項羽と劉邦、最初に読んだのは中学生の頃。実家が引っ越した際に当時すんでいた国の日本語図書館に勝手に寄贈されるということもあったが大人になって再購入して、結局あれから何回も何回も読み返した。
項羽と劉邦はそんなかれこれ二十年前に読んでいたが三国志を読んだのは五年?くらい前に吉川英治版を読んだのが最初でそのあと陳舜臣版や蒼天航路を読んだりした。結果から言うと、今回二年ぶりくらいに項羽と劉邦を読んだ際この三国志の地理的な知識がついてたおかげでようやくこの話の登場人物達の出身地や移動距離に納得しながら読めた。
小説の内容に話を戻すとこの話は数ある司馬遼太郎本の中でもあまり司馬遼太郎節が強くない本だと思う。時代が古すぎて話を膨らますほどの余裕が無かったのか連載してた誌面の理由なのか知らないけど、割とドライな司馬遼太郎本なので司馬遼太郎嫌いもそれなりに読めるんじゃないかな、と。
それでも司馬節っぽいのはこの話はよくある将軍の徳の器をメインに話を進めるのではなくあくまでテーマは「大軍をいかに食わせるかが漢帝国の成立に通じたのだ」としつこく言ってくるところか。人物の魅力についても言及しつつも「戦争は結局は兵站の維持なんだよ」というのはその後の坂の上の雲にも通じる気がする。やっぱりあれかな、彼の世代は太平洋戦争を通じて食べ物の恨み的なものが心の底にあるのかなー。
ともあれ、個人的には司馬遼太郎本としては尻啖らえ孫市、国盗り物語に次いでオススメしたい本なのでまだ読んだことがなかったら是非どうぞ。