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地球の生命誕生の元となった物質が特定される。地球外生命体を探す手がかりに

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 私たち地球上の生命はどのように誕生したのか?

 『Science Advances』(2023年3月10日付)に掲載された研究では、そのはじめの一歩となる最初の代謝を生み出した分子を特定したという。

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 それはタンパク質を構成する「ペプチド」と2つのニッケル原子が結合した「ニッケルバック」で、原始の海で起きたその化学反応が生命の炎を灯すことになったそうだ。

 またこの発見は、宇宙のどこかにいるかもしれない地球外生命体を探すうえでも重要な手がかりであるという。

生命の代謝活動を始動させた分子を特定

 ラトガーズ大学の研究員ヴィカス・ナンダ氏らが生命の始まりの最有力候補と主張するのは、タンパク質を構成する「ペプチド」というアミノ酸が結びついてできた分子だ。

 そのペプチドは、窒素原子が”背骨”となって2つのニッケル原子を結合させていることから「ニッケルバック」と呼ばれている。

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生命の始まりとなったとされるペプチド「ニッケルバック」。窒素原子(青)が背骨となって2つのニッケル原子(オレンジ)が結合している / image credit:The Nanda Laboratory

 生命の始まりについてナンダ氏は、「35億~38億年前のどこかの時点で、生物の前段階である化学的作用から生きた生物系へと変化することになる転換点があったと考えられています」と、説明する。

 その変化を起こしたのが、初期の代謝反応で大きな役割を担ったいくつかの前駆体タンパク質だと考えられるのだという。今回発見されたのは、そうした分子の1つだ。

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ニッケルバック(中央)と他の天然の酵素との比較 / image credit:Science Advances (2023). DOI: 10.1126/sciadv.abq1990

生命の痕跡を調べる指標になる可能性

 望遠鏡を覗き込んで地球外生命を探す研究者たちは、過去や現在あるいは今まさに誕生しようとしている生命の痕跡「バイオシグネチャー(生命存在指標)」を探している。

 今回のニッケルバックは、まもなく誕生しようとしている生命の証拠となる最新のバイオシグネチャーとして採用されるかもしれないと、ナンダ氏は述べる。

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photo by Unsplash

 彼らによれば、生命誕生のきっかけになる化学物質は、おそらくはシンプルな作りなはずだという。そうでなければ、原始のスープの中で自然に作られないからだ。

 だがそれでいて、周囲のエネルギーを使って生化学的なプロセスをうながせるくらい化学的に活発でなければならない。

 そうした特徴をあわせ持つ物質を探すために、ナンダ氏らは現代のタンパク質の中でも、特に代謝に関係するものを調べてみることにした。

 だが、それらはごく初期の地球に存在したと考えるにはあまりにも複雑すぎることが判明。そこで、今度はタンパク質のもっと基本的な構造を探ってみることにしたのだ。

 そして見出されたのがニッケルバックだった。このペプチドは、13個のアミノ酸が2個のニッケルイオンと結合してできている。

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photo by iStock

生命はどのようにして誕生したのか?

 彼らの想像する地球上の生命誕生のシナリオはこうだ。

 地球初期に形成された海にはニッケルが豊富に存在した。それがニッケルバックに結合すると、ニッケル原子が強力な触媒となり、さらに陽子と電子を引き寄せた。

 こうして水素ガスを発生。初期の地球には水素がずっと豊富にあり、これが代謝をスタートさせる重要なエネルギー源となった。

 これを説明する仮説ならたくさんあるが、実験でその内容を検証しているものはあまりない。ナンダ氏によると、だからこそそれを実際にやった今回の研究は重要なのだという。

 「単純なタンパク質代謝酵素が実際に存在できるだけでなく、それらが非常に安定かつ活発であることが示されました。それゆえに生命の始まりとして信憑性があるのです」

References:Scientists identify substance that may have sparked life on Earth / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント、14件

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  1. 実際に原子の海を作って再現しない限り、根拠のない仮設

    なんとでもいえるから意味は全くない

    1. >>1
      科学では理論が発表されてから何十年場合によっては何百年もたって初めて実証されるなんて珍しい話でもないぞ
      なんでそんなに偉そうなんだ?

  2. 特定ってわけではないな。
    単純な構造と普遍的な材料によって触媒機能を持つ分子種が発見されて、それが原始生命初期段階の代謝制御に関わる酵素の候補として有力視できるってだけのこと。

    1. >>2
      地球人類のような炭素生命体の枠を取っ払えば、シリコン生命体という存在も視野に入ってきますね

    1. >>4
      意識程度の事ならそれは自我の事であり行動の追認によって発生している
      手を動かしてその手を動かしてるのが自分だと認識する事で自我が発生しているわけで
      実際、脳の活動も動いてから0.1秒後に活動してるのが脳波でわかっている

  3. 地球ではそうだったってだけでよそでは環境も違うんだし別のものの可能性もあるんじゃないかな

  4. 生命のごく初期の起源って多くの科学者がいろんな説を提唱してるけど解明されるときが来るのかな。宇宙起源説とか大気の気流中で生じたとかトリッキーな説も入り混じってカオス。自己複製する分子の誕生をを実験室で再現できたらすごいけど、確率的に無理だろうか

    1. >>9
      遥か未来。人類が宇宙を自由に飛び回れる時が来たら、原始地球に似た惑星に出会うかもしれない
      その時まで神秘は神秘でいいんじゃないのかな? あと我々のわくわくの種

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