春画入門
地元の公立図書館で、車浮代「春画入門」という本を借りた。
カラー図版がたくさん収められているけれど、新書判ではちょっと小さい。
春画というと二流、三流の作品と思いがちだが、それは現代の我々の勝手な思い込み。これは有名絵師・彫師・摺師が競う最高のジャンルなのだそうだ。
北斎、歌麿をはじめ、錚々たる絵師の春画が残されている(写楽は特殊で春画はない。広重はこの本の著者によるとそもそも肉筆画での画力がなくて、春画にも見るべきものがないという)。
著者によると浮世絵というのは芸術というより、メディアであるという。
春画は、現代では、さしずめアダルトビデオのような役割なのだろう。
しかし、現代のアダルトビデオと違うのは、浮世絵では、春画というジャンルにもっとも質が高い作品が多いのだという。
春画を知らずに浮世絵を語るなとでも言いそうな勢いである。
技術の高さといえば、たとえば、すぐれた彫師なら1mmに3本の髪の毛を彫ることができるそうだが、春画では真っ直ぐな髪の毛だけではなく、その細密さで縮れた毛を描写するなど、驚くべき高難度のものが描かれる。
あるいは、多色刷り版画は、普通の浮世絵なら9摺ぐらいだそうだが、春画ではなんと20回以上の摺りを重ねるのである。センズリである。
また、ストーリーも工夫されていたり、おカタイ本のパロディであったり、知的遊戯がいっぱいなのだそうだ。
こういうジャンルであるから、絵師・彫師・摺師が、全精力を注ぎ込むのは至極当然であろう。
さらに春画は禁制品だったから、本屋の表には並ばず、裏で流通したとのことで、表の本では禁じられていた高価な絵の具の使用や、お上に逆らう内容などでも作品になったのだという。
この本の「はじめに」で、2013~2014年に大英博物館で開催された"Shunga exhibition at the British Museum"、およびそれに続く、凱旋公演のような展覧会 "世界が、先に驚いた。春画(Shunga)展"(東京・永清文庫)のことにふれられていて、こういう本が出せるのも、こうした展覧会を通じて春画が復権しているからである。
その中で、永清文庫での展覧会から、有名な北斎の一品「蛸と海女」をアップ(タコとのからみは北斎の独創ではなく、元ネタは北尾重政「謡曲色番組」からだそうだ)。
カラー図版がたくさん収められているけれど、新書判ではちょっと小さい。
わざわざ「公立図書館」とことわったのは、こんな本も収蔵・貸出するんだと思ったから(貸出時に年齢チェックはしないのかな)。
職場の近くのY図書館にも収蔵されていた(昨日時点で貸出中)。
春画というと二流、三流の作品と思いがちだが、それは現代の我々の勝手な思い込み。これは有名絵師・彫師・摺師が競う最高のジャンルなのだそうだ。
北斎、歌麿をはじめ、錚々たる絵師の春画が残されている(写楽は特殊で春画はない。広重はこの本の著者によるとそもそも肉筆画での画力がなくて、春画にも見るべきものがないという)。
著者によると浮世絵というのは芸術というより、メディアであるという。
浮世絵に対する言葉は本絵、狩野派のようなもの。はなから芸術を意識した一品物。
春画は、現代では、さしずめアダルトビデオのような役割なのだろう。
しかし、現代のアダルトビデオと違うのは、浮世絵では、春画というジャンルにもっとも質が高い作品が多いのだという。
春画を知らずに浮世絵を語るなとでも言いそうな勢いである。
ビデオレンタルショップでカーテンで仕切られたコーナーは、単調なストーリー、無理な設定、品位の低い映像でできている同種作品が並んでいるわけだが、江戸の春画というのは、黒澤明が8K超ハイビジョンで究極の映像表現を追究しているというようなものかもしれない。
(公立図書館にもカーテン・コーナーがあったらおもしろいのでは)
技術の高さといえば、たとえば、すぐれた彫師なら1mmに3本の髪の毛を彫ることができるそうだが、春画では真っ直ぐな髪の毛だけではなく、その細密さで縮れた毛を描写するなど、驚くべき高難度のものが描かれる。
あるいは、多色刷り版画は、普通の浮世絵なら9摺ぐらいだそうだが、春画ではなんと20回以上の摺りを重ねるのである。センズリである。
また、ストーリーも工夫されていたり、おカタイ本のパロディであったり、知的遊戯がいっぱいなのだそうだ。
たとえば、『女大学宝箱』→『女大楽宝開』、『女今川教文』→『女令川趣文』という具合。
こういうジャンルであるから、絵師・彫師・摺師が、全精力を注ぎ込むのは至極当然であろう。
さらに春画は禁制品だったから、本屋の表には並ばず、裏で流通したとのことで、表の本では禁じられていた高価な絵の具の使用や、お上に逆らう内容などでも作品になったのだという。
この本の「はじめに」で、2013~2014年に大英博物館で開催された"Shunga exhibition at the British Museum"、およびそれに続く、凱旋公演のような展覧会 "世界が、先に驚いた。春画(Shunga)展"(東京・永清文庫)のことにふれられていて、こういう本が出せるのも、こうした展覧会を通じて春画が復権しているからである。
「春画入門」は2015年9月出版だが、Amazonで "春画"で検索すると、この時期にたくさんの関連書籍が一斉に出版されている。大英博物館の影響力→逆輸入だろうか、展覧会の力は大したものだ。
その中で、永清文庫での展覧会から、有名な北斎の一品「蛸と海女」をアップ(タコとのからみは北斎の独創ではなく、元ネタは北尾重政「謡曲色番組」からだそうだ)。
この稿を書くにあたって、"春画展"でググったら、永清文庫での展覧会が京都に巡回していることが判明。
4月10日まで開催中。18禁である。
春画を知らずに浮世絵を語るな、やはり行くべきか。