狂った青春、16歳の夏。
凶悪犯罪の低年齢化が問題視されるようになってから久しいが、10代の少年少女たちによる犯罪は後を絶たず、俄かに信じ難い耳を疑いたくなるような事件が増えて来ている。
先日の14日、広島県呉市で起きた「16歳少女死体遺棄事件」では、県警の捜査が進むに連れて事件の真相が少しずつ明らかになって来てはいるものの、依然として不可解な点が多く謎に包まれた部分が事件の全容解明を拒むように暗い影を落としている。
元同級生を殺害し、同県呉市の山中に棄てたと自首して逮捕された16歳少女の供述によれば、スマフォのメールアプリ「LINE(ライン)」を介して、「殺す」「殺せるものなら殺してみろ」等の激しい言葉の暴力で口論となり、その腹いせに相手を山中に連れ出し、首を絞めて殺したと言うものであった。
然し、その後になって事件に関与したとされて16歳の少年少女5人と21歳の男を含む計6人が新たに逮捕されている。
逮捕された容疑者たちの供述によれば、21歳の男が運転するワゴン車に乗り込み、遺棄現場である灰ケ峰まで移動し、集団で殴る蹴るの暴行を加え、死に至らしめたらしい。
供述内容が個々により微妙に食い違う点もあり、中には関与自体を否定する者までいる。憶測の域を出ていないものの、少女たちとの間で「接客業」で儲けた金銭を巡ってトラブルを起こしていたなどと言う報道すら聞こえて来ている。
この「接客業」が何であったのか事件の真相究明に繋がる重要なポイントとも思われるが、何れにせよ複雑怪奇な少年少女たちの人間関係が捜査の行方を更に混沌とさせているのは確かなようである。
殺された少女と自首した少女は、元々仲の良い友人同士だった事も判明しており、その二人が言い争う原因が何だったのか現時点では分かっていない。
21歳の男を除く5人とも未成年、しかも僅か16歳と言う若さである。世間の一般常識に当てはめて見れば、まだ子どもとも思える年齢であるが、思春期の真っ只中、最も多感な年頃でもある。
一見仲の良さそうな者同士であっても、心を許しあえるほどの仲でない限り、相手の奥深い胸の内まで見る事も理解する事も不可能であるだろう。もしかすると、言い争いの発端が「彼氏(交際相手)」を巡ってのトラブルだったかも知れない。
多様化する欲と暴力の現代社会の縮図を垣間見たような事件でもあり、希薄な人間模様が生み出した後味の悪さを実感するものであった。殺された少女は兎も角としても、この事件の犠牲者は16歳の少年少女たち全員のような気がしてならないのである。
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