創作

惑星トンガリ/第7回(最終回)

凸恒星系が栄華を極めたなか、惑星トンガリはその角を天体観測塔として運用され、宇宙上の情報の流通経路となっていた。とある日、惑星トンガリの天体観測塔が解析不能の未知語を受信した。膨大な未知語の受信直後、惑星トンガリに膨大な熱と質量が集約され…

惑星トンガリ/第6回

彼の凸恒星系の制御理論は彼の外縁部が担った。外縁部は制御理論に従い活動を続けた一方、彼が自らに質した凸恒星系に対する高次な存在の関与という問題の影響を受けていた。彼は自らの意志に従って惑星トンガリに降り立った。しかし、実際のところ、高次な…

惑星トンガリ/第5回

凍てつく凸恒星系、閉じられた星系は慣性に従った天体の運動だけが許されていた。角を生やした異形のトンガリは確かに目に付いたものの、高度文明の惑星開発と比較すれば可愛いものと言えた。彼はいつも通り、星系内の調査を開始して情報を集めた。調査結果…

惑星トンガリ/第4回

思えば彼の長い旅路は惑星トンガリによる宇宙開闢、災厄と復興を辿るものだった。有機物、細胞生物、原始生物、高度知的生物、サイボーグ、電子頭脳、情報共有網、情報展開体、電子パルス、あらゆる生命と文明が宇宙を跋扈していた。彼にとっては何世代も前…

惑星トンガリ/第3回

そんななか、凸恒星系を目指す知的生命体が現れた。この知的生命体は実は惑星トンガリを起源としている。惑星トンガリに角が生えると同時に成層圏を離れた大地の破片の数々は秩序ある宇宙に数々の災厄をもたらす一方、新たな生命と文明の福音にもなった。破…

惑星トンガリ/第2回

この惑星は角以外にさしたる特徴を持たなかった。原始宇宙の辺境、エネルギーの発露や展開は無く空間は凍てついていた。それ故に恒星は永遠とも言える時間を手に入れた。その余波を受け、この惑星も角を折ること無く、その姿を長く留めることになった。長い…

惑星トンガリ/第1回

亜光速で宇宙空間を進む物体が地上を捉えた。その刹那、大地に大きな火花が上がった。めくれ上がった大地の破片の数々は成層圏を離れ、宇宙の暗闇に散り、舞い上がった塵芥が空を覆った。大津波が地表を洗い流した後、大地の裂け目から吹き出した煮えたぎる…

西の田に幾人かの男ありけり  ドストエフスキー 

「C'est du nouveau,n'est-ce pas? (これは新しいものさ、そうじゃないか?)こうなりゃいっそのこと、潔く綺麗に君に打ち明けてしまおう。一たいねえ君、胃の不消化や何やらで夢を見ている時や、殊に魘されている時など、人間はどうかすると非常に芸術的な…

西の田に幾人かの男ありけり  西田幾多郎

「実在は前にいったように意識活動である。而して意識活動とは普通の解釈に由ればその時々に現われまた忽ち消え去るもので、同一の活動が永久に連結することはできない。して見ると、小にして我々の一生の経験、大にして今日に至るまでの宇宙の発展、これら…

アラウンド ザ ワールド カルフォルニア―シャンハイ

カルフォルニア州、R・H・レドホト氏の家にワニがやってきた。レドホト氏は書斎で読書をしていた。読書に疲れ、寝室に行こうとした時、プールの方から音が聞こえた。泥棒かと、机から拳銃を取り出して窓に近づいた。カーテンの隙間からプールを見ると、黒…

クイズ

電車は混んでいたが私は座ることが出来た。座席の空きは少しはあった。私の隣の座席も空いていた。私は窓に映る自分の顔をぼんやりと眺めていた。 女性が隣の車両から入ってきた。席を探しているのだろうか。しかし私の隣の席を通り抜けて、他の空きの座席に…

思い出す人

「どうせ、私のことなんかわすれちゃうよ」 「いや、そんなことない。絶対忘れない。忘れるはずなんてない」 彼は本心でそう思った。こんなにも大切な彼女を忘れるはずがないと…。 その三日後、彼は彼女を思いだす作業を行った。絶対に忘れないためである。…