「法医学者たちの告白」

03AvgyfX.jpg NHKスペシャル「法医学者たちの告白」という番組を見た。
そして恐ろしいというか、なさけないと思った。

番組中でも再三ふれられていたが、刑事ドラマでは大活躍する法医学だが、実際にはテレビドラマのように活躍することはまずないという。
それは法医学者としての矜持があるからで、何も問題はない。問題は、ドラマなどでよく出てくるルミノール反応(血痕検出)や死亡推定時刻などは、どちらもあやしい判定であるということ。

番組では、ルミノール反応の発光をとらえた写真で犯行現場はここに違いないという警察の主張に対し、ルミノール反応は血液だけに反応するものではないと法医学者が疑問を述べていた。実際、のちの分析で別の原因での発光だったことがわかる。
胃の内容物で死亡時刻を推定するというシーンがドラマにはあるが、これもまったくあやしいものだそうで、1年間植物状態であった患者が死亡したときに解剖すると、未だ胃には食べたものの残渣があったという。

ハワイの監察医は、基本的に死亡推定時刻は判然としないものだと言っている。


だから実際の捜査現場では、こうしたドラマのような「杜撰」な根拠は使われないのだろうと思うのだが、どうやら捜査機関のストーリーに合わない判定をすると受け入れられないということがあるらしい。
さらに裁判所も、そのストーリーにのり、事実認定をおろそかにすることがあるという。
これは当然、冤罪を産むリスクを高める。
番組中では、この日本の裁判は、外国の人からは、中世なみとか暗黒裁判と言われているという指摘もあった。

IMG20240701192053-crop.jpg で、海外ではということで、番組では、日本の法医学に限界を感じて(嫌気がさして?)、ハワイの監察医になっている医師(元は東大の法医学研究室所属)のことが紹介されていた。
米国では、犯罪の見逃しと冤罪に対する批判の声が大きくなって、関連制度を改革したという。
それによると、監察医は捜査に強制力を持つ専門チームを率いていて、死因の特定を行う。監察医は捜査機関とは独立して死因を調べ、異状死体が見つかると現場で死因特定のための捜査を行う。警察は現場で遺体を観察することはできるが、監察医チームの捜査まで手を触れることも許されないという。
また監察医はその捜査で得た情報は捜査機関だけでなく、容疑者の弁護士の問い合わせがあればそれにも答えるのだという。

州によって制度の違いもあるかもしれないので、米国すべてがこうなっているのかはわからないが、ハワイのやり方は徹底していると思う。


犯罪捜査というのは行政権力が剥き出しで発揮されるところである。だからこの部分での民主的な制度は民主国家であればもっとも関心を持たれるのではないかと思う。そしてそれが米国では至極真っ当なものにする努力がはらわれている。
それに比べ、日本国は民主国家とは言えないのではないか、そんなことも考えさせられる番組であった。

こういう番組を制作放送できるのはまだましなのかもしれないが。


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