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Eltingville Club

伝説のギークアニメ「Welcome to the Eltingville Club」の話が出たので、その話でもしようと思う。
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「Welcome to the Eltingville Club」
クリエイターはEvan Dorkin

アメリカでの初放送は2002年3月3日CNの高年齢層枠「Adult Swim」で放送された。
日本ではビリー&マンディが初放送した時にちょっとした新番組スペシャルが行われ、それとセットで短編として公開(2003年8月3日)
その後も穴埋め番組として、長編映画のあまり時間などで突発的に放送されていた。さすがに最近はもう見ませんが。
日本では「Adult Swim」枠は存在しないため、特に年齢制限無しで放送。さすが日本やでえ。
日本でAdult Swim作品が放送された例は、これと「ホームムービーズ」、他局アニマックスでの「ブーンドックス」くらいでしょうか。
そう思うと貴重かも。

「Eltingville Club」正式名称は「Eltingville Comic book,Science-Fiction,Horror,Fantasy and Role-Playing Club」
ビル、ジョシュ、ピート、ジェリーのオタクが集まってエルティングヴィルクラブを結成。
AD&Dをやったり、トイザラスで玩具を買いあさり、バーガーキングでミールトイを子供から奪い、コミックブックショップでたむろする、グダグダで最低なオタクの日常を綴った作品。
Eltingville03.jpgビル(Bill) コミックマニア
Eltingville04.jpgジョシュ(Josh) SFマニア
Eltingville05.jpgピート(Pete) ホラーマニア
Eltingville06.jpgジェリー(Jerry) ゲームマニア
一応「専門」担当という程度で、だいたいみんな同じ。

クライマックスの、コミックブックショップに置いてあったボバフェットのフィギュアを巡っての、オタ知識クイズバトルが圧巻。

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ちなみにビルの妹ジェーン(Jane)はゴスで、ギークの兄とゴスの妹という、スクールカーストでいえば最下層の組み合わせ。(インベーダージムもそうなんだよな・・・)

dork06_01.jpgこの作品のクリエイターであり、コミックブック作家でもあるエヴァン・ドーキン(Evan Dorkin)の同名のコミックが原作。

「Eltingville Club」はSLGから刊行されたエヴァン・ドーキンのコミックブック「Dork!」(1993)の中のシリーズの一つ。

「Dork!」は短編集のようなもので、「Eltingville Club」の話だけでなく、様々な話が収録されている。
「Eltingville Club」が登場するのは#3から。


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そういうこともあってか、本編中ではDCコミックなどは「BC」とか、X-MENがY-MENになってたりするものの、SLGはそのまんま出てくる。

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ちなみにこコミックブックショップでバイトしている、この赤毛の男はエヴァン・ドーキン本人が声をあてている。
実際にエヴァン・ドーキンはコミックブックショップでバイトしていたことがあり、この作品のネタの多くはそこでの実話をネタにしてるようです。(もちろんギャグとして大きく誇張してる・・・と思うんだがどうなんだろう)

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それはさておき、これ。

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エヴェン・ドーキンの出世作「Milk and Cheese
(あ、出版社がSLGからDark Horseに移籍してる・・最近主要作家のSLGばなれ多いな)

この作品はアイズナー賞を受賞したことからもわかるように、その道では評価の高い作品。
あ、そういや「Eltingville Club」もアイズナー賞短編部門で受賞してたわ。
つうか、エヴェン・ドーキンって何度もアイズナー賞受賞してんだよね。
受賞歴からいえばアラン・ムーアとかフランク・ミラー、ニール・ゲイマンなどと並ぶ作家。
なぜ邦訳本が出ない!!!(まあ、出ないわなw)

というわけで、「ミルク&チーズ」は90年代のSLGのの看板作品ともいえるもので、この時代のSLGはこういうギークでアングラでディープなインディーズコミック出版社という感じだった。
ところが、そこにジョーネン・ヴァスケスのJTHM、ローマン・ダージのレノーアが登場しカルト的人気を博するにあたって2000年代のSLGは「ゴス系コミック」の色合いを強めて行く。
ちょっと横道にそれた。それはまた別の話。

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そしてこれ。

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殺人鬼家族「Murder Family」のGeorgina
コミックブック「Dork!」のメインは最初はどっちかといえばこの「Murder Family」でした。

とまあ、クイズ対決以外にも濃厚にネタがちりばめられており、昔見た時よりネタが少しわかるようになったせいで、見返したらさらにクラクラしてきた。


このエヴァン・ドーキンですが、TVアニメの仕事もやってまして、「バットマン・ザ・フューチャー」や「スーパーマン」などにちょっとだけ参加。
また、英語版「クレヨンしんちゃん」などにも関わったり。
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それらの中で最もドーキンらしい仕事といえば「Space Ghost Coast to Coast

ハンナバーベラの「宇宙怪人ゴースト」の映像を編集だけでつないで、実在の人物とのトーク番組まるまる作っちゃうという、デタラメな低予算番組。
最初のadultswim作品であり、その後のadultswimの流れを作った作品。
また、パワーパフガールズのパイロット版が最初に放送されたのがこの番組であり、パワパフ本放送ではなく、TVにパワパフが映った最初としてみれば、この作品でデビューしたこととなる。
低予算なうえバカすぎるグダグダな内容だったが、大人気となって、後にスピンオフ作品が次々と登場することとなるうえ、これのコミカライズ版まで登場する。カウ&チキンでもネタになったくらいだ。
おっと、これもまた別の話だ。

こういうカートゥーンネットワークの仕事もしていたので、adultswimで自ら「Eltingville Club」を作れたんじゃないかなーと、思ったり。
評判の方はわからないけど、結局アニメ版の方は1作で終りましたが。

女っけ皆無の原作と違って、アニメ版オリジナルキャラとしてビルの妹が出てたりしたので、一応シリーズ化も考えていたのかなあ。


ところで、オタクの英訳としてナード(Nerd)とギーク(Geek)がありますが、彼らはギーク。
ギークはコンピューターオタクとしての意味が強い、などと今でも言ってる人をみかけるけれども、それは80年代の話。
「オタク」が時代とともに意味や使われ方が変遷し拡大していったように、ギークもまた同様に変化した。
今では、コミックブックギーク、ゲームギーク、サイエンスギーク、ムービーギーク、ミュージックギーク、スポーツギークなどなど、社会性に難あるものの専門的分野に没頭する人々を指す言葉として使われている。
ぶっちゃけ日本の「オタク」とほぼ同義と思っていいかと。

ナードの方が言葉としては古く、内向的でファッションセンスの無い貧弱な坊や的な感じ。
日本で言えば「ネクラ」とか「ガリ勉」とかに近いかも。フォスターズホームでは「ダサ坊」って訳されてた。
ナードの中にはやはり性質的にSF映画だの、コミックだの、アニメなど大好きな連中がいるわけで、80年代ころはそういうおおざっぱなくくりでよかった。
ジョックやクールの対義語としての名称。
そこへパソコンが登場し、それを使いこなすスペシャルなものがギークと言われるようになりはじめ、分化してゆく。
そういえば、イメージ的には、ビル・ゲイツはナードで、スティーブジョブスがギークって感じですかね。

90年代頃にそのナードの中で目立ち始めたのが、ギークとゴスだ。
「ガリ勉」イメージが強かったナードと違って、ギークは(例えばマンガやアニメに異常に詳しくても)勉強ができるわけじゃなかったりする。
そのへんの分化は「オタク」の変遷とほぼ同じなんじゃないかと思う。
ゴスの方は「コロンバイン高校銃乱射事件」で世間の評判が一気に悪くなるんですが、おっとこれもまた別の話だ。

ところで、このエルティングヴィルクラブの連中だが、むしろGEEKというより、DORKという方がふさわしいかもしれない。

「Eltingville Club」が掲載されたコミックブックのタイトルがまさに「DORK!」

Dorkとは、ダサい、キモい、臭い、など最低のダサダサ野郎的な意味で、多少いい意味も含まれるナードやギークと違って悪い意味しかみたことない。
Dorkには特にオタク的意味はなかったが、現実はギークなやつらにそういうのが多いために、糞キモい最低ギーク野郎という使われ方もしている。
今の日本で言えば「キモオタ」が近いんですかねえ。

そう考えると作者の「Evan Dorkin」ってペンネームはどうなんだろう。
「キモオタ太郎」そんなニュアンスなのかしら、もしかして。
「宅八郎」とか「氏賀 Y太」とか、そういう系列!?


さて、「Eltingville Club」では携帯電話も登場せず、DVDではなくビデオであることからも、このオタク像は90年代くらいのものだと思われる。まあ、原作コミックが90年代ですし。
今、アメリカのオタクたちが見たら、かつてそうだった古き良き時代をなつかしむ感じになるのかもしれない。

今は作られたらどんな感じになるんだろうか。
コミックは読まないけどMANGAやANIMEが好きなコスプレ女子とか、そういうのも混じるのかなあ。
小さな子馬に夢中になったりして。

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コメント

通りすが郎:
Eltingville Clubで思い出した。
ストーリーの中盤でコミックブックショップがでてくるけど、
あれが危険なスラム街の街角にあるのはどういう意味なんでしょうね?
アメリカのオタクを題材にした映画ではコミックブックショップは普通のダウンタウンにあることが多いんだけどなぁ。
エヴェン・ドーキンが少年時代を過ごした地方都市ではオタクショップは地価が安いスラム街にあったということなのかな?
25:
うわあ、これ見たことあります!
はっきり内容は覚えてないんですが、とりあえずジョシュの印象が強かったのと「こんなの放映していいのかなぁ」って思ったことだけは覚えてますw
そういえばナードはフィニファでもガリ勉くんって訳されてました。
オタクって言葉を使いたくないからかな、と思ってたんですがそういうことだったんですね。
真空管:
ボバ・フェットの所有権を賭けての決闘が
オタククイズだった事を覚えています
どの国でもオタクは知識量で優劣をつけるのですね
スカポン太
>通りすが郎さん
実際にそうだったのかもしれないけど、自分は漫画的誇張なんじゃないかと思ってます。
コミックブックショップはまともなやつらなら立ち寄らない辺境の場所的な演出というか。


>25さん
見た事ありましたか(笑)
インパクトある作品だから一度見れば記憶にのこりますよねえ。
特にこのメンバーの中でもジョシュは原作でも最低に描かれてますし、そういうキャラなんだろうなあ。
>ナード
フィニファではそうでしたか。
「ナード」は特に最近ではギークと区別されて、そういうガリ勉タイプに使われる事が多いですね。


>真空管さん
あれは熱かった・・・
huz:
長いことウヤムヤだったナードとギークの定義の違いがよく分かりました!

そういえばシンプソンズのミルハウスのセリフで「俺はオタクじゃない!…だって頭よくないもん…」というのがありましたがあれはおそらく原語ではナードだったんでしょうね。ミルハウスはみごとなナード顔なのに。
スカポン太
シンプソンズでそんなセリフがありましたか。

ギークは性質を表すものだけど、ナードはけっこう外見の要素が強かったりするのでそういうことがあるのでしょう。
メガネで気弱で貧弱そう=ナードみたいな。

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