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フジツボ類がマレーシア航空370便の残された機体の場所を解き明かす可能性

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 2014年3月8日、クアラルンプールから北京へと飛び立ったマレーシア航空370便(MH370便)は、離陸から50分後の管制当局との交信を最後に消息をたった。インド洋のどこかに墜落したと考えられているが、一部の残骸を除き、機体はまだ発見されていない。

 この飛行機は今どこに眠っているのか? 南フロリダ大学をはじめとする国際チームは、それを解明する鍵を握っているのが、体が殻に覆われた固着動物、フジツボ類だという。

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 彼らによれば、エボシガイなどのフジツボ類には海水温のデータが刻まれており、ここからMH370便の残骸の漂流ルートを特定できるというのだ。事実彼らは、部分的な漂流ルートの再現に成功した。

蔓脚類の殻の層に刻まれた海水温度の記録

 フジツボ類は、固着性の甲殻類で、エボシガイ(Lepas anatifera)も広義のフジツボ類に属する。流木や漁網や船底などに付着し、海面を漂って生活している。

 今回、そんなフジツボ類からマレーシア航空370便(MH370便)を探す方法を研究しているのは、南フロリダ大学のグレゴリー・ハーバート准教授をはじめとする国際チームだ。

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 インド洋に墜落したとみられるMH370便の機体は未だ発見されていないが、アフリカ沖に浮かぶフランス領レユニオン島にはそのフラップ(飛行機の可動翼片)と思わしき残骸が漂着している。

 ハーバート准教授は、その写真の見た瞬間ひらめいた。

 フジツボ類の殻は日々成長するが、その過程で木の年輪のような層ができる。この層1つ1つの化学的な性質は、その層が作られたときの海水の温度によって決まる。

 だからフジツボ類の殻からそれが作られたときの水温を割り出せば、レユニオン島に漂着したフラップがどこから流れてきたのか辿れると考えたのだ。

 彼は海洋システムの研究者で、ここ20年ほどはカキ・巻貝・フジツボ類といった生き物の殻の化学的性質から、海水の温度を特定する方法を研究してきた。

 すでに、こうした研究成果を応用することで、巨大なダイオウイトマキボラの年齢や絶滅リスクを調べた実績がある人物だ。

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海水温の記録データを見るため、制御された環境で成長させたフジツボ類のエボシガイ / image credit:University of South Florida

部分的な漂流ルートの再現に成功

 事実、『AGU Advances』(2023年8月23日付)に掲載された研究では、フラップに付着していたフジツボ類(エボシガイ)の水温データと海洋モデルを組み合わせ、部分的な漂流ルートが再現されている。

Barnacles may help reveal location of lost Malaysia Airlines flight MH370

 ただし、現時点ではまだ機体の発見にはいたっていない。フジツボ類の中でもっとも肝心なのは、墜落地点付近で付着したはずの一番大きく古い個体だ。

 これを調べることで、まさに墜落地点の海水温を知ることができる。だが今回、そのフジツボ類の分析は行われていない。

 それでも飛行機の破片に付着したフジツボ類から、「墜落地点までの完全な漂流ルートを再現できることが証明されました」と、ハーバート准教授はプレスリリースで語っている。

 なおMH370便は、燃料が切れてからインド洋の「第七円弧(7th Arc)」と呼ばれるアーチ状の海域のどこかに墜落したと推測されている。

 この海域の水温は、そのラインに沿って大きく違うために、今回の方法によって飛行機がどこにあるか正確に突き止められると期待できるそうだ。

 また仮にこのライン沿いに飛行機がないのだとしても、フジツボ類のヒントから今後捜索するべき海域を絞り込むことができるという。

References:A Stable Isotope Sclerochronology‐Based Forensic Method for Reconstructing Debris Drift Paths With Application to the MH370 Crash – Al‐Qattan – 2023 – AGU Advances – Wiley Online Library / University of South Florida scientist: Barnac | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo

追記(2023/08/25):フジツボという表記を、日本の表記に合わせフジツボ類として訂正して再送します。

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この記事へのコメント、16件

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      1. >>7
        フジツボって食べるとおいしいらしいので、全部がおいしいものっていう認識するようになると平気になるかも!

    1. >>3
      ゲテモノ耐性高めで虫好きな俺でもフジツボはちょっと
      この圧倒的異物感と集合体感がね…

  1. 飛行機にはGPSはついてないって事かな?
    それも墜落で破壊されちゃったのかな。
    今の世なら、乗客の誰かのスマホのGPS機能が手掛かりになるかな。

    1. >>5
      GPSは、「自身」の現在地を確認するシステムです。
      現在においてはリアルタイムで飛行機を追跡できるシステムがあり、無料で航空機の航跡を追うことができます。フライトレーダーについては、2012年に無料で追跡可能なソフトウェアが提供されており今回の航空機についてもある程度の高度で飛行していた時間帯については判明しています。

    2. >>5
      飛行機がGPSで自機の位置を特定して
      その情報を、飛行機から基地局へ自動で無線送信し続ける、
      「ADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)」
      というシステムは、当時もあった。

      ただこれ、アンテナへ無線が届くのが200海里ほどなので、
      海上の沖合に出てしまうとリアルタイム情報が来なかったり
      発信機能が壊れると管制官は補捉できなくなったりする。
      (海底に沈んでいる飛行機自体の
      フライトデータ・レコーダーを引き揚げられれば、
      軌跡の詳細記録も残っているだろうが。)

      マレーシア航空370便の行方不明が大々的な問題となって以降、
      外部への通信にも人工衛星を介して
      外洋までカバーする新システムの導入が広まりつつある。

    3. >>5
      撃墜された可能性もあるんだよね
      あの辺りは近隣諸国の防空レーダーの範囲だからどこかの国のレーダー網に引っかかってる可能性もあるんだけどそれは軍事機密なので自ら公表はしないだろうけど。

  2. この方法だとかなり大雑把な位置しか分からなそうだけど、
    現状ではそれ以上に見当も付かない状態ということだろうか。

  3. 広義のフジツボ類って言い方はたしかに間違ってはいないけど、エボシムシとフジツボはワラジムシと通常のエビくらいには差があるんだから、通常のフジツボとエボシムシを混同させるような記事の書き方は正直どうかと
    広義のフジツボ類ではなくきちんと蔓脚類と書いた方が良いのでは

    画像はエボシムシで、本来のフジツボとは違う生き物なのにフジツボだと思ってる人もいるようだし

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