19音音階

先日とりあげたグッドール「音楽の進化史」、一番驚いたのは、バッハの業績、すなわち12音の平均律が確立される前に、19音音階が存在したと書かれていたこととし、それについて翌日書くとしたのだけれど、いろいろ時事の話題がはさまって、ようやく今日アップ。

P_20160418_205947_DF-crop.jpg 19音音階(19平均律)については、以前(おそらく30年以上前)、日経サイエンス(Scientific American日本版)で読んだことがあった。
その記事の中心は、数理的に19平均律の合理性を説明するもので、冪根が簡単に計算できる必要もあるから、理論的可能性の一つとして、現代に考案されたものという理解をしていた(記事に16世紀の19音音階のことが書かれていたかもしれないが、それは見落としたか、記憶にない)。

ところが、グッドールによると、1600年頃は19音音階は特別というわけではなく、驚くべきことに31音音階の楽器もあったという。

インド音楽では24音音階が使われるものがあるが、これは半音をさらに半分に分けるものだから、数理的にはおもしろみは欠けると思う。

ただし、同書では19平均律とは説明していない。当時の楽器はそれぞれ固有の調性を持っているし、ド#レ♭は別の音である。合奏するための工夫として19音が採用されていたという説明のように読める。

グッドールによれば、この時代の前後に、三度音程など和声の基本が確立されていく。実際、対位法でも協和音を響かせたパレストリーナは1525~1594だし、前の記事でも触れたモンテヴェルディは1567~1643、19音音階が試されていたのと同時代である。さすれば、19音音階は進化の袋小路に入って、そして忘れられたものと言えるのかもしれない。

一方、日経サイエンスの記事は、19平均律についてであって、その合理性は、12平均律で基本となっている音程に近い音程がとれる(つまり和音の基本となっている五度や三度音程がとれる)、演奏可能な程度の鍵盤が作れる、というようなことだったと記憶している。
19TET_Keyboard_note.jpg また、19音鍵盤のデザインも記事に載っていたが、それはグッドールの本に掲載されているそれとは違っていたと記憶する。

グッドールの説明通り楽器の調性を合せるためなら、転調のない1曲では使われない鍵盤ばかりになって、現代の12音鍵盤でも調律だけで演奏できるのかもしれない。

また、19音音階(平均律)は一部協和音程が12平均律よりも純正律に近いと言う点が理論的に優秀ということだけれど、バッハ以前の1600年頃は、まだ12平均律は登場していないから、この時代の19音音階は、その特長を生かしたというわけではないだろう。

2016-03-29_160153.jpg 以前も音楽の可能性として19音音階を使った音楽をやっている人がいるのではと思っていたけれど、今回あらためてYouTubeを検索すると、ちゃんと16世紀の楽曲の演奏がアップされている(Guillaume Costeley - Seigneur Dieu ta pitié)。
他、19音音階の説明動画もいろいろアップされている。YouTubeで"19TET"などで検索すればヒットする。

聴いた感想だけれど、どうしても聞き慣れた12音音階に引っ張られて、12音音階での音名をあてはめてしまう。絶対音感を持っている人なんかは、気持ち悪くて聞いてられないかもしれない。

グッドールは、音の数が多いほど効果的というわけではないとしているし、後の12平均律の隆盛を見れば、19平均律はやはり音の数が多すぎたということかもしれない。


上に書いたように、19音音階を使った音楽の実例はYouTubeなどにあるのだけれど、シンプルに19音音階(19平均律)を流すサイトを探し出せなかったので、自分で作ってみた。長くなるので明日の稿にアップする。


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