ふるさと納税にポイントはまかりならぬ、そうだ

先日のニュースで、総務大臣が記者会見のときに、ふるさと納税を取り扱うサイトが、ふるさと納税商品に対してポイントを付与することを禁止すると発言したことが伝えられた。

ちょっと表現が微妙で、「ポイントを付与するポータルサイト事業者を通じて自治体が寄附を募集することを禁止する」という報道もあって、これだとサイトがふるさと納税寄付にポイントを与えることを禁止するだけでなく、このサイトがふるさと納税を扱うこと自体を禁止するようにも読める。
しかしそう読むとほぼすべての通販サイトがアウトになって、ふるさと納税をすること自体が難しくなってしまうから、さすがにそれはできないのではと思う。


20240629furusatonouzei.png さてそれについて楽天の三木谷社長がご立腹のようで、楽天会員に〝「ふるさと納税へのポイント付与禁止」に反対するネット署名へのお願い〟というメールが送られてきた。
署名に協力するかどうかわからないが、総務省様のお考えについて考えてみた。

総務省は、ポイントの原資は自治体が負担していると見られると言い(今回の禁止の理由の一つ)、サイト側の楽天は、サイト側の利益が原資だと言う。
両者の言い分は全く逆になっているのだが、実際のところはどうなんだろう。
確かにサイト側は取扱手数料を自治体から徴収し、それがサイトの利益になるから、そこからポイント原資を得ていれば、サイト側の自由裁量であったとしても、自治体に負担させたことにはなるのかもしれない。

ただややこしいのは、還元率というのは市場価格で評価するものであって、これは制限されていない。制限されているのは、お礼品の仕入れ価格が寄付額の30%までということであって、販売価格ではない。なので、原理的には還元率は100%以上になることもありえる。

たとえば市場価格7,000円のものを自治体に3,000円で納めて寄付額10,000円に対する返礼品とした場合、総務省が制限しているお礼にあてる割合は30%にとどまる一方、還元率は70%になる。自治体の取り分は手数料を含めて7,000円である。寄付者は一旦は10,000円を支払うが、住民税の還付を考えれば自己負担2,000円+αで7,000円相当のものを手に入れられる。


総務大臣記者会見を伝えるニュースでは、「39%還元」などと表示しているが、還元率とは上述のようなものだから、39%などは全く問題にならないし、サイトがこれに関与しているわけではない。
これはサイトが行うものではないから、サイトのポイント付与とは関係がない。このような表示を総務省側が出したのなら一種のフェイクだし、マスコミ側が出したのなら例によってマスコミの鳥頭ぶりを露呈しているわけだ。

注目すべきなのは、返礼品の仕入れ値ではなく、販売経費だろう。これにはサイトに支払う手数料が含まれる。販売経費にはこのほかに広告料や各種事務費が含まれるが、これらの諸経費は寄付額の50%以下という制限がある。
上の数値例(寄付額10,000円)でいえば諸経費は5,000円を充てることができるが、サイトには商品価格の10%ぐらいまでの手数料でないと相場を大きく外しそうだから、サイトへの手数料を1,000円とすると、サイト側はその中から幾分かをポイントの原資にすることはできるだろう。
楽天のふるさと納税を見ていると、10,000円の寄付額なら330ポイントが付与されているようだ。

楽天のふるさと納税では、寄付額100,000円で3,294pt付与というのもあるが、10,000円ならどの自治体でも一律330ptのようだ。


こう考えてくると、楽天は販売手数料収入(1,000円)の1/3をポイント還元しているようにも見える。
ふるさと納税を取り扱うサイトは他に「さとふる」も大きいと思うが、こちらはポイント還元は5%である。ただしPayPay払いでないと小さくなるようだ。

楽天なりさとふるなりが、自治体とふるさと納税取り扱いの営業をかけるとき、手数料の〇〇%をポイント還元するので、寄付を集める効果があるなどと営業トークをするのではないだろうか。それも楽天とさとふるそれぞれが、うちのほうが魅力的とかなんとか。

以上、ポイントの原資について憶測にすぎないけれど、仮にこのようなものだったとしても、総務省が忌み嫌うような問題だろうか。もし楽天にお灸をすえるのであれば、ポイント付与をする余力があるのなら、ふるさと納税の販売取扱手数料を寄付額10,000円に対し670円に値下げするように要請すれば良いのである。それでも330ptを付与するかどうかはサイト側の判断と言えるだろう。

そもそもポイント云々のこと以外に、総務大臣は、ふるさと納税の制度の趣旨とやらを持ち出して、ポイントで客を釣るようなのはその趣旨に反するというような意味のことを言ったようだ。
だが、ふるさと納税を行う人は、なかには愛着のある自治体を応援しようという人もいるだろうが、大半は「お礼目当て」だろう。
かく言う私も今までに何度かふるさと納税をおこなっているが、住民税還付分安くなるからやってみよう、それならどの自治体の還元率が高いのか見て、欲しいものを選ぶ。

取り扱いサイトは還元率のランキングを出したりしているから、どれが得かわかりやすい(だまされやすい)。もちろんこういうランキングは「愛着のある自治体へ寄付」という行動を否定するようなものだから、総務省が怒るのもわからないわけではない。

こうなることはわかり切っているのに制度を創ったのだから、文句を言う相手が違うように思う。
出身地など愛着のある自治体を応援したい国民のためにという麗しいタテマエのもと、国民の消費を喚起するという時代を先取りする施策として評価すれば良いのである。

だいたいお国が制度の趣旨云々というのなら、森林などまったくない自治体にも渡される森林環境税(一人1,000円)なんかはどうなんだ。

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