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たった1杯のお酒で道徳的判断が変わるという研究結果

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 みんなでわいわいお酒を飲んで、大いに盛り上がった翌日、自分の行動や言動を思い出して恥ずかしくなる、罪悪感に襲われる、そんな経験はあるだろうか?

 ポーランドの大学では、アルコールが私たちの道徳心に与える影響をについての研究を行っており、普段なら絶対やらないようなことでも、お酒が入るとついやってしまう理由を説明している。

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 『Psychopharmacology』(2023年8月9日付)に掲載された研究によれば、たった1杯お酒を飲んだだけで、道徳心が緩み、通常なら絶対にしないようなことでも、やってしまうようになるのだそうだ。

アルコールが人間の行動に与える影響

 お酒が人間の行動に与える影響は、ずっと昔から調査の対象だった。

 お酒で失敗したという話はいくらでもあるが、そのような時、酔っ払った私たちの脳では何が起きているのだろうか?

 アルコールが自制心や判断力を鈍らせることはならよく知られているが、もっと具体的に、道徳心や善悪の判断に与える影響はほとんど調べられていなかったという。

 ポーランド、シレジア大学のマリオラ・パルゼル=チャチュラ准教授は、「多くの犯罪がアルコールの影響下で行われているにもかかわらず、酔った人が善悪をどうとらえ、何を考えるようになるのかを探った研究はほとんどありません」と語る。

 そこで彼らはアルコールが道徳的判断にどう影響するのかの研究を行った。

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お酒を飲んだ参加者にいくらもらえれば悪事をするか聞いてみた

 パルゼル=チャチュラ准教授率いる研究チームは18~52歳の健康な参加者329人を集め、「お金をいくらもらえば、悪いことをするか?」という質問をしてみた。

 例えば、まったく知らない子どもの手のひらに針を刺すといったことや、親を罵倒するといった行為は、一般的なモラルに反するにはけしからん行為だろう。

 こうした悪事をいくらお金をもらえばやるかと、お酒を飲んだ参加者に聞いてみたのだ。

 質問は、「優しさ」「公正さ」「忠誠」「権威への従順さ」「慎み」の5つのカテゴリーに分けられていた。

 例えば、子どもに針を刺す質問は優しさを測るためのものだし、親への罵りなら権威への従順さを測るためのものだ。

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お酒を飲むことで道徳心が低下する

 実験の結果、お酒が入ると優しさと慎み深さが低下し、それ以外はシラフのときと特に変わらないことがわかった。

 つまり、アルコールによって、他人を傷つける行為やはしたない行為に対する抵抗感が弱まるということだ。

 とりわけ大きく低下するのが慎みだ。お酒を飲んだ参加者たちは「裸で這い回ったり、ステージで放尿したり」と、普段なら恥ずかしくて絶対できないような行為でも、やってもいいかと考えるようになったのである。

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photo by iStock

悪いことと知りつつやっている可能性

 この研究でとりわけ興味深いのは、酔っ払いは悪いとわかってやっている可能性があることだ。

 過去の研究では、酔っ払っていようがいまいが、何が正しく何が間違っているのかという判断はまったく変わらないことがわかっている。つまりお酒が入っていても、善悪の判断は正常にできるのだ。

 ところがお酒たった1杯だけでも、悪いことと知りながら「まあいいか」という気持ちになってしまうそうだ。

 一体何がそう思わせるのか? 可能性としては、お酒によって認知や感情が変化しているとも考えられる。だが今回の研究では結論を出すことができず、今後の実験が必要であるとのことだ。

 今回の研究結果は、お酒を飲むと普段ならやらないことをやってしまいがちな理由を部分的に説明している。

 「お酒は何世紀にもわたって人類と共にあり、多くの文化で普通に飲まれています」「私たちは、このテーマについてもっと研究する必要があるのです」と、パルゼル=チャチュラ准教授は語っている。

追記:(2023/10/29)本文を一部訂正して再送します。

References:Alcohol and morality: one alcoholic drink is enough to make people declare to harm others and behave impurely | Psychopharmacology / A single alcoholic drink can shift your moral boundaries, study finds / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント、28件

コメントを書く

  1. 保健体育とか家庭科の授業で必須栄養素(食品)一覧に
    酒が無かったので、飲む必要がないと知った瞬間から
    一生のうちに味わいたいものリストから永久に外した。
    必須だったら「赤ちゃん用スピリタス 超はぐくみ」
    「歩けたお祝い用シャンディガフ」とかがドラッグストアに
    売ってるはず。学校の教科書レベルの知識なんだよね。
    受験の為だけに教科書を文字の羅列として暗記してる人はアカン。

    1. >>1
      嗜好品って言葉の意味が1ミリも理解できてないやつは、そもそもインターネットやめといた方が良いと思うよ。何せ人生においてネットやる意味なんて全くないからね。

  2. 「その人の本性が知りたければ泥酔させろ」といったのは孔子だったか。数千年前から経験で知られていたんだろうな。

  3. 「公正さ」「忠誠」「権威への従順さ」は変化あまりないのか
    それはそれで…

  4. 自制心を司る前頭葉が麻痺した状態がその人の本性
    暴力的になるかスケベになるか
    説教しだすか甘ったれになるか

    1. >>5 >>6
      それ、よく言われるけど、個人的には違和感ある。

      自分は、全く飲めない訳じゃないけど
      アルコール分換算で10ccが限度くらいの下戸で、
      気持ちよく酔っ払うという過程が全く無く、
      乾杯に付き合う程度の動悸・顔面紅潮・火照りから
      少しでもミスって限度を超えると、
      いきなり頭痛・吐き気・寒気・眠気へと進む。

      んで、普段ならマナーとして我慢している事でも
      上司の前でうつらうつら居眠りを始めるとか、壁に凭れるとか
      電車の満席で我慢できずに床にへたり込むとかしたことある。
      けど、それが本性かと言われれば、酒に限らず
      例えばインフルでぶっ倒れそうな時でもそうするだろうし、
      体調が悪い時にマナーどうこう言ってられないのは普通じゃ…?

      ちなみに、新入社員時代を経て「10cc」という限度を割り出してからは、5~7cc程度の顔面紅潮アピール段階で止めて、「酒弱いんで、これ以上飲めないですぅ~」で納得してもらうノウハウを掴んだ。
      近年は、最初から乾杯もウーロン茶等で許されるからそうしてる。

      1. >>12
        それは
        脳機能麻痺して本質的な性格が露呈する前に
        肝臓の分解能力の限界が先に来て本人自身がダウンしてしまう体質的な話じゃね?

  5. これ道徳的判断が変化してるんじゃなくて普段我慢してることを我慢しなくなるだけだろ

  6. 「酒の所為」が成立するって思っちゃうんじゃないですかね
    摂取物を正当化するのって中毒症状っぽい

  7. 酔うと自制心が弱まるので、普段は理性で抑えている欲求が出てきやすくなるんだよね

    だから「酔うと本性が出る」なんて言うけど、欲求と理性併せ持っての人間だから前者の部分だけを本性としちゃうのはちょっと違う気がするんだよなあ

    1. >>11
      「体が暑けりゃ脱ぎたい」
      「尿意があるとき放尿するのは、爽快感あって気持ちいい」
      「だるけりゃ、床に寝転んでゴロゴロしたい」
      みたいなのは人間には誰でもある本能的欲求だし、
      まだ理性で抑えることが出来ない幼児は普通にするもんな。

      ある程度の年齢の児童以上は
      やって良い場と悪い場をわきまえて理性で抑えているけど、
      その「理性」部分を弱めれば、欲求自体は
      性根の良し悪しではなくわりと本能的なものも多いと思う。

  8. 飲酒で変化してるんじゃなくて普段は理性やらで抑え込んでる倫理観や道徳心の低さがお酒によって露呈するってだけのように読めるんだけど
    根っこの善の部分、道徳的判断の基準がそもそも高い人は問題行動起こさなそう

    1. >>13
      その基準が緩くなるって話だぞ
      倫理観や道徳心の低さが露呈するなら、公正さや権威への従順さが下がらなかった事と矛盾する

      1. >>14
        そもそも元の基準が高いのか低いのかってそこから調べないと変化してるって断言できないのでは?

    2. >>13
      > 根っこの善の部分、道徳的判断の基準
      善や道徳って人間の根っこの部分かな?
      社会生活の中で後天的に身につけるもの、それこそ理性の分野だと思うけどなあ

  9. 酒を飲んだらヤベエやつは、酒を飲んでないときもたいていヤバイ。

    1. >>19
      それって、単に
      「まともな奴は、正体を失う前に自制して飲む量を控える。
      酔った場合の迷惑を考えずに飲み続けるのはヤベエやつ」
      ってだけな気がする。

      実験でその人の限度以上に飲ませてみるとか、
      実社会でも嫌がってるのをアルハラで無理やり飲ませたりして、
      アルコールの作用で半裸に脱いだり放尿したりしだしたのを
      「それ見ろ、これがコイツの本性だ!元から低い倫理観の露呈だ」
      ってのは、なんか違わない?

  10. 私は酒を飲むと恐怖心が麻痺する。具体的には高いところやガタイのいいコワモテお兄さんとかが全く怖くなくなる。
    もしこれが一般的な反応だったら、羽目を外したときのペナルティを軽く見るようになるって事なのかも。

    1. >>29
      それやって、当て逃げして、人生フイにした人いた
      昇進出来なくなった

  11. 別にこの人好きじゃないんだけど、メンタリストD○○○○が数年前にワイン飲みながら「酔っぱらっても道徳心は低下しないから羽目を外す奴は元々人間的に屑な奴」(意訳)って言ってたんだが、何を思ってしまうかは内心の自由だし、自制心が低下するなら人格が変わるとも言えるよね
    だから責めるべきは、どちらかと言うと酔っぱらいやアル中じゃなくてアルコールの発明だと思うんだけど
    アルコールが絶対悪と言うのはさすがに思考停止かも知れないが、それでも元の人間性が屑だのと切り捨ててしまうのも短慮だと思う

    1. >>32
      アルコールは、発明じゃなくて「発見」だと思う。
      そして、それは人類の誕生よりも早い。

      過熟で発酵状態の果実でも食える猿のほうが
      そうでない猿よりも、餌の獲得上 有利だったのだろう。

      1. >>35
        確かに、というかそうだったの!?という驚き
        不勉強だった・・・。

        >>34
        その通りだし否定はしない(し出来ない)けど、もし素面ならあるいは下戸なら多分思い止まったっていう事件、結構あるよね、と小学生並の愚かしい事件の報を見聞きする度に思う
        それを頭の中が小学生な奴が悪いって言うのは、要するに処罰感情や法の元に個人を切り捨ててるのと同じじゃないかっていう気がする
        酒絡みのトラブルが本人の資質に起因するのは間違いないし、多くの酒飲みが駄目だと理性的に解っていても言い訳して飲み始めるあたり、「飲む前」の資質と言えなくもないが、何れにしても
        あ、読み直すと「否定はしない」どころか反論してる・・・。コメントにしては長めの自家撞着か。他にもおかしな所があるかもしれないがもう送信します

  12. コメント反映されてるかわからないけど訂正
    アルコールの発明が悪って
    消毒に使える蒸留酒や消毒用アルコールを考えれば頭の悪い発言だったな

    全く気がつかず反省。

  13. うーん……
    お酒飲む人たくさんいるけど実際にやらかす人やらかさない人で差がある分、お酒による道徳心の低下じゃなくどうしても本人の資質の問題としか思えない
    この検証を肯定しようとしてる人のコメントも必死に見えるし本人の問題じゃなくてお酒のせいなんだ!って納得させたいように感じる

  14. 味蕾が死ぬのと脳細胞死ぬのが嫌で飲まんなぁ
    ネジが外れるのはまだしも、知能ステータス永久ダウンと味音痴がキツい
    ただでさえ加齢で衰えていくってのに加速させたらすぐガタが来ちゃうよ

  15. 記事の内容より、記事中の画像をDALL E(AI)が描いてる事にびっくり。

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