日常の中に潜む狂気。
今月3日、千葉県柏市で起こった「連続通り魔事件」は、容疑者と見られる男「竹井聖寿(24)」が逮捕された事で急展開をみせ、事件発生現場となった柏市の住宅街に安堵の色が広がり平穏な日常生活が戻りつつある。
逮捕の決め手となったのは防犯カメラやDNA鑑定によるもので、コンビニや逃走ルートの割り出しで掴んだ場所などに設置された防犯ビデオ等を徹底解析し、その結果事件発生から2日後と言うスピード逮捕に繋がった。
関東地方のベッドタウンとして人気の高い柏市、長閑な佇まいが広がる住宅地で、その事件は起こった。3日の深夜に差し掛かった時間帯、柏市あけぼのの路上で短時間の間に男性4人が刃物のようなもので立て続けに襲われ、その内2人が死傷すると言う凶悪犯罪が発生。
柏警察署は「連続通り魔事件」と断定し、犯人検挙のため約7万枚にも及ぶ似顔絵を作成し、情報提供を住民らに呼び掛けた。
容疑者として浮上した男は事件発生現場近くのマンションに住む24歳の青年で、その素顔にはまだ少年の面影を残すほどのあどけなさがあった。
犯行の動機について、竹井容疑者からの供述で「金銭目的」「社会に不満があった」などが判明しており、事件の裏付け捜査も佳境に入っているものと思われるが、24歳の青年を狂気に走らせたその背景にある「社会への不満」とは一体何だったのか最も気になる部分であり、青年の犯行心理も含めてこの事件の全容解明が待たれる所でもある。
今回のような青少年による凶悪犯罪が起こる度に思い出すのは、2008年6月に起きた「秋葉原通り魔事件」である。当時、私は「不安定狭心症」の為、秋葉原近くにある三井記念病院に緊急入院していた。CCUのベッド上で絶対安静だった私の耳に事件発生の情報など入る筈もなかったが、面会に来ていた家族からその事件の全容を知らされ、外は大変なパニック状態に陥っていると聞かされた。
当病院にも被害者一人が救急車で運び込まれたが、残念ながら既に死亡していたと言う。秋葉原事件の容疑者もやはり25歳の青年であり、犯行動機や事件の背景なども今回の事件と酷似しているように思えるのである。
勝ち組や負け組といった言葉が流行りだし、孤独感と社会的孤立に陥る若者たちが増幅し、就職活動も思うようにならず正規雇用とは程遠い「登録型派遣労働」と言う経済的にも不安定な環境を強いられ、精神的・経済的にも追い詰められて行くその過程で、人生の歯車が大きく狂いだし犯罪の道へと手を伸してしまうと言った「経済型社会不安」が少なからず事件の根底に根付いているような気がしてならない。
それにしても閑静な住宅街でまさかこのような凶悪犯罪が発生するとは、誰もが想像しなかったのではないだろうか。普段、私たちは平穏な日常の中で日々の暮らしを営んでいるが、危険は常に隣合わせであると今回の事件は教えてくれているように思う。
いつ何処で事件・事故に巻き込まれるか分からない複雑な人間模様と現代社会の中にあって、「自分の身は自分で守る」この言葉を心の片隅に忘れず忍ばせておきたいものである。