体験型エンタメってどんなもの?
体験型エンタメ情報局では、「体験型エンターテインメント」を、日常空間やリアルメディアを使った体験型・参加型のエンターテインメントを広く包含した用語として使用しています。
具体的には、以下のようなエンターテインメントを「体験型エンタメ」として取り扱います。
謎解き/ARG(代替現実ゲーム)/xRコンテンツ(AR・MR・SR・VR)/参加型推理/マーダーミステリー/人狼/イマーシブシアター/LARP/TRPG/アナログゲーム/テーマパーク/参加型アトラクション/トランスメディアストーリーテリング/イマーシブミュージアムなど体験型・参加型のエンターテインメントは、日々新しいものが生まれています。上のリストにとらわれず、新しいジャンルも積極的に取り扱っていきたいと考えています。
体験型エンタメの魅力
体験型エンタメは、形式への制約が少ないため、「面白さ」の要素も非常にバラエティに富んでいます。そのため、魅力は個々のジャンル毎に語る必要がありますが、あえて共通する「面白さ」を挙げると、以下の点が重要なポイントになります。
自分のまま、生の感覚で参加することによる没入体験
デジタルゲームは、画面の中のキャラクターをコントローラーを通して操作することで遊びます。
それに対して、体験型エンタメは、何かの役を与えられることはあったとしても、存在としては自分のままで参加し、自分の足で動き回り、自分の目と耳で見聞きして、楽しむことができます。
エンタメの世界に生身の自分で没入する感覚は、体験型エンタメならではのものです。
体験型エンタメ内のジャンル紹介
体験型謎解きイベント
2007年7月に実施された『謎解きの宴。脱出とパズルとカレーとビール。』以降、累計動員数800万人以上を誇る株式会社SCRAPのリアル脱出ゲーム。その盛り上がりと共に、独自の謎解きゲームを作りたいという制作団体が次々と生まれて、今となっては体験型謎解きイベントは、一大ゲームジャンルとなりました。
一番多いスタイルは、イベント会場に行って、参加費3000円前後を支払うと参加できるという公演型のもの。4人〜6人程度のテーブルに案内され、同じテーブルの参加者と協力しながら、制限時間60分で謎を解きます。
ここでいう「謎」というのは、義務教育程度の知識があれば、あとは知恵とひらめきだけで解ける問題のこと。パズルよりのものもあれば、なぞなぞのようなものもあり、共通するのは、必ず解答が1つに定まる問題であることです。
「小謎」と呼ばれる単体の謎を解いていくことで、次の段階に進むことができ、さらなるひらめきが必要な「中謎」たち、そして、最後に立ち塞がる「大謎」を制限時間以内で解くことで、ようやくクリアとなります。
以上のような、現在の標準的な体験型謎解きイベントのフォーマットを作り上げたのもSCRAP社でした。
ジャンルとして成熟が進み、オンライン形式のもの、同時に1万人参加するもの、キットとなっていて好きな時間に自宅でチャレンジすることができるもの、など、様々なバリエーションが生まれてきています。また、謎解き以外の体験にも比重をおいた公演に挑戦する団体も増えてきており、他のジャンルとの垣根が徐々に曖昧になっているのも近年の特徴です。
謎解きがテレビ番組に取り上げられることが増えて、ファミリー層にまで謎解きが浸透しているため、今後のさらなる発展が楽しみですね。
ARG(代替現実ゲーム)
ARG は Alternate Reality Game の略で、代替現実ゲームと訳されます。現実世界に物語世界を重ねることで、高い没入体験をもたらせることが特徴のエンタメです。
海外では、参加者100万人〜1000万人規模の大規模事例が2000年代に複数実施されたことにより、定番の手法として定着していますが、国内では2021年に参加者1万人規模の事例が実施され、ようやく定着してきそうというフェイズです。
多様な魅力を持つARGを説明するにはこのスペースは狭すぎますので、詳細は別ページ、『ARG(代替現実ゲーム)とは?』を参照してください。
ご参考までに、ここ「体験型エンタメ情報局」は、旧称は「ARG情報局」といいました。現在も国内最大級のARG情報サイトを自称しています。
xRコンテンツ
ARやVRなどの技術を総称してxRと呼びます。
ARは、iPhone や Android で体験するスマートフォンARの環境が整い、次は実世界と重なるAR世界にオブジェクトを配置して共有することができる AR クラウドの世界が来ています。
VRは、低価格・高品質な Meta Quest 2 の登場により、普及の素地は整いました。そして、メタバースというキーワードが生むエネルギーにより、かつてない熱気をはらんでいます。
これらに共通するのは、現実世界を拡張する新しい世界を構築するという点。そのパワーを応用して生まれる新しい体験型エンタメを紹介するのも、このサイトの役割です。
参加型推理イベント
参加型推理イベントは、事件が起こる場面を観劇したあと、参加者自身の手で推理を行って、推理の結果を提出し、その内容次第で表彰されるというイベントです。
国内で一番歴史があるのが、1987年誕生のE-Pin企画の『ミステリーナイト』。ホテルに1泊し、夜に事件編を観劇してから、夜通し推理をして、翌朝解決編を観るというタイムスケジュールのイベントです。参加費は宿泊代込みで1人3万円以上という高価格帯ですが、30年以上にわたってファンから愛されてきています。
『ミステリーナイト』は数百人の参加者が一度に舞台上の事件編を観劇するという形式ですが、参加型推理イベントには、演者と観客が同じ部屋の中にいて、事件の発生をリアルタイムで体験するリアルオンタイム形式のものや、あるいは事件編は映像上映のみで、その代わりに証拠資料や現場調査を重点的に行うものなど、様々なバリエーションが存在し、それぞれに面白さがあります。
近年、コロナ禍もあって、E-Pin企画はオンラインでの会員制サービスに力を入れています。また、体験型謎解きイベントと推理を融合させるアプローチに挑戦している団体もあります。
まだまだ参加型推理の分野でも新しい挑戦は続きそうです。
マーダーミステリー
現在、国内で多く遊ばれているマーダーミステリーは、4〜10人程度のプレイヤーが、それぞれの役を与えられ、証拠品カードや会話を通じて、プレイヤーの中に隠れている犯人を探し出すというゲームです。プレイ時間は標準的なシナリオで3.5時間程度。専門店舗で遊ぶと参加費は4000円前後です。
一度遊んだシナリオは二度と遊ぶことができないという制約があるのは、体験型謎解きイベントや参加型推理イベントと同様ですが、シナリオの配役による人数制約が厳しいのが特徴で、専門店舗によるプレイヤーのマッチングが重要となります。
中国国内で店舗4万店、市場規模2700億円という報道もあるマーダーミステリー。日本国内では2019年に「王府百年」という中国製のマーダーミステリーが非常に面白いと評判になってから、わずか数年の間に日本各地に専門店がオープンし、数十本のシナリオから選んで遊べるような状況となりました。
日本に紹介された当初は、人狼と同じような正体隠匿系ゲームで、言い逃れする犯人とそれを暴く人々の駆け引きを楽しむゲームという色が強めでしたが、たくさんの作品が国内で作られてきた中で、作品の多様化が進み、与えられた役でのその場限りの体験を楽しむという色合いも強くなってきています。
まさに進化している最中のジャンルです。一度体験して肌に合わないと感じられた方も、ぜひ新しいマダミスに注目してみてください。
イマーシブシアター
典型的なイマーシブシアターは、複数の部屋に分かれた空間で同時に演じられている中を、観客が自由に移動しながら観賞する、というもので、演者と観客の間の垣根が極めて薄く、時には演者と観客との絡みが発生する公演もあります。
この現在の典型的なイマーシブシアター像は、2011年からニューヨークで上演され、大ヒットしている『Sleep No More』の影響が強く、空間の演出にこだわることや、ダンスや身体の動きで魅せることなども、ここからの流れとなります。日本国内では2017年にダンスカンパニーのDAZZLEが『Touch the Dark』でイマーシブシアターを名乗った公演を実施し、そこからイマーシブシアターの波が広がっていきました。
『Sleep No More』や『Touch the Dark』から大きく広がったイマーシブシアターですが、2021年には、コロナ禍で制約のある中、オンライン公演なども含めて、イマーシブを名乗る多様な演劇公演が国内で行われています。その中には、『Venus of Tokyo』のような直系進化のイマーシブシアターもあれば、セリフと演技とで紡がれていく公演もあり、さらには移動要素のない公演もあります。
現在は、観客に何かの役割を求め、作品世界と観客に何らかの相互作用のある演劇をひっくるめてイマーシブシアターと呼んでいる状況です。今後、さらにイマーシブシアターの多様化は進んでいくことでしょう。
LARP
LARP は Live Action Role Playing の略で、簡単に言えば、現実空間でコスプレしてRPGを楽しむというエンタメです。生身の身体で模擬戦闘なども行うため、安全に遊ぶためのルールが丁寧に整備されているのが特徴です。
ドイツでは8000人が参加する大規模イベントが開かれるなど、欧米では盛んに行われていますが、国内でも徐々に認知が広がってきています。
詳しくは、体験型LARP普及団体CLOSSによるLARPの説明記事が分かりやすくまとまっています。
LARPも多様化が進んでおり、日記を書き残すという独特なプレイ感のジャーナリングLARPや、オンラインで実施するLARP、あるいはLARPを即興演劇とみなしての舞台化など、様々な試みが行われています。
衣装を揃えるなどのハードルが高いように感じますが、初心者向けに衣装の貸し出しとセットになったイベントも頻度高く実施されています。ぜひ一度参加してみてください。
体験型エンタメをもっと知りたい・作りたい!
体験型エンタメについてもっと知りたいという方は、当サイト「体験型エンタメ情報局」の記事をチェックしていただければ、最新の情報をお届けします。
また、制作に興味があるという方は、Discord に『体験型エンタメ制作者ギルド』という交流の場を設けています。体験型エンタメの制作者や制作に興味のある方、研究者などであれば、どなたでもお気軽にご参加ください。