」とは呼ばないのですね。
ノリウツギとは「糊空木」。日本では、和紙を作るときの糊(のり)として、この植物の幹の樹皮の内皮に含まれる粘液を使っていたから名づけられたのだそう。
「空木」というのにも引っかかりました。枝の髄が空になっているから付いている名前なのだそう。本当にそうなのかなと実験したくなりましたが、私のノリウツギはまだ若いので切らないでおきます。これを売っていた人は、花が咲き終わっても切ってはいけないと言っていたし。
日本の園芸店では「ピラミッドアジサイ」とも呼んでいました。
としたら、フランスでも「hortensia pyramidal」などと呼んでいるのではないかと思ったのですが、これで検索したら誰も使っていませんでした。
野原に咲くランの中にピラミッドに例えた名前のがあり、たくさん咲いているのでpyramidalという単語は覚えているのに残念。
Orchis pyramidal 【Anacamptis pyramidalis】
★ 野生の蘭(らん)を見に行くイベントに参加 2015/05/26
◆ 私のノリウツギは白いだけ?
この植物が気に入ったお家には色々な種類のノリウツギが植えられていて、満開の時期でした。白と淡いピンクのが最も気に入ったので、それと同じのを欲しいと思っていたのですが、違う種類だったのかもしれません。
でも、売っていた人は、咲いてからしばらくするとピンク色に変わるのだと言っていたのです。でも、私のノリウツギはずっと白いまま...。
札に書いてあったのは「Silver dolar」。美しくない名前が品種なのでした。
どういう特徴がある品種なのかを調べてみました。
☆ ノリウツギ ないし ピラミッドアジサイを楽天市場で検索
「シルバーダラー」も出てきました。
誰もこの品種がピンク色に変わるとは言っていない!
フランスの園芸ショップに入っている写真を見ると、少しピンクがかった花の写真も入っていました:
☆ Hydrangea paniculata Silver Dollar
でも、花の盛りが過ぎたときか、咲き始めのときに少しピンク色になるだけのような...。
白いノリウツギを買ったあとは日本に帰ってしまったので、去年の花がどうなったかは観察していなかった。
↓ こういう風に、淡いピンク色になるのを私は期待していたのです...。
品種名は、ちゃんと覚えないといけないですね...。
この花が欲しいと思って園芸店に買いに行くのだったら品種を調べていったかもしれない。でも、見学した城で植木市が開かれていて、そこに欲しいと思っていた植物があったので買ってしまったのでした。
この旅行のときのことはブログに書いていませんでした。その城の名前も忘れていたので、次の日記に控えておきます:
★ 植木市が開かれていたヴィラルソーの城
追記 2015年8月末:
ピンク色になると言われた買ったノリウツギの苗ですが、8月下旬になったら色づいてきました。

淡いピンク色。白かった花が緑色になってきて、そこでピンク色に色づいてきたのでコントラストには乏しいのですが、植木屋さんが言っていたように色が変わったので喜んでおります。
外部リンク:
☆ ノリウツギ
☆ 樹木図鑑(ウツギ)
☆ Wikipedia: Inflorescence ⇒ 花序
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少し前のブログで、タチアオイについて書きました。★ 「聖ヤコブの杖」と呼ばれる植物 2015/07/20
タチアオイは、フランスでは普通はrose trémièreと呼ばれているのですが、巡礼者が持つ杖に例えて「聖ヤコブの杖(bâton de Saint Jacques)」という名もあるのでした。
この記事へのコメントで、タチアオイは日本では「コケコッコ花」と呼んで子どもたちの遊びになっていることを教えてくださるものが入ってきました(こちらのコメント)。
タチアオイがニワトリに変身するの?!
私は全く知らなかった遊びなので、少し調べてみました。
◆ タチアオイの花弁をニワトリのトサカにする遊び
花弁をニワトリに例えて遊ぶというもののようです。
タチアオイについて調べた時には全く気に留めていなかったのですが、Wikipediaの「タチアオイ」でも、この花はコケコッコ花(コケコッコー花)と呼ばれると書いてありました。
北海道で広く行われていた遊びのようですが、信州や奥会津でも子どもたちがしていたようです。
北海道放送局のアナウンサー日記:☆ 2004年 7月29日「コケコッコー花」(渡辺 陽子)
さっそくタチアオイの花を1つとって実験したのですが、言われたようにネバネバはしていない!
フランスのは違う品種なのか、乾燥しているから粘着性はないのだろうと思いました。
でも、コツがあるのでした。
花弁の付け根の部分をシールのようにはがすと、そこに粘着性があるので肌に張り付く。赤いタチアオイならニワトリのトサカに見える。
こちらのブログで、その作り方を写真で見せてくださっています:
☆ コケコッコ花
不快感があるベタベタではなくて、吸い付くように張り付くのでした。子どもたちが遊んだのが理解できます。
それにしても、花弁を薄く剥がして遊ぶなどとは手のこんだ遊びですね。誰が思いついたのだろう?... 調べてみても、起源は出てきませんでした。
タチアオイの花弁や根は薬用として利用されるようです。花弁を処理しているときに偶然に花弁が肌について、それが遊びになった?... この遊びは北海道で盛んなようなので、ひよっとしららタチアオイは北海道で生産されていた?
... などというのは、全く根拠のない私の憶測です!
◆ フランスには、別のコケコッコ花が存在していた
フランスのサイトで検索しても、コケコッコ花のような遊びの画像で出てきませんでした。フランスの子どもたちはタチアオイの花で遊べるのを発見していないのではないかな。
小さな子に会ったときにやって見せたら、尊敬されるかも知れない! あるいは、変なことをする大人だと馬鹿にされるかもしれないけれど。
雄鶏の鳴き声の「コケコッコー」は、フランスではcocoricoなので、「これはココリコ花だ」と言えば良いわけです。
でも、フランスの野原や畑に咲いていて親しみがあるヒナゲシは「コクリコ(coquelicot)」と呼ばれるので紛らわしい。
私が下手に発音すれば、「コケコッコ花」のつもりでも、デモンストレーションを見た子どもからは、私が「ヒナゲシ」と言っていると思われるでしょうから、余計にバカみたいになってしまう...。
フランスの畑や野原に咲いているコクリコです。
「コケコッコー」をフランス語で表すと「cocorico(ココリコ)」ですが、昔は「coquerico(コクリコ)」と表記していたようです。今でも「コクリコ」を使う人もいるのではないかと思います。
フランスでは余り擬声音は使わないので、どちらでも気にしないのではないかな...。
日本人は何にでも擬声音を作っていますね。音が聞こえないのは「シ~ン」なんていうのまである! 擬声音だらけの日本の漫画をフランス語に訳す人は、よほどの能力を持った人なのだろうと思います。
雄鶏の鳴き声を「coquerico(コクリコ)」とすると、ヒナゲシの「coquelicot(コクリコ)」に益々似てきてしまいます。日本語ではRとLを区別しないので、片仮名で書くと全く同じ。
確かに、ヒナゲシの花はトサカの鮮やかな赤い色を思い起こさせますね。
ヒナゲシは、フランスの三色旗の赤に例えられる花です。
フランスの三色旗を表すのに使われる野原の3つの植物について書いた日記:
★ 美しいフランスの6月 2006/06/08
雄鶏はフランスのシンボルとしても使われます。雄鶏は夜明けを告げるので、自分たちが一番優れていると思っているフランス人が自らを例えるのにふさわしいと思っているかららしい。
雄鶏を想起させるヒナゲシを三色旗の赤にするもの好かれるわけなのでしょうね。もっとも、フランスの野原でよく見る赤い花といったら、ヒナゲシくらいしかないようにも思いますが。
ともかく、「コケコッコ花」という名前は、フランスではヒナゲシに先に取られてしまっていたのだ!…
ひょっとしたら、フランスの子どもたちはヒナゲシで雄鶏になる遊びをするのだろうか? 「コクリコ」を繰り返して歌う童謡「Gentil coquelicot」もあるくらいですから。
検索してみたら、ヒナゲシの花でする子どもの遊びが出てきました。お人形さんにしてしまいますか。今の年配の人たちが子どものときには、よくした遊びだそうです。
◆ トサカではなくて、美人の死に例える
ヒナゲシは「グビジンソウ(虞美人草)」とも呼ばれていました。
虞美人(秦末の楚王項羽の寵姫)が自決したときの血が、この花になったという中国の伝説からなのだそうです。
☆ Wikipedia: グビジンソウの名について
ヒナゲシは切り取るとすぐにしぼんでしまうので、はかない花だと感じるので、虞美人草は私のイメージの中では一致します。ヒナゲシも、茎を火であぶると花瓶に活けておける、というフランス人もいますけれど。
国が違うと、花も色々に例えるのですね。
フランスで恋人同士の死に例えた花といえば、『トリスタンとイズー』の物語で最後に登場するスイカズラを思い浮かべます:
★ 香りを放つスイカズラ 2009/06/01
スイカズラは蔓を絡ませながら伸びまくっていくので、これが悲恋のシンボルかと思うと怖くなるくらいたくましい植物!
ブログ内リンク:
★「聖母マリアのハート」の不思議 2015/05/07
★ 首に傷があるような姿の鳥たち 2015/05/09
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化
★ フランスの国花は何の花? 2013/05/09
★ 目次: 色について書いた記事
外部リンク:
☆ Gentil Coquelicot mesdames...
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◆ Rose trémière / タチアオイ / ホリホック

「Rose trémière」という名前の植物。大きく育てば、背丈は3メートルにもなります。春に芽を出してこれだけ大きく育つのですから丈夫なのでしょうね。水もやらないで放置しているような場所で元気に育っている感じがします。
花はいっぺんには開花しないので、長い期間咲いています。私は、花を摘んで水盤に浮かせて活け花代わりにしたりもしています。

放っておいても、自然に出てきて、毎年花を咲かせます。かなり大きな種ができるのです。
日本では見たことがなかった植物だと思うので、私には新鮮な花。

学名はAlcea rosea。ハイビスカスなどが入っているアオイ科なのだそう。
日本語名はタチアオイとなっていました。「立葵」と言われると、とたんに日本的な植物に思えてきてしまう...。
昔の日本でも絵画に描かれていました。
タチアオイを主題に描いた『草花図屏風』(渡辺始興、18世紀前半)
フランスにあるタチアオイの原産地は、中国か、十字軍が遠征してトルコと戦ったレバントと見られているようです。
英語名はhollyhockなのだそう。hollyという文字を見て、クリスマスソングの「ホォオ~リ~、ナ~イト」を思い出したのですが、聖夜を意味するのは「holy night」で、この植物名は「holly」だった。hollyとは何かと辞書を引いたら、「チクチクさす」から来ているのだそう。
セイヨウヒイラギはhollyでした。ハリウッド(Hollywood)って、そういう木が生えていた土地だったのでしょうか?...
タチアオイの葉っぱはチクチクしていたかなと思って、庭に出て触ってみました。指を指すようなチクチクさは全くない...。
日本ではタチアオイを見たことがなかったというのは、いつもの私の非常識なのだろうと思って確認しました。フランスほどには身近にある植物ではないように感じたのですが、どうなのでしょう?
☆ 楽天市場で、タチアオイ / ホリホック / ホーリーホックで検索
◆ 巡礼者の杖
「ホーリー」と聞いてキリスト教に関係した命名だと早とちりしたのには理由があります。
Saint Jacques(聖ヤコブ)の杖に例えますか。
旧約聖書に登場するヤコブ(Jacob)ではなくて、ゼベダイの子のヤコブ(Jacques de Zébédée)の方です。
フランス語でホタテ貝は「Coquille Saint-Jacques(聖ヤコブ貝)」なので、否応なしに「サンジャック」というのは覚えてしまう聖人の名前。
聖ヤコブの遺骸がある巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで杖をついて歩き、帆立貝を身につけているのが巡礼者のシンボル。
タチアオイの太い茎は杖のように太くて長いし、花も帆立貝を連想させる形と言えなくもない。「聖ヤコブの杖」という呼び名があると聞いたときには、すぐに納得しました。

でも、そう呼ばれるというのは初めて聞いたのです。友だちが言ったことを疑うわけではありませんが、本当にタチアオイは「聖ヤコブの杖」と呼ばれるのかを調べてみました。
事実のようです:
☆ Rose trém. Simple variée (Bâton de St Jacques)
植物の名前をキリスト教に結びつけているケースはフランスに多々あるのですが、この聖ヤコブの杖は、それほどまでには一般化されていない感じはしました。でも、園芸サイトでは、その名を入れて販売している傾向が見えます。
◆ 他にも「ヤコブの杖」と呼ばれる植物があった
「Bâton de Saint Jacques(聖ヤコブの杖)」という名前が付けられている植物には、「Campanule raiponce」もありました:
☆Bâton de saint Jacques
ホタルブクロ属だそうですが、私はキキョウと呼びたい可憐な野生植物。
これも私が好きな植物。野原でとったものを庭に植えていたら繁殖して、今年の春先の庭は、これが咲き乱れる野原のようになってしまっていました。
でも、杖にするほど茎は太くないので、例えとしては相応しくないと思うけれどな...。でも、花が終わって枯れると棒のようになるので、そう呼べるか...。昨日は涼しかったので、棒になって醜くなっていたのをせっせと切る作業をしておりました。
◆ 旧約聖書に登場するヤコブの杖を示す命名もある
それで「Bâton de Saint Jacques」を「聖ヤコブの杖」と訳したのですが、「ヤコブの杖」というのも存在していました。
これは天体の高度角を測る道具で、フランス語では「Bâton de Jacob」。
こちらはJacobとなっているので、ゼベダイの子の聖ヤコブ(Saint Jacques)とは全く関係ないはず。
この道具の名前となっているヤコブとは、旧約聖書に登場するヤコブだという説もあるけれど、そうではないという説もあって、はっきりしていないようです。
旧約聖書に出てくるヤコブと杖に関係があるのかと疑問に思ったのですが、あるのですね:
☆ キリスト教にまつわる豆知識:ヤコブの杖
- ヤコブの神への語りかけの言葉の中に、「かつてわたしは、一本の杖を頼りにこのヨルダン川を渡りました」(創世記32:11)とある。
さらに検索していたら、「Bâton de Jacob」と呼ばれている植物がありました:☆ Bâton de Jacob, Asphodéline jaune
ユリ科のAsphodeline(アスフォデル)。
黄色い花が咲く品種のAsphodeline luteaを「Bâton de Jacob(ヤコブの杖)」と呼ぶようです。
私は白い花のしか見たことがありません。

確かに杖のように伸びた茎花を咲かせています。フランス語の名前でJacobなので、こちらは旧約聖書に登場するヤコブのこと? あるいは、道具のヤコブの杖(クロス・スタッフ)から来ているの?... それにしても、なぜ黄色いのでないといけないのだろう...。
他にも、Polemoniumを「Bâton de Jacob(ヤコブの杖)」と読んでいるサイトもありました。例えば、こちら:
☆ Polemonium (Bâton de Jacob)
ミヤマハナシノブ(学名 Polemonium caeruleum)のこと?
この学名をWikipediaのフランス語ページで出すとPolémoine bleue。
Wikipediaの記述では、「Échelle de Jacob(ヤコブの梯子)」の俗名があると書いてあります。花を見ると5枚の花弁。キリストが十字架にかけられた負った傷は5つで、キリスト教では大きな意味を持っているとコメントで教えていただいたのを思い出して、この花も関連づけたかったかなとは思う。
でも、杖なのか、梯子なのか。どっちなの?!
リンクされていた英語ページでは、俗名はJacob's-ladderと書いてあるので、やはり「ヤコブの梯子」なのでしょうね。
☆ 聖書と歴史の学習館: ヤコブが見た夢/天使の梯子
タチアオイや、上に書いたホタルブクロも、「Bâton de Saint Jacques」ではなくて、「Bâton de Jacob」と呼んでいる人たちもいました。
キリスト教文化圏でも二人を混同しているの?...巡礼者が誰でも持つ杖よりは、創世記に出てくるヤコブを支えた杖に例えた方が拡張が高くなるような気もする...。
でも、太い茎があるタチアオイをサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路(Pèlerinage de Saint-Jacques-de-Compostelle)を歩く巡礼者の杖に例えるのが最もふさわしい、と私は思うのですけど...。
「Saint Jacques(聖ヤコブ、帆立貝)」と「bâton(杖、棒)」をキーワードにして検索していたら、日本の焼き鳥のようにアレンジした料理のレシピが出てきてしまいました。帆立貝を串に刺して焼いた料理。さすがに、巡礼者の杖には例えてはいませんでした!
巡礼の杖に関する情報を検索していたら、「bourdon」という単語が出てきました。
この単語は蜂の種類に使われていて(この蜂です)、それに例えた野生のラン(Ophrys bourdon)があるので覚えていたのですが、辞書をひいてみたら「巡礼杖(Bourdon de pèlerin)」の意味もあるのでした。他にも色々な意味がある単語だったのですが、省略。
巡礼杖の意味を持つbourdonは、ラテン語の「burdo(フランス語でmulet。雄ロバと雌馬の交雑)」からできた言葉。つまり、巡礼者を助けてくれるイメージですね。英語では単純に「Pilgrim's staff」と呼ぶようでした。
フランスのことを理解しようと思ったら、聖書に関することを知っていなければいけない、とは分かっているのですけれど、奥が深すぎてお手上げ状態です...。
追記:
コメントで、タチアオイの花をニワトリのトサカにして遊ぶというのが日本にあると教えていただいたので、記事にしました。この遊びのためにタチアオイをコケコッコ花と呼ぶのだそうですが、フランスでは鶏冠に例える花は別にあったりして、面白い発見でした♪
★ コケコッコ花? 花と鶏冠の関係 2015/07/27
ブログ内リンク:
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化
★ 目次: サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路に関する日記
外部リンク:
☆ Centre de Recherche sur la Canne et le Bâton: Le bâton ou bourdon des pélerins
☆ Que représente le bourdon (bâton) du pèlerin ?
☆ L'arbalestrille ou bâton de Jacob
☆ Saint Jacques et le pèlerin dans le langage populaire
☆ キリスト教における杖
☆ キリスト教文化センター/同志社大学: 一本の杖
☆ Asphodelus albusアスフォデルス・アルブス(ユリ科)
☆ Wikipédia: Attributs des saints
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保護植物なので、採って花瓶に活けるわけにはいかないのですが。
自然保護の活動を行っている施設(行政から補助金が出るから運営していけるというNPO組織が運営)が、一般の人たちが参加できる野生のランの花を見に行くビジットを企画していると聞いて、参加することにしました。
お知らせには、ウオーキングシューズとカメラを用意してくださいとありました。
私は登山靴で参加。フランスで見学の企画があると、参加するのは高齢者が多いので、そんなに厳しい道を歩くはずはない。それで、登山靴ではオーバーだったかなと思ったのですが、それで良かったです。かなり急な勾配も歩きましたので。
集合場所から個々の車で見学が始まるところまで移動し、そこで車を降りてガイドさんに従って歩きました。保護する組織が管理しているので、ランがたくさんある地方のよう。歩き出したところから既に、たくさん咲いていました。
皆で歩き出すときには、ガイドの人が道路と草むらの間にもランが生えていることが多いので、踏まないように注意してくださいと言っていました。本当に、注意していないと踏んでしまいそうなところにもランが生えているのでした。
◆ 野生の蘭がある土地に咲く花
野生のランが咲くのは石灰質の土壌。そういうところには、こういう花が咲いているので、これを見たら近くに野生のランがある、という目印になるのだそう。

Polygala vulgaris / Polygale commun 【Polygala vulgaris】
この花は見慣れた花でした。道端の勾配になったようなところに群生しているのです。植物の名前をガイドさんは言ってはいなかったのですが、把握している植物だろうと思うので名前を入れました。
地面にへばりついているような小さな草なのですが、太陽の光を浴びているときは鮮やかな青い色をしています。白い部分もあって、花瓶に活けるには小さすぎるのが難点ですが、とても美しい花だと思っていました。
確かに、野生のランがあるところと、この花が咲いているところとは一致すると体験しています。
でも、混乱する情報を発見。
日本語では何という植物なのかを検索したら、こちらの情報が出てきました:
☆ ポリガラ・ブルガリス Polygala vulgaris
どこのサイトかとさかのぼると、大学の植物生態研究室。つまり専門家のサイトなので信頼できるはず。ここに入っている写真を見ると私が見た植物と同じようなのですが、スコットランドのヒースで目撃されたと書いてあるのが不思議でした。
ヒース(Heath)と呼ばれる荒地と、ランが生える石灰質の土壌とは同じなのだろうか?...
風が吹きすさぶ荒野。そして、そこには一面に、地面に這いつくばるような花が咲いている。
ツツジ科のエリカですね。
どんな風景なのかと空想しました。
北フランスのブルターニュ地方を旅行したとき、英仏海峡に臨むところに広がっていた荒野にエリカが広がっているのを見て、『嵐が丘』の舞台はこういうところだったのか、と感激しました。
つまり、我がブルゴーニュでは全く見かけない風景。
片仮名で書くと紛らわしいですが、北仏のブルターニュ地方は、ブルゴーニュ地方とは土壌が全く違う。家々には、驚くほど元気にアジサイが咲いていたのです。
ブルゴーニュ地方でアジサイやツツジのような植物を庭に植えようと思ったら、園芸店でterre de bruyèreという高いお値段の土を買って使わなければなりません。この土の名前は「bruyèreの土」という意味で、bruyèreはエリカです。つまり、エリカが育つ土ということなのだろうと思っています。
というわけで、ポリガラ・ブルガリスがヒースと呼ぶ荒地と結びつくというのは、私には不思議でならない...。でも、ブルゴーニュ地方でこの小さな青い草を見たら、そばにランがあるというのだけ覚えることにします。
この日に見た野生のランの写真を入れて整理してみます。写真の下に入れる名前はフランス語の呼び名で、【 】の中は学名です。
Wikipediaのリンクも入れたのですが、本来は日本語ページにリンクされているので便利なのに、フランスで見られる野生のランは日本にはないせいか、日本語へのリンクがありませんでした。
◆ ドライブしていても車窓からも見えるほど目立つランの花たち
この日にあるいた3キロのコースでは、20種類くらいの野生のランの花が観測できるのだそうです。でも、まだ咲いていないものもあったので、当日に私たちが見たのは14種類だったとのこと。
野生のランは好きでよく探しているので、知っている種類も多かったです。
よく見かけるのは、こちらの2種類。
世が高いので、田舎をドライブしているときにあると、ゆっくり走らなくても目立って見えるのは、こちら ↓
Orchis pourpre 【Orchis purpurea】
背の高さは30~40センチあり、花もたくさんついているので、草の中でも目だって見えます。
名前は「pourpre(赤紫色)」と味気ない。でも、大きくてみごとなので、見つけると皆さん喜んでいました。
もう1つ、遠くからでも目立つのは、こちら ↓
Orchis pyramidal 【Anacamptis pyramidalis】
命名ではピラミッドの形に例えています。
たいてい20センチくらいなのですが、色が鮮やかなので目立ちます。
群生していることが多いので珍しくないラン。普通のランと違って、これは種で増えるタイプなのだそう。なるほど...。
◆ 臭いランの花
背が「赤紫色」くらいに高いし、髭のようなものが出ているので目立つランの花があります。白っぽいので、車を走らせているときなどには見えにくいですが。
Orchis bouc 【Himantoglossum hircinum】
名前は「bouc(雄ヤギ)」。
雄ヤギの髭に例えているというよりは、同じように嫌な臭いがするからです。
山羊のチーズの産地に行って山羊の姿はよく見るのですが、雄のヤギはめったに見かけません。ミルクを出す雌たちとは隔離しているからではないでしょうか?
一度、雄ヤギに出会ったときには、その臭さにびっくりしました:
★ クイズ: ヤギが首にかけているのは何でしょう? 2006/05/10
ランの花も強い臭いがしますが、本物の雄ヤギほどではありません。臭いを嗅いでみる人も何人かいましたが、仲には「そんなに嫌な匂いではない」と言っている人たちもいました。
いずれにしても、野生のランは、みんな嬉しくなるような匂いはしません。というか、みんな臭い。天は二物を与えず?
◆ 混合種もある
野生のランは自分でも見つけられるのですが、専門家に説明してもらう価値はあるなと思ったのは、図鑑を調べても出てこない品種があると教えてもらったことでした。
園芸関係者が品種改良をしなくたって、自生植物だって交雑していくのですよね。
森に咲いていた植物と、園芸店で買った同じファミリーのを庭に植えていたら、色々な花が咲いたのでブログに書いていました:
★ 西洋オダマキは尻軽花だった 2011/05/19
毎年、色々な形や色の花が咲くようになっています。今がシーズンなので、その後どうなったかを書こうと思ったのですが、1本1本全部違うので、花を摘んで写真をとるのが面倒なので放置しています。
さて、野生のランも、こうなるというのを教えてもらいました。
まず、お父さん(?)は、こちら ↓
Homme-pendu 【Orchis anthropophora】
よく見かけるランです。かなり特殊な形の花になるので、すぐに見分けがつくようになったランです。それに、変な名前が付いているのです。
Homme-penduという名前なのです。「首つり人間」という飛んでもない名前!
まだ花は開いていませんでした。蕾を見ても、この変な命名の意味は分からないでしょう?
花が開くと、人間がぶらさがっているように見えるのです。
右の写真が開いた状態 ⇒
よく見えなかったら、画像をクリックして、拡大写真をご覧ください。
この日、たくさん生えているのを見ました。誰かが、森にはたくさん自殺者がいる、などと冗談を言っていました。
これに、もう一つ、私もよく見かけるランの花がかけ合わさったのができていたのでした。
お母さんと呼ぶことにして、もう一方の親は、こちら ↓
Orchis militaire 【Orchis militaris】
花の形は手足がある人間のように見えます。こちらは、頭の部分がヘルメットのように大きい。それで、属名は「軍人」となっています。
兵隊さんが鈴なり、というわけ。
この両親が生えている場所の中間に、交雑種のランが生えているのをガイドさんが示してくれました。
こちら ↓

Orchidée hybride 【O. Pourpre XO Homme pendu】
下の方の花は枯れかかっていますけれど、上の方に見える花は、首つり人間がピンク色になった感じです。お母さんと見間違うのはピンク色な姿で、胴体が長いのはお父さん似。
こういう交雑種は、図鑑を見ても出ていないので、「ハイブリッド」と呼ぶしかないのだそうです。そのうちに増えてきたら名前が付くのだろう、とのこと。
そうか... と納得しました。以前に、見かけるランの名前を調べたことがあったのですが、どうしても見つからないものがたくさんあったのです。
ところで、上に入れた「軍人(Orchis militaire) 」と呼ばれるランにそっくりで、少し色が違うだけのもありました。ピンクと白の部分が逆転しています。これも「軍人」と呼んでいたっけかな?...
兵隊さんと呼べば、そう見える。でも、頭でっかちのお人形とか、赤ちゃんにも見えますけどね...。
◆ 変だと思っていたラン
フランスで野生のランを探すようになってから、変なので気になっていた種類がありました。
これです ↓
Néottie nid d'oiseau 【Neottia nidus-avis】
全体が薄茶色。キノコなら自然な色ですけど...。始めのうちは、去年に咲いたランの花が冬を越して枯れているのかと思いました。
思い出してみれば、ツクシもこんな感じですけれど...。
名前は「nid d'oiseau(鳥の巣)」。
鳥の巣と言われれば、そうも見えるかな、という程度ですよね...。
これはたくさん生えていたのを見たし、覚えやすい名前なので、見分けがつくようになったと思います。
◆ 小さなランの花
この日の私が教えてもらって喜んだのは、小さなランの花でした。
よほど目をこらしていないと、草むらに隠れてしまっている。ガイドの人に教えてもらったので、たくさん見つけ出すことができました。
自然保護地区なので、観察している人たちが棒きれを立てたりして、散策をする人たちに注意を促しているところもありました。
これは見たことがあったとしても、何回も見てはいなかっただろうな、と思ったランの花です ↓
Ophrys mouche 【Ophrys insectifera】
「mouche(蝿)」という名前でした。ハエに似ていますかね?...
ハエは、この世に存在しなければ良いのに... と恨みに思う昆虫です。牧場の牛が呼んでしまうのか、フランスの田舎にはたくさんいます。庭で食事していると、ハエを手で追い払いながら食べるということも多々さるのです。
ハエなどという名前を付けられたこの花は、とても可愛いのに...。
◆ 名前をよく把握できなかった白いランの花たち
フランスに自生しているランにはどのくらいの数の種類があるのか分かりません。似ているものも多いので、名前を教えてもらっても覚えられない。
この日に見た白い色のランは紛らわしかったです。
下は、見たことがないと思ったラン ↓
? Céphalanthère à grandes fleurs 【Cephalanthera damasonium】
品種名を書いておきましたが、写真を整理しているときには名前を忘れていたので、ここに書いたのが正しい呼び名かどうかは全く自信がありません。
ランの1種であるCéphalanthèreのファミリーで、「à grandes fleurs (大きな花)」とあるので、これだろうと思いました。でも、そんなに大きな花ではなくて、せいぜい野生のスズラン程度でした。
Céphalanthèreという種類には、もう1つありました。
こちらは「à longues feuilles(長い葉)」と名前に付いてあるので、これではないかと思う ↓
? Céphalanthère à longues feuilles 【Cephalanthera longifolia】
もう1つの白い花。これは特徴があるので、時々見ている記憶があります。
? Platanthère à deux feuilles 【Platanthera bifolia】
この3つは区別が定かではないので、いつか図鑑で確認します。
◆ ハイライトは、サボ・ド・ヴェニュス
この日に参加した人たちが最大の期待を寄せていたのは、このランだろうと思います。
急な崖を降りていったところに、200mくらいのサボ・ド・ヴェニュス観察道がありました。
ガイドさんは、始めのとろこではまだ咲いていないけれど、もう少し行くとたくさん咲いているところがありますからパニックにはならないように、などと説明。たっぷり時間をとりますから、皆で順番に観察したり、写真を撮ったりしてください、とも付け加える。
Sabot de Vénus 【Cypripedium calceolus】
名前は「Sabot de Vénus(サボ・ド・ヴェニュス)」。「ビーナスの木靴」という意味です。
フランスに自生する野生のランの代表に使われることも多い、超保護植物です。アルプス地方のような高原にあるのが普通なのですが、我がブルゴーニュ地方でも少しあるのです。
膨らんでいるところ、まさに「木靴」と呼ぶのにふさわしいのですけれど...。
野生のランの中では、これが最も大きな花を咲かせる品種なのだそう。
野生のランの王者とも呼びたくなるくらい、本当に見事な花です!
まだ固い蕾のもあったし、満開のもあったしで、とても良い時期に行けました。
もう少したつと、野生植物の保護機関が株を数えて、チェックしたところには小麦粉を撒いてしまうので、今が見学に最適なときなのだ、とガイドさんが説明していました。
私はここではないサボ・ド・ヴェニュスがある場所を材木会社の社長さんに教えてもらったので、できる限り花が咲く時期に行くことにしていて、このブログでも幾つかの記事を書いていました。
私が知っている場所は、近くに小川が流れているので、ここよりもずっと大きな株になっています。でも、ここは一面、あちこちにサボ・ド・ヴェニスが生えているのは圧巻でした♪
◆ 最後のオマケのような見学は、蜂に例えられるラン
サボ・ド・ヴェニュスを見た後は、勾配のある森の中を抜けて、平地に向かいました。森の中でもランの花が咲いていましたが、日当たりが良い場所よりは少ないですね。
見学に出発した場所の近くに戻ってくると、ここまででは見れなかった小さなランの花がある場所を教えてもらいました。村の公有林で材木の伐採権を買って暖炉用の木材を切った人たちが、材木をストックできるように村が提供している場所の裏にある草むらに珍しいランが咲いていました。
私の経験からすると、かなり土壌を選ぶランなのか、繁殖はしないせいなのか、見る機会が少ないランです。
2種類のランが咲いている場所で、その見分け方を教えてもらったのですが、どっちがどっちだか覚えられませんでした...。
下に写真を入れるランは、次のいづれかです:
- Ophrys abeille 【Ophrys apifera】
- Ophrys bourdon 【Ophrys fuciflora】

何枚も写真を撮ったのですが、みんな同じに見えてしまう...。
名前の違いは、abeille(ミツバチ)か「bourdon(マルハナバチ)」。
ガイドさんの説明だと、花の上の部分が後ろに反り返っているか、前に曲がっているかの違いだと言われたのですが、どっちが、どっちだったか?...
それに、ミツバチとマルハナバチの違いも私にはよく分からないので、Wikipediaの写真を並べてみます。
| ミツバチ | セイヨウオオマルハナバチ |
花に例えるなら、どちらでも良いと思ってしまうのですけどね...。
Wikipediaの写真で比べてみます。
Ophrys abeille(ミツバチ) | Ophrys bourdon(マルハナバチ) |
画像にはWikimedia Commonsに入っている写真アルバムにリンクしました。花弁の色が濃いピンク色か、薄いピンク色かでは判断できないようです。花の下の部分にあるビロードのようなところの模様が違うように見えるのですけれど、それでも見分けられない...。
名前を憶えても何かの役に立つわけでもないので、上に入れたランがどちらだったのかを探求するのはやめます。
楽しい1日でした。私がフランスで見ている野生のランの全てが見れたわけではありませんが、たった2時間歩いて回れる範囲で、これだけ色々な種類のを見ることができたのですから大満足♪
ちなみに、この日に咲いているのを見た野生のランは14種類だったそうです。
5月になってから雨が多かったり、気温が低かったりと、森や野原に自生しているランにとっては恵まれた年ではなかったそうですが、けなげに花を咲かせていました。
参加費は一人7ユーロ。見学コースの説明パンフレットを4ユーロで販売していました。図鑑には、見学コースの地図(GPSコード入り)があって、どの地点でどの花があるかの説明。それから、その地点で見られる21種類の野生のランの説明がありました。簡素な小冊子ですが、後で写真を整理しながら、見たランはこのうちのどれかのはずだと分かるので便利でした。
この日に参加したのは25人くらい。コースを教えてもらったので、友人仲間でゆっくりと歩いてみたいと思いました。デジカメやが普及する前は、カメラを持っていない人の方が多かったのに、今では誰もが写真を撮りまくるので、こんなに大勢だと邪魔(とは言ってはいけない!)だったのです。
ガイドさんの最後の挨拶は、友達に教えるのをはばからないでくださいね、という言葉でした。サボ・ド・ヴェニュスがある地域などは内緒にしてくださいと言うのかと思っていたので意外。でも、貴重な植物だから、みんなで守らなければいけないという意識を持たせるという意図なのでしょうね。
ブログ内リンク:
★ 目次: フランスの田園に咲く野生のラン
★ 目次: 森に咲く春を告げる花々
外部リンク:
☆ Orchisauvage
☆ Orchidées en France
☆ Macrophotographie concernant les orchidées sauvages de France
☆ ORCHIDEES sauvages - sud-ouest
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ブドウ畑に咲くチューリップを見ることです。
シリーズ記事目次 【フランシュ・コンテへの小旅行(2015年4月)】
目次へ
その4
2年前に行った食品見本市に出店していたワイン農家の人が、そこのブドウ畑には野生のチューリップが咲くのだと話していたのです。ワインのボトルにも黄色いチューリップの花が描かれていました。

★ フランスに野生のチューリップが自生していた! 2013/05/13
花が咲くのはカエルを食べられる時期と重なっているようなので、行ってみたいと思っていたのです。
農薬を使わない昔には、その地方のブドウ畑にはたくさん咲いていたというチューリップ。花が咲いているところを見れるのだろうか?...
◆ ブドウ畑に咲くチューリップを探す
チューリップが咲くワイン農家が主催する「ブドウ畑のチューリップ祭り」というイベントが近づいていたので、農家に続く道にはイベントの飾りができていました。

剪定したブドウの枝に、紙で作った黄色い花がついています。
ワイン農家に近づくと、会場整備を手伝っているらしい女性がいました。車を運転していた友人が車をとめて声をかけました。
イベントには行かないということにしていたのに、イベントに参加したいから教えて欲しいというような口ぶりで話しかけています。マダムは、イベントの食事に出る料理を1つ1つ紹介してくれました。それから、生バンドも入って、テレビにも出演したことがある歌手が2人もいるのですって。
見ると、ステージもしつらえてありました。農家のお得意さんが中心になった内々のイベントなのだろうと思っていたのですが、かなり大規模にしているようです。
でも、友達も、私と同様に、そういうディスコ音楽は好きじゃないはずなのだけど...。でも、興味をひかれているみたいに返事している。イベントに参加するためには、あと2泊する必要がある。近くにある、安くてこぎれいなホテルまで紹介されていました。「ホテルにはマダム○○から紹介されたと言ってくださいね」なんて言ってる。
ようやく、チューリップが咲くブドウ畑の話しになりました。仮設トイレの先にある左に側の道を登ったところにあるブドウ畑に咲いているのだそう。
そこに向かう途中、私は不機嫌そうに「あと2泊するつもりなの?」と友達に聞きました。「ああいう風に話さないと、チューリップが咲いている畑のことが聞けないから」との返事。なるほど...。フランス人は、みんな役者だ!
出会ったマダムと話していたとき、車を止めた道端にもチューリップが咲いていると示されたので、咲いている時期に当たったと知って私は喜んでいました。ブドウ畑には、どういう風に咲いているのだろう? 期待が高まります。
◆ 黄色いチューリップが咲いていた~!
道路で車を降りて、ブドウ畑の丘陵に登りました。
わぁ、本当だ。本当にチューリップが咲いている! しかも、たくさん咲いている♪

農薬をまいていないことは一目瞭然。無農薬のブドウ畑というよりは、半ば放置されたブドウ畑に見えました。でも、黄色いチューリップがいっぱい咲いている。
美味しいワインができるブドウ畑なのかどうかは分からないけど、みごとに花畑になっているブドウ畑を見たのは初めてなので感激しました。

普通のチューリップの特徴は幅広い葉ですが、細い葉でした。花が咲いていなかったら、チューリップだとは分からないですね。野生のスイセンや、野生のスノーフレークの葉とそっくりに見えます。
近くのブドウ畑を見渡すと、チューリップなんかは全く咲いていません。咲いているブドウ畑にとどまって、写真を撮りまくりました。

花屋さんで売っている花々花は、これを品種改良したのだろうと思わせる野生の花が私は好きです。花束にしやすいように大きくしたものよりも遥かに繊細で、美しいと思う。人工的に花を植えてパッチワークのようにした風景なんて、少しも美しいとは思わない。
黄色い野生のチューリップは、想像していたより大きなものでした。背丈は20センチくらいはありましたので。情報によれば、50センチくらいにまで成長することもあるようです。

鼻を近づけて匂いを嗅いでみました。野生のスズランのように強くはありませんが、かなり心地よい香りがありました。
蕾の状態だと、花は質素でしたが、これも可愛い。

それにしても、今の時期って、どうして黄色い花が多いのだろう? まだ貴重な太陽の光を精一杯もらうため?... あるいは、まだ数が少ない昆虫を惹きつけるため?...
◆ 学名はTulipa sylvestris
チューリップが咲くブドウ畑を持っているワイン農家は、このチューリップのことを「Tulipe de vigne(ブドウ畑のチューリップ」と呼んでいました。
でも、ブドウ畑だけを好んで生えるはずはないので調べてみました。
黄色い野生のチューリップの学名はTulipa sylvestris。通称としては、Tulipe sauvage(野生のチューリップ)、Tulipe des bois(森のチューリップ)とありました。3月か4月に開花するために、Avant-Pâques(復活祭前)という呼び名もあるのだそう。
英語でもWild Tulipと呼ばれていました。
フランスに限らず、ヨーロッパでは自生しているようですが、この学名で検索しても日本にあるという情報は出てきませんでした。
この黄色いチューリップは、古代ペルシャからヨーロッパに渡ったチューリップが、1650年頃に南ヨーロッパの牧場やブドウ畑や土手などに野生化したもののようです。
フランスではかなり広い地域で見られるとのこと。ブドウ畑でもよく咲いていた地域があったのですが、1970年代に農業の方法が変わってから激減し、今では絶滅の危機にある植物として保護植物に指定されているそうです。
情報を調べてみると、フランスのあちこちで野生のチューリップを復活しようという運動の紹介が出ていました。
下は、花の生産地としても知られるナント市で野生のチューリップを復活させようというプロジェクトの報告書に入っていた地図です。地図はこのPDFの6ページ目に入っています。
色が濃いほど、野生のチューリップが多く確認された地域を示しています。私が行った地域はジュラ県(県コード番号 39)で、最も多く見られる地域の1つになっていました。
ブドウ畑のチューリップをインターネットで検索したら、アルザス地方のワイン農家のサイトも幾つかでてきたのですが、この地図でもアルザス2県は多い地域であることが示されていました。
むかし、プロヴァンス地方に少し住んでいたとき、山の中を散策していたときに、野生のチューリップではないかと思う花を見ていました。あってもおかしくない地域でしたね。でも、これほど鮮やかな黄色ではなくて、縁が赤っぽかい花で、背が低かったように記憶しています。
同じ野生種でも、地中海沿岸地方にj見られるTulipe méridionale(学名 Tulipa sylvestris subsp. australis)だったのかも知れません。

ブドウ畑で見たチューリップに似てはいますが、少し違いますね。私が南仏で見たのも、こんな風に乾燥しているような場所でした。
バラの木をブドウ畑の入り口のところに植えるという伝統はフランスにあり、今でもしているところがあります。害虫は先にバラにつくので、ブドウの木の危険信号として役立つのだそうです。
昔のブドウ畑に桃の木が植えられていた、という組み合わせもあります。
野生のチューリップは11月から冬の間に葉が伸びて、3月から4月に開花し、5月末になると葉は消えてしまうようです。とすると、ブドウが実をつけないで眠っているような状態の時期に、畑の土を守るのに適しているということになるでしょうか? 土地を肥やす効果があるのかどうかは分かりませんでした。
ともかく、今の時代だと、ここは有機農業をやっているブドウ畑だ、という目安にはなりますね。
野生のチューリップを見に行くというハイキングコースに(こちら)、ブドウ畑にチューリップが咲いている写真が入っているのですが、こういう派手なチューリップは本当に野生なのかな?...
野生だと書いてあるので、疑ってはいけないのだけれど...。
◆ 私の庭にも咲いている花では?
実は、ブドウ畑のチューリップを見に行くことにしたとき、庭にポツンと咲いている黄色い花が気になっていました。
もう満開は過ぎていますが、ブログを書きながら写真を撮ったので入れみます。

チューリップを見に行く前に、ひょっとして、これはブドウ畑に咲くというのと同じなのではないかと思っていました。としてら、こういう品種のチューリップは市販されているということ。としてら、ワイン農家では、それを植えているだけではないか、と疑ったわけです。
旅行から帰って改めて眺めてみると、同じ品種に見えます。チューリップにしては葉が細いところも同じです。
それにしても奇妙...。
庭に咲いたのは、写真をとったチューリップ1本だけなのですが、もしも園芸店で珍しいチューリップの球根を買ったとしたら、1個だけ買うはずがないのです。それで考えてみると、これはイベントで買った球根ではないかと思いました。
そのときのことを書いたブログ:
★ 子どもたちを自然に親しませるシャンティイ城のイベント 2011/11/17
子どもたちが城の広大な庭園の1画に植物を植えるというイベントで、そのときに使っていた球根をセットにしたものを売っていたので、2セット買ったのでした。
写真アルバムを開くと、球根を植える子供たちに、どんな花が咲くのかをしめしたものの写真を撮っていました。
ある、ある! 3番目に「Tulipe sauvage(野生のチューリップ)」として、球根と黄色い花の写真が入っていました。

なあんだ、気をつけていなかっただけなのだ...。
◆ 野生のチューリップだらけの空き地があった
チューリップが咲くブドウ畑は、あぜ道に少し咲いているくらいなら、農家の人が球根を植えたのだろうと思うところでした。でも、自然に咲いているように見えたので、ワインを売るためのでっちあげではないのだろうと思います。
さらに、確信できるものと偶然に出会いました。
チューリップを見た後に町を離れようとしたら道に迷ったのですが、そこに黄色い花が咲いている空地があったのです。

通りかかった車窓から見えただけなのですから、普通だったら、タンポポでも咲いているのだろうと思ったはず。でも、ひょっとしたら野生のチューリップではないかと思って、車を降りてみました。
ひゃ~、すごい。地面を埋め尽くしてしまうほど咲くものですか?! チューリップだらけなのです!

ここは昔はブドウ畑だった土地なのかもしれません。売地の看板が傾いて立っていました。
町はずれの高級住宅地という感じの界隈でした。隣のお家はお金持ちなのでしょうから。こんな貴重なチューリップが咲いている土地を買ってお庭にしたら良いのに...。

この空地が売れてしまったら、家を建てるために造成してチューリップ畑は消えてしまうのでしょうね。そうなる前に見ておいて良かった...。
外部リンク:
☆ Tulipa sylvestris, Tulipe des bois, Tulipe sauvage.
☆ Projet de réintroduction d'une espèce végétale protégée, la tulipe sauvage
☆ Wikipédia: Tulipa sylvestris
☆ La tulipe sauvage en France
☆ La Tulipe de vigne
☆ 原種系チューリップ
☆ Histoire de la tulipe
ブログ内リンク:
★ 初めて出会った野生のスノーフレーク 2014/03/17
★ 目次: 森や野原に咲く春を告げる花々
★ フランシュ・コンテ地方を旅行して、貴重なカエルを食べる 2012/03/30
★ 目次: ワインなどアルコール飲料に関するテーマ
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ビロードのような花びらが美しい。花瓶にいけようと2つ切るときに匂いを嗅いでみると、いかにもバラ! という強い香りがしました。
下の写真の右に縦に並んでいるのが、その花。
庭に残っている方も撮影。
花びらの枚数が多くて、かなり大きな花なので豪華。それにしても、強い香り...。
真っ先に思い浮かべたのは、お気に入りにしていたケーキ屋さんが作っていたバラのケーキ。この香りがついていて、ムース状のケーキの上には真っ赤なバラが1輪のっていました。
素晴らしく美味しいケーキだったのですが、2回食べただけ。というのも、このケーキ屋さんのパティシエが独立して店を持つためにいなくなったので、もう食べられなくなったのです。写真を撮っておけば良かった...。
それから、ブルガリアのお土産でいただいたローズエッセンスがこの匂いだったな、と思い出しました。
小さな木のケースに入っていました。ずいぶん昔のことなのですが、今でも作っているのですね。
| ブルガリア ダマスクローズのエッセンス ブルガリア ローズ エッセンス 木製ケース付き 棒型 |
でも、有名なブルガリアのバラは「ダマスクローズ」という品種のピンク色のバラのようです。
としたら、香りは違うはずなので、私の記憶はいい加減...。でも、濃厚なバラの香りということでは似ていると思いました。
フランスの香水の原料になる香りの強いバラには「Rose de mai」というのがあります。 香水の原料を作るフランスの会社で働いていたときに知ったバラの品種名。これもピンク色のバラでした。
ローズ・ド・メ (5月のバラ) ![]() |
もう1つ思い出す香りの強いバラは、世界遺産にも登録されている美しいプロヴァンの町の特産品だった「Rose de Provins(プロヴァンの薔薇」。これで作ったジャムの香りが素晴らしくて美味しかったのですが、プロヴァンの町で一度買っただけで、その後はであっていません。
ローズ・ド・プロヴァンもピンク色なのですね。
ローズという単語は、フランス語でもピンク色の意味もあります。やはり、バラの代表はピンク色なのでしょうか? 赤いバラは香りが強いと思うのは、私の先入観なのだろうな...。
◆ バラの名前は?
バラの品種名などは気にしたことがなかったのに、庭に咲いた赤いバラの名前を知りたくなりました。
この春にブログで、キリストの5つの傷を現すには5枚の花弁がある赤い薔薇らしい、と書いていたのです:
★ キリストの受難と薔薇の関係 2014/05/04
こんなに香りが良くて、花弁もビロード状で美しいバラには、何か素敵な名前が付いているはずではないですか?
バラの木の根元を見ると、苗に付いていた品種を書いた紙が見えました♪
土に埋もれていたので掘り出してみると...
Edith Piaf
え? でぃっと、ぴあふ?
そんなつまらない名前なの?!...
そういえば、エディット・ピアフ(Édith Piaf: 1915年~63年) のシャンソンには「La vie en rose(ばら色の人生)」というのがありましたね。
このバラがどんな風に紹介されているのか調べてみたら、日本でも同じ名前で販売されていました。
でも、ショップの説明を見ると、香りがとても強いバラなのだとは書いていない...。
でも、フランスの品種らしいと分かったので、フランス語情報を見ると、香りが非常に強いことが強調されていました。アプリコット、洋梨の皮の匂いなどと書かれています。ナント市で行われた香りのあるバラのコンクールで1等賞をとっていました(2005年)。
品種が生まれたのは2008年とのこと。その前に色々な名前の赤いバラができていたので、エディット・ピアフになったのかな?...
花びらの数は56枚。花の直径は13センチ。高さは80~90センチと書かれていました。
◆ バラのジャムが食べたくなった
園芸店で売っている植物より、野生の花の方が好きな私です。バラが好きな人はたくさんいますが、私は切り花には便利なので、何種類かのバラを植えているだけ。
でも、良い香りがするバラは良いですね。書きながら気がついたのですが、今までにバラの香りがする食べ物にであっていながら、なぜか再び口にすることができなくなっていたのでした。
エディット・ピアフと呼ばれる赤いバラは大切に育てようと思いました。
たくさん花が咲いたら、バラの花びらのジャムを作ってみたい。
自分で育てているのだから、オーガニックであることには問題なし。
花びらでジャムを作るなんて不安ですが、コツを守れば、それほど難しくはなくできそうなのです。
まずはたくさん花をつけさせなければならない!
でも、バラの育て方は友人から時々もらうアドバイスに従っているだけ。
この際、バラの育て方のお勉強でもしようかと思ったら、月別にバラの手入れ方法を書いたサイトが見つかりました:
☆ 花ひろば 初心者向けバラの育て方
でも、色々と手入れの注意があって、読むのも面倒。やはり、横着ものの私はいい加減に育ててしまいそう...。
9月は剪定の季節なのだそう。でも、まだ花は咲いているのだから、そのままにしておきたいけどな...。
ブログ内リンク:
★ 目次: 色について書いた記事
外部リンク:
☆ Rosier Edith Piaf® Pot de 2L, Meilland Richardier
☆ ブルガリアのアロマ文化「ダマスクローズ」
☆ La Rose de Provins
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その場所を教えてもらったのは、もう10年余り前。毎年見に行こうと思いながら行きそこねることがあり、気がつけば、もう何年も見ていませんでした。花が咲く時期は短いので、うまくぶつからないと探し出せないのです。今年こそ~!
今年は春の訪れが早かったので、植物も早く開花するかと思って、5月上旬に探しに行ってみました。
◆ 1回目に見に行ったときは間違えた...
車を止める場所はしっかり覚えている。そこから少し坂道を上がるのですが、どこから森の中に入っていくかがうろ覚え。
森の中は似通っていて、間違えやすいのですよね。ここではないかと思って入って行くと、蘭と思われる葉が伸びていました。
たくさん生えている。今年はすごいのではないか、と大喜び。
花はまだない。近くには、もう開花時期が終わったはずのスズランがたくさん咲いていたので、それを摘んで帰りました。
でも、これはサボ・ド・ヴェニュスの葉ではないのです。いつも間違えてしまう!
◆ iPhoneに場所を登録
よく場所を間違えるのですが、今回はiPhoneに入れている便利なアプリで場所を記録しておくことにしました。
こんなアプリです ↓
かならず帰る
GPSで現在位置が出るので、それを登録しておくというシステムです。本来は災害時に、歩いて自宅に帰るために使うコンパスになるというアプリなのですが、方向音痴の私には非常に便利。駐車場に車を止めたときに場所を登録しておいたりもしています。
災害時用なので、3G回線が使えなくても、コンパスとGPSで帰りたい方向が分かるので、森の中でも威力を発揮します。
Google Play の Android アプリでも「かならず帰る」があるようです。
でも、なんとなく見た植物はサボ・ド・ヴェニュスではなかったのではないかという疑いを持ちました。あたり一面に葉が伸びていて、あんなにたくさんはなかったはずなのです。
写真アルバムを眺めてみたら、間違えたときの記録として、私が5月に見た葉は違うのだと確認。
それでめげてしまって、再び探しに行く気がしないでいました。
6月になって、もう花は終わってしまっただろうと思う日曜日。サボ・ド・ヴェニュスがどのくらい生えているかの調査をする、というニュースが聞こえてきました。ということは、まだ咲いているということ?
思い立ったが吉日。散歩の人が多い日曜日などには行きたくなかったのですが、でかけることにしました。人が多いと言ったって、せいぜい数人に出会う程度でしょうから。
◆ 2度目に行ったら見つけた♪
前回の場所は把握していたので、そこからもう少し坂を上がったところを探すことにしました。
急にやってきた真夏のように暑い日でした。しばらく寒さが続いていたせいもあって、暑さは耐え難い。ほんの少し山道を歩いただけなのに、汗だくだく...。
ない。全く、ない...。
しばらく来ないでいるうちに、誰か悪意がある人が持ち帰ってしまってしまったのかもしれない。絶滅の危機にある植物なのです。
仕方ないので、駐車した場所の方に戻り始めました。
森の中でカメラを持った人たちがいるのが見えました。撮影しているようなので、そこにサボ・ド・ヴェニュスがあるということではないですか?!
日曜日に探しに行くというのも悪くないと思いました。他の人が見つけたのが目印になりますから。
道から森に降りていって挨拶すると、100キロくらい離れた町からやって来た人たちでした。このあたりにある、ということだけ教えてもらっていたので、この日は5時間もかけて探し出したのだそう。
やはり、花の時期は過ぎていました。
ところが、1株だけ、満開という状態のランもありました♪ 木陰なので、開花が遅れていたのでしょう。
みごと、みごと!
これが見たかったのです!
あったのは数株。以前に見たときもそのくらいの数だったので、無事に生き延びていてくれたようです。
◆ ヴィーナスに例えるか、マリア様に例えるか?
花弁の膨らんだ部分が、足をすっぽりと包む靴に見えますね。
sabot de la Vierge、soulier de Notre-Dameとも呼ばれるそうです。
いずれも聖母マリアの靴に例えた呼び名。
サボ・ド・ヴェニュスの茎の高さは60cmくらいにもなります。野生の蘭としては飛びぬけて大きくて立派なので、連想するのは愛と美の女神とか、聖母マリアとかになるのでしょうね。
動画の方が花の様子が分かりやすいので入れておきます。
Les Sabots de Vénus, l'Orchidée !
追記
コメントで、サボ・ド・ヴェニュスは日本でも絶滅の危機にあるアツモリソウ(敦盛草)に似ていると教えていただいたので、その花の画像を探してみました。
葉も花の形もよく似ていますが、かなり雰囲気が違う花に見えました。
サボ・ド・ヴェニュスの学名はCypripedium calceolusで、アツモリソウの方はCypripedium macranthos。
それでも、Wikipediaのフランス語のページの説明では、このアツモリソウを「sabot de Vénus à grandes fleurs(大きな花のサボ・ド・ヴェニュス)」とも呼ぶと書いてあったので、よく似た野生植物なのでしょうね。
サボ・ド・ヴェニュスはヨーロッパにある野生植物で、アツモリソウの方はシベリア、中国、韓国、日本、台湾などに自生するようです。
◆ 今年の天候は異常
春先にやたらに温かくて、外で食事ができてしまうほど気温があがったのですが、その後には冷え込みがきました。雨もちっとも降らない。
庭の草花を見ていても、咲きだし方がメチャメチャ。早く咲きだす花もあるし、いつもと同じのもある。雨が降らないから育ちそこなったのがあれば、いっこうに平気そうなのもある。野生のリンドウの花は、この天候が気に入ったらしくて、庭の中はリンドウの林のようになってしまいました。いつもそんな風にたくさん生える勿忘草は貧弱だったな...。
サボ・ド・ヴェニュスを見に行った日に夏の暑さになり、すぐにまた涼しくなるだろうと思ったら、あれから1週間、まだ夏日が続いています。庭の日向においた温度計は、最高の目盛の50度でストップという状態の日も何回かありました。
真夏の暑さになると、雷雨がつきもの。ブルゴーニュでも被害が出たところがあったようです。
びっくりしたのは、ブドウ畑で作業していた5人が感電したというニュース。1人は重症なのだそう。最近のブドウ畑では、新たに支柱を立てるときには、金属製の杭を立てないといけないという決まりができていました。従来のように木の杭だと、害虫が発生するから、徐々に木の杭をなくしていくということになったようです。
ブドウ畑に金属製の杭がたくさん立っていたら、感電事故がおきても当然ではないですか? 木の杭を禁止するときに、それを考えなかったのだろうか? 昔の人の方が賢いと思ってしまう...。
ブログ内リンク:
★ 野生のラン「ビーナスの木靴」を見に行く 2008/05/20
★ 野生のラン、サボ・ド・ベニュスを見に行く 2007/05/24
★ 目次: フランスの田園に咲く野生のラン
★ 目次: 森に咲く春を告げる花々
★ 目次: 今年のミレジムは? (ブルゴーニュ・ワイン)
★ 目次: ブドウ畑の作業、ワイン醸造法など
外部リンク:
☆ Wikipédia: Sabot de Vénus
☆ Fleurs des Hautes-Alpes: Sabot de Vénus
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シリーズ記事目次 【屋根裏部屋にあった彫刻の解読】
目次へ
その6
フランス語の呼び名に従ってパッションフラワーと書きましたが、トケイソウには500種類くらいあるのだそうなので。
変わった花なのでアーチ型に仕立てた鉢植えを買うことがあるのですが、ここは寒すぎるのか、間違っても実なんかはならないし、翌年まで生き延びてくれるのはごく稀にしかありません。
私が親しんでいるパッションフラワーは、こんな花です。
つまり、私が知っているのは白と青の花。
でも、前回の日記に書いたように、南米でパッションフラワーを見たスペイン人たちは、キリストの受難を象徴する花だと感激したのでした。受難のシンボルなら、鮮血を思わせる赤い花の方がぴったりするではないですか?
それで、スペイン人が見たのは赤いパッションフラワーだったのかどうかが気になりました。
◆ 変なパッションフラワーを見つけた
パッションフラワーが文献に初めて現れたのは1553年で、「granadilla(小さなザクロ)」という名で紹介されたのだそう。 それから10年余りたって出版された著書では「flos de passionis(受難の花)」という名前を使った、とのこと。
その図版がインターネットに入っているのではないかと思って画像検索をかけてみたら、目が釘づけになってしまった絵画がありました。
聖母マリアが右手に持ち、それを幼子のキリストが見ている花は、奇妙な形をしたパッションフルーツではないですか?!
上に入れた画像をクリックすると拡大しますが、花の部分を大きくした画像を入れます。
下の部分は完全にカーネーションの花ですよね? それの上に、パッションフルーツに見せるような部分が付いている...。
「Madonna and Child」という英語名の題名で出てきたのですが、16世紀のオランダの画家Joos van Cleveの1535年の作品でした。
つまり、スペイン人たちがまだパッションフルーツの花を発見していないであろう時期です。 奇妙...。噂だけは流れていて、それを想像して描いたのでしょうか?
種明かしをしているサイトがありました。
最近になって調査したところ、もともとはカーネーションの花が描かれていたのに、絵画が描かれてから百年くらいたったときにパッションフルーツの花のような部分が描き加えられた、と判断されたのだそうです。
その方が自然ですね。幼子が目を向けているのはカーネーションの部分です。普通だったら、風車の玩具のような部分に目を向けるのが自然だと思う。
なあんだ...。
でも、この絵画についての記述があったページでは、パッションフラワーを描いた古い図版が入っているので興味深かったです:
☆ Clues to van Cleve 'Mystery Artist' in Early Passiflora Art
◆ なぜカーネーションの花?
加筆してパッションフルーツの花にしてしまったJoos van Cleveの絵画に、カーネーションの花が描かれているのが気になりました。
聖母マリアと薔薇の関係を学んだばかりなのですが、どうやらカーネーションもキリスト教のシンボルになっているらしい。たくさんの絵画にカーネーションの花が描かれていました。
こちらは、レオナルド・ダ・ヴィンチの初期の作品 ↓
La Madone à l'œillet, Léonard de Vinci (1479年頃)
ここでも、幼子のキリストが、妙にカーネーションの花に興味を示しています。 キリストの将来を暗示して描かれるイコノグラフィーなのでしょうね...。
◆ カーネーションか、ナデシコか?
カーネーションと書いてきましたが、「ナデシコ」と言った方が良いのかもしれない。フランス語ではœillet。œillet には色々な種類がありますが、こちらはバラの花がroseかéglantineかという俗称の区別はなくて、œilletに何かを付けて品種を特定していました。
たとえば、日本で「カーネーション」と呼ぶ品種は、学名がDianthus caryophyllusで、フランス語ではœillet communというのが正式な名前のようです。植物に詳しい人でもない限り、ナデシコ科の花はすべて「œillet」と呼んでいるように思います。
œillet はラテン語のcarnatioに語源があり、聖母マリアによるキリストのincarnation(受肉)につながる。カーネーションという呼び名は、この単語からでしょうね。
ギリシャ語の語源のDios anthosは「神の花」の意味があり、ラテン語になるとDianthusで、この単語がナデシコの学名に使われています。
その他、ナデシコとキリストの関係を説明するものもありました。
フランス語情報では、十字架にかけられた(あるいは、十字架を背負って歩いた)キリストが流した血が赤いナデシコになった、十字架を背負って歩く我が子を見たマリアが流した涙がナデシコになった、など等の記述がありました。
それから、ナデシコが十字架で使われた釘を想起させるというもの。
種の形が釘に似ていると書いてあるものがあるのですが、ナデシコの種は釘の形をしているようには思えないのですけど...。
☆ Wikipediaに入っているナデシコの種の画像
フランスの記述では、この植物の形が釘と書かれていました。その方が似ているように感じます。真っ直ぐ伸びた先に、釘のような頭の花がついているので。 特に、カーネーションのような大きな花でないナデシコなら、釘そのものという感じがします。
| 追記: コメントをいただいて、釘に見えるのは花の部分だと結論しました。 この花は、花びらを支える部分(花床と呼ぶ部分でしょうか?)が長いので、釘のように見えます。 |
|
それから、素朴なナデシコと呼べるような花は、花弁が5枚ですね。
キリストが十字架にかかって負った傷は5つ。それで5弁の薔薇に特別な意味があると知ってから、馬鹿の1つ覚えで「5」を探しています。
◆ ナデシコとクローブに関係がある?
ところで、上に入れたレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の題名をフランス語で入れるのは悪いかなと思って、イタリア語を調べてみました。「Madonna del Garofano」だそうです。
ここで釘との関係がでています。
オーブンに入れて肉を焼くときに肉に釘を打つように刺して使う「クローブ」。
日本語でも「丁子(ちょうじ)」とも呼びますから、どうみても釘のような形。これは咲く前の花を乾燥させたものなのだそう。
この実をフランス語ではgirofleと呼ぶのですが、イタリア語ではChiodi di garofanoなのでした。
◆ シャルトルーのナデシコ
私はなぜか、母の日のシンボルにされているカーネーションの花は余り好きではありません。余り好きではない、というよりは、全然好きではない。子どもの頃に紙で作らされた美しくない花が記憶に残ってしまっているからかな?...
野に咲くナデシコの方がずっと美しいと思う。こちらがカーネーションの原種ではないでしょうか?
野生のナデシコの中で特別に美しいと思うのは、œillet des chartreuxという品種です。間違った画像を入れてしまわないように、野生植物の散策道で表札がついていた本物の写真を入れます。少しピンボケですけど...。
フランスの野原には、色々な品種のナデシコが咲いているのですが、œillet des chartreuxは際立って美しいです。なにしろ、ピンク色が日の光に輝くように鮮やか!
学名は、Dianthus carthusianorum(ディアンツス・カルツシアノルム) 。
日本ではカルトジオ会との関係は無視されているようです。学名で言われるより、「シャルトルーのナデシコ」と呼んだ方が美しい花のイメージになると思うのですけど...。
ナデシコは薬用効果もあるそうで、シャルトルーズ修道院で大量に栽培されていた品種に対して付けた呼び名だそうです。
ナデシコがキリストの受肉や受難の関連もあったら、修道院では特別好んで育てたのかもしれない。
でも、グランド・シャルトルーズ修道院で生産されている薬草酒で有名ですから、ナデシコに限らず様々な植物を育てているだろうと思います。
◆ シャルトリューズの薬草酒
修道院でも、調法はごく限られた僧侶しか知らないという秘薬(現在は2名らしい)。
こんな特殊な酒は日本には余り入っていないだろうと思ったのですが、かなり入っていました:
☆ シャルトリューズの酒を楽天市場で検索
木製のケースに小さな瓶が入っていて、いかにも万病に効く「ありがたい」お薬」に見えます。
生まれたのは1605年。
約130種の薬草、香草、花から作ったという不思議なリキュールです。
アルコール度は69度なので、そのままでは飲まず、角砂糖にたらして食べるのが一般的な方法になっています。
日本ではリキュールとして売られているようですが、本来は体力が弱った病人のための薬なのです。
日本にいる私の恩師が難病だと診断されたとき、砂糖に染ませたエリキシルの食べさせたのを思い出しました。
もしも神様が存在するなら、私みたいに自分勝手なことをして生きている人間が難病になるべきだと思いました。私の恩師は、友達仲間でも「仏様みないな人」と言う人がいるくらい献身的な人のです。
「治療法がないと言うのに、頭を切る手術なんて危険過ぎるから止めろ! 若いなら、賭けをする価値はあるだろうけど...」などと暴言をはいてしまった私。何かしなければいけないと責任を感じて色々やった中に、エリキシルがあったのでした。
そんな薬草に効果があったはずはないけれど、「体がどんどん麻痺して、すぐに歩くこともできなくなる」と病院で言われた症状には進行しなくて、あれから数年たつ今は、何事もなかったかのように元気で生活しています。
このときのことを書くとしたらブログ1本を立ち上げる必要がありますが、難病などという分野では、モルモットを必要としている外科医の言葉にのるのは危険が大きすぎると思う。現代医学で治癒できる病気は医師の指示に従うべきですが、「病は気から」というのもある、と思った経験でした。
ブログ内リンク:
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化
★ 目次: 縁起物や迷信について書いた記事 (フランスを中心に)
★ 目次: 薬として飲める酒、症状を回復する食べ物
外部リンク:
☆ Clues to van Cleve 'Mystery Artist' in Early Passiflora Art
☆ Passion flower in famous Madonna painting was added after artist died, art museum agrees
☆ L’oeillet peint : une fleur picturale 1 2 3
☆ La Vierge tenant une fleur : symbolique de la rose et de l'œillet
☆ L'œillet des chartreux
☆ カルトゥジアン・ピンク(Carthusian pink)ホソバナデシコ(細葉撫子)
☆ Une fleur à la boutonnière, "symbole d'une vie exquise"...
☆ Wikipédia: Élixir (liqueur)
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