avocat:敗訴経験のない弁護士は信頼できる?
白井被告は大阪府内の建設会社側から依頼された損害賠償請求訴訟などを起こさずに放置し、2013年10月以降、判決文など5通を偽造して同社側に交付。(中略)
検察側は冒頭陳述で、偽造の動機について「不利な訴訟と感じ、敗訴がないという自身の経歴に汚点がつくと考えた」と主張。
敗訴すると経歴に汚点がつくように考えているようだが、少なくとも民事訴訟において勝訴と敗訴とはそれほどくっきりと分かれるものではない。約 4分の1は和解により終了しており、その和解についても勝訴的な和解と敗訴的な和解とがありうるし、真に互譲の上での和解もありうる。また、例えば原告側で請求の全部棄却となれば確かに文字通りの敗訴だが、先日の待婚期間違憲訴訟のように全部棄却であっても原告代理人が勝利宣言をすることはあり得る。
適切でない例を挙げるなら、いわゆるSLAPP訴訟など敗訴しても目的は達せられることがあり得る。
一部認容であればさらに敗訴・勝訴の境界は微妙である。
全部認容であっても、例えば純粋に経済的な利益を追求する訴訟であれば、最終的に債権回収できて初めて「勝訴」と言えるのであり、執行が上手くいく保障はない。
ということで、訴訟の結果から見て勝訴・敗訴というのはそれ程明らかではない。
実のところ、民事紛争の解決のために弁護士に依頼する本人は、その紛争の何らかの意味での解決が最も重要であり、もちろん大抵は自分の言い分が通ることが目的という場合が大部分だが、たとえそうならなくても、訴訟の後で相手方との関係が改善されれば目的は達せられるという可能性もある。法的には無理筋であっても、実質的には保護に値する場合もあろうし、例えば隣人間の境界紛争や所有権紛争などは、訴訟で一定の決着をつけることが今後の関係改善につなげられないと、勝訴・敗訴にかかわらず、目的を達せられないということもある。
良い弁護士さんというのは、そのような純粋に法的な領域を超えたところにある紛争解決ニーズのようなものを含めて、依頼人の利益を図るよう進めてくれることが期待できる人である。
というわけで、敗訴経験のない弁護士という看板は、お里が知れるというものである。
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