「音楽の進化史」

Goodall_The_Story_of_Music.jpg グッドール「音楽の進化史」について。

大著、482ページもある。
まだ1750年(つまりモーツァルト以前)までしか読めてないけれど、ここまででまずコメントを書きたくなった。

音楽史の本としては、前に岡田暁生「西洋音楽史」をとりあげたけれど、そのとき読書動機として、バロック以前の音楽についての知識があまりないからと書いた。「尖った5度」が特に印象の強いものだったのだけれど、本書を読むと、もっと驚くべきことが、さらっと書いてある。

storia_della_musica_occidentale-crop.jpg 他にカッロツォ&チマガッリ「西洋音楽の歴史」という本も読んだことがある。

これは電子書籍の半額クーポンを使ってまとめ買いをしたもので、全部で8分冊にもなる膨大なもの。
ただ、電子書籍といってもイメージ形式なので、フォントサイズは変更できず、画像としての拡大・縮小しかできなかった。タブレットなどでは大変読みにくく、ただでさえ難解な内容が、一層、頭に入らなかった。


この本でも興味の中心はバロック以前。モンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」をはじめとする草創期のオペラの話など、大変興味深いものがあった。

青島広志氏は、オペラはできてすぐに悪女の話と言うけれど、塩野七生さんによれば、ポッペアは悪女というほどではなくてただ贅沢なだけだったとか。

古楽の楽譜なども収録されていて、音楽史の資料集といった趣の本である。
カッロツォ&チマガッリの本の特色は何と言っても楽曲分析で、私には半分も理解できないのだけれど、演奏家だったら随分と役に立つところもあるのではないだろうか。

さて、グッドールの本は原題は単に"The story of Music"であるのだけれど、邦題では「進化史」となっているように、音楽を構成する「音の進化」(楽音として使われる音)についても追いかけられている。
次回以降にあらためて書くつもりだけれど、名前が知られる最初の女性作曲家(Kassia)の話など、今まで知らなかったことが並んでいる。岡田書では「尖った5度」として書かれていることが、それ以前の状態としてのドローンの話や、メロディラインの上声への移行のことなど、また新しい眼(耳?)が開かされる。


■グッドール「音楽の進化史」

第1章 発見の時代 紀元前40,000年~紀元1450年
第2章 懺悔の時代 1450年~1650年
第3章 発明の時代 1650年~1750年
第4章 気品と情緒の時代 1750年~1850年
第5章 悲劇の時代 1850年~1890年
第6章 反乱の時代 1890年~1918年
第7章 ポピュラーの時代1 1918年~1945年
第8章 ポピュラーの時代2 1945年~現在


それどころか、「オクターヴも発見された」という。
教会で歌えるのは男だけだったが、その音楽の伝承のために、男の子を合唱に加えるようになった。そして、変声期前の1オクターブ高い声が同じ音に聴こえることが発見されたのだという。


一番驚いたのは19音音階のことである(これについては明日あらためて投稿する)。

グッドールの本は、ページ数が多いだけでなく、本の紙面いっぱいに活字が詰まっており、章節分割もやたら大きくて、私には大変呑みこみにくい本である。何より、ある程度の楽理、楽典や楽器の知識がなければ、理解不能のところも多い。

こういう本こそ、電子書籍にして、本文から直ちに辞書検索や、楽曲再生、楽譜表示などができるようになってもらいたい。おそらく著者はそうした資料を揃えているはずだから。


ところで、不思議なことに、グッドール本と、カッロツォ&チマガッリ本は、同じような時代を扱っているにもかかわらず、記載の重複は意外に少ない。
音楽史といっても、いろんな視点があり、それによってとりあげられる事項も違っているということのようだ。

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